陽光PROJECT「陽光」(公式BLOG)
美しいと思う基準
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- 森さんは、どんなキッカケでお芝居を始められたんでしょうか?
- 森
- 大学一回生の時ですね。何かをしたいという衝動にかられていたんですけど、何を始めていいか分からなかったんですよ。そんな時期に、ベトナムからの笑い声の人たちと知りあったのが最初です。
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- C.T.Tから。
- 森
- 初めて小劇場を見たのは、トリコ・Aの作品でした。それまで演劇ってガラスの仮面みたいな、発声練習やら大きな身振りやら、そういうダサいものだと思い込んでいたのにすごく魅了されて。それを見ていなかったら演劇を始めていなかったろうなと思います。山口さんの言っている事や、美しいと思う基準に共感したんですね。初舞台もトリコ・Aの作品「木辻嘘801」です。
ベトナムからの笑い声
丸井重樹氏を代表とする劇団。手段としての笑いではなく、目的としての笑いを追及する。
丸井重樹氏
京都を拠点に活動する演劇制作者。
C.T.T
C.T.T.とはContemporary Theater Trainingの略で「現代演劇の訓練」を意味する。1995年に京都のアトリエ劇研で発足し、70回以上の上演会を行う。現状、3カ月毎の上演会を予定。(公式サイトより)
トリコ・A
山口茜氏を脚本・演出として作品を上演する団体。
飛び道具
京都を拠点に活動する劇団。毎公演ごとに演出家が異なる。安定した作品群を多数発表する。
100本の名作
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- 森さんが今お芝居を続けているのは、どうしてでしょうか?
- 森
- それ、いま私ももう一度考え直そうと思っているんですよ。始めた頃は切実な思いがあったんですが、大学を卒業してからは大人になったというか・・・。じゃあ何を頼りに作品と向きあうか。揺れている状態なんですね。ひとつひとつ作品と向き合うのは大変で、いつもいっぱいになってしまうんです。
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- 芝居を始めた頃の切実さとは。
- 森
- 誰かと衝撃を与え合う事で、深く関わり合いたいんですね。初めてトリコ・Aの作品を見たときに、自分が今まで誰にも言わなかった衝動が舞台に表現されていたんです。気持ちがものすごく揺らされて。自分が救われたという気持ちもあって。それから、自分が見たいものを作る気持ちでやっていたんです。
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- 心が揺らされるものを作る。
- 森
- でもそれは、何も知らないのに言ってるだけかも知れないんです。芸術は全然勉強していなくて、未だに蜷川作品とかも見てないんです。今年、自分に「100本、映画と演劇の名作を見る」という目標を立てました。そういう風にでもしないと、自分で分からなくなってきちゃうから。
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- 勉強しないと、自分が作りたいものの姿が見えなくなる。
- 森
- 前は、自分は技術がないと言われていたので、それに食いつく勢いでやってたんですよ。でも段々出来るようになってくると、何に対して食いついていいのか分からなくって。そうしているうちに、自分が見たい作品が分からなくなって。
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- では、自分が見たいものを見つけるのが今年の目標なんですね。
- 森
- 感性を磨くという作業が、ちょっと気恥ずかしかったんですよ。格好つけてる感じがして。でもたとえば、照明家さんが自分の機材を手入れするように、自分のセンスとかそういうものを洗練するのは当然じゃないかと。
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- きっと楽しい事だと思います。傑作に出会えるといいですね。
- 森
- はい。ストイックにやるより、楽しんでやろうと思います。
下鴨車窓「人魚」
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- この間の下鴨車窓、大変面白かったです。森さんとしては、どんな作品でしたか?
- 森
- すごく勉強になった作品でした。共演したかった方々と一緒にやれたので。
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- 森さんは人魚を捕らえた漁師の娘を演じてましたね。出てくるなり食卓に運んで来たスープを・・・。
- 森
- 汚く飲む(笑う)。あれは、人魚という怪物に対する人間を善人には見せたくないという演出だったんです。食い散らかすようにしてました。
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- 全体、おとぎ話みたいな設定にも関わらず全員が自分の論理に従って動いてましたね。
- 森
- どういうところが面白かったですか?
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- 見ごたえがあったのは、やっぱりストーリーです。捉えられた人魚が、自分の歌声では魅了する事の出来ない漁師をいかに誑かすか。そういう駆け引きも良かったし、獣と人間の通じ合わなさが他者とのコミュニケーションがいかに難しいかということに繋がっていたり。あと、突飛な演出もありましたね。特に説明なく天井から落ちてくる予言詩の書かれた板が入っている袋。アクセントとして効いていました。
- 森
- 最初は無かったんですけど、田辺さんがいきなり「上から袋が落ちてくる」と言い出して。ああ、そういう村なんだと。落ちてくるもんなんだと(笑う)。
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- そこで説明もなくそうしちゃうというのが、何か凄く素敵でした。
森さんには泣いて欲しい
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- 今まで出演されて来た中で、ご自身の転換点となる作品は。
- 森
- それはやっぱり、飯田茂美さんの作品ですね。彼の作品に出た事で、役柄というものが180度変わったんですよ。
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- そんなことがあるんですか。
- 森
- 彼の演出した舞台で、私一人で10分間泣きながら自分のことを語るというパフォーマンスをさせてもらったんです。それが本当に苦しくって。稽古場を飛び出すくらい。飯田さんって、良くも悪くも出させる人なんですよね。出演が決まった時に「芝居しないでほしい。森さんには泣いて欲しい」って。
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- なるほど。
- 森
- それまで明るい役ばっかりだったんですが、実は暗い役もやってみたかったんでしょうね。そういう陰の部分に光を当てて下さったんです。私それまで号泣なんてしたことなかったのに、それが凄く良かったって仰って下さる人もいて。それ以降、陰な役が来るようになりました。
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- ご自身の、演技に対するイメージも変わった。
- 森
- 「演技しないで欲しい」という言葉を受けて、やっぱり演技した方がいいと思ったり、演技をしない体の魅力に気づいたり。勉強になりましたね。
飯田茂美さん
1998年より、マルチ・アーティストとして世界各地で活躍。ポエトリー・アクション、収穫祭プロジェクト、現代美術の分野での活動、先進的な舞台人たちとの共同作業など、既成の枠にとらわれることなく多方面に拡張(公式サイトより)
でも今は、演劇が好きです
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- 今後、森さんはどんな感じで攻めていかれますか?
- 森
- 2009年は色々とお話を頂いてバタバタとしていた年でした。今年は自分がどうしたいのかを考えて前に進む年にしたいですね。色々、有り難いお話もあるので。
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- なるほど。
- 森
- 昔はそれほど、演劇をやりたいという欲求はなかったんです。自分が次のステップに行くのに演劇をやるしかなくって。だから、芝居が好きという人が羨ましかったんですよ。でも今は、演劇が好きです。
質問 山口 吉右衛門さんから森衣里 さんへ
Agronaturaのハンドクリーム
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- さて、今日はお話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
- 森
- えー。ありがとうございます。何だろう。開けても宜しいですか?
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- どうぞ。
- 森
- これは・・・ハンドクリームですね。私、欲しかったんですよ。
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- あ、良かった。
- 森
- すごいかわいい。女の子が喜びそうなキーワードが沢山書いてありますね。ミツロウとかシアバターとか。女の子は、こういう自然由来の原材料表に弱いというのが私の定説で。