歌う日々
- ___
- 今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、いのりさんはどんな感じでしょうか。
- いのり
- よろしくお願いします。最近は、忙しいです。ジブリのコンサート の全国ツアーに参加するんですが、7月には関西公演が始まります。それから、女優として出演する舞台が色々控えていて、今は休みがない状態です。
- ___
- 休みがない。凄いですね。ほぼ毎日、稽古か本番?
- いのり
- はい、あとは、講師のお仕事もさせて頂いています。充実してます。
- ___
- 毎日何かあるんですね。しんどくならないですか?
- いのり
- しんどくはならないですけど、徐々に体が辛くなってきました。そんな年でもないんですけど。
- ___
- お風呂に入るといいらしいですよ。
- いのり
- お風呂大好きです。効き目あります。お風呂に入って2、3時間は楽です。
- ___
- 平日にお風呂入るのは中々難しいですよね。
- いのり
- 私、銭湯が好きなんです。3時間ぐらいのんびりしています。
ドリームコンサート~ジブリの思い出がいっぱい!~
名門オーケストラで演奏する奏者等で特別に編成されたオーケストラとNHK「みんなのうた」で話題の女性ボーカリストで贈るスタジオジブリ作品の名曲がいっぱい夢のコンサート。 初めてジブリのキャラクターたちと出会った時のあの感動がよみがえる! 詳細 日時: 2016年7月23日(土) ?11:00 ?14:00 (開場は各30分前) 会場: 2Fホール 【出演】 指揮:高曲伸和 管弦楽:ジャパン・ドリーム・オーケストラ 歌:Sinon、野尻祈、木下葉菜美 ジャパン・ドリーム・オーケストラは本公演の為に特別に編成された選りすぐりの演奏者によるオーケストラです。 【予定曲目】 ♪天空の城ラピュタ「君をのせて」 ♪となりのトトロ「さんぽ」「となりのトトロ」 ♪魔女の宅急便「めぐる季節(海の見える街)」 ♪おもひでぽろぽろ「愛は花、君はその種子」 ♪耳をすませば「カントリー・ロード」 ♪もののけ姫「もののけ姫」 ♪千と千尋の神隠し「いつも何度でも」 ♪ハウルの動く城「人生のメリーゴーランド」 ♪ゲド戦記「テルーの唄」 ♪崖の上のポニョ「崖の上のポニョ」 ♪風立ちぬ「ひこうき雲」 ほか チケット発売日: 2016年5月8日(日) ※すばる友の会会員先行発売は5月7日(土) 発売初日は電話予約のみ(一般・会員共)、1通話4枚まで。 10:00〜受付開始 ※お電話でのご予約についてはコチラ 料金: おとな3,000円 こども2,000円(3歳〜小学生) (当日各500円増) ※2歳以下無料(大人1名につき1名まで膝上鑑賞可、但し座席が必要な場合は有料) 席種:全席指定
先生と出会って・・・
- ___
- いのりさんはいつから、歌と演技、つまり表現を始めたんでしょうか。
- いのり
- いつからなんだろう・・・幼稚園の頃から、人前で表現するのは好きでした。音楽活動にすごく力を入れている幼稚園で、年に一回、大阪国際ホールで上演される演奏会に立たせてもらったり。それから、八尾プリズムホールのコンサートにも出演していました。その頃から音楽は好きだったんだろうなあ。なぜか特別な楽器(ウインドチャイムやマリンバ)を1人で使わせてもらって、目立つポジションに立たせていただいてました。
- ___
- そんなに子供の頃からから歌っていたんですね。
- いのり
- 2歳半の時、ドリカムの未来予想図をフルコーラスで歌ってたらしく、ビデオも残ってます。でも、ちゃんと歌う勉強をしだしたのは中学一年生からでした。カラオケが上手くなりたいなあぐらいの思いで母に頼んだら、探してきてくれたのが、関西を代表するオペラ歌手の先生だったんです。
- ___
- そうなんですね。大きな出会いだったんですね。
- いのり
- はい。でも、最初は何が何だか分からないまま教室に行ってました。オペラも声楽も分からなかったので、自分がカラオケで歌うような曲もレッスンではやらないし。なんなんやろうと思いながらも、私けっこう性格上、やり通していく方なので。やっていく内に楽しさを覚えて、もっと勉強したい、音大に行こうと思うようになりました。高校一年生からピアノも歌も本格的に勉強して、音楽大学にいく準備をし始めて、入学しました。
- ___
- 大阪音楽大学ですよね。どのような事を学ばれましたか?
- いのり
- 歌唱の授業はもちろん、座学や演技やバレエの授業もありました。西洋の音楽史も勉強しました。作曲家の生きた時代背景なども音楽に関係してくるんです。私はオペラがしたかったので、みんなでオペラを作る授業を取ったりしていました。
残る歌[1]
- ___
- そういう風に表現を始めたんですね。
- いのり
- はい。それと、小学校の頃はバレエをしていました。
- ___
- あ、だから身体が柔軟なんですね。ところで、表現を始めた頃に出会った印象的な人や出来事を教えてください。
- いのり
- やっぱり、子供の頃からお世話になっている先生です。今でもお世話になっていて、私のもう一人のお母さんなんです。色んな事で助けて頂いて、いっぱい怒られて。
- ___
- 厳しくされたんですね。
- いのり
- はい。厳しかったですね。最初は。
- ___
- 子供相手に厳しい教育は意味がありますからね。対等に扱ってくれているって事ですからね。
- いのり
- ありますね。もちろん怖いなあってその時は思うんですけど、怒られたことってやっぱり脳のどこかで覚えていて、大人になった今でも、あ、こんな時にはこんな風に叱られたなぁ、とか思い出して踏み止まったり。
- ___
- それが経験となっているんですね。
- いのり
- 一番印象に残ったというか、今でも自分にとっては大きな出来事なんですが、私が習っていた当時は先生はまだ現役で、舞台で先生が歌っている姿にとにかく涙が止まらなくなって。初恋がテーマの歌で、恋愛経験の無い子ども時代では 内容としては響かないはずなんですけど、先生の表情や歌声、存在そのものに感じるものがあり、ただただ涙が流れていました。そこから、こんな風に表現が出来るようになりたいなあって思って。それが最初なのかなあ。
- ___
- とにかく憧れたんですね。
- いのり
- はい。存在に憧れました。
残る歌[2]
- ___
- ある歌を歌うまでの、具体的な流れを教えてください。歌を選んで、覚えて、歌って、の間に何があるのか、可能なら知りたいのですが・・・
- いのり
- はい。歌う曲が決まったら、まずはもちろん、譜面を入手します。色んな音源でその歌を聴きます。
- ___
- どのくらい聞きますか?
- いのり
- どのくらい・・・もう、その歌をやめるまで聞きます。
- ___
- 回数とか無いんですね。
- いのり
- はい。それから楽譜を見て、音を取るという作業をして、ピアノを弾きながら歌ったりします。例えばその曲が日本語じゃなかったら意味を調べて、日本語であってももう一度その歌詞を手で書き起こして。歌詞って、基本的にはひらがなで書いているんですけど、普通に漢字のある文章で書き直して、音読して、全体図として見るというか・・・この音とこの歌詞、とかじゃなくて、その歌まるまるを客観的に見れるようにそういう作業をします。で、歌って。その後なんですね、表現を付けたり自分の想いを入れたりするのは。
- ___
- 歌を全体で捉えるための作業。歌が生まれた背景も含めて、歌の要素全てを有機的に、要素同士の繋がりも捉える。本当に微細なレベルまで繰り返し繰り返し練習してテストして、その歌を身につけるんですね。
- いのり
- はい。
- ___
- あえて伺います。一番難しかった部分は?
- いのり
- オペラの中に、役の人がソロを歌う部分があるんですが、それをアリアと呼ぶんですが、大学時代でそれを学ぶんですね。アリアは難しい部分があって、ソロで20分ぐらい歌う事もあって。音が凄く複雑で、耳で聞いてすぐに歌えるというものではないんですね。何回も繰り返しピアノを叩いて体に叩き込むという作業をするんですが、それでもやっぱり、入ってこない音ってあって。コロラトゥーラという特殊な超絶技巧があるんです。短くて速いフレーズの中に音をコロコロと転がすんです。その音が細かくて体に入れるにはとても時間がかかります。訓練でどうにかなる部分もあるけど、生まれ持ったものもあるみたいで。私はすごく苦労しました。
- ___
- 非常にリアルなお話、ありがとうございます。私は自分で高めた技術にこそ価値を見出すので、もちろん生まれ持った才能も大事だとは思います、どちらが上という事はないですよ。非常に厳しくて細かい世界ですね。喉から血が出るぐらい練習されたんですね。
- いのり
- はい、そうですね。血は出たことないですけど・・・。
- ___
- きっと何回も何回も練習した歌だったら、聞けば一瞬でわかると思うんですよ。それぐらい、歌って重みが伝わる思うんです。人の肉声なんていう不確かなものを楽器にするんだから、それはもう一通りの訓練じゃ効かないでしょうね。
残る歌[3]
- ___
- そうした技術を、あえて前提にして伺います。歌の価値はいつ生まれて、誰によって決められると思われますか?私は、演劇だったら、時代によって生み出されて、その劇場の現場、舞台と観客席の間で認識されて決められると思っています。ざっくりとしすぎていますが。
- いのり
- 私も同じだと思いますけどね、歌っていうか、何に関しても。ただ、歌は、お客さんに提供する前に決まっている部分もありますね。なんだろう、やっぱり、歌を歌うのは私たち歌手で、自分で作った歌ならその人が歌ってこそだと思うんです。でも、すでに作曲されたものだったら、その曲は作曲家さんの思いや願いが込められているからもうそこで価値はあるものだと思います。だからこそ大切に歌いたいです。
- ___
- では、いのりさんは、歌を聞きにきてくれた人にどう思ってもらいたいですか?
- いのり
- 私、ずっと思っている事はあって。でもあんまりそういう事は言いたくはない事なんですけど、私がなぜ表現をしているのかというところに行っちゃうんですけど・・・誰かの人生の中で何かが変わるきっかけになるような歌を歌いたいと思っていて。実際に私が苦しみ続けていた時に触れた作品や聴いた歌に、すごく救われたから、なんですよね。歌や演劇に限らず、みんな少なくともそういう経験はあるんじゃないかと思います。何気ない一言に生きる力をもらえたとか。何か変わりたい、救われたい、そう思って劇場に足を運ぶ人もいると思います。もちろんそれだけではないですけど。
- ___
- なるほど。
- いのり
- 数時間後に自ら命を絶とうとしている人がいたとして、でも私がその人に、芝居や歌を届ける事が出来たら、その人を止める事が出来るかもしれない。そういう人間になりたい。そのために舞台に立って、という事をずっと思い続けていて・・・でもこういう想いって簡単に言葉に出来ないんですよ。
- ___
- 支えになりたい。表現は人を救うためだけにある、んだろうか。心を押す歌が歌えればいいですね。
- いのり
- 心に寄り添う、というイメージです。寄り添える人でありたい。何かしら、その人の心に残りたいです。その人を支えるような歌を残せたら。
- ___
- 人間の心の中には親なり先生なり、そういう人が常にイメージとしてある。本当に寂しい人はそういう人がいないのかもしれない。
運命の歌に出会うとき
- ___
- 選曲はどうやって行うのでしょう。
- いのり
- 単純に、歌に出会って自分も歌いたいと思ったり、ですね。
- ___
- どんな歌が好みですか?
- いのり
- 私はクラシカルクロスオーバーというジャンルをしています。クラシックとポップスをミックスしたジャンルで、平原綾香さんや本田美奈子さんが有名ですね。クラシックから入る人もいれば、ポップスから入る人もいて、今すごく人気です。敷居が高いって言われるクラシックをより身近で聴きやすく感じてもらえるように、とできたジャンルかと。私も大好きで歌ってるんですが、意外に普段聞くのはパンクやロックです。
- ___
- そうなんですね。私、パンクは全く分からなくて・・・。
- いのり
- 激しいのが好きです(笑う)。
ユリイカ百貨店「MOON」に出演して
- ___
- ユリイカ百貨店「MOON」。非常に面白かったです。ミイ役でしたね。ヘンなポーズや演技が見どころでした。カエルの話の時のキメポーズだとか、オムレツを落とす魔法とか。
- いのり
- (笑う)あれは全部私が勝手にやった事です。ユリイカ百貨店のみなさんはそれを止めずにやらせてくださって、私のワガママやなあ、と。
- ___
- あれはアイデアが良かったですね。もちろん、ミイの恋する演技とかがちゃんと表現されていてこそでしたね。MOONで得られた事はなんですか?
- いのり
- 得られた事しか無かったです。迎え入れてもらって、凄く嬉しかったです。初めての主役でしたし、私でいいのかな、って思ったりしました。ユリイカ百貨店の作り出す世界が本当に好きで、そこに関わる人たちがみんな好きです。出会えた事が一番良かったです。でも、ミイの役は、演じるというより、あんまり無理をしていない私、という感じでした。もし再演出来るなら、もうちょっとミイを爆発させたいです。
ユリイカ百貨店
ユリイカ百貨店とは 2001年第一回公演を行う。 以降すべての企画・演出を中杉美知子/たみお/が行うプロデュースの形をとっている。 遊び言葉を織り交ぜたセリフ回し、ファンタジーに説得力を与えるレトロで美しい舞台美術、せつなくも希望を感じさせる物語が好評を得る。2004年舞台芸術賞オーディエンス賞受賞。2014年若手演出家コンクール一次通過。 近年は、宝石箱のような作品づくりを目指し、"ユリイカ百貨店"を出た後は、見上げる星空をいつも以上に美しく感じてほしい。そう願って活動を続けている。(公式サイトより)
ユリイカ百貨店10thStage [MOON]
STORY 魔女三姉妹の末っ子ミイ。 ある朝、郵便受けにひらりと舞い 込んだ一枚の絵はがきを見て、 そこに写った青年に恋をしてしまいます。 ところが、姉たちは猛反対。 「恋をしたが最後、魔法は使え なくなってしまう!」 絵はがきに書かれた名前をたよりに、魔女たちは〈アストロ写真館〉 へと向かいます。 この恋をあきらめるために。 半世紀ぶりに開催される万国博覧会。 その前夜に巻き起こる 、これは心と心のふれあう瞬間を描く物語です。 公演日/2016年3月11日(金)~3月13日(日) CAST 大木湖南、尾上一樹、友井田亮、中村こず恵、野尻祈、森本久美 脚本 坂本見花(浮遊許可証) 演出 たみお
荒れ狂う演技がしてみたい
- ___
- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
- いのり
- 荒れ狂う演技がしてみたいです。狂乱するというか。私の中にあんまり無い部分なんですよ。それを芝居でしてみたいです。
- ___
- 自分にないからこそそう思う?
- いのり
- そうですね、怒りの感情があまりなくて。それでバランスよく多分生きれているので問題はないんですが、一度怒りくるうという芝居をしたときに自分を越えた気がして楽しかったんです。
- ___
- 感情を開放するのは気持ちがいいものですからね。怒っちゃダメなんて法律は無いですから。でも、上手く怒らないと犯罪になるから気を付けないと。レディにとんでもない事を言っていますが。
- いのり
- ふふ。
質問 倉橋 愛実さんから いのりさんへ
歌える役者
- ___
- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- いのり
- 歌える役者で攻めます。
- ___
- いのりさんの歌、好きです。もっと聞いていきたいです。
- いのり
- ありがとうございます。
indexの黄色いスカーフ
- ___
- 今日はですね、お話しを伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
- いのり
- ええ〜!嬉しい嬉しい。
- ___
- いやもう今回はですね、心がこもっている事ぐらいしか価値がないです。心ばかりの、ですね。心ばかりの過ぎて本当大したものじゃなくて恥ずかしいです。ここへきてもういっそ止めようかと思っています。
- いのり
- えー!やです(笑う)。
- ___
- どうぞ。
- いのり
- 見ていいですか?
- ___
- どうぞ。
- いのり
- (開ける)これ、何ですか?
- ___
- スカーフです。
- いのり
- 私、スカーフなんて持ってないです。初です。スカーフってどう使うんですか?
- ___
- 髪に付けるといいんじゃないですか。
- いのり
- この間まで髪が長くて。まとめたかったんです。可愛い〜。ありがとうございます。こういう感じですよね。