演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

丸山 ともき

舞台美術

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貴重な経験

__ 
今日は宜しくお願いします。最近はいかがですか。
丸山 
そうですね。ちょっと前まで色々な事をしなければならないと焦っていた時期にありまして。そういう状態で失敗を重ねてしまったんですね。自分の納得出来るものが出来ないばかりか、周りの人たちに多大な迷惑を掛けてしまいまして。
__ 
なるほど。
丸山 
最近は、そういう事情もあって美術の仕事はセーブしていこうと思っています。
__ 
抑えていくと。
丸山 
もちろん、新しい仕事のお話を頂くのは嬉しいのですが、同時に色々な事を進めていく力量がないので・・・。もちろん、余裕があれば別ですが。今の所美術を引き受けているのはナントカ世代だけですね。
__ 
今は、腰を落ち着けて取り組んでいるという感じでしょうか。
丸山 
そうですね。正直、自分がどのようなものが得意なのか模索しきれていないんですね。こなしてきたプランの数もそう多くないので。ならば、じっくりこなしていこうと。
__ 
じっくりやっていくというのは、とても貴重な経験ですね。
丸山 
あとは、大道具としての仕事も早くこなせるようになりたいですね。それが出来ると出来ないのでは大違いなので。
ナントカ世代

劇作・演出・音響、北島 淳氏による劇作の上演を行う演劇企画。強い美意識によってあらわれた空間と、人を食ったようなユーモア。冷たい客観性をもったまま優しい気持ちになれる、複雑な情緒のある芝居。

悪い芝居

2004年12月24日、旗揚げ。メンバー11名。京都を拠点に、東京・大阪と活動の幅を広げつつある若手劇団。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的に勢いよく噴出し、それでいてポップに仕立て上げる中毒性の高い作品を発表している。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)

キッカケ

__ 
ええとですね、丸山さんの美術の仕事として初めて印象が深く残ったのは、ニットキャップシアター「喉骨のフルート」での復讐装置だったんですよ。
丸山 
「ザ・過剰」。
__ 
あれは凄く良かったです。ドクロがリアルで、これがカギ代わりに自転車に付けられてたらやだなあと(笑う)。
丸山 
あれは美術というより、小道具の仕事ですね。実はああいう、細々としたものも引き受けているんですよ。
__ 
そういった諸々の造形のお仕事を始めたのは、何がキッカケだったのでしょうか。
丸山 
それこそ、小学生の頃からものを作るのが基本的に好きだったんですね。変な形のものを作るのが好きで、ずっと続けている事なんですよ。絵も描いていました。その延長ですね。
__ 
なるほど。どんな点が楽しいと思われますか?
丸山 
「これはこういう風に作るものだ」という定石があるものを作るよりは、これはどういう風に作ればいいんだろう? とゼロから考えるのが好きですね。大道具は、定石があるものが多いんですが、それがない大道具や小道具をどう作るかを考えるのが。
__ 
ああ、それは物凄く分かります。
丸山 
さらにどう安く上げるか(笑う)。まずは100均に行ったりして。
__ 
まずはね(笑う)。
丸山 
自分で言うのは少し違うかもしれませんが、ものを作る才能が自分にはあったとして・・・。舞台にしろ、小道具にしろ。それで関わった舞台が面白くなったら嬉しい。キッカケとしては、多分それが根本だと思います。
ニットキャップシアター 精華演劇祭 vol.3 参加作品・どん亀演劇祭V3「喉骨のフルート」

どん亀シリーズとは、ニットキャップシアターのコメディシリーズ。不幸の申し子どん亀の不器用な生き方は観客に共感を与え、笑いと涙を同時に誘う。

印象には残らない美術

__ 
丸山さんの、美術としての特徴って、ご自分でどのような部分にあると思われますか?
丸山 
うーん・・・。元々絵を描いたり、物を作ったり、まあ芸術大学にも入ってたんですけど、自分の作品やテーマをゼロから定める事が出来なかったんですね。
__ 
ええ。
丸山 
むしろ、人から得たヒントがある状態で物を作るのって面白いなあと思ったんですね、舞台美術とか小道具作りとか。一つのフレーズなりキーワードなりがお芝居にあって、それが、こちらで密かに作った裏テーマと結び付いたりすると面白いですね。客席には伝わらないかもしれないですけど。例えば色を一つ選ぶとしても、色の名前から連想されるものを使ったり。
__ 
色の決定ですか。それは演出とも相談したりするものですね。
丸山 
美術としては、破綻しない色の組み合わせをまず選びます。その上で演出との相談は、例えば「ナントカ世代」の北島くんですが・・・。
__ 
ああ、この間の劇研での公演を拝見しました。丸山さんが舞台美術でしたね。
丸山 
ええ。北島くんは、装置の配置に関しては割と細かく指定してくるんですね。ただし色は決めない。ナントカ世代の色は物凄く地味なんですよ。黒じゃないか、というぐらい。でも、物凄く抑えているんだけど実は色数がかなり多いんですね。
__ 
おお。
丸山 
お客さんが舞台を観終わって、「あの舞台は何色だったか思い出せないんだけど、作品の内容と調和して印象に残っている」というのが理想ですね。舞台のセットというのは結局背景なんです。役者さんが被写体で、メインじゃないですか。例えば、優れた肖像画の背景って、ほとんど人の印象に残ってないんですよね。まあ、有名なものが何個かありますが。
__ 
なるほど。真っ先にモナリザが浮かびましたけど。
丸山 
ええ。絵を勉強してる人なら覚えているかもしれませんけど、やっぱりそうでない普通の人の印象には残らないんですね。それはどういう事かと言うと、凄く手が込んでいて、でも絵の印象を崩さないで、絵の記憶には残さないんだけどもぶち壊してもいないという。
__ 
高度に調和されているという。
丸山 
そういう舞台美術を目指しています。で、さっきでた「ナントカ世代」の公演なんですが。
__ 
「岸田國士」の「紙風船」でしたね。
丸山 
そこで不思議な経験をしたんです。公演後に、インターネットで検索してこっそり感想を読んでみたんですよ。その中に、舞台上には無かったものを見ていた人がいたんですね。
__ 
どんな事が書かれていましたか。
丸山 
「紙風船」で、妻が4人いるという演出にしていたんですね。夫の正面の妻を横に3人コピペするという配置の。その3人の妻が座っていたのはほとんど黒に近い紫のベニヤ板だったんですけど、その感想によると「畳が敷いてある」と。
__ 
へえ。
丸山 
いや、畳は敷いてなかったんですけど(笑う)。印象としてそう見えたんでしょうね。それは僕のアレというよりは、演出の作り上げた世界からそう記憶されたものなんでしょうね。そういう記憶違いって、凄く面白いなと思います。一つのオブジェクトをメインで集中してみる彫刻などでは起こりえないんです。お芝居だと、目から耳から様々な情報が同時に入って、それで世界観を作っていると。だからこそ記憶違いすら生み出す印象が表れたという事です。面白いなと思いますね。

試されているような

__ 
現在、丸山さんの関わっているお芝居としては7月の「大炎上企画」、それから10月の悪い芝居の本公演ですね。
丸山 
はい。
__ 
悪い芝居とのお仕事が続きますが、丸山さんから見て山崎さんはどんな感じですか。
丸山 
うーん。とりあえず、要望がシンプルなんですよね。やりたい事がはっきりしている。でも具体的にこうしてくれという訳じゃなく、やりたい作品が山崎さんの中で明確で力強いんですよ。
__ 
なるほど。
丸山 
作品に関わったのは、前回作品の「なんじ」が最初だったんですけども、とにかくやりたい事がストレートだからこそ、こっちとしてはドキドキするんですよ。悪い言葉で言うと、「上手いことやったった」ていうのをやっちゃいけない気がするんですよね。「なんじ」では、それがちょっとあったかなと少し思います。
__ 
力強い要求に対して、力強く応答する、みたいな。
丸山 
そうですね。彼とやっていると、試されているような気がしますね。
大炎上

男肉duSoleil、悪い芝居、尼崎ロマンポルノの3劇団による合同企画。

悪い芝居Vol7.「なんじ」

公演時期:2008年4月2〜6日。会場:精華小劇場。

本当に出会いの話

__ 
丸山さんは、今後、どんな感じで攻めていかれますか。
丸山 
本当に分からないんですよね。とりあえず技術を身に付けなければならないのですが。
__ 
技術とは、どういう意味での。
丸山 
単純に、物を作る技術とか、現場での仕事の仕方とか、もっと正確にしていかなくちゃならないというのはあります。ただ、美術としては、これは本当に出会いの話で。そればっかりは。
__ 
人との出会いですか。
丸山 
美術の向上に関してですが、自分は何かモチーフやテーマを与えられて、それにあてがう形で作る人間だと考えています。そういう意味で出会い次第ですね。今まで、色んなタイプの演出家さんに出会えて、自分が持っていなかった視点に気付く事が出来たんですね、そういう出会いがあれば絵を作る見方も変わっていったり、成長したり出来ます。今まで言っていた事と180度違う事を言うようになるかもしれませんし(笑う)。
__ 
出会い次第ですか。分かりました。今後も、沢山の出会いがあるように祈っております。

アクリル絵具

__ 
今日は、丸山さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
丸山 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ(渡す)。
丸山 
開けても・・・?
__ 
どうぞ。
丸山 
(開ける)
__ 
それはですね、絵具ですね。
丸山 
うわ、アクリル絵具じゃないですか。見たことないメーカーだ。水彩ですか?
__ 
どうでしょうね。
丸山 
今度、これで絵を描きます。
__ 
お役に立てば嬉しいです。
(インタビュー終了)