演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫
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第三劇場 引退公演「ミミズクと夜の王」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、畑迫さんはどんな感じでしょうか。
畑迫 
最近は、所属している第三劇場の方に戻って引退公演の準備をしています。「ミミズクと夜の王」。原作は電撃文庫のライトノベルで、それを舞台化するという事で、反響がすごくて。原作のファンの方が気にして下さったりして。ご期待に応えられるか怖いですね。
__ 
楽しみです。畑迫さんはどんな役どころですか?
畑迫 
今回少年役なんです。三劇に入って初めての役も少年役だったので、リベンジって感じですね。どれだけ上手くなってるかな、って。
__ 
意気込みを教えてください。
畑迫 
しばらく、三劇の本公演には参加していなくて。外に出演させてもらっていたので。良い影響を与えたいなと思います。この公演で学生劇団を引退するので。
第三劇場

第三劇場は1954年に設立された同志社大学を拠点に活動する学生劇団です。オリジナルの脚本の上演を主とし、同志社大学新町キャンパス別館小ホールにて年に5回の公演を行っています。(公式サイトより)

第三劇場 引退公演「ミミズクと夜の王」

原作:電撃文庫『ミミズクと夜の王』(著/紅玉いづき) 脚本・演出:高田美沙希 ■日時 10/14(金) 19:00 10/15(土) 13:00/18:00 10/16(日) 14:00 ※開場は開演の30分前です。 ■会場 同志社大学新町別館小ホール (京都市上京区新町通今出川上ル近衛殿表町159‐1)

ないすばでぃプロジェクト「コーヒー荳たべちゃった」

__ 
畑迫さんは外部への出演が多いですね。夏から劇団しようよ、ないすばでぃプロジェクトの2本に出演されていましたね。まず、ないすばでぃプロジェクト「コーヒー荳たべちゃった」。いかがでしたか。10回ものロングラン公演でしたが。
畑迫 
10回もやれば途中で飽きるかなと思ったんですが、そうはならず。他のキャストさんが入れ替わり立ち替わり小屋入りしてくるというのもあったんですが、毎回違う味でした。
__ 
上手い事いいますね。
畑迫 
(笑う)
__ 
印象深い思い出を3つ教えてください。
畑迫 
開演の1時間前にしか小屋入りできない事。だから衣装を着て来るんですよ。他の小屋じゃありえない、フィガロならではの本番前の感じ。三劇の稽古を17時に終えてから、18時にフィガロに小屋入りして、19時に本番が始まるという不思議体験をしました。
__ 
芸能人みたいやな。
畑迫 
あはは。しかも、その本番は小屋入り前には稽古はしていないという。何やってんねやろう私。
__ 
二つ目は?
畑迫 
開場中からちょろっと芝居が始まっているんです。店員役の高島Q太くんと日替わりのお客さん役が会話しているんですけど、何人がそれに気づいているんだろうって、それをちらちら見るというのが楽しかったです。
__ 
実際カフェ店員やってましたからね。
畑迫 
難しかったですね。飲食でバイトした事無かったんで。
__ 
3つ目は。
畑迫 
去年は冬にないすばでぃプロジェクトに参加して。京都と大阪で展示公演をやったんですけど、その時も劇場ではないところで公演したんです。ただのギャラリーだから、中の様子が分からないんです。他の役者さんが段取りで入ってくるタイミングが遅くなったりして、その間を埋めるために何か喋らないといけない。今日は何を喋ろうかな、みたいな。
__ 
「コーヒー荳たべちゃった」でもそんなタイミングがあったみたいですね。そういうところを含め、チャーミングな作品でした。私が見たのは副音声回だけだったんですが・・・
畑迫 
副音声回。そんなのもありましたね。
__ 
副音声っていうか。完全に5号の大声による解説でしたけどね。
畑迫 
ねえ!全然副じゃない、主音声(笑う)すごいうるさいんですよ。
__ 
喫茶店中に響きわたる声で、しかも意外にコメント能力が高く、強度のある深夜の笑いになっていました。非常に面白かったですが、正確には「コーヒー荳」自体は見ていないからなあ。でも贅沢な回でしたよ。
畑迫 
そうでしたね。
__ 
作品をみんなで作って、それをよりによって演出が、しかも本番の上演中になんと大声でツッコミ続け壊していくという。しかも生声で。
畑迫 
ぶっ壊されていきましたね。
__ 
ずっと畑迫さんにツッコんでましたね。
畑迫 
ねえ、ちょいちょい聞いてたんですけど私ばっかり。あんまり聞きすぎると私の頭の中が意味不明になっちゃうんで。小道具のお菓子食べてたら「何食ってんだあの女!」って。
__ 
言ってましたね大声で。でもやっぱり副音声の無い通常の回を見ておきたかったです。
畑迫 
ストーリーとかはあんまり無い作品だったんですけどね。
__ 
総括して、どんな経験でしたか?
畑迫 
ないすばでぃプロジェクト自体、他の現場とはひと味もふた味も違う現場なんです。5号さんは結構、稽古場でたくさんお話してくれるんですけど、それに近付いていくのは、2作品に参加してもやっぱり難しくて。でも、そういう労力のいる現場は大切だなと思いました。
__ 
5号の会話劇に対するスタンスに興味があって。特別な目で見てもらいたくない、ですよね。生活に溶けている、肩肘を張らずに見てもらえるような。
畑迫 
敷居の低い芝居であることが大切で、だからこそやってる方は大変なんですよね。ないすばでぃの場合は、客席と舞台の間に垣根があると良くないというのがあって。やっぱり、今回のフィガロの公演でも、普通に喋っているように台詞を言うのはやっぱり難しくて、そうやってるつもりではいたんですけど、「まだ芝居しすぎていたんじゃない?」って言って下さるお客さんもいて。ああそうなのかあ、って。無意識で芝居してたんだな、と。難しいですよね。劇場以外の場所だという事もあって。
京都府文化力チャレンジ事業. 「コーヒー荳たべちゃった」

公演時期:2016/9/19~25日。会場:喫茶フィガロ。

劇団しようよ「こっちを向いて、みどり」

__ 
劇団しようよ「こっちを向いて、みどり」。いかがでしたか。
畑迫 
初めて大学以外の場所で見た小劇場のお芝居が劇団しようよだったんです。KAIKAで上演された「パフ」再演を見て以来、一番好きな劇団だったんで。出演者募集を見て、「うわ!応募するする!」って飛び込みました。採用していただいて本当に嬉しかったんです。
__ 
女子高生役でしたね。高校の先生に対してちょっかいを掛ける。先生に対して複雑な感情があったんですね。
畑迫 
「こっちを向いて、みどり」は、しようよがgate#14《sep》で上演した「ここに居たくなさ過ぎて」をベースに作られた作品なんですけど、実はこの作品からしようよの作風は変わったんじゃないかなと思ったんです。でも、「みどり」の冒頭でカップルが新居の部屋の間取りから生活を想像するシーンは、以前のしようよの明るくてファンタジーな要素が残っていて。それを稽古場で気づいたとき、「あー、私今しようよに出てる!しようよっぽい!」って感じました。シリアスなのも好きなんですけどね。
劇団しようよ 新作公演2016 ロームシアター京都 オープニング記念事業「こっちを向いて、みどり」

公演時期:2016/6/24~26。会場:ロームシアター京都 ノースホール。

影響をうけて・・・

__ 
畑迫さんがお芝居を始めたのはどんな経緯があるのでしょうか。
畑迫 
高校2年生くらいのときに、DVDで「SP」という映画を見たんですよ。それで女優の真木よう子さんの事が好きになって。でも次の連続ドラマでは180度違う女の人になっていて、女優ってすごいな、って。私もこれやりたい、って思って始めました。
__ 
なるほど。
畑迫 
演劇部のない高校だったんで、大学から始めようと。劇団っぽいところに所属しながらでも大学に行けるのはどこかなって探し始めて。そうしたら京都が良さそうで、ネットサーフィンしてたら第三劇場に辿り着きました。演劇をするために京都に来た感じです。
__ 
演劇を始めてからご覧になった、影響を受けた作品はありますか?
畑迫 
東京の劇団なんですけど、アマヤドリの「ロクな死にかた」が好きでした。今までの観劇至上一番好きだと思います。群像劇の要素もあり、人間と人間との生々しいやりとりもあり、でも台詞らしい台詞、演劇らしい演劇でもあり、全てが詰まっていて、でも全てが一つのテーマのために寄り添っている。ああかっこいいなあと、純粋に思いました。

質問 菅一馬さんから 畑迫 有紀さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた方々から質問を頂いてきております。菅一馬さんからです。「健康法を教えてください」。
畑迫 
健康法ですか…。週1回、クラシックバレエの教室に行ってることぐらいですかね。昔習っていたんですけど、演劇を始めてからまたやりたくなりました。
__ 
健康にいいですか?
畑迫 
いいといいな、って感じです。

質問 園田郁実さんから 畑迫 有紀さんへ

__ 
次は園田郁実さんからの質問です。「好きな人が出来たら、どんなアプローチをしますか?」
畑迫 
積極的に話しかけたりだとかはしないんですけど、近付いてって、気付いてくれるのを待つ感じですかね。でも、大体バレてます。隠し事が出来ない、何でもかんでも顔に出るって、周りからよく言われます。
__ 
少女マンガの主人公みたいですね。
畑迫 
(笑う)

質問 ニシノトシヒロさんから 畑迫 有紀さんへ

__ 
匿名劇壇のニシノトシヒロさんからも質問です。「卒業してからも演劇を続けますか?」
畑迫 
続けたいです。目処を立てないと。

どんどん埋めていかなきゃ

__ 
役者としての最近のテーマは?
畑迫 
いろんな事をやりたいです。ミュージカルにも興味があるし、ダンスもやりたいし、ないすばでぃプロジェクトみたいなお芝居らしくないお芝居も好きだし、ゴリゴリのエンタメにも殺陣にも興味あるし、どんどん間口を広めていきたいです。
__ 
さしあたっては?
畑迫 
今後の出演予定をどんどん埋めていかなきゃですね。
__ 
卒業は出来ますか?
畑迫 
1年残して卒業出来ちゃいそうなぐらい、単位はちゃんと取ってますよ。
__ 
素晴らしい。成績良いんですね。私は全然ダメだったから…。

自分の身体に結びつくようにしたい

__ 
難しい演技に対し、どう対応しますか?
畑迫 
その台詞を書いたのは私じゃなくて作家さんだし、だから必ずしも私が思っている事じゃないんですけど、それでも嘘を付きたくないなと思っていて。役者として舞台に立っている状態で嘘は付きたくないですね。自分はこうは思わないけれど、極力自分の身体に結びつくようにしたいです。何回も台詞を返したり、台詞について考えて論理付けていったり。
__ 
身体と心になじませる。
畑迫 
基本的にそうやって作ってるかもしれないです。
__ 
最近の私のテーマなんですけど、台詞をしゃべっている時に自分の台詞を聞いてますか?
畑迫 
ああっ。聞いてないことはないと思うんですけど…そうですね、自分の演技の映像を見ていてそんなに違和感が無くなってきています。だから、ちょっとずつ成長していってはいると思ってます。

パラレルワールド

__ 
初舞台はどんな感じだったんですか?
畑迫 
三劇だったんですけど、いままで演劇もなにもやってこなかったど素人だったんです。よく何も分からない状態だったので参加できるかどうかもわからなくて、「参加するなら何時までにメール送ってね」て連絡が来て。キャストを選ぶということでセリフを読んだりしたら、主役に選ばれて。
__ 
無茶苦茶ですね。
畑迫 
誰よりもセリフが多くて。脚本もオリジナルなので、完成も遅くて、セリフの改訂も何回も何回もあって。でも、その時の演出家さんが、演技のやり方からすべて、手取り足取りで教えてくれて。舞台上に一人だけの時間が多かったんですけど、初舞台でその空間を独り占めするというのが大きな経験でしたね。全然、別のパラレルワールドにいるんじゃないか、って思うぐらい。特に舞台にこだわっていたわけでもなく、ただ演技がしたいという理由で入団したのに、舞台が楽しい、と思うようになったんです。

あれから、これから

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
畑迫 
2回生の頃から、三劇に所属しながら外の活動に参加して、時間が空いたら三劇に戻るみたいなことができていたんですが、引退以降はそれは出来なくなる。当たり前なんですけれど、甘えていられないですよね。今年20歳になった時、絶対言い訳をしない大人になりたいと思ったんです。甘えない、言い訳をしない俳優になります。

デッドストックのガラスコップ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
畑迫 
うわあ、ありがとうございます。開けていいですか。
__ 
どうぞ。割れ物ですのでお気を付けて。
畑迫 
あ、グラスですね。すごい、何を入れようかな。
__ 
デッドストックの製品らしいです。
畑迫 
間口の広いコップ。飴ちゃんとか入れたいですね。
(インタビュー終了)