KYOTO EXPERIMENT 2014 フリンジ企画 オープンエントリー作品 第19次笑の内閣 福島第一原発舞台化計画−黎明編−『超天晴!福島旅行』
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- 本日は笑の内閣上皇、高間響さんにお話を伺います。どうぞ、よろしくお願いします。最近、上皇はどんな感じでしょうか。
- 高間
- 最近は快調に演劇活動を続けています。先日は京都舞台芸術協会の理事様にもなりましてね。あとは結婚ですかね。この間、ハワイいきましたね。
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- ありがとうございます。8年ぐらい前に取材した時と比べたら隔世の感がありますね。
- 高間
- あの時はですね、テキトーに答えすぎたなと。その時はプロレスしてたんですが、その頃とは全然違う事をやってますよね。
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- いやあ、言論に場を移してプロレスをしているじゃないですか。
- 高間
- まあ、時事ネタの方が伸びてますね。意外と。僕、このまま文化人になろうと思っているんですよ。
笑の内閣
笑の内閣の特徴としてプロレス芝居というものをしています。プロレス芝居とは、その名の通り、芝居中にプロレスを挟んだ芝居です。「芝居っぽいプロレス」をするプロレス団体はあっても、プロレスをする劇団は無い点に着目し、ぜひ京都演劇界内でのプロレス芝居というジャンルを確立したパイオニアになりたいと、06年8月に西部講堂で行われた第4次笑の内閣「白いマットのジャングルに、今日も嵐が吹き荒れる(仮)」を上演しました。会場に実際にリングを組んで、大阪学院大学プロレス研究会さんに指導をしていただいたプロレスを披露し、観客からレスラーに声援拍手が沸き起こり大反響を呼びました。(公式サイトより)
KYOTO EXPERIMENT 2014 フリンジ企画 オープンエントリー作品 第19次笑の内閣 福島第一原発舞台化計画−黎明編−『超天晴!福島旅行』
公演時期:2014/10/16〜21(京都)、2014/12/4〜7(東京)。会場:アトリエ劇研(京都)、こまばアゴラ劇場(東京)。
「ダークツーリズム」
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- さて、笑の内閣の次回公演は、「福島第一原発舞台化計画−黎明編−『超天晴!福島旅行』」ですね。どんな作品になりそうでしょうか。
- 高間
- 今まで内閣は「危ない事ばかりしている」と言われてきましたが全然危なくないんですよ。こんな安全な、例えばアニメマンガ規制とか、風営法とか、民族差別は良くないですとか。でもそんなの全然危なくない。少なくとも、演劇を見る人間から嫌われる意見ではないので。でも今回の「福島に観光に行きましょう」というのは不謹慎だ。という声はあります。
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- ですね。
- 高間
- だから今までのお客さんを手放すかもしれないんです。そういう意味では危険ですね。
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- 確かに。
- 高間
- 今まで、風営法とかネトウヨ問題は、「よくぞ芝居にしてくれた」と言ってくれた人が多かったんですよ。支持者がいたし、僕も彼らの力になりたいという気持ちはありました。売名したい気持ちももちろんありましたし、何より笑えるネタだったからです。でも、今回の作品の為に福島に取材に行った時はね、そういう風に、笑いという手段での表現が理解されなかったんですよ。当たり前ですけど、これまでもバカにしたりとか揶揄したりとかはしなかったです。でも、とにかく通用しなかったというのは、それは本当に悔しかったですね。
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- 今回ばかりはそうですね。では、笑の内閣が今回、福島を取り上げる意義ってどこにあるんでしょうか。
- 高間
- 福島の観光について、僕らが何かの糸口を掴めたらなと思っているんです。今回の作品は、東浩紀さんが提唱されている「福島第一原発観光地化計画」にインスパイアを受けたんです。凄く、僕の考えを肯定してくれたなと。震災後、実はこれまで興味本位で福島に行ってたんですけど、それで良いんや、と。僕個人としては福島は楽しい所なんですよ、あそこは観光地になっていい。それをダークツーリズムという言い方で広めてしまえば良いと。
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- 「ダークツーリズム」ってつまり、怖いもの満たさという事?
- 高間
- 要するに、死や悲しみのある場所に行く観光を肯定するという事ですね。災害遺跡、戦争遺跡に行く。言うたら原爆ドームもひめゆりの塔もそういう事になるのかなと。
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- そうですね、そういえばそうか。
- 高間
- 要は、地元の人と軋轢を起こさないかどうかという事もあります。でも西成ツアーも行ってうまくいってますしね、大丈夫でしょう。そして、この芝居は「原発の是非を云々という芝居」じゃないです。それはもう、色んな諸先輩が既にやってくれているので、もう必要ないだろう。
いわきに着いて
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- 上皇は、この作品にをご覧になったお客さんにどう思ってもらいたいですか?
- 高間
- 笑ってもらいたいというのはもちろんですけど、福島に観光に行ってもらいたいですね。僕の原発についての考えなんかよりも。まあ大きいのは、今回参加の10数人、僕が企画しなければ、まず福島には行ってなかったでしょうから。実際に見てきたという体験は大きいんです。
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- そうですね。
- 高間
- あの丸山交通公園が、現地で面白い事を言わなくなって泣いてたんですよ。「高間さんここ無理っすわ」って。いわきに着くまではバスの中ではしゃぎまくってたんですけど、富岡に入ると押し黙ってしまってうるってなってましたね。
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- あらすじによると、今回の作品の舞台は滋賀県の高校の修学旅行の行き先を決める政治劇だそうですね。遠く離れた滋賀県から、どんな人達がどんな思いで福島を見るのでしょうか。芝居の結末も気になりますが、そうした意識の問題についても興味が出てきますよね。
笑の内閣VSネトウヨ
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- さて、「ツレがウヨになりまして。」 の韓国公演を画策されているそうですね。大変興味があります。やったら絶対面白いと思うんですよ。
- 高間
- いやー、実現出来たらハクが付くと思いますわ。劇団としてというのもありますけど、ネトウヨというのが日本でも笑われているよという事を示せるんですわ。だって、向こうでだってネトウヨなんて一部のバカで、大半の冷静な人たちは日本に対しては是々非々でやってるんですよ日本人と同じように。そういう話をですね、日本と韓国で真面目にやっている人たちは沢山いるんですけど、僕らのようにギャグでそれを示せる存在があってもいいと思うんですね。
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- それが実現すれば、日韓関係については大いに革新的な事件になると思うんですよ。ネット右翼・・・個人的な認識ですが、正直、日本のネトウヨは全然気合が入っていない腑抜けだと思っている。あれは日本という勝ち馬に乗りたいだけの野次馬に過ぎないと思う。昆虫だと言い切ってもいいかもしれない。そういう彼らを笑ってあげる事は、彼らにとって救いに繋がるんじゃないか。それが出来たら・・・。ネトウヨにひとこと、言いたいことはありますか?
- 高間
- 一言では済まないですね。ま、ツレウヨを見て欲しいです。あれだけtwitterで、チョンだなんだと言ってきて結局一人も観に来てないんですよ。いや来てるのかもしれないですけど、観たという事を表明してほしいですね。そうじゃないと意味がない。要するに、そんなに熱心じゃないんでしょうね。
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- 上皇とネトウヨとの戦いは、始まってもいない。
- 高間
- ネット上で散々、「高間は在日だ、反日だ」と煽られましたけど、僕は日本人です。でも両親は日教組です。それはネットを使えば5分で出てくる事実なんですけど、「高間響は在日だから反日なんだ」だという明らかなウソと、「高間響の両親は日教組だから反日なんだ」という本当の事(いや反日なのは本当じゃないけど日教組の息子ってのは本当ですからね)、どちらが説得力があるかは一目瞭然なのに、その手間を掛けられない人たちなんだと思うと全然怖くないです。一人、熱心に調べた人がいてその人はちょっと根性あるなとは思いました。
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- それ以外は怖くないと。
- 高間
- 怖くないというより、面白くないですね。靖国参拝批判の時の「オバマは在日」は面白かったですけどね。あのね、表現規制派の人とかは頑張ってますもん。アグネス・チャンとか、僕から見れば方向性は間違っているんですけど、もの凄く頑張ってます。表現規制するために。反対派より努力してるんです。
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- 内閣は努力しないネトウヨが嫌い?
- 高間
- いや僕は努力嫌いなんで・・・。面白くない人が嫌いですね。
第18次笑の内閣「ツレがウヨになりまして」
公演時期:2013/12/19~22(東京)、2014/2/14~16(北海道)、2014/2/28~3/4(京都)。会場:こまばアゴラ劇場(東京)、シアターZOO(北海道)、アートコミュニティースペースKAIKA(京都)。
無努力主義
- 高間
- 努力の話が出たので。僕はね、無努力主義というのを提唱してるんです。僕が何の為に演劇をやっているかというと、人類は究極的には努力を必要としなくなるというのが目標だと思うんです。努力が好きな人が多いですけど、努力をしなければ生きていけないというのは人間が未熟だからだと思うんですよね。だらだら生きていけないというのはおかしいし、そうじゃない今に満足して頑張っているというのは進化を否定していると思うんです。
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- なるほど。
- 高間
- 努力ナシに夢が叶うようにしないといけないんですよ。人類は今までも楽になるように努力をし続けてきましたけれども、それを完全に無くす為の技術開発が必要なんです。まあそんな努力、僕は大変だからしませんけれども残念ながら。
楠 海緒さんから 上皇へのご質問
役への執着
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- 笑の内閣の一番のネックは芝居の質だと思うんですよ。それはお客さんによるかもしれないですけど、色んな作品を見てきたような人には物足りない。だから説得力が削がれるんじゃないかといつも思っている。
- 高間
- それはですね、重々自覚しているんです。問題はいくつかあって、まず僕の演技が下手であるという事。それは僕が出演しなければ解決するんです。もう一つは、僕は芝居が下手でも気にならない演出家なんですよ。
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- そうなんですね。
- 高間
- まるで気にならない訳でもないんですけど。上手い役者には声掛けなくなっちゃったんですよね。演出としての欲が浅いんでしょうか。
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- 今回は上手な人が何人もいるじゃないですか。少なくとも私は、自分の演技を責任持って作って来てくれればそれで何も文句ないです。
- 高間
- そうしてくれる役者がしてくれればいいんですよ。僕よりも役に執着してくれればそれでいいです。今回出てないですけど田中浩之とか小林真弓とかは書いた僕より執着してるんです。そういう人については信用しています。やっぱり脚本家としての比重が強すぎるんですよね。ラジオドラマでやったら実は充分かもしれない。
笑の内閣が今面白いと思っていること
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- 笑の内閣。次は何を取り扱いたいと思いますか?
- 高間
- いっぱいあります。名誉男性とかは面白そうですね。
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- 名誉男性?
- 高間
- 言うたら今回安倍内閣に入閣した女性議員ですね。あの人達は社会進出している女性としてもてはやされながらも、一般的な男性よりも女性差別的です。
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- そういう意味での名誉男性?
- 高間
- そうですね、心にチンコが生えているから、発言がね笑っちゃうんですよ。キチガイだなと。例えば夫婦別姓反対論ってホントに愚かだと思っていて。でも、選択的夫婦別姓であるべきなんですよ。他人に口を出されたくない、夫婦の間で苗字を決めたいという人の心を踏みにじっているからですよ。
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- そうですね。
- 高間
- よその家庭の問題に口を出すべきじゃないし、もし仮によその家庭が崩壊したとして、何かお前に損する事があるのかと。関わるな、と思いますね。年賀状の宛名がわからんとか、どうでもいいことのためにね。夫婦同姓強制制なら反対しますが。
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- それが名誉男性のネタ、なんですね。
- 高間
- そういう名誉男性的な発言って面白いなと思いますね。それと、江戸しぐさは面白いですね。腰浮かせとか。電車の無い時代にそんなマナーが生まれるかっ、とかね。時泥棒という、電話のないはずの時代に生まれたアポイントメントのマナーとか。でもそんな出所不明の「江戸しぐさ」が、歴史的事実として教科書に載って行くんですよ。
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- それは面白いな。
- 高間
- それから、牟田口廉也。インパール作戦で失態を犯して、その後も自分は悪くないと弁明し続けたり切腹しようとして誰にも止められなかったり葬式で自分は悪くないというビラを撒いてもらったりした人なんですけど。
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- ああ、撤退時に冷ややかな視線を浴びた人ね。
- 高間
- 日本軍の無能さは面白いですね。そういう人間でも出世出来たという日本軍のシステムがお笑いなんだと思うんですよね。これからの左翼は「戦争は悲惨だ」とか言っても通用しないですよ。太平洋戦争は米軍の戦力が巨大だったから負けた訳ですけど、同じ軍力でも負けたでしょうねこんな組織じゃ。同じ戦力でも将軍で負けます!
もう、無難に行きたい
- 高間
- あとは、またプロレスはしたいですね。みんな年食っちゃったからなあ。僕が、プロレス団体のメイクになった方が面白いぐらいになってますし、笑の内閣にとってプロレスというのはお荷物になってる状態で。
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- でも、結婚式プロレスは去年だったじゃないですか。
- 高間
- その前に2年ブランクがありましたからね。でも、すっ太郎みたいな場外でプロレスを挑んでくる若手とそういう事をやりたいという気持ちはありますね。
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- 挑戦してきてくれる若手、ね。
- 高間
- やっぱりね、噛み付いてきてくれるというのは嬉しいですよね。
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- 最後の質問です。内閣は今後、どんな感じで世の中にケンカを仕掛けていきたいですか?
- 高間
- 安全に行きたいですね。もう、無難に生きていきたい。
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- えっ・・・!?
- 高間
- いやあ、だって、僕就職出来なかったから芝居してる訳ですから。妻ともしっかり話しましたけど、芝居辞めて就職しようにも高間響で画像検索したら上祐史浩さんや鈴木邦男さんと一緒に写ってる写真が出てくるんじゃ面接受かんないですからね、続けてた方がまだ可能性あるだろうと。
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- うーん。
- 高間
- やばい事をtwitterに排泄的に書いたり、やばい本心を煙に巻きながらも書いたり、でも全部バランスを取って書いているんですよ。どれが自分の本心か分からなくなってきましたから。このインタビューだってどこまで本心か。
音嫌い・5号
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。今回は本当に大した事無いものです。ただ、上皇に謹呈する意味のある物です。
- 高間
- ありがとうございます(開ける)。
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- それはですね、簡単に言うと大きな音がなるスプレーです。防犯グッズですね。
- 高間
- 前回も似たようなものだったような気が。
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- あれはホイッスルですね。今回は緊急避難用です。いきなり誰かに襲われた時に使ってください。
- 高間
- 大きいな。どうやって持ち歩くかですよね。
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- ・・・奥様に持っていただくとかはいかがでしょうか。
- 高間
- それはいいですね。奥さんにプレゼントしよう。