演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

中野 守

劇作家。演出家

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チラシのデザイン

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本日はどうぞ、宜しくお願いします。
中野
宜しくお願いします。
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すみません、お忙しい中。私ですね、中野劇団を初めて拝見したのが『楽屋ちゃん』でして。あのチラシが余りにインパクトが強くて。これは観に行かなくてはと思いまして。実際観て、何で今まで見なかったんだろう、的な後悔をしましたね。
中野
あのチラシで、観てみようという人もいますね。何でこんなチラシなの?って人もいますし。
__
ええ。特に、『恋はぐだぐだ』のチラシが、インパクト強かったですね。
中野
イラストはうちの劇団員によるもので。プロのイラストレーターなんですが。あんまり無いですよね、ああいうチラシは。
__
そうですね、大阪だとたまに見かけますけどね、コミカルなイラストを使ったチラシは。
中野
ああ、ありますね。
__
京都では何故かあまり見かけませんね。
中野
うちは、どっちかっていうとナンセンス系の作品ですからね。
__
で、初めて観た『楽屋ちゃん』ですが、これが非常に面白くてですね。あの二段構えの構成が特にびっくりしました。前半、舞台の背景の楽屋から表の舞台を想像していたら・・・。意外な、という。
中野
そうですね。でも、実際に(舞台に)降ろすまではもう、どう転ぶかは博打みたいな感じで。ちょっと分かりづらかったら全く食いついてもらえんかなと思いましたしね。
__
そうでしたか。ええと、やっぱり、お話は中野さんが全て考えておられるのですか?
中野
はい、全部考えてます。
__
ご出身は、確か・・・。
中野
未踏座です。中々、パイプが出来なかったんですよ。大学時代に。
__
パイプ?
中野
劇団同士の、横のつながりが。まあ、後で聞いたら他の大学劇団さんも似たようなものだったそうですが、龍大にいた頃は他の劇団さん同志は凄い仲いいんだろうなと思っていたんですが。学生の頃はよう出ていけなかったですけどね。ビビってしまって。
__
現在はナンセンスコメディをされておりますが、昔からその路線だったんですか?
中野
いいえ。最初は、なんて言うたらいいんですかね。ダンスやったり、歌入れてみたり、歴史ものだったり、派手な、学生の皆がやってたようなのをやってて。で、何かね・・・、好きやったんですけど。途中で、踊ってても自分達だけが満足していて、観ている方はそんなに完成度の高くないものをみてもきついんじゃないかと。他に上手い人がいるじゃないですか。で、ある日地味系の芝居を観て、それに影響を受けて。座劇というか、会話劇にガラっと変えて。
__
なるほど。
中野劇団

京都を中心に活動する劇団。脚本・演出の中野守氏の織り上げる、緻密なプロットのコメディ。

中野劇団第4回公演『楽屋ちゃん』

初演公演時期:2005年12月9〜11日。会場:アトリエ劇研。

中野劇団第3回公演 恋はぐだぐだ

公演時期:2005年2月26日〜27日。会場:スタジオヴァリエ。

東京公演

__
東京公演は、これが初めてなんでしょうか。
中野
初めてです。東京自体はほとんど行った事がないんで。一回だけ、劇場の下見に日帰りで5箇所ぐらいまわって。あと、東京という設定のシーンがあったので、稽古期間中に取材で行った事はありますね。だから全然慣れてもないし。
__
誰が公演に来るのか、分かりませんしね。
中野
そうですね、誰も来ないんちゃうかなと。だからぜひ、一杯来て欲しいですね。
__
東京公演が決まったのは、どういう経緯があったのでしょうか。
中野
いや、「やってみいへんか」とか「やりましょうよ」という内外の声があって。自分としては誰も何も言わない限りはやる気も無かったんですが。ええ年になってきて、でさらに5年後ぐらいに行こうってなった時にその体力がないんじゃないかなと。
__
ああ。
中野
今一回行っておいたら、今後あってもいけるかな、というのはあるし。
__
はい。
中野
あと、ネットでちらほらと噂を聞いてくれる人がいるんで。まあそんなに多くはないんですけど、そういう人に観てもらえればなと。
__
ええ、私の周りでも色々評判が良くてですね。
中野
いやいや、京都でもだいぶ存在を知られてないので・・・。
__
いえいえ、アトコンの公演とか非常に評判が良かったみたいですよ。
中野
おかげさまで。あそこは場所が良いですね。
アートコンプレックス1928

三条御幸町の多目的ホール。ダンス、演劇公演、ショーやワークショップ、展覧会等を開催する。

演目

__
今後の、中野劇団さんの展開については。
中野
そうですね、・・・何か、こういう事を答える場で毎回答えが変わったりするんですけど、働きながらやってる人間が多いので。そんなにこう、骨をうずめるとか、身を捧ぐっていうのが出来ないんですよ。
__
はい。
中野
でもまあ好きでやってて。やるからにはっていうのがあるんで。演目一個一個で、どれだけ残るものが作れるかっていうのが。劇団としてっていうのは、特に重要なんじゃないかなと。沢山の人に観に来てもらって、でグレードが上がればいいと思うんですけど。「あの芝居は凄かった」という、演目で残していければと思うんですけどね。
__
評価の高い作品を残す事が目標。
中野
そうですよね、そんな劇団を維持していきたいですね。ですから、いい役者さんとかいいスタッフさんとかと繋がる為には、色々と展開していきたいなと。
__
演目の質を高める事で、クリエイターとしての道を作って行きたいという事ですね。
中野
そうですね。役者がね、(話や演出が)面白くなかったら面白くないとはっきり言うんですよ。で、やる気ないみたいな雰囲気を出すので。要は、劇団を維持するためにはヘタを打てないんですよ。
__
なるほど。
中野
おもんなくなった時点で次がないんかなと思ってしまうので。
__
面白い中野さんを維持しなくてはならないんですね。
中野
そうですね。それが良い意味でハードルになってるんですけど。センスを磨けるのはいいんですけど、もっと甘くてもいいんちゃうかと。

笑い

__
今後は、どんな面白さを目指していかれるのですか?
中野
やっぱりもう、発明しかないんですよね。どんだけ、笑いのロジックを発明できるかというところに掛かってくるんで。やっぱり、これまでは既存の笑いを使って、それを自分の言葉で肉付けする、というのが多かったんですけど。今後は、自分の、笑いの幹があって、それの肉付けも自分の手によるものになっていけたらと思うんですけどねえ。
__
うーん。
中野
やっぱり、どうしても既存のものに頼ってしまっている所があるので。
__
笑いのロジック。
中野
数はそんなにないと思うんですよ。世の中に出回ってるのは。だから一個発明するだけで全然違うと思うんですよ。
__
ラーメンズとか、そんな感じですよね。
中野
そうですよね。これは無かったやろ、というのが出てきた時はざまみろとかしてやったりとかいう感じになると思うんでね。そういう所ですよね。
__
作品作りにおいて、稽古場を使って、笑いの展開を繰り返して俳優に落としていくというプロセスがあると思うんですが。やはり何十回とやっていくと、芸が死んでいくのでは。
中野
ああ、もう死にますね。大体、体で覚えたという頃には、皆覚えてしまっているので面白くないんですよね。じゃあ面白くしようかとヒネりだすと内輪ウケになってしまうと。結構気をつけてはいるんですけどね。
__
で、死んだと思った演技を舞台に上げてみると、これが結構面白い。
中野
そうですよね。だから、役者が戸惑ってるけどお客さんは笑っているというパターンがあるんで。難しいですよね。稽古場でギャラリーがいてくれると、刺激にはなります。反応が分かるから。

団員

__
大体、劇団員の方は3人ぐらいだと聞いておりますが。
中野
そうですね。最初はユニット形式だったので。ゲストと団員の境界線も微妙な場合がありますし。来て頂ける場合は、ご期待に応えなければならないですね。
__
難しいこともあるでしょうけどね。
中野
うちのメンバーは仕事してるんで、毎回出れなかったりするんで。たまたま今回は全員出れたんですけど。「次ちょっと無理ですわ」とか言われたら、しゃあないんで。
__
働いていらっしゃるとしょうがない所もありますね。
中野
ホンマ団員の多い所が羨ましいですね。どうやってるんだろう。
__
仕事のスケジュールもありますしね。
中野
時間も結構割きますしね。公演間のスパンも、そんなに詰めて打てないんで。年に多くて2回くらいしか。2回やれば2年経ってる時もあるんで。それぐらい経つと環境も変わってたりするんですよね。
__
でも、そういうペースでも面白いという評判が立っていればお客さんは来てくれると思うんですけどね。
中野
そうですね。でも忘れられる前に打たななあという(笑う)。
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でもまあ、もうちょっと社会人劇団という形で、コンスタンスに活動されている方々もいらっしゃいますしね。
中野
そうですね。
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それで、もちろんちゃんと面白い作品を作られているところもありますし。
中野
中々、やろうと思っても出来ない人もいますしね。出来る環境があって、やれているというのは良いんちゃうかなあと、言うところですねえ。

折りたたみ傘

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今日はですね、お話を聞かせていただいたお礼にプレゼントがあります。
中野
ええ!いいんですか。
__
どうぞ。
中野
あ、ありがとうございます。開けてもいいんですか?
__
どうぞ。
中野
(開ける)あ、これは。
__
傘です。
中野
あ、折りたたみの。僕、傘持ってないんですよ。
__
あ、そうなんですか。
中野
こんなちっちゃいんですか今の傘って。僕止まってますわ時代が。いや、ありがとうございます。
(インタビュー終了)