劇団しようよ「アンネの日記だけでは」
- __
- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。小林さんは最近、どんな感じでしょうか?
- 小林
- よろしくお願いします。今年に入ってから芝居には出てなかったんですけど、劇団しようよに出させてもらう事になりました。8月に本番です。久しぶりの稽古に参加していて、それ以外は普通に大学生してます。しようよに出演される方はみんな所属があるので、私だけ「大学生の小林です」って自己紹介するのが、何だか面白かったですねー。
- __
- ありがとうございます。芝居以外では?
- 小林
- 実家に帰る事が多くなりました。滋賀と京都を行き来してます。あと、卒業論文を結構力入れて書いてます。あとバイトして稽古行って。
- __
- 大変充実されてるようで。
- 小林
- いえいえ。
劇団しようよ
2011年4月、作家・演出家・俳優の大原渉平と、音楽家の吉見拓哉によって結成。京都に拠点を構え、演劇作品のみならず、路上パフォーマンス作品などをコンスタントに発表。2012年には初の北九州公演を実施、その他イベント出演など多数。 私戯曲のようだとも評されるほど「私性」が高く、しかしあくまで物語を志向する戯曲と、その反面、いまここの空間と時間をなによりも丁寧に扱う、ライブ感を押し出した演出が特徴。徹底して個人的、ゆえに普遍。そんな物語が、この場所とこの時間から揺らめきたち、ふたたびそこに溶けていく。舞台上と客席のあいだに幻をうつし出す、そんな作品をお届けします。(公式サイトより)
劇団しようよ「アンネの日記だけでは」
公演時期:2013/8/9〜12。会場:KAIKA。
恥ずかしくて美しいもの
- __
- 劇団しようよ「アンネの日記だけでは」。今はどんな稽古を。
- 小林
- このところはとても劇団しようよらしい稽古というか。脚本・演出家の大原さんが悩む時期らしいです。俳優サイドと相談しながら色んな演出を試しています。稽古場で作ったモノが成立してるのかどうか探っていて、こんな土台を作りながらやってたんだって。結構新鮮で面白いです。
- __
- 一番楽しい時期のようですね。
- 小林
- 月面クロワッサンの西村さんと森さんが本番前で稽古場にいないので、色々試して遊んでる感じです。
- __
- どんな作品になるのでしょうか。
- 小林
- ほとんど、核の部分は出来てるみたいです。でも、その台本を上演したい訳じゃないとも仰ってて。どんな作品になるんだろう・・・?ええと、大原さんの文章、私は凄く好きで。結構恥ずかしい感じの事を書いてくれるじゃないですか。それをマジメにやったら、すごく見てるとこう、恥ずかしいけどキレイな感じ(もしかしたらそういうものを作りたいんじゃないかもしれないですけど)。バランスよく、作品に出来たらいいと思います。女性ばかりだし、KAIKAという劇場も普通の場所じゃないので、いい意味で劇団しようよ的なものにならないんじゃないかなと思います。
- __
- つまり小林さんは、恥ずかしくて美しいものを欲しいと。
- 小林
- あの、そういうものを好きな自分が嫌いなんですよ。自分めちゃ子供やなと思う部分を隠そうと思って生きているんですが、全く隠れてないんですが、そういう自分の嫌いな部分をくすぐるのが大原さんの文章と作品なんです。大原さんにも言ったんですが、あんまりかなという印象を受けた作品でも、でもホンマは「私、こういうの好きやな」と。そういう複雑な気持ちはあって。スーホの時も、女性ばかりの芝居を大原さんがしたらどうなるんかなと思って。
- __
- ユニット美人のような。
- 小林
- そうですね、女性が演出を付けた女性というものと、男性が演出を付ける女性ってこんなにも違うんだなと。結構それが衝撃で。それでまた、大原さんも独特な女性観を持っているので。そこに興味を持ちました。それからしばらくして、大原さんから「女性ばかりの芝居をしようと思ってるんですが」って。ああ、出ます!と。
罪悪感
- __
- 芝居を半年くらい休んで、今また稽古場に戻ってきて。何か思うところはありますか。
- 小林
- 12月までお芝居に出ていて、その時にイッパイアンテナ を退団しました。その時、芝居は自分にとって趣味なんだなという事に気付いたんですよ。というのも、劇団に何年も所属させてもらって。自分が出来る事を増やすという必要に迫られて、なら自分は何が出来るの?と自問した時に、出てこない自分が居たんです。演劇をどういう風に社会に見せて行くのか?とか、宣伝美術としてどんな良い物を作りたいのか。イッパイアンテナの小林として考えてと言われて。もちろんそうしたかったんですけど、出て来なかったんですよ。
- __
- なるほど。
- 小林
- 凄く、それがイヤだったんですよ。そういう事をしたくなかったんです。何で自分はこんなんなんだろうと、何か自己嫌悪を感じて。よくよく考えてみると、自分はお芝居を仕事にしたくないんだなあと、なっちゃったんですよ。やっぱり自分にガッカリしましたね。イッパイアンテナの皆がプロ意識を持ってやってたというのに憧れていて尊敬していて素敵だなあと思って、自分もそうなりたいと思ってたんですが、自分はそうじゃなかったんです。何で自分がそうなってるのか、いっぱいいっぱいになっているからだろうかと。だから、一旦休もうと。
- __
- それで、普通に大学生をしていて・・・
- 小林
- その間も、演劇に対する気持ちは変わらず、自分はそうなんだなあ・・・と思い。実はそうじゃなかった、という可能性も信じているんですけどね。いつか。
- __
- 趣味で演劇をするというのも大変ですけどね。
- 小林
- そうですね、確かに。一旦話は戻りますけど、劇団しようよで芝居に戻った時に、稽古場での居方とか演技の仕方が変わったという事ではないんです。小林由実として芝居をする事は変わらなかったんですが、それ以外のこととのバランスは取り易くなった様に思います。
- __
- なるほど。
- 小林
- 芝居以外の事をするのに罪悪感があったんです。私は芝居をしていなければならないと。今後しばらく、ご縁が無ければ芝居には出ないと思います。趣味なんだなと思ったと同時に、趣味として同じペースで続けようとは思っていなくて。
- __
- それはどういう心の動きなのでしょうか。
- 小林
- 何だろう。元々、単純に芝居が好きでやっていた人間でしかないので。劇団に所属してそれなりに立場が出来たけど、必要に駆られて自分の仕事を次々と入れたりしていて。劇団衛星の皆さんとか、坂口修一さんとお仕事させて頂いて。坂口さんは、予定が無いと不安になる、って。それが芝居で仕事をする事なんだなあ、自分には分不相応だな、と思ったんです。こうして自分のペースを落として、自分の演劇人としての能力は絶対に低下するけど、それでも一回、自分は回り道するべきだろうと。思ったんです。
- __
- 3年間イッパイアンテナにいて。大学生のその貴重な時間を芝居してくれていて、見せてくれていてありがとうございました。
- 小林
- いえいえ。でも今、この決断が出来て良かったなと思いますね。良いのか悪いのかはともかく、後悔は出来ないですね。
イッパイアンテナ
同志社大学の学生劇団「同志社小劇場」のOBを中心として、2007年11月に旗揚げされた演劇団体。 主な演目はコメディとコント。 劇場を気持ちよく走り抜けるライブ空間にすべく日夜活動している。(公式サイトより)
若く・キレイに・長生きする
- __
- 今やってみたい事はありますか?
- 小林
- え、雑談めいた感じでいいですかね。マッサージの資格が取りたいです。マジで非現実的な話なんですけど、お金と時間に余裕があれば。手に職系の資格が欲しいです。マッサージ、得意なんですよ。親にやっていたというのもあるんですけど。健康で長生きするというのが最近のテーマになっていて、若く・キレイに・長生きすると。美容系というのは突飛やな、あ、マッサージの資格欲しいかもと。チャレンジしたいですね。
私も父のように
- __
- 目標にしている人はいますか?
- 小林
- 父親かな・・・?父は凄いんですよ。親って絶対的なものなんで、そういう意味では母もそうなんですけど。
- __
- ええ。
- 小林
- 父はひたすら寡黙な人で、ウチは5人姉妹なんですけど、家族を養うために一生懸命働いて。お父さんがいるから、絶対道は逸れちゃいけないと思うんですよね。
- __
- 昔、娘=父親を疎んじるものという構図がありましたが、最近はそうでもないんですね。
- 小林
- 子供を育てるという目的の為に仕事を辞めなかったし、私達に苦労もさせないし、そのお陰で私も芝居出来たし。だから、私も父のようになるのは前提ですね。好きな事をする前に、自分も責任を果たす。子供を育てるのを第一にしているのを良しとしている父親のようになりたいです。第一にしたい、という訳ではなく目的をしっかり果たすという意味で。
部品の一個
- __
- 映像作品への出演もありましたね。ご自身にとってはどのような体験でしたか。
- 小林
- すごく面白い体験でした。藤井組という方たち制作のびわ湖放送でのお仕事で、私はちょっとしか出ないんですが、そこの方々と何回かお仕事させてもらいました。現場は演劇とちょっと違っていて、音響さん・照明さん・監督さんと同じレベルで役者がいるんです。そこが面白いんですよ。私の価値観だからそうじゃない現場もあると思うんですが。私のやってきた小劇場だと、役者が中心なんですが、映像を撮る現場だと役者が部品の一個でしかないという感覚。
- __
- へえー。歯車の一つ、みたいな?
- 小林
- そう、それが凄く好きなんです。素材の一個でしかないんですが、自分がどう使われるのか想像が膨らんでいくみたいな。で、結構長編の映像に出させてもらいました。それも割とハードで、初日からダイビングプールに一日中潜ったり、2月の和歌山の海に、夜9時に潜ったり。
- __
- ハードですね。
- 小林
- 大変なんですよ。セットは全て本物を用意しないといけないし。反面、すごく嘘も付ける。
質問 為房大輔さんから 小林 由実さんへ
- __
- 前回インタビューさせて頂いた、劇団ZTONの為房さんから質問です。
- 小林
- 私、前回ZTON見ましたよ。
- __
- 面白かったですよね「天狼ノ星」。小林さん宛の質問です。「おすすめの少女漫画と、おすすめのシーンを教えて下さい」。
- 小林
- おすすめの少女漫画は、私の恋愛観を構築した「彼氏彼女の事情」です。
- __
- うわっ・・・為房さんも同じく「彼氏彼女の事情」だそうです。
- 小林
- ええっ・・・!?今度語りましょうと伝えておいてください。魅力的なシーンは、主人公の妹が恋愛について説くんですが、そこがとてもなるほどな、と。この作品、登場人物一人ひとりに人生があるんですよ。それらが独立してイキイキしてるのがいいんですよ。それぞれの生き方みたいのが。女性として生きるための参考文献としてます。
「売り言葉」
- __
- いつか、どんな演技がしたいというのはありますか?
- 小林
- 出来る事なら、歳取ってからの芝居がしてみたくて。演技的には下手になってるかもしれないですけど、どう深くなっているか見てみたいですね。
- __
- 演技自体が充実しているという事かな。
- 小林
- 中学生の頃に大竹しのぶさんの「売り言葉」を見て。何か、満ち満ちているなと強く感じたんです。次の瞬間になにをするのか分からない、みたいな。それが自分の演劇の始まりだったんです。そういう演技をしてみたいと思います。
この人達に恩返し出来るような
- __
- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 小林
- 攻めていく・・・。寄り道回り道だと思うんですけど、気になる事のつまみ食いをしたい期間です。自分の方向性が分からなくなってしまうので、この期間はあんまり長く置きたくはないんですけど。気になる所にいって、収縮させて、沢山実りある事を見つけられたら。
- __
- 素晴らしい。私は10年前、そんな事を喋れなかったからなあ。立派ですね。
- 小林
- いえいえ。悩みまくりですよホントに。この何年間かは魅力的すぎる人たちと仕事出来ていたので。なるべく、この人達に恩返し出来るような人間になりたいです。なれるように頑張ります。
シュシュ
- __
- 今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 小林
- 凄いですよね、ありがとうございます。今日は緊張しました。開けていいですか?
- __
- もちろんです。
- 小林
- (開ける)あ、シュシュ?え、凄い。後で付けて写真撮りましょうよ。