ナントカ世代からZTONへ
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- 今日は宜しくお願いします。
- 葛井
- 宜しくお願いします。凄いドキドキする。
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- いえ、あまり緊張なさらずに。最近はいかがですか?
- 葛井
- そうですね。この間出させて頂いたナントカ世代の稽古が1月から始まるんですけど、その準備段階ですね。
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- 役者の他に、衣装も担当されているんですよね。
- 葛井
- はい。照明もやってる小泉梅子も同じ衣装班です。
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- 先日、アートコンプレックス1928の時もですよね。あの衣装は良かったです。
- 葛井
- ありがとうございます。
ナントカ世代
劇作・演出・音響、北島 淳氏による劇作の上演を行う演劇企画。強い美意識によってあらわれた空間と、人を食ったようなユーモア。冷たい客観性をもったまま優しい気持ちになれるような、何か複雑な気分の芝居。
劇団ZTON
2006年旗揚げ。主宰:河瀬仁誌氏。時代活劇エンターテイメントを手法としながら、人間の内面を丁寧に描く。
アートコンプレックス1928
京都市中京区の小劇場。1999年オープン、小劇場・コンサート・ライブイベントなど多数公演あり。
「月黄泉ノ唄」
劇団ZTON vol.5「月黄泉ノ唄」公演時期:2008.8.29〜31、会場:アートコンプレックス1928。ART COMPLEX 提携公演
「たわしとしか言えない役だよ」
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- ナントカ世代「シ・バハマ」へのご出演、いかがでしたか?
- 葛井
- 面白かったです。面白かったですって、出てる側が楽しんでるのもどうかと思うんですが。
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- いえいえ。
- 葛井
- 北島さんの演出で、目の前で面白いものが作られていく過程が体験出来ました。あの雰囲気で、難しい目で見るお客さんが多いと思うんですけど、本質は不条理な面白さや人間の可笑しさだったりするんですよね。
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- ネタの一つ一つが面白かったですよね。葛井さんは、「私」、自分の概念を教えられずに育った娘さんの役でしたが。
- 葛井
- ええ。出演のお話を頂いた時に「たわしとしか言えない役だよ」って言われて。母親に外界から隔離されて育った子が、人の感情を真似してみたり、外の世界に触れて自我が芽生えていくという。
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- そういう役どころでしたよね。ZTONからの客演というかたちでしたが、その面ではどんな経験でしたか?
- 葛井
- ZTONはやっぱり、ド派手なイメージを持たれていて、一方ナントカ世代さんは難解なロジックが組み合わさった世界観で、動と静で全然違うんですけど。
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- ええ。
- 葛井
- 実は北島さんとZTONの河瀬とは思考の芯が似通ってるように思うんですね。アプローチは違うんですけど、モノづくりに対する厳しさというか。精度を上げるための努力が徹底しているんですよ。
「シ・バハマ」
ナントカ世代「シ・バハマ」公演時期:2008.12.12〜14、会場:アトリエ劇研。
世界が全然違う
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- 葛井さんは、いつからお芝居をされていたんでしょうか?
- 葛井
- 初めて舞台に出させて頂いたのは、去年のZTONの公演でした。それまでは、大阪の声優プロダクションの養成所にいたんですよ。
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- あ、そうだったんですか。
- 葛井
- はい。そこで河瀬くんと知り合って、ZTONに出演するキッカケになったんです。
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- ちなみに、どんな経緯でその養成所に。
- 葛井
- 物心付いた時から声優に限らず、そういう事をやりたいと思ってたんですね。それが声優という具体的な形になったのは小学生の頃からでした。テレビを見ていたら、姿は出さずとも演技している人がいるなあって。テクニックのいるプロフェッショナルな仕事だと思ったんです。それで、自分で入学金を稼いで、養成所のオーディション受かって、上手い具合に良い先生にも出会って、少しは評価もして頂いて。
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- ああ、なるほど。
- 葛井
- けど、段々実際の声優業界と自分のやりたい事にギャップが出てきたんです。
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- と言うのは。
- 葛井
- 私達の世代って、声優になりたいという人が多いって言われるじゃないですか。擬似アイドルみたいなイメージで。私はそういう風にインフレ化する前からこの職業に気持ちを置いてたんですが。テクニカルな職業だという部分で。それがある時からアイドル的な見方をされて、どうなんやろうと。求められるモノも技術よりルックス・みたいな。
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- 養成所に入ってらしたんですね。小劇場と世界が全然違うような。
- 葛井
- そうですね、サバイバルでしたね。少なくとも私はそのつもりでした。役者になろうとする人はストイックに追及して、のしあがっていくか蹴落とされるかだと思っていましたから。仲良しこよしじゃなくて、その世界で生きていくために通っていましたし。で、クラスの中で浮いてたんですよ、私も河瀬も。まわりは、役者になりたい!ってゆうよりも、好きなアニメにでたい!てな感じだったので。空気がまるで違った。
実戦で修行
- 葛井
- そういう時期に、基礎科・本科を経て東京の研修科に行ける事になったんです。そこにいれば、あわよくば仕事も貰えるかも、という。でも、自分の本当にやりたいことがこれで合ってるか分からなくなってきたんですね。そういう時期に、ZTONを立ち上げて間もなかった河瀬に「そうやったらウチに出てみいひん?」って誘われたんです。「ここで修行したらええやん。実戦で修行つける方が向いてるタイプやで」って言われて。悩んだんですけど。
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- そうでしょうね。
- 葛井
- でも、彼の作った作品のビデオを見せてもらったんです。それがもう、ドツボで。これや!って。それまでお芝居って、自分とは窓口が完全に違うと思ってたんですよ。でも、やみくもに東京に行って何にもならないよりは、舞台に立った方が良い勉強になるかもしれない、と。
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- 最初の舞台作品は。
- 葛井
- 「しぐれ」という作品でした。もう何もかも初めてで、本当すみませんという(笑う)。
「しぐれ」
劇団ZTON vol.2「しぐれ -shigure-」公演時期:2007.4.29〜30。
ポップな公演・ISUKA
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- ZTONの最近の公演ですと、「ISUKA」ですよね。非常に面白かったです。どんな稽古風景でしたか?
- 葛井
- 今回、会場のキャパシティもそんなに大きくはないし、まあいい感じに気ぃ抜いていこうよ、初心に帰って。という方向で進んでいきました。
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- そういえば、役者の演技に余裕があったような気がします。
- 葛井
- ダレるという訳ではなく、シーンをきっちり作りながらも変なピリピリ感はないように、仕込みから本番までまったりと進んでいきましたね。良い人たちの現場でした(笑う)。
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- そういうカラーだったんですね。
- 葛井
- 特に河瀬君が、「ポップな公演にしたい」って繰り返してたんですよ。
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- ポップが合言葉。
- 葛井
- そうですね。月黄泉の時はシニカルで。気に入ったら使い続けるんですよ彼は。
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- ZTONの稽古場で、何か苦労されることはありますか?
- 葛井
- パッと見エンターテイメントで、派手さをウリに押し出しているように見えて実は人間の根底にあるものを描く芝居を目指しているんです。役者はそれをどれだけくみ取って、演出とすり合わせて表現する事ができるかが大事だと思います。
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- 演技の内容は役者が作るんですね?
- 葛井
- 演出のなかにも大体のイメージがあるのでそれを聞き出しつつですが、基本は役者におまかせしてくれるのでそこで面白いものが出来たら採用する形ですね。だからか、伸び伸びと表現出来ますね。
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- いつも苦労する点とかはありますか?
- 葛井
- 2年やらしてもらって、ここ最近でやっと自分のスタンスがちょっとみえてきたかな、と。舞台上で俯瞰しながら表現する事が出来てきたかな・・・。少しずつなんですけど。
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- 冷静になれた、と。
- 葛井
- 求められているものが思っていたより面白く出来なくて後悔する事が多いので、次からは思い切ってやりたいですね。
「ISUKA」
劇団ZTON Project R「ISUKA」公演時期:2008.11.8〜9。会場:クロスロード梅田。東放エンターテイメントスクール芸術祭2008「アキコ伊達×コラボエンタフェス」 参加作品
もう浮き足だっていられない
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- 今後、葛井さんはどんな感じで攻めていかれますか?
- 葛井
- お芝居を続けて3年目ですので、もうペーペーですみたいなごまかしは出来ないなと。テクニックの向上はもちろん、自分自身をストイックに追い込んでエンジンを掛けていきたいです。最終的にはそれで食べていけるようになりたいですから。
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- ええ。
- 葛井
- 芝居に関わらせて頂いたスタートも遅かったので、ずるずると続けていく訳にはいかないと思ってるんです。来年が本当の意味で勝負の年ですね。もう浮き足だっていられないですね。
質問 高田 ひとしさん から葛井 よう子さん へ
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- さて、前回インタビューさせて頂きました高田ひとしさんからご質問を頂いてきております。
- 葛井
- 恐縮です。
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- 1.「今京都演劇界で必要なものはなんですか?」
- 葛井
- あんまり詳しくないんですけど・・・。ちょっと感じたのは、老舗の劇団さんと若手で真っ二つに分かれてる印象がありますね。そんな中で、何となく閉鎖的なイメージがあります。劇団交流という訳ではないですけど、もっと、お互いに温かくやっていければなと。
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- 2.「京都演劇界の何を変えて行かなければならないと思いますか?」
- 葛井
- 京都に限らず全国的な話ですけど、斬新だったり奇抜だったりすると叩かれやすい傾向があると思います。でも、そういうチャレンジを否定せずに受け入れていければと思うんですよ。
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- セオリーに沿ってない変化球を投げても、同じ世界の人が受け止めてくれないと。
- 葛井
- そうですね。もうちょっと広い視野で作品を見れば面白いところはあるのに、と。もったいないなと思いますね。
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- 3.「あなたは、自分が死んだら世界が終わる派ですか?」
- 葛井
- 自分のやりたい事をやっているとしても生きてる限りは死に向かっている訳なんで。後ろ向きという訳じゃないんですけど。やり遂げて死ぬんだから、その後に何かが永遠に続いていくようには・・・。とにかく、なるべく後悔のないように生きて、笑って死にたいですね。
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- ありがとうございました。
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- 今日はですね、葛井さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 葛井
- わあ、ありがとうございます。プレゼントって嬉しいですね。
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- あ、どうぞ開けてみてください。
- 葛井
- (開ける)私、桜色って大好きな色なんですよ。癒されます・・・。ボディーシャンプーとコンディショナーですか? ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです。
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- そんな感じのセットですね。
- 葛井
- わあ〜。