距離感
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- 今日は、男肉duSoleilの吉田みるくさんにお話を伺えます。どうぞ、よろしくお願い致します。SUMMER ONIC 2012 が終わったばかりだと思うんですが。
- 吉田
- いやー、灼熱地獄でしたね。あの暑さ、僕らもちょっと引きましたね。
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- ほぼサウナでしたね。
- 吉田
- これまでも結構過酷な環境でやってきたんですが、あんなに暑いのは初めてで。終わったあと、ウチのJくんと陰核くんがうなだれてましたね。
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- 今までどんな過酷な環境がありましたか?
- 吉田
- 僕らは野外でパフォーマンスする事も多いんですが、いくら声を出しても届いてない時があるんです。その分、1.2倍くらい体を振ったりするんですが、不安ですね。果たしてこれはお客さんに届いているのか。そういう時、客席との距離を意識します。
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- 距離感。
男肉duSoleil
2005年、近畿大学にて碓井節子(うすいせつこ)に師事し、ダンスを学んでいた学生が集まり結成。J-POP、ヒップホップ、レゲエ、漫画、アニメ、ゲームなど、さまざまなポップカルチャーの知識を確信犯的に悪用するという方法論のもと、唯一無二のダンスパフォーマンスを繰り広げている。
SUMMER ONIC 2012
公演時期:2012/07/29。会場:元・立誠小学校。
飽きっぽいぼくら
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- 吉田さんは男肉旗揚げメンバーであり、0samenの主宰でもあるんですよね。なぜ、男肉であり続けるのでしょうか。
- 吉田
- あはは。いやー、やっぱりさだ夢君と大学時代から一緒で。一年のうち360日くらい一緒にいたんですよね。二人でしょうもない事を考えたり、やったり、面白いものを見に行ったりしてたんですよ。それが今ままで続いていて、この歳になってる。
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- なるほど。
- 吉田
- 男肉にいる理由ですか・・・。「俺はこれじゃないと嫌や」とか、「俺はこういう表現してる」みたいなのはないんですけどね。
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- それを聞いて思い出したんですが、男肉の作品はあえて台本を作らないとの事。毎ステージごとに、その時にしか生まれないイメージを作り続けるそうですが。
- 吉田
- そうですね、変えますね。それはある種、ぼくらが飽きっぽいところが影響してるんだと思います。団長が本番中に「この回、絶対一回は『ホワイトロリータ』って単語を入れて」って無茶な指示して。僕らで遊んでるような感覚は多少ありますね。
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- なるほど。無茶ですね。
- 吉田
- あとは陰核なんかもようセリフを変えてきますね。お客さんより俺らを笑かせようとしているのかもしれません。あ、でも流石に外せないセリフはあるんで、それは言うようにしてと。
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- もちろん、それが許せない人は許せないでしょうね。
- 吉田
- かっちり作りたい人には、ウチの稽古場にいたら発狂するんじゃないかなと思いますね。
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- 私が男肉を好きなのはそこなのかもしれません。その場限りの表現でも、やっぱり伝わるものがあるんです。何がだろうか? 男肉に限っては、それは稽古場での蓄積だけではない。現代の身体が持つ刹那性と、一概には言えるかもしれない。
- 吉田
- 確かに、その場で発生しているものは多く扱っていますね。良くも悪くもグレーなものを持って行っています。
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- 危険な時事ネタとか、もそうですね。
- 吉田
- 本当にそれを本番でやるのか、みたいな緊張感もあって(笑う)。日が近づくにつれてピリピリしてくる。まあ、変えずに堂々とやるのがいいのかなと僕は思っています。
僕らが僕らであるために
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- 男肉の作品作りの上で、必要な事は何ですか?
- 吉田
- ウチは距離感が大事なんじゃないかなと思っていて。この間のサマーオニックは元・立誠小学校の教室でやってたんですけど、お客さんとがぶり四つの近さだったんですよね。そのぐらいの至近距離が、こっちもやっていて楽しいんですよ。
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- なるほど。
- 吉田
- 今でも覚えてるんですが、independent1stで毎月一回の企画をやらせてもらっていたとき。最前列に、初めて来られたと思われるお客さんがいて、ずっと怪訝そうにされていたんですよ。でも、最後の卒業式のシーンの時に、小石が何を血迷ったか頭をブンブン振ってそのお客さんに絡んでったんです。したらそのお客さんがにこーっとして。その時めっちゃ嬉しかったんですね。ある種のコミュニケートがなされている。そういうところは僕らの利点なんじゃないかなと。僕らはひねくれものだからまともなコミュニケーションじゃないかもしれないですけど。だから、最近始めた「男肉飛び散る席」も、そういう面でいいんじゃないかなと。
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- いいですよね、「男肉飛び散る席」。接触があるんですよね。では、その距離感をもったプレイが出来るように、持ち続けたいものはありますか?
- 吉田
- 僕らが僕らであることを守る事と、反面、慣れてしまってお客さんにぞんざいになったり媚びたりして飽きられるみたいな事がないようにしたいなと思っています。
質問 高阪 勝之さんから 吉田 みるくさんへ
伸びる事、乗り越える事、前に立つ事
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?男肉としても個人としても。
- 吉田
- ダンスにしても演技にしてもラップにしても、常に、前に出来なかった事が出来るように、向上心だけは持ち続けなければあかんなと。ほんまに、それだけですね。
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- なるほど。
- 吉田
- 「こういうセリフの出し方が出来るようになった」とか、そういう実感があるから楽しいというのはあるし。「こういう表現の市からもあるんだな」と、バリエーションを発見したときの喜びもあるし。そういう神経だけは忘れちゃいかんなと。ずっと研ぎ続けたいなと思います。
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- 向上心。
- 吉田
- 真面目に演劇の授業に参加しなかったメンバーが、舞台のセオリーを無視したりすると(僕なんかは古い人間だからか)イラっとするんですけどね。僕らは演劇教育に毒されていて、あいつらがアバンギャルドなのかもしれない。
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- アバンギャルド。まあお客さんの全員がそういう教育を受けている訳じゃないですけどね、きっと。男肉のその部分にはやっぱり可能性を感じるんですよ。
- 吉田
- もちろん演劇アンチな訳じゃないですけどね。面白い事をやろうと思ったらこうなったんです。
楳図かずお「おろち」ポスター
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
- 吉田
- 開けてもいいですか?
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- もちろんです。
- 吉田
- うわっ。
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- 楳図かずおの「おろち」のポスターです。
- 吉田
- いやー。昔のマンガの巨人達の女の子の絵って可愛いんですよね。最近、エコエコアザラクのエコバッグを買ったところなので。楳図かずおじゃないですけど。いいですよこれ。「愛の奇蹟」とか、好きです。