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坂本アンディ

脚本家。演出家。俳優

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最初から最後までスベりきろうぜ!!!

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、坂本さんはどんな感じでしょうか?
坂本 
こちらこそ、よろしくお願いします。この間、大阪でのShort Act Battle に出演しまして。
__ 
あ、そうでしたね。残念ながら拝見出来なかったんですが、どんな作品だったのでしょうか。
坂本 
ちょっとここでは言えないような内容なんですけど、全自動自慰装置という機械の発表会というシチュエーションで、全員が録音した音声でスピーチするんですけど、おっぱいの魅力とかを喋り終えたら死んでいくんですよ。唐突に。個人的には面白かったんですけど、5位中5位でした。
__ 
素晴らしい。
坂本 
順番的にトップバッターの時と、3回目の時があって。トップバッターの回はすべりまくりました。気持ちいいくらいすべりましたね!
がっかりアバター

結成2011年6月。主催の何とも言えない初期衝動からほぼ冗談のように結束。2011年6月vol.1『岡本太郎によろしく』2012年11月vol.2『啓蒙の果て、船降りる』(ウイングカップ2012受賞)2013年6月vol.3『俺ライドオン天使』(公式サイトより)

Short Act Battle

公演時期:2013/12/2〜4。

ゴム手袋

__ 
がっかりアバターの作品についてお話出来ればと思います。2013年6月に上演された「俺ライドオン天使」 、すごく面白かったです。個人的な所感ですが、非常に真摯に作られた下ネタであると感じました。大変下劣な下ネタに、あるフェアさを見た気がしたんです。いじめられっこもリア充も障害者も幽霊も皆同列に性欲を持っているという観点に、差別意識の無さを感じました。後半でひきこもりが出てくるんですけど、彼は非常に下種なんですが、それをとても正直に描いている。ネガティブな人間性すら受け入れ、下種をそのまま認めている。なぜ、そうした姿勢をとる事が出来るのでしょうか?
坂本 
もしかしたら、以前見た映像に影響を受けているんじゃないかと思います。障害者の性的支援サービスを紹介するドキュメンタリーで、おばさんがゴム手袋をしてしごいてあげるというもので。それを見た時に、「そうか、こういう人もそうなのか」と。障害を持って生まれた子を天使という言葉で呼んであげる親がいるけれども、障害者も当然性欲を持ってるんですよね。
__ 
そうですね。
坂本 
そういうモヤモヤした思いがあるんですよね。自分の中で答えが出ている訳じゃないんですけど。でも、その映像を見た時に納得した思いもあったんです。性欲というものは、NHKがそれを取り上げるぐらい歴然と社会にあるんです。
__ 
そこに気付いた時、何かが腑に落ちた。
坂本 
はい。もちろん、下ネタをやっているのが楽しい、面白いというのはありますけど。
がっかりアバター vol.3『俺ライドオン天使』

公演時期:2013/6/28〜30。会場:ロクソドンタブラック。

僕たちは幸福だ

__ 
下ネタは闇じゃないですからね。汚いかもしれないが、醜い闇の部分ではないはずだ。では、なぜそれを描こうと思うのでしょうか?
坂本 
旗揚げの段階から説明したいんですが、元々通っていた高校がフリースクール系で。アーツエンターテイメント学院という、名前こそ芸術系なんですけど実体は学校にほとんど来てない子らが籍をおいて卒業出来るようにしてあげるトコで。そこに来てる人らと旗揚げしたのががっかりアバターです。
__ 
なるほど。
坂本 
それこそ、一緒に芝居をやってた中から水商売に行く人もいて。最初はショッキングだったんですが、それもまた面白いのかなと思えるようになったんです。ホストにハマって風俗で働き始めるようになっても、それはそれで面白いのかな。みんな、悲惨がらずにもっと面白がっていったらいいんじゃないか、って。
__ 
世間的な価値観と対立する形ではなく、個人の価値観が存立していますからね。
坂本 
元々音楽が好きで、大槻ケンヂさんの曲を聞いていて。筋肉少女帯を好きになって、その流れです。専門学校では、劇団ZTONの河瀬さんが先生でした。
__ 
芝居を始めた頃に衝撃を受けた劇団は何ですか?
坂本 
大人計画です。松尾スズキさんの本ですね。

質問 川面 千晶さんから 坂本アンディさんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました川面千晶さんから、質問を頂いてきております。「今までで一番印象に残っている恋愛エピソードを教えてください」。
坂本 
僕寝取られフェチなんですけど、それでも彼女とは頻繁に連絡するんですよ。いつだったか、話がこじれて「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」・・・って何行も続いたメールが届いた事があります。それくらいかな、言えるのは。

大理不尽

__ 
坂本さんの作る作品は、この世にあってどのような存在であってほしいですか?
坂本 
一つあるんです。モテない、鬱屈としたヤツのハケ口。これさえあれば生きられる、みたいな。「いいなあ、こいつら、アホやなあ」と思ってもらいたいです。僕もそういう人たちに励まされてきたんですよ。筋肉少女帯やみうらじゅんさん、そういう人たちに救われてきたんです。目指せ、演劇界のGAROですね。
__ 
サーカスみたいな見世物になればいいんですよね。
坂本 
そうですね、見世物になりたい。
__ 
最近、観客の感情移入について考えているんです。会話劇を見る時、セリフを投げかけられた瞬間の役者って、観客の頭の中では「特定の誰か」として意識されている訳じゃないなあと。
坂本 
ええ。
__ 
極端な例で言うと、空中ブランコから落ちて地面に激突する瞬間、その身体は誰かという属性なんて持っていなくて、砕け散る肉体としてしか印象されないんじゃないかなと思っていて。そして、観客の肉体的感覚はその時の誰でもない身体に強く移入し、その身体が臨む破壊を直観し仮体験するであろうと。であれば、役者に炸裂したエネルギーはそのまま観客の脳みそにて客を焼くんじゃないかと思うんですよ。それは快感を伴うに違いない。だから、処刑の瞬間の理不尽を、尖った劇団には期待してしまうんです。
坂本 
分かります。僕も理不尽見たいです。
__ 
これはもう、世界平和とは完全に関係ないですけどね。
坂本 
真裏ですもんね。
__ 
でも、ハケ口は必要ですからね。
坂本 
そうですね、TVドラマで気が晴れる人もいますけどね。

野生に僕らは逆らわない

__ 
そういう意味では、「俺ライドオン天使」ではかなりスカッとしました。坂本さんにとってはどんな作品でしたか?
坂本 
楽しかったです。演劇って毎回、違う体験を得られるんですよね。退屈しないんです。例えば、キモオタが女の子のヒップラインを全身を使って見るシーンがあったんですけど、そこが僕の人生の中で5本の指に入る楽しさでした。彼とは「あなたが一番気を付ける事はなんですか?」「お尻を目で追いかける事です」「それは役者として役を演じる事以上に大切ですか?」「役者として役を演じる以上にお尻を目で追いかける事が大切です」こんなやり取りを30分くらいして、周りの人は全員引いていたんですけど、そういうコミュニケーションは大切にしたいです。
__ 
なるほど。しかし、過激な下ネタが予想されるチラシだったにも関わらず女性客が大変多かったですね。
坂本 
そうですね。もしかしたら女性的なのかな?意外と、男性より女性にウケるのかなあ?
__ 
小手先ではない品性下劣な下ネタを、もしかしたら女性こそ求めているのかも?
坂本 
ちょっと、話を聞いてみたいですね。次回公演はレディースDAYを作ってみたいですね。

カルト劇団、がっかりアバターの繁栄

__ 
観客と、どう接するのが理想だと思いますか?
坂本 
うーん、意外とシビアなんですよね。twitterで炎上したから・・・どうしようかなと。自分の意見としては、今の関西小劇場のあり方は、僕は違うと思うんですよ。伸びない、派生しない。演劇に全く関係ない人にリーチ出来ていない。単純に情報が行ってくれないという事でもあるんですよね。何とかして大きくなりたい。って思いますね。
__ 
カルト的な人気が出たらいい気がしますね、とくにがっかりアバターの場合は。今、情報ってきっと、必要とされる人には行きやすい環境にあるんじゃないかと思うんですよ。面白い情報は、つまり目を引く内容なので。
坂本 
具体的にどうすればいいですかね?
__ 
カルト劇団として、NAVERまとめとかに掲載されたら有名になりやすいんじゃないか。例えばツリメラとか。NAVERまとめにあったんですけど、プロデューサーの小林タクシーさんは2014年の3月末までにCDを1000万枚売らないと死ぬらしいんですけど・・・
坂本 
それめっちゃ面白いですね!メモっときます。

敵も味方もこの胸に宿して

__ 
twitterで炎上した事について、もう少し。「観客層を一掃する」という表現は良くなかったとは思うんですが、演劇人として革命志向であるのは必要な条件だと思っています。
坂本 
ええ。
__ 
それを止めたら演劇人として死ぬという事じゃないかと。
坂本 
もうホントにそうだと思います。でも、「観客層を一掃する」というのは言い過ぎでした。この場を借りてお詫びします。申し訳ございませんでした。周囲から、「たくさんの敵と、味方を作った」と言われました。少なくとも、twitterで意見を発するのは中々難しいですね。
__ 
でも、きっと、言わないよりはマシです。色んな人の琴線に触れたのは大切だと思うんです。
坂本 
そうですね。演劇って、革命じゃないですか。そういう面を忘れてダラダラやってるのは僕には疑問です。客席に座っていてもそう思います。

カルト劇団、がっかりアバターの衰亡

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
坂本 
自分の面白いと思った事をやるだけですね。いまの創作方法は、僕が面白いと思った事をみんなで吟味する形なので、僕が面白くなくなったらそこで終わり。そんな劇団なので。
__ 
これからも楽しみにしております。

ジャムゥ石鹸

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
坂本 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
坂本 
えっ、これは、石鹸?あ、ハートマークですね。
__ 
それはですね、ニオイの気になる女性の為の石鹸です。
坂本 
?あ、裏に「私のニオイとシマリは大丈夫?」って書いてますね。しかも、タンポンみたいな形してる。紐も付いてるし。入れて使うんですかね?
__ 
さあ、でも、普通のセッケンとしても人の役に立つらしいですよ。
坂本 
なぜ、これを僕に?
__ 
今回のプレゼントは、至上最もコンセプチュアルでした。以前の炎上騒ぎの時の「観客席を一掃し・・・」という下りが気になったので、その意趣返しという事になりますが、面白半分ですね。
坂本 
ありがとうございます!ちゃんと拾ってくれて、嬉しいです。
(インタビュー終了)