エイチエムピー・シアターカンパニー「アラビアの夜」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。高橋さんは最近、どんな感じでしょうか。
- 高橋
- よろしくお願いします。最近は、1週間ぐらい前まで、職場が主催している演劇フェスティバルで忙しくしていました。次は、エイチエムピー・シアターカンパニーさんの「アラビアの夜」に出演させて頂くんですが、これで稽古にようやく腰を据えられるな、という状態です。
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- お疲れ様でした。お仕事以外のプライベートではどんな感じですか?
- 高橋
- プライベート。僕は漫画が好きなんですが、最近は忙しかったのであまり読めていなかったんです。買っていたものを消化していこうと思います。
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- 積読ですか。それぐらい忙しかったんですね。一番最初に読みたいのはどれですか?
- 高橋
- 山田玲司先生の「CICADA」(シカーダ)という作品です。漫画が禁止された世界のお話で、連載時からずっと気になっていたんですけど。すぐ読みたいです。
エイチエムピー・シアターカンパニー 同時代の海外戯曲Ⅲ『アラビアの夜』
作:ローラント・シンメルプフェニヒ 演出・舞台美術:笠井友仁 翻訳:大塚直 ドラマトゥルク:くるみざわしん(光の領地) 2014年度に演出・笠井友仁が文化庁芸術祭新人賞を受賞した「アラビアの夜」。 今回、新キャストで新たに「アラビアの夜」を上演! 現実とファンタジーが入り混じる「語りの演劇」をぜひお楽しみください。 あらすじ 夏の夜、ある高層マンションの8階でフランツィスカはシャワーを浴びていた。 彼女に記憶はない。 現在の生活も、どうして友達のファティマとこのマンションに越してきたのかも思い出せない。 シャワーを浴び、日が沈むと同時にソファで深い眠りに落ちる彼女の元を3人の男が訪れる ― 向いのマンションに住むカルパチ、 ファティマの恋人カリル、 そしてマンションの管理人ローマイアー。 何気ない現実的な世界に、象徴的なイスラムの幻想空間が入り込む。 ファンタジーとリアルの境界が融解する。 出演 ☆…アラビアチーム フランツィスカ ― 原由恵 ファティマ ― 水谷有希 カルパチ ― 高橋紘介 カリル ― 藤田和広 ローマイアー ― 澤田誠 ★…ナイトチーム フランツィスカ ― 畑迫有紀 ファティマ ― 石川信子 カルパチ ― 山下裕矢 カリル ― 福田薫 ローマイアー ― 坂本正巳 日程 2017年3月18日(土)~20日(月・祝) 3月18日(土)14:00☆/17:00★/20:00☆ 3月19日(日)11:00★/15:30☆/19:00★ 3月20日(月・祝)11:00☆/15:30★ ※Wキャストで上演します(☆…アラビアチーム、★…ナイトチーム)。 ※上演時間は約1時間~1時間15分を予定 会場 in→dependent theatre 1st チケット 当日 一般3,300円/25歳以下・障がい者2,800円 予約割 一般3,000円/25歳以下・障がい者2,500円 先得決済前日 一般2,600円/25歳以下・障がい者2,100円 先得決済14 一般2,200円/25歳以下・障がい者1,700円 高校生以下 一律500円 (詳細はリンク先をご確認ください。)
モノローグ演劇?
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- エイチエムピー・シアターカンパニー「アラビアの夜」、ですね。
- 高橋
- 今回の作品はダブルキャストで、オーディションで集められた方も多いんです。でも僕のいるチームは、結構常連の方が多くて。
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- 話題の作品ですよね、「アラビアの夜」。
- 高橋
- 僕は映像で見せてもらったんですけど、演出方法が非常に面白くて。でも役者は大変だろうな、と思いました。役者に求められるものが結構多い現場です。
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- と言うと?
- 高橋
- まず戯曲が、語りの演劇という、今回の作家が提唱しているジャンルなんですけど。例えば5人それぞれの一人称の小説が、バラバラに挿入されていると言うか。だからセリフの交わし合いなんかでも、普通の絡みかたをしないんですよ。その辺りが、これまでに無かった想像の掻き立てられ方をしてすごく面白いんですが、それを覚えてやる俳優の方はやっぱり大変で(笑)そこに、エイチエムピー独特の身体表現が絡んできて、フィジカルの大変さも加わってきます。今は各チームの役者が戯曲に対して、それぞれのアイディアで仕掛けていっていますね。
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- 役者に求められる部分がとても大きいですね。
- 高橋
- 当たり前の事なんですけど、お客さんに内容が伝わるように演技する、その責任が大きいですね。でも、モノローグ、語りを主に用いるんです。自分が今、このシーンでどうしたか、という行動をセリフで説明するんです。例えば「椅子に座る」演技も、実際に俳優が椅子に座らなかったり。ただ、お客さんに「そこで椅子に座った」ことがわかるように語ってくれと。
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- それは相当、ややこしそうな演出ですね。ただ、とても刺激的だという事は分かりました。
- 高橋
- 余裕のある方は、是非どちらのチームも見て欲しいと思います。
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- 意気込みを教えてください。
- 高橋
- 僕、今回初めて大阪で芝居をするんですよ。なので大阪のお客さんに存在感を残せたらいいなと思ってます。
演劇でしかできないことがある
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- 高橋さんが演劇を始めたのは、どんな経緯だったんですか?
- 高橋
- 高校の演劇部からです。それまでずっと運動部だったんですけど、根が体育会系ではなかったので、しばらくしてやめちゃったんですよ。だからしばらくは帰宅部だったんですけど、クラスの女の子に演劇部に誘われて。その演劇部は当時、部員が女の子4人だけっていう状態だったんですけど、このままじゃ大会に出れないから、助っ人でいいから誰か、って、片っ端から声をかけてたんですね。
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- なるほど。
- 高橋
- そんなに話したこともない女の子だったんですけど、まあ裏方ならいいよと。で、高校演劇あるあるなんですけど、男子が入ってきたら部員達がすごく喜ぶんですね。「せっかく男が来たんだから、当然出てくれ」となって。生まれて初めて演劇をしましたね。そうしたらセリフを言ったりするのも楽しくて。小説や漫画などの物語が好きだったんですが、自分が物語の中に入るというのが面白かったですね。
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- 今演劇を続けているモチベーションを教えてください。
- 高橋
- うーん、僕が、演劇でしかできないことがある、と思っているから、ですね。すごく単純に、目の前で生きてる本物の人間が何かをしている、ということ。小劇場を見始めたのが、大学の3回生ぐらいなんですよ。他の大学の学生劇団だったんですけど、想像できないぐらい高いレベルだったんです。自分たちではそうそうできないぐらいしっかりセットを作って、衣装を作って。演技も高いレベルで。小劇場を始めたのはそこからでした。
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- そうなんですね。そして、演劇でしかできないこと、とは。
- 高橋
- 空間としてそこに繋がってるから、破壊してしまおうと思えばできるぐらい目の前で、体温を持って、質量を持って汗をかいているという事実。でも、ふっと目をそらすと、照明機材とかがあって、セットがある。目の前の人も本当は大学生だし。全部白々しいくらいに作りごとのはずなのに、でもまた吸い寄せられるように芝居の世界に入っていく。今までに味わったことがないような興奮があったんですね。
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- なるほど。
- 高橋
- 舞台上で盛り上がってるシーンがあって、そこに立ち上がって一緒に盛り上がりたいと思うぐらいだったんですよ。もちろん映画や本でしかできないような盛り上がりというのはあると思うんですけど、演劇でしかできないその盛り上がりというのは、ファーストインプレッションとして強かったです。それがある限り、演劇はこの世にあっていいんだろう、と思います。作り手としても、観客としても。
地域で演劇をするということ
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- そしてしばらく、悪い芝居に入ってましたね。
- 高橋
- 2年ぐらい入っていました。今でもあらゆる面であの時の経験が血肉になっていますね。ずっと大学で演劇をやっていたんですけど、外に出てみようと思って。4回生の頃にビギナーズユニットに参加して。大学卒業後、その年に悪い芝居に入りました。小劇場での経験が全くない状態だったので、悪い芝居の現場は、参加できただけでも良かったです。本当にお世話になりました。
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- 大学卒業後、山城こみねっと に入ったのは、どんな経緯があったのでしょうか。
- 高橋
- 京都文教大学の劇団二色にいたんですけど、現・山城こみねっとの理事、大橋さんに声をかけられました。うちの大学も、こみねっとの拠点も同じ宇治なので、3回生の頃から時々、活動のお手伝いはしていたんです。ビギナーズユニットの後に演劇を続けようか、就職しようか、悶々と悩んでいるときに、大橋さんから「もしよかったら、卒業したらウチくる?」と声をかけていただいて。
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- なるほど。山城こみねっとではどんな活動をしているのでしょうか。
- 高橋
- 演劇を活用して、学校や地域に貢献する、というのが活動のモットーです。小学校に、演劇のワークショップの授業をしに行ったりしています。例えば宇治の小学校に、地域学習として宇治茶に関係する劇をみんなで作ろう、と。後は、国語でやっている文学教材を演劇にしたり。いろんな授業をしてるので、ちょっと演劇からずれることもするんですけど、演劇と宇治と言う2つの柱がありますね。後、地域のイベントに、宇治茶のクイズの出題者として出向いたり。自主企画として、宇治文化センターで市民劇を作ったり。地域の人たちの演劇フェスティバルを企画したり。
NPO法人 山城こみねっと
地域に演劇文化を広げます 演劇を通して学校教育のお手伝いをします 地域産業の活性化に貢献します(公式サイトより) 上記をコンセプトに掲げ、京都府山城地方で活動するNPO法人。2009年設立。
市民劇を観に行こう
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- 高橋さんの活動というか存在は、宇治の演劇活動に有機的に組み込まれてますよね。
- 高橋
- 宇治茶に関わる事ってすごく多いので。お茶の農家さんや、茶問屋さん、組合に関わる人はすごく多いので。その辺りの需要に沿うようにやってる所はあると思います。演劇の企画はこちらが立ち上げるものなんですけど、どういうふうに周りの方に協力してもらうかと言うと、やっぱり、その人たちの関わっている身近なこととして地域の人に投げかけないと、何も繋がらないので。
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- 市民劇の面白さ、めちゃくちゃわかりますよ。
- 高橋
- 本当に色々な年齢層の方が参加されますので。最終的にはみんな面白くなるんですよ。
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- 地続きなんですよね、隣に住んでいる知り合いの人達が舞台に立っている時の高揚感。
- 高橋
- 今舞台上で宇治茶の話をしている人達が、本当に宇治に住んでる人達なんだ、ていうのがいいですよね。毎年色々な演出の方に来ていただいてるんですけど、劇団衛星の黒木さんにこれまで何回かお世話になっていて。黒木さんは、普段普通に生活している人たちを魅力的に見せるのがすごく上手いんですよ。黒木さんの演出って、可愛げだなあ、と。地域の人たちがめちゃくちゃ魅力的に見えてくるんです。
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- ストレートにその人の等身大をつくのが上手いですよね。
- 高橋
- 確かに。
妖怪が趣味です
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- 高橋さんが興味のある分野を教えてください。
- 高橋
- 完全に趣味の話なんですけど、妖怪が好きなんですよ。生まれが鳥取県で水木しげるがすごく身近で。高校生の頃に京極夏彦にドハマリして。京極夏彦は僕の人格形成にもかなり関わってると思います。京都に来たのも、大学で民俗学ができるというのが大きな理由です。卒論は、節分で追われる鬼について、だとか。
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- そうなんですね。私も妖怪には興味があります。頭の中に潜むタイプの妖怪って面白いですよね。京極の「姑獲鳥の夏」で、死体が見えないっていう現象があったじゃないですか。あれも妖怪っていえるんじゃないかなと思って。その正体はよくわからないけれども、明らかに何かの存在だと。
- 高橋
- 意識にかけられる呪い、という感じですかね。
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- その理解できなさ、正体不明っぷりが面白い。人間の精神の、不具合なのか、まだ見つかっていない現象なのか、機能なのか。
- 高橋
- それが、絵師によってキャラクター化されるのが面白いですよね。
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- 妖怪の本質を捉えようとしても、どこまでも逃げていく感じがある。
- 高橋
- 妖怪をとりあえず説明して安心するんですね。きっと。
質問 川本 泰斗さんから 高橋 紘介さんへ
二つを近づける
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- いつか、挑戦してみたい演技はありますか?
- 高橋
- アングラ芝居をやってみたいです。個人的に好きなんですよ。そういうのが求められるものに出てみたいなと思ってます。無性にそういう演技がしたくなることがあります。
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- ハマると思いますよ。
- 高橋
- めちゃくちゃ叫ぶような役とか、してみたいですね。
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- いや、カッコいいですよ。高橋さんの熱い演技、観たことあります。劇団しようよの「CEREMONY」の完コピVerでやってましたよね。
- 高橋
- あれはもう、初演の夏目さんの演技を何回も見て。必死でした。
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- なるほど。そんな高橋さん、山城こみねっとでいつかやりたいことはありますか?
- 高橋
- 宇治市を中心とした演劇文化は、京都市の演劇文化とは離れていると思っていて。違うシマなんですね。それがひとつになればいいとは思わないんですけど、その上で、京都の演劇の人たちをいろんな仕事で呼べたらいいな、と思っています。いろんな人が。感覚として近くなってほしいですね。
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- そもそも近いですからね。
- 高橋
- 精神的な距離と言うか。それぞれの人々が、もっと行き来ができるように。
水のような・・・
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- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 高橋
- 今年は、アラビアの夜のあとには劇団しようよさんの「あゆみ」に出ます。今年の後半は、11月と12月にエイチエムピー・シアターカンパニーさんの鶴屋南北「四谷怪談(仮)」「盟三五大切(仮)」2作連続上演の両方に出演することが決まっています。役者としては、便利な、水のような役者になりたいと思っています。どこにでもハマれるような。「アングラ芝居がやりたい」とはもしかしたら矛盾するかもしれませんが。
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- 水とは?
- 高橋
- そうですね、Aという塊とBという塊の間に、ちょうど良く入り込んで隙間を満たすことができる、とか。目立たなくても、いたら絶妙にちょうど良い。そういう便利な役者、ですね。
一保堂茶舗のお茶
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- 今日はですね、お話を伺えた俺にプレゼントを持って参りました。
- 高橋
- ありがとうございます。(開ける)お茶ですね。
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- もし良かったらお飲みいただければと思います。