劇団ZTON「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。劇団ZTONのレストランまさひろさんにお話を伺います。さて、劇団ZTON「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」、非常に面白かったです。お疲れ様でした。三国志を下敷きにしたエンターテイメント演劇というと手垢が付いたジャンルのように思われるかもしれませんが、これは本当に現代に演じられるべき作品だったと思います。龍という神的な力によって動かされていた大陸が、本来の人間の力によって糾える歴史に戻っていく。人間の歴史の泥臭さや血みどろの戦いの凄さ。そして、人間一人が生きる事自体の政治性。三国志を題材に、生きる事と政治、その狂おしいまでのドラマを描き出した傑作だったと思います。
- レス
- ありがとうございます。そう仰っていただいて、稽古した甲斐があります。
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- そして、HEP HALLという狭い空間であれだけ早くて正確でカッコイイ殺陣が見れるとは。レストランさん的にはどんな公演でしたか。
- レス
- 僕の役は夏侯惇という、まっすぐな男として描かれた曹操の部下でした。為房君の劉備とか、すてらさんの孫尚香とか、泥臭い人物たちに振り回される役割だったんですね。曹操達はあまり苦労をせずに生きてきて、色々な事に巻き込まれながら少しずつ乱世に身を投じていく側だったのですが。泥臭さって、例えば、嘘を付いたりどんな手段を用いても生きていく悪党って事でもあるわけです。今回はそういう彼らが主人公でした。
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- 言わば、ピカレスクロマンでしたね。
- レス
- やっぱり、そういった悪党と対峙する側の人間なので、感想とかで孫尚香とかがカッコイイとかを感想で書かれると、うーんと思っちゃったり(笑)。
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- ダークヒーローをカッコイイ、という感想が、もしかしてちょっと違う?
- レス
- 僕ら曹操チームは必死に生きている彼らを、真っ向から否定するポジションなんですね。劉備や孫尚香が生きていく為に踏みにじった人たちもいる訳で、やり方は歪んでいきますが曹操軍はそういう、見えない人たちの人生を守ろうとしたりしているわけです。それを踏まえた上で、強大な敵である曹操軍の存在を見てもらいたかったですね。僕ら曹操チームは、奸雄達を真っ向から否定するポジションなんです。主人公たちがカッコいいと思うお客さんに疑問を投げかける敵でありたい。誰に視点を置くかで、感じ方も変わっていったりするのが面白いなあと思います。
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- そこまでの複雑さを勝ち得ている時点で成功だと思います。二時間弱の大作でしたが、整理して拝見していました。
- レス
- もうちょっと短くできたら理想的だったかも。
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- いえ、もっと長くても良かったと思います。
- レス
- 僕は結構、作っている時に、スターウォーズみたいだなあと思っていました。色んな事をめちゃくちゃ盛り込んでましたので長いよ!って思ってました。でも、大河ドラマみたいな所を狙いました。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)
劇団ZTONエンタメストライク005『覇道ナクシテ、泰平ヲミル』【偽蝕劉曹編】・【真王孫権編】
公演時期:2015/12/10~13。会場:HEP HALL。
ZTONの殺陣の特別さ
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- さて、そろそろZTONの殺陣について話せたらなと思っています。私は劇団ZTONの殺陣を評する時、「関西最速・最正確」とか「5センチ間違えたらそのまま死ぬ」みたいな過剰な言葉を使っていますが・・・
- レス
- (笑う)ああ。
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- ただまあそれは多分本当なんですけど、ZTONの殺陣に対するスタンスをここでちょっと伺いたいなあと思っていて。仮説があるんですが、もしかしたらZTONは、殺陣をもったいぶってやっていないんじゃないか、と思っていて。勿体ぶった殺陣ってどういう事かというと、何だか形式化したもののような気がする。すると、どこか固くなるような気がする。ZTONは、パフォーマンスとしての殺陣を進化させ続ける為に、あえて斬り合いの美学を見出そうとしていないんじゃないか、と思っています。高度な意味で、殺陣を見せる事を楽しんでいるんじゃないか。
- レス
- それは、僕の考えと少し違うかもしれません。殺陣って殺し合いなので、どちらが死ぬか生きるか、なんだと思うんですよね。そう思ってやると当たり前ですけど重くなりますし。神聖なものになっていくじゃないですか。対して、ZTONの殺陣は仰る通りパフォーマンスの一つなんじゃないか、と思うんですよね。楽しんでもらうためのツールだと考えているんじゃないかと思うんです。他のところで殺陣をやっている人から見たら、刀はあんなやりかたじゃ切れないよ、今のどういう攻撃だよ、とか言われるものをやってると思うんです。それは逆に言うと、殺陣をやっている人ほど「こんな手はないよ」みたいなこだわりに陥ってしまうのかもな、と。
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- まず、リアルじゃない。
- レス
- 殺陣が上手いという訳じゃないんじゃないかな、ZTONって。
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- それは・・・爆弾発言ですね。
- レス
- ZTONは写実的にではなく、ショーとしてやっているので、固定観念のない人ほどZTONの殺陣はやっていけるんじゃないかなって思います。でも、どちらかというと僕は固定観念に囚われている方なんです。
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- あ、そうなんですね。
- レス
- 今は為房君がメインで殺陣を付けていますけど、僕はある意味、そこに真っ向から立ち向かっている側の人間なんです。縛りになるかもしれないけど僕はショーではなくある程度リアルな殺陣がしたい。だから為房君のつくる殺陣を実際の刀でやるとしたらこうやるわ!とか自分なりにアレンジします。僕みたいなのばっかりだと多分、為房君は困ると思うんですけど。でも一人くらいこういう人がいないと、それはそれで一つの形骸化を招くと思っていて。格好良さを目指しているだけのものになってしまうというか。面白くないものになっていったらいやだな、と。常に疑問は投げかけていきたいなと思っています。僕は僕で、元々武道をしていた人間なので。
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- そうそう!レストランさんは武道をやっている人だって、森さんから伺っています。
- レス
- ありがとうございます。でも僕はクセの塊なので。僕からしたら、森くんとか為房君の動きは羨ましい。絶対僕には出来ない動きなんです。これまで、自分のところの殺陣は自分で立てるというスタンスだったんですけど、最近は逆に作ってもらってます。二人の殺陣を盗んだりしようと画策していますね。
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- なるほど。パターンを増やすという事ですね。
構えの話
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- さっきインタビューさせていただいた浅井浩介さんと、構えの話をしていたんです。武道じゃないですけど。その話をしている時に気付いたんですが・・・俳優の仕事を捉えた時、俳優にはINを待ち受けるという仕事があるんじゃないか。観客席はOUTから中間処理を想像するという職掌があるが、俳優のINには責任を持っていない。そして俳優は責任を持ってINに望まなければならない。(逆に、OUTからリバースしての中間以前の洞察には当然、責任を持たない)
- レス
- はい。
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- 待ち受ける。俳優はそのINをなるべく多く想定しておくべきじゃないか、と言っていたんです、浅井さんは。そこで、殺陣におけるINとは?まず、稽古の段階で相手の剣が振り下ろされる演技、それをどう認識すべきだと思われますか?
- レス
- 僕は相手の剣をほとんど見てないんですよね。
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- あ、見てないんですか!
- レス
- というか、いつもと違う手で来られた時も「どうしよう」と思ったことはほとんどなくて。何でなんでしょうね?武道やっている人って、相手の目を見ているんですよ。目を見ていたら、どんな手してくるか大体分かるんです。武道の人は、目の動きを察知されない事を戦うための技術を確立していると思うんです。逆に、殺陣の人って、どんな手で行くかというのをある意味表現しないと行けない。だから、目がもう、自分がどんな風に行くかを発信してくれているんです。あ、振ってくるな、というのを見て。だから下手すると僕は殺陣の手は曖昧になっちゃって(笑う)危険なので覚えるようにはしているんですけど。それこそ為房君は凄いなあと思っています。毎回、同じ動きの殺陣が出来るんですよ。僕は毎回変わっちゃう。
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- 逆に凄いですよ。そうか、目を見る、というのは聞いた事があります。
- レス
- 殺陣をどう作るのか、色々なやり方はあると思うんです。全てを細かく資料にまとめるようなやり方ももちろんあると思うんで。でも、相手の動きを感じてやるとか、あきらかに本気で殺しに来ている人の気配で来られると自然と出来上がっていきますね。だから僕の手法に近しい人とやっていると楽しいですよね。相手は明らかに僕の目しか見てない。お互いがお互いの動きを感じながらやる殺陣。
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- 人間の目に宿っている膨大な情報。というか、人間の目が相手の目を見る時の知覚性能はヤバいくらい発達していて、直接に会う場合の様々な距離感の交渉なんてもう、目同士が決めている事なんじゃないか・・・とさえ思う。これはパソコン様でも未来永劫獲得出来ない能力だろう。そして、劇場で観客が俳優のどこを見ているか、というともちろん顔なんですけど、顔のどこを見ているかというとやっぱり目なんですよね。
- レス
- ああー。
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- つまり観客は俳優の状態を非常に正確に見抜く事が出来る。いま俳優が何を感じているかを、観客の目は察知している可能性すらある。殺陣で言えば、目から相手の手が見えるのは、相手の認識や知覚が伝わるので、手順などは問題ではなくなるのではないかと思う。人間は視認システムに操られている。もしそこに設計ミスがあるとしたら、それは考えるだに恐ろしくはありませんか。
なんでこいつら、戦っているんだろう?
- レス
- 言葉で言ったら全部ウソになりそうな気がするんですけど、殺陣は所詮ツールだと僕は思っていて。殺陣師の為ちゃんもそう思っているかはアレですけど、お客さんが何を見に来ているかというと「何で戦っているのか」という事だと思うんですよ。舞台には物語を見に来ている訳じゃないですか。なんにも思い入れのない人がいきなり殺陣始めたところで、何も面白く無いと思うんですよ。不条理で面白いのかもしれませんけど。人物たちの戦う理由が、お客さんに合点がいった状態で、剣を交わしている。お互いのどうしても譲れないものが激突している時を僕らが感じて、それでお客さんも感じられたらいんじゃないかと思うんです。何故戦っているのかを示されない限り、剣を持って戦う人ではなく棒を振り回しているだけだと思うんです。木でできた棒を人の命を奪うものとして見せなくては意味がないと思うんです。
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- 何故戦っているかを、伝える。仰る通りですね。申し訳ありません。ZTONの殺陣が美しすぎて視界が狭くなっていました。彼らの殺陣がカッコイイのは、登場人物達が生き様を掛けて戦っているからなんです。生命を掛けているからだ。速さとか正確さだけじゃないのか。
- レス
- 速さとか見栄えはお客さんの気持ちを盛り上げていくものなので、ZTONには必要なものだとは思います。それプラス、役の人生だとか、そういうものが必要だと思っています。
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- ZTONの良さは、そういう意識にある?
- レス
- そうだと思います。やっぱりスピードが早くても、人格が乗ってなければあんまり格好良くないなと思ってしまう。そういうのを見ると逆に白ける人もいるのかなと思います。僕は白けます。戦わせたいだけで殺陣が出てくるってのは、それはちょっと残念だなと思ってしまいます。
質問 浅井 浩介さんから レストランまさひろさんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、浅井浩介さんから質問を頂いて来ております。彼はわっしょいハウスという、京都から東京に移った演劇ユニットの俳優であり、今は烏丸ストロークロックの次回公演の稽古のため京都に滞在しています。「歳を重ねるという事に対して、どういう気持ちがありますか?」
- レス
- 僕はそういうの、あんまり難しく考えた事がないですけど、歳取るとそうですね、身体の話ですけど、やっぱりこう衰えとかを感じることもあるんです。昔はもっと早かったのになあ、とか悩んだりして。ジャッキー・チェンもそうなんですけど、昔は凄く早かったんですよね。
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- なるほど。
- レス
- でも、他のもので見せていく事が出来ていくんじゃないかなと思います。老獪さだとか。それはそれで喜ばしい事で、それは若い人には絶対出来ない事ですよね。ZTONの役者としてこれまで勢いだけでやってきました。昔は感情が100%出ていればいい芝居だなあと思っていたのが、今は自分の後ろに自分がいて「そのセリフの吐き方で気持ちは伝わるのか?」みたいに言ってくるんですね。そうなるまでの28・9歳の時は役者として衰えていくのが怖くて仕方なかったんですが、自分を後ろから見るってことを始めた時から、違うアプローチから頑張れるやり方があるのかなと思うようになったりしました。それは昔の自分からは絶対に出てこない考えです。歳を重ねると体も気持ちもイヤでも変化していくので、そんな自分に追い立てられながら自分と折り合いをつけて昇華する。いつまでも変われる事はすごい楽しい事だなと思います。
僕は僕になりたい
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- 劇団ZTONという存在の特殊性について。京都唯一のエンターテイメント集団として、やっぱり個人的に気にし続けている部分があって。エンターテイメントと一口に行っても色んなタイプがあると思うんですが、ZTONの場合は人を熱中させるタイプだよなあ、と。殺陣も単純にスリリングで、そういう存在は京都ではZTONだけになってしまった。が、そのレベルはどこと比べても遜色はない。
- レス
- 劇団ショウダウンさんが旗揚げされた頃に僕は学生していて、あんな事が出来たらいいなあと思っていたんです。新感線を見て河瀬君とすごいなあって言ってたり。でも彼らが目標ではありませんでした。僕らは良くも悪くも自分なりのすごく偏った価値観を持っていたんだと思います。要するに変態なんですよ多分。結局万人に受けるものを作ろうとしても自分が譲れない部分があるんですよ。性なんですね。「新感線になりたいんやろ?」と言われても全然ピンとこなかったり。一時期、僕らはエンターテイメントを目指している訳じゃないと言ってたんです。
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- ああ、言ってましたね。
- レス
- 明らかにエンターテイメントやけど?と思ってましたが(笑う)そこから、ちゃんと河瀬君がエンターテイメントをすると決めてからはやりやすくなりました。でも、いざ脚本書くと河瀬君なりに込めたいものがあって、彼が演出と脚本をやっている以上、絶対に自分なりの価値観やロマンを盛り込んでくるんです。そのロマン偏狭だから!おとなしく万人が喜ぶもの書いておけば良いのに!って思う事もあります(笑)彼は自分にしかかけない脚本を書くのが性なんでしょうね。それが歯がゆかったりしますが、その偏狭さが時々誰にもまねできない感動を作品に生み出したりもします。それがZTONの脚本の魅力かなと思います。なら、僕らもそこをきちんと支えていかないといけないのかな、と。
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- そうですね。
- レス
- 僕もチープな作品に出されたらイヤだな、と思っています。人の感情が動くような作品を目指して、ま、勝手にシーンを増やして見たりだとか(笑う)。色々しながら戦ってます、お互いに。そういう事をしていくから良いんじゃないかなと思っています。どこの劇団もそうだと思いますが。
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- まさに、人の感情が動く。たとえば「天狼ノ星」もいいシーンがたくさんありましたよね。レストランさんが演じられたセタが、地の章で最後にハクトを応援するシーンがあったじゃないですか。あれは本当に良いシーンだった。セタは天の章の最後で変な国作っちゃったりするけれど、やっぱり人間としての多面性というか、存在としての重さというか、これも大河ドラマとして本当に十二分な作品だったと思う。
- レス
- 嬉しいですね。そうなんです、前編にあたる天の章ではシュマリの死により憎悪や悲しみに憑りつかれ、マシラという国を作ってハクトを幽閉してしまうんですけど、別の時間軸である地の章ではシュマリのたった一言で自分の本当の気持ちに気づき、ハクトを心の底から応援するっていう所が、セタにとって一番大切なんじゃないかと思ったんです。実は最初は「コイツ何で応援してんねん」と思っていたんです。天の章の最後に自分の国を作るセンセーショナルを起こすのがセタとしてのゴールだと思ってたんです。でも地の章で、特に目立った活躍はしないけれども、シュマリの一言でハクトを心から応援できるようになるのが最後のゴールなんだ、と。天の章ではハクトを幸せから絶望の底に突き落とすほど憎んでいたけど、それはすべて一番大切にしたい親友への愛情の裏返しだったって思ってから演技が変わりましたね。
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- ありがとうございます。素晴らしい役作りをされましたね。そして、変な国とか言って本当に申し訳ありません。
- レス
- いえいえ、変な国ですよアレは(笑う)最初に脚本を読んだ時、ビックリしました。一番王にふさわしくないこいつが天の章のジョーカーなのかよ!って。
レストランさんの稽古
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- 稽古は楽しいですか?
- レス
- 僕は結構しんどいですね(笑う)。元々一人で色々するのが好きですし、一人で全部上手い事が回るんやったらそうしたい人間なんです。顔を突き合わせて打ち合わせするの、しんどいな、って。でも相手と色々な事を話して、メンバーの中で意見が完全に合致して「それ!」ってなった時は人生で一番うれしいです。その瞬間の為に我慢しています。一番面白い稽古は妥協しない稽古なんですよね。
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- 妥協しない稽古。
- レス
- 『まあいいかっ』って妥協した稽古はおもんないなあと思うんですよね。でもやっぱり、面と向かって人に「お前は間違っている」とは言えないじゃないですか。でも何週間・一ヶ月とかが経つと、今言わなければならないという瞬間が絶対にあるので、その時にものすごい喧嘩になる事もあって。でも、そこで普段反論してこない人が反論してくれた時に、あ、いい稽古だなあと。それを言ってくれた時に、この稽古は成功やと思います。
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- そういう意味でのコミュニケーションが出来た時、座組はまさに集団そのものとなるのでしょうね。
端っこの役
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- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
- レス
- 何か僕、端っこの役が多いんですよ。言い方が悪いんですけど。主人公みたいな役割じゃなくて、サイドを固める役。だから、こう動けばカッコイイんだけど、主役を立たせなくちゃいけないと思うと。毎回、自分をどう持っていくかを考えた時、悩みますね。レストランまさひろが良かったと言ってもらいたい気持ちももちろんありますので、脇を固める役だったとしても、そう言われるにはどうしたらいいのかなと。立っているだけでも存在感がある役者だったらいいなあと思いますね。
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- そうですね。
- レス
- 三國連太郎と、誰だったか女優が会話するシーンで、まるで楽屋裏の廊下で挨拶を交わすような、そのくらい自然な芝居をしていたらしいんですよね。それが一番すごかったって言っていて。そういうなんでもない事をしているのにアッと息をのむような演技の出来る役者だったら素敵だなあと思うんですよね。そういう芝居がしたいです。
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- 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」では夏侯惇を演じられましたが、真王孫権編では覇道を歩み始めた曹操をカバーする役回りでした。
- レス
- 前編の偽蝕劉曹編では優しすぎる曹操を笑ってましたが、孫権編になって非情になっていく曹操の傍で、彼が偽蝕劉曹編で置いてきてしまった優しさが実はとても好きだったと思いたかったんです。過去の曹操が今の曹操を見たらすごい悲しいじゃないかと思ったので、過去の曹操の優しさを夏候惇で体現しようとしていました。まあ、敵対する武将には曹操を守るため殺気ばかり出していたので、そんなに単純にはできませんでしたが。
アマチュアの役者
- レス
- 僕は、プロの役者じゃないなあと思っていて。「プロ」意識を持つ役者はいますけど、僕自身は絶対にアマチュアだと思うようになったんです。最初は僕もプロたろうと思っていたんです。
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- ええ。
- レス
- でもいつしか、「プロって何だろう?」って思うようになって。そんなに上手くもないし、凄い役者さんのように上手く出来ない。だったら、アマチュアとして自分の納得のいく演技を追い求め続けようと思うようになりました。ギャラ分働くって事ができないので「自分はアマチュアです!」と言って掛け値なしに全力でやりたい。「あいつプロなのに何も出来ないな」と言われるより「あいつアマチュアだからなあ」と言われる方が僕は悔しいんですね。雑草がどれだけ戦えるのかを見せたいという意識があります。アマチュアだからこそ、「アマチュアだから…」て言い訳をしたらカッコ悪い。全力でいきたい。プロって言いたければ俺を越えていけ!って思いながら、どこまでいつまでもアマチュア意識を持とうと思っています。
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- ありがとうございます。素晴らしい。
- レス
- でも、ずっと自分は自分の演技には満足はしいひんのやろうなあと思いますね。満足!と思う日が来たら、芝居やめるんちゃうかな、と。
意識を変える
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- レス
- どんな風に芝居をしていくか、で言うと・・・少なくとも、もっと滑舌を良くしたいなとか、そういう初歩的な事に立ち返ろうかなと思っていて。というのも、人にものを伝える為にはどうしたらいいんだろうという、根本的なところを省みないといけないんじゃないかなと。勢いだけとかではなく。凄かったと言われるのを目指して、では何も変わらないなあと。凄いとかだけじゃなく、細かくて緻密なものを伝えられた方が楽しんでもらえるんじゃないかな、表現の幅が広がるんじゃないかと思っています。
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- なるほど。
- レス
- だから自分の場合はまず滑舌なんですけど、そこを許してしまわれていたZTONもまた問題だったのかなと思っていて。まずは自分の中で意識を変えていこうと思っています。そうすればZTONも変わるかなと。あと、客演を増やしたいと思っています。ずっと同じ劇団の中でやっていると、そこでの王様やらお山の大将みたいになってしまう。呼んでもらえる訳ではないので、外に出ていけるように自分から発信したいです。あとは、元々僕は格闘技をしていたので、一から学び直していきたいなと思っています。
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- 格闘技とは?
- レス
- 祖父から剣術を習っていました。剣道とはかなり違う、確実に相手の命削っていく剣術で。もう亡くなったので習えないので、他のところで剣術なり剣道を習ってみたいなあと思っています。
サブレとミニボウル
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
- レス
- あ、ありがとうございます。
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- どうぞ。実際、大したものではないんですが。
- レス
- (開ける)鳩サブレみたいなものですか?僕、鳩サブレ大好きなんですよ。と、これは・・・
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- お菓子のボウルですね。
- レス
- 僕、家でかりんとうとか食べるのが好きなので。ピッタリですね。
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- 今回、衣裳が青だったじゃないですか。それをイメージしました。