他人も私も知らない私
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- 宜しくお願いします。
- よこえ
- 宜しくお願いします(笑う)。えー。何ですかね。
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- 最近どうですか。
- よこえ
- あはは。何か、そういう出だし多いよね。
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- そうですね・・・。ええと、よこえさんは結構前にニットキャップシアターを辞められている訳ですけれども。
- よこえ
- すごく世界観が好きでそこでしてたんやけど。何か、やっぱりニットにいたころは、生かされていた感じがしていて。自分で生きてた感じがしなかった。自分が、ふやけてたから。そこは、ごまさんや劇団の凄いところだと思うんだけど、でももうちょっと一人で立てるように。ピンで立てるような役者にならんとあかんなと思ったわけです。いつか、もう一度、ニットの芝居が出来たらと思ったりしてます。好きですから。
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- それで、退団されたと。
- よこえ
- 七月の雨垂事典でやった役も、ニットでは貰えない役だったと思うし。だから、そういう現場が外に出ると増えてくるんですよ。もちろん劇団にいても機会はあるんだけれど、私は甘えっこなので。関わった事のない色んな現場にいって、よこえとも子として立たんとなあと。
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- なるほど。よこえさんは、今後どんな感じで役者をされていくんですか?
- よこえ
- 新しいものを発掘、ですね。変な話、私は自分を解った気がしていた上で演技をしていたと思うんですよ。でも、わからないもの、というか。例えば他人から見た私と、自分が知ってる私と、他人も知らない私と、他人も私も知らない私があって。そこいらを掘らなきゃいけないというのを凄く思うんですね。だから、その辺の作業をする事によって、新しい顔が生まれてくるんじゃないかと。
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- なるほど。
- よこえ
- 私、今年からブログをやり始めたんですよ。他人に対して説明したりするのが抜け落ちてたり、自分から色々発信できてないなと、で、やり始めたんですね。日本語日記。自分の中にある言葉とか、自分が好きな言葉とか書くだけですけど。ちゃんと認識して吟味してから、体に落とさんとなーと。役者は歴史が勝負なのかなと思ってましてね。
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- 歴史?
- よこえ
- その人の歴史ですね。重要じゃなかろうかと。
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- そうですね、その人の過去・来歴が人を形作っている訳で、それが舞台上で違う人間をやる訳ですから、これは凄い作業ですよね。
- よこえ
- 人の歴史の中には苦手な事とゆうのも含まれてると思うんやけど、私にもそれがもちろんあって。今まで、自分に出来ない事を簡単に制限し過ぎてたのではとゆうふうに最近の生活で気付いたんよ。私は自分の好きな世界観だけでやっていた節があったから。それだったら、分かりやすい人間像しか演じられへんくなるというか。当たり前のことなんかもしれないんですが・・・言葉、変じゃないです?
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- 分かります。輪郭のはっきりしている人間像も私は好きなんですけど、うーん。
- よこえ
- いや、私のゆっているのは、輪郭がはっきりしてないんですけど・・・型みたいなのを決めただけだと。カタチの型、ですね。そーいえば昨日、とある女性と喋ってて。
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- え?
- よこえ
- で、気持ち悪いと言われたんですよ。川本真琴の真似をしたら。やっぱり、よこえさんに似合わない事をしたから、気持ち悪かったわと。それは川本真琴の歴史抜きで形だけでしてたからなんですけど。役も一緒で、気持ち悪くならないようにやらなくちゃならないと。型でやってて、落ち着いてる。「軽く」ならないために、もっと自分の動きと本を模索していかなくてはと思うんですね。
てんこもり堂
ニットキャップシアター
1999年、劇作家・演出家・俳優のごまのはえを中心に旗揚げ。個性的な俳優陣と高い集団力をもってごまのはえの独特な世界観を表現する。
雨垂事典
関西人のネイティヴ言語である関西弁をベースに、笑いと、ほんわか人情話を提供する劇団。
スライム
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- 今後の予定としては。
- よこえ
- 9月に埼玉で野外の公演があって、11月に東山青少年活動センターで如月小春さんの「夜の学校」っていう。知ってる?
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- 聞いたことないなあ。
- よこえ
- 私も知らんかったんやけどね。それをやんねんか。ちょっと課題のある役になってしまって。結構苦手分野だから、いかに、ねえ。
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- 自分自身との戦いがね。
- よこえ
- いっつもそこでつまづくから。毎回そうやけど、チャンスを与えられてるなと。前までは苦悩しながら戦ってたんですが、最近は楽しく戦えるかなと。
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- で、冬に。
- よこえ
- 映画の撮影を、東京で。その監督さんは今いろんな映画祭とかで上映中みたいです。それには出ていないですが。舞台と映像って、めっちゃ切り離されてる感じがするけど、携わったら演じる上では一緒やなと思いました。
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- 大きい小さいの差はあるかもしれませんが、同じ人間を使った表現ですからね。
- よこえ
- うん。選択肢の幅を狭めたら勿体無いなておもう。何やろう、自分の中にある、にじみ出て来るものをもっと磨かなあかんのやろうなと。だから、そうそう・・・何者か分からないという事で、惹きつけるというのは必要なんかなって。分かる?
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- 正体不明の。
- よこえ
- そうそう。
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- そうですね、そういう人がロックな芝居をやると物凄い魅力がありますよね。
- よこえ
- 何か、私の中ではスライムと呼んでいて。ドラクエのじゃなくて。
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- うんうん。
- よこえ
- 子供の頃に遊んだアレね。何なんだろうっていう。中身が透けているのに。人とかって、細胞で出来ているじゃないですか。顕微鏡でみたら、そういうのが見えるという。人だけじゃなくて色々みえるけど、スライムだけはわからへん。と私思うねん。
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- 化合物だからね。
- よこえ
- 何か、そういう人になりたいなと。例えば、梅澤さんとか。
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- あ、そうなんですか?
- よこえ
- あははは、いや分からんけど。意外やった?
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- いやいや、意外ではないです。そうだよな、そういう芝居って全然観なくなったような。簡単に言ってしまえば、訳わかんないけど熱い芝居って言ってしまえるんじゃないかなと思うんですが、重要なのはそれが何とか舞台に乗っているって事ですよね。なんじゃないかなと。それが舞台にのって信じられない事に芝居をしているっていうか。いや、それを観てきてはいる筈なんだけど、言い表しにくいな。
- よこえ
- 最近、ないですか。
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- うん。
- よこえ
- 別にそれで激しくしなきゃってのじゃないんですが・・・でも、そうじゃないと、どんどんどんどん甘えていってしまうんじゃないかと。土地に。京都や、劇団に。
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- 土地に頼らない。
- よこえ
- いや、でもちゃんと乗っておかないと、浮遊しちゃうから。そういう流れみたいなのに流されているのは良くないのかなあと。いや、すごい頭でっかちなのかもしれないけど。
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- あー、土地に甘えてるかー。なるほどねー。梅澤さんか。
- よこえ
- いや、梅澤さんが大好きって訳じゃないよ(笑う)。美脚の稽古の時に、ごまさんが「もっと色々何かやれって」言わはって。思いつくかぎり色々やってんけど、全然で。やし、ごまさんが「足りひん」って怒り出してさ。今思うと自分自身、軽いとこばっかさぐってばっかやったなって。
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- なるほど。
- よこえ
- 梅澤さんは、稽古で脱いでたと。いや、別にそれも良くはないと思うねんか。だって最終的には脱げばいいという事になるから。何していいか分からないから脱いでしまったという・・・。
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- その、スライムがね。
- よこえ
- そうスライムが。ごまさんはそれがぶあって出たところが観たかったんじゃないかなと。ごまさんだけじゃなくて、お客さんが観たいのもそれなんじゃないかなと。いや、分からへんけど。
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- いや、それは間違ってないと思う。
目標
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- 今後は、ピンスライマーを目指して。
- よこえ
- そう、ピンスライマー(笑う)。それから、今までは完成されたものを目指してたけど、「完成した」って思いたくないと。ずっと探し続けていければと。
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- そういう形で、今後もお芝居を続けていかれるんですかね。
- よこえ
- いきたいな。どうなるんやろうね。無かったよね。どういうふうにしたいかとか、どれがとか、そういう目標が。何ていうのかな。でも一つ決まると、あれがしたいこれがしたいという欲求が増えてきて。でもそういう欲求がある限りはやっていきたい。
BEAMSのニーソックス
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- 今日はお話を聞かせていただいたお礼に、プレゼントがあります。
- よこえ
- あ。何か知ってるよ。何か貰えるって聞いたよ。
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- どうぞ。ちょっと袋がよれてますけど。
- よこえ
- うわー、ちょっと待って。誕生日みたいやな。え、BEAMS。厳重やな。
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- ええ。
- よこえ
- あ、何?靴下?えー、嬉しい。何だこれ。
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- まあ、タンスの中に入れておいて頂ければ。
- よこえ
- え、魔よけ?
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- ええ。
- よこえ
- ・・・。