MONOスペシャルイベントin金沢 『チェーホフを待ちながら』
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- 今日は宜しくお願い致します。
- 長沼
- お願いします。緊張してます。
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- いえ、そんな肩肘をはったものではありませんので。最近の長沼さんは、どんな感じでしょうか?
- 長沼
- 最近は、次の公演の準備です。稽古期間が短いので、台本は稽古が始まる前に渡されて、各自が覚えてくるという。稽古が始まったらすぐに立ち稽古、通し稽古、という感じなのだと思います。
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- どんな作品なのでしょうか。
- 長沼
- MONOさんの、金沢市民芸術村でのスペシャルイベントです。チェーホフの一幕物なんですけど。
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- あ、MONOですか。
- 長沼
- はい、声を掛けて頂いて。
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- この間のぶんげいマスターピースの「三人姉妹」から、チェーホフが続きますね。
- 長沼
- 続きますね。でも今度やる一幕物は、「三人姉妹」とはだいぶ雰囲気が違うので、また新鮮に楽しめそうです。
MONO スペシャルイベントin金沢 『チェーホフを待ちながら』
公演時期:2008年10月5日。会場金沢市民芸術村。
ぶんげいマスターピース工房「三人姉妹」
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- さて、ぶんげいマスターピース工房の「三人姉妹」。9月の末にありましたね。ものすごい大人数のお芝居でしたが、稽古はどんな感じで進んでいきましたか?
- 長沼
- 他に公演を抱えている方もいたので、最初のうちは代役をたてたり、その日いるメンバーでできるシーンから作っていきました。結構長い稽古期間だったんですけど、全員揃ってからの盛り上がりは高速で、その後はあっという間でした。
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- なるほど。
- 長沼
- あと、今回は初共演の皆さんもたくさんいらしたので、さぐりさぐりな距離感が面白かったです。
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- たくさん役者がいる訳ですから、本番まではやりがいのある期間だったでしょうね。
- 長沼
- そうですね、どの芝居でもそうなんですけど、稽古の初期段階では全体を平等に見ていられるのに、稽古が進んでいくと自分の役を中心に作品を見てしまう傾向があって、で、そんな時に、ふと自分の出番じゃない時とかに、別の俳優さんが、自分の想像を超えるような解釈というか、役の成長を遂げられてるのを目の当たりにすると興奮しますね。そういう部分でも、初共演の方々からは目が離せませんでした。
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- なるほど。本番はいかがでしたか?
- 長沼
- メイク・衣裳に照れましたね。
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- 照れるというのは?
- 長沼
- いつもは普段着でナチュラルメイクで芝居をしているので、単純に照れました。メイクつけての稽古もほとんどなかったので、相手役の顔に慣れるのが大変でしたね。ものすごいメイクしてるのに真剣に芝居してるのがお互いおかしくて、笑いそうになって。
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- ああ、確かに派手で、宇宙人っぽい感じでしたよね。
- 長沼
- どうだろう、その、芝居との違和感みたいなものは感じませんでしたか?
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- 観ている側としては、そのギャップが面白いというのはありましたよ。というか、SFモノみたいな刷り込みがあったのでメイクはすんなりと受け入れられましたね。かつ、演技がちゃんと内面が分かるように作られていたので、それほど違和感というのはありませんでしたが。
- 長沼
- あ、いいお客さんですね。
ぶんげいマスターピース工房「三人姉妹」
公演時期:2008年8月30〜31日。会場:京都府立文化芸術会館。
劇団八時半
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- さて、長沼さんのこれまでの事についてお伺い出来ればと思います。私が初めて長沼さんのお名前を拝見したのは、劇団八時半の公演だったと思うのですが。
- 長沼
- ええ。
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- 以前から、八時半の作品に参加されていたのでしょうか。
- 長沼
- 2003年からです。最初は客演で参加して、その後入団することになったので引っ越して来ました。
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- どうして八時半だったのでしょうか。
- 長沼
- 鈴江さんの本が好きだったからです。あとは、客演した時に、正確には客演のオーディションを受けた時に劇団員の皆の雰囲気がやわらかくて面白くていいなぁと感じたからです。
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- そこからしばらくして京都に来られたと。京都の演劇についてどんな印象を持たれましたか?
- 長沼
- まず稽古場に恵まれてるというのが一番最初の印象です。これはきっとよそから来られた方は皆感じてるんじゃないでしょうか。特に京都芸術センターには驚きましたね。芝居に使う荷物を置いたまま帰っていいし、タタキも出来るし、装置を立て込んで稽古することもできる。
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- まあ、申請して認可されれば使えますね。
- 長沼
- 以前はあちこち小道具もって巡るのが当たり前だったので、ほんと有難かったです。
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- 芝居自体の風土というか、全体的なノリとしては。
- 長沼
- 好印象です。それぞれがマイペースに伸び伸びやれている、という感じがしました。こういうのがマルでこういうのはバツだから、というのじゃなくて、まず自分はこういうのがやってみたいからと健康的に悩んで、まっすぐ表現されてる方が多いという印象です。都会は入れ替わりも激しくて、それは刺激的で良い環境だと思うのですが、周りの評価を気にし過ぎたり、自分が何をやりたかったのかわからなくなってしまったり、必要以上に急かされてる感がありました。個人的にですけど。
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- それが京都だと、そうでもない。
- 長沼
- そうですね、私はこういう表現をやります、あの人はああいう表現をやります、それでいいじゃないかという雰囲気ですね。誰に引け目を感じることもなく、自分がいいと思う作品を集中して作れる環境だと思います。
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- そういう空気はありますね。
- 長沼
- 純粋ですよね。京都に来る前ちょうどそんなことばかり考えて悩んで停滞していたので、客演はタイミングが良かったというか、今だ!と迷いなく移住を決めることができました。
実際、自分だったら
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- 長沼さんの、役者としてのスタイルみたいのを伺えたらなと思います。ご自身では、どのような俳優だと思われていますか?
- 長沼
- 自分で自分の事を?
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- または、どう受け止めて貰いたいか、とか。
- 長沼
- そうですねぇ、たまに言い回しが独特だと言われます。心当たりがあるとすれば、自分が同じ状況になったとしたらどうなるか、というのを気にしてるからかもしれません。
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- 演技の仕方、という事でしょうか。
- 長沼
- 解釈、ですかね?例えば、私は大学に入るまで演劇未経験者だったんですよ。で、演劇科を受験したので、エチュードが入試に含まれてたんですね。その時のことで例えると、
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- 大学の入試で、エチュード初体験ですか。
- 長沼
- はい。設定を与えられて、待ち時間30分の間に2分間のを作らなくちゃいけない。大きな部屋に受験者が3人ずつ入れられて各々課題に取り組むわけです。どうやら私以外の二人は高校演劇をやっていたみたいで、もうさっそく作り始めたんです。
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- ちなみに、どういう課題だったんでしょうか。
- 長沼
- 念願の大学にやっと合格しました、その入学式に遅刻しそうですさあどうする、みたいな感じだったと思います。
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- はい。
- 長沼
- その二人は「キャー!遅れてしまいそうだわ、どうしよう」みたいなセリフ作ったり泣き叫んだりしてて。それ見て、私もこれをやらなきゃいけないのかと恥ずかしくなっていたんですね。
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- ああ、分かります。
- 長沼
- それだけは避けたいと。その時に「実際、自分だったらどうするだろう」って想像して。そしたらまず、町中でそんな大きな声は出さないだろうってことに気付いて。結局それ以上はあまり思い浮かびもしなかったので、あとはぶっつけ本番で最初から最後まで無言でウロウロ。そうしている内に2分経って。
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- ああ、それは素晴らしいですね。
- 長沼
- その感覚はずっと覚えておこうと思っています。どうしたらより普通に出来るかとか、普通って何かってことは忘れたくないです。
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- より普通に。
- 長沼
- 普通な事の連続が結果、ドラマチックになると思うんですよ。舞台上の役の人は大体は一般人じゃないですか。だから、普通の人の感覚を常識を持って、秩序を持ってできるのが理想です。
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- その積み重ねがドラマチックさを生むんですね。分かります。
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- なるほど、そういう事を考えて稽古されるんですね。
- 長沼
- あ、長々と話してるけど、実際はもう少し適当にやってます(笑)。ていうか、言い回しが独特、の理由になってるのかな、これ。ごめんなさい、わからなくなってきました。
一個ずつのお芝居に
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- 今後、どんな舞台に出演したいですか?
- 長沼
- そうですね、やっぱりミュージカルでしょうか。ウソです。いやあながち嘘でもないんです。最初に芝居をやりたいと思ったキッカケもミュージカルなので。
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- あ、ミュージカル。
- 長沼
- はい。歌とダンスで挫折して、「これはセレブのやる仕事だ」と(笑う)。
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- まあ、色んな。
- 長沼
- そうですね。いろいろ挑戦してみたいです。京都では色々なところに出演させて頂きました。今回憧れのMONOにも参加させて頂けることになって、本当に嬉しいんです。私でいいんですかと。台本を読ませてもらって、久し振りに声を上げて笑いました。足を引っ張らないように頑張ります。
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- 頑張って下さい。
- 長沼
- はい。見にきて下さい(笑う)。
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- 金沢ですか・・・。予定があけばぜひ。さて、長沼さんは今後、どんな風に攻めていかれますか?
- 長沼
- そうですね、攻めるという感覚はないですね。一個ずつのお芝居に自分なりに取り組んでいければと思っています。
質問 吉川 莉早さん から 長沼 久美子さん へ
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- 今日はですね、前回インタビューさせて頂きました悪い芝居の吉川さんからご質問を頂いております。1.三人姉妹では凄く大きな階段でしたが、体力の維持に何かやっていますか?
- 長沼
- 何もやってないですね(笑う)。これは背筋を鍛えた方がいいなと思ったのが本番の朝だったので、間に合いませんでした。
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- 2.長沼さんは、スタイルの維持に何かなさっていることはありますか?
- 長沼
- スタイル?スタイルは維持できていない方です。筋トレが好きなので、思いついて突然やりだしたりします。
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- 3.悪い芝居って知ってますか?
- 長沼
- はい、知ってます。
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- ちなみに、どんな印象を持たれていますか?
- 長沼
- 美男美女さんが多いですね。美男美女で、オシャレ。客席が満席、ファンが熱い。
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- ああ、そういう感じはあるかもしれませんね。
マークスアンドウェブのハンドタオル・ソープ・ハーバルウォーター
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- 今日はですね、長沼さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 長沼
- あ、噂の。
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- どうぞ。
- 長沼
- うわ、でかい。アロマ系?
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- 石鹸と、アロマスプレーとハンドタオルですね。
- 長沼
- すっごい嬉しい。大好きなんですよこういうの。これでキレイにしておけよという。
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- いえいえ。香りがこう、慈味というか、優しい香りでしたのでお選びしました。