眼帯のQ
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。佐々木さんは最近、どんな感じでしょうか?
- 佐々木
- きのう、髪を切りました。このところはレポートと試験の準備に追われています。普通に大学生生活を送っています。
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- どんなレポートですか?
- 佐々木
- 一番最近書いたのは、表現活動についてをテーマにするもので、この間出演した舞台「眼帯のQ」について書きました。
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- それはいいですね。「眼帯のQ」。残念ながら拝見出来なかったのですが、どんな作品でしたか?
- 佐々木
- レトルト内閣の三名刺繍さんが脚本で、銀幕レプリカントの佐藤香聲さんが演出されたんです。エロスについての作品で、凄く勉強になりましたね。
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- というと。
- 佐々木
- エロスを身体表現と演劇の融合で視覚化するという試みだったそうで、でも「二十歳そこそこの女の子にはエロスは分からないかなぁ」と。
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- なるほど。
- 佐々木
- でも、勉強になりました。
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- 大学生活以外では?
- 佐々木
- プライベートとしては何をするのでもなく家に引きこもっています。今日は久しぶりに家を出ました。
眼帯のQ
公演時期:2013/7/26~28。会場:藝術中心・カナリヤ条約。
受けてみようかなっ
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- 佐々木さんは神戸大学の学生劇団のご出身なんですよね。
- 佐々木
- そうです。自由劇場 です。神戸大にははちの巣座もあります。仲いいんですよ。
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- 外部への出演が多いですが、それはいつ頃ぐらいから?
- 佐々木
- 今年の2月にレトルト内閣さんに出演してから、です。先輩が勧めてくれたオーディションに運良く受かって。受けてみようかなっ、という軽い気持ちでした。
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- ご自身としてはどんな体験でしたか。
- 佐々木
- みなさんとても優しくして下さって、かのうとおっさんのお二人にも出会えたし、ホントに貴重な体験でした。
自由劇場
神戸大学。2013おおさか学生演劇祭にて優勝。新人公演「花の紅天狗」(公演時期:2013/9/21~22。会場:神戸大学シアター300 )
『ヒロイン(笑)』
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- かのうとおっさん大阪BABYLONに出演されていましたね。とても面白かったです。ヒロイン役でしたが。
- 佐々木
- 『ヒロイン(笑)』という感じの。こんなに面白い舞台は初めてだな、というぐらいでした。みなさん、他の共演者の方が全員スゴい素敵な方で、稽古場がものすごく楽しかったです。自分の出てるシーン以外はずっと笑ってました。稽古場で有北さんが「おとなしい女の子という役作りの参考に」って渡してくれたマンガを読んでたんですけど、そこをいいむろさんに写真に撮られていじられ続けてました。楽しかったですね。
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- 最後には下級妖怪もやりましたしね。
- 佐々木
- 当初はそんなシーン無かったんですけど、バグダッドカフェの八木進さんが稽古をお休みされた時に八木さんの代役をしたんですが、それが嘉納さんと有北さんには下級妖怪に見えたらしくて。それが台本の最後に増えてました。嘉納さんに、「柄杓で水を飲んで」って演出をされました。
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- お供えの団子を食べてましたね。
- 佐々木
- ガバメンツの近藤さんとコソコソ練習してましたね。
熱い照明
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- 佐々木さんがお芝居を始めた経緯を教えて下さい。
- 佐々木
- 小さい頃にクラシックバレエをしていたんですが、演劇を始めたのは大学からです。キッカケは何だったのかな・・・何となく、大学に入ったら演劇しようと決めていました。
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- クラシックバレエ!初舞台はどんな感じでしたか?
- 佐々木
- 凄く照明が熱かったのを覚えています。とても楽しかったです。
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- 舞台で好きな瞬間はありますか?
- 佐々木
- 始まる直前が好きです。緊張するので。逆に、カーテンコールは苦手です。
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- それはなぜですか?
- 佐々木
- 恥ずかしいから、ですかね。私そんな、人前に出るのが苦手なので。恥ずかしいです。
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- 幕前の「ついに始まってしまうぞ」感。
- 佐々木
- もう戻れない、みたいな、そういう緊張感が好きです。
人に舐められても簡単に人を舐めるな
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- 演劇を抜きにして何か趣味はありますか?
- 佐々木
- これはレトルト内閣のQ本かよさんに言え、言ってこいと言われたんですけど、最近私エロ格言にハマっていて、私はどんな役でもエロ格言を通して役作りをしているんです。
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- 大阪BABYLONの時は。
- 佐々木
- 「人に舐められても簡単に人を舐めるな」という。
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- 分かります。相手とは簡単に対等にはならないという事?
- 佐々木
- 何でしょう。「安売りするな」って事ですかね、媚びへつらうな、という。そしてエロくない意味では、人様をそう簡単に見下してはいけない、という・・・。それと、妄想も趣味です。
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- その割に、「小娘にエロスが分かってたまるか」と言われてしまった。
- 佐々木
- そうですね。エロとエロスは違うらしいです。
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- それは、エロスはもっと大事なものだ、ということ?
- 佐々木
- 「眼帯のQ」で、脱力して倒れ込むという振り付けがあったんですよ。演出家が、「倒れる時に腕がプルプル揺れるのはエロで、『それを揺らしてはいけない』という姿にエロスがある」と言われました。
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- 肉を制御するのがエロス。本来はコントロール出来ない身体(の一部)。それはどうしても揺れてしまうんだけど、それを揺らさないという注意。
- 佐々木
- そうだと思います。そういう風にして美しさを追求したかったと。
かのうとおっさんvol.17『大阪BABYLON』
公演時期:2012/8/24〜25。会場:in→dependent theatre 1st。
性
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- 佐々木さんはどんなエロを求めているんですか?
- 佐々木
- どんなエロがいいのか(笑う)面白いですね(笑う)。
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- セクシャルハラスメントになりましたか?
- 佐々木
- いえいえ。フェチです。何に興味があると言われればフェティシズムです。あと、動物の性事情について有北さんと話していて、それにきょうみがあります。
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- というと。
- 佐々木
- 人間って邪念が多いからいろんなバリエーションがあるんですけど、動物はそうでもないという思い込みがあるじゃないですか。でも、動物全てが同じ性行動を取るわけではなくて、種の分だけ多様なんですよ。例えばペンギンには同性愛が多かったり、ゴキブリには前戯があるとか、雀は1分間に20回性行為をするらしくて。イルカが集団レイプするとか。
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- 興奮するんじゃないですかね?
- 佐々木
- そうですかね。
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- 群体としての生に埋没している個体が、その行為をする時だけ・工夫した性行為をする時だけ、自我を意識しているのかもしれませんね。全く余計な工夫をする時だけ。
- 佐々木
- そうですね。
いつか・・・
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- 芝居を始めた時に見た衝撃作はありますか?
- 佐々木
- 宮藤官九郎さんが監督された、「R2C2〜サイボーグなのでバンドやめます〜」という作品がすごい好きで。今でも大好きで、サウンドトラックを持ってます。最後の、阿部サダヲさんと森山未來さんのシーンが物凄いカッコイイんですよ。
自分は違うんだなあ
- 佐々木
- 脚本家さんとか演出家さんとかって、自分の表現したいものがあって自分が作りたいものがあると思うんですが、私はそういうのが一切無くってですね。
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- なるほど。
- 佐々木
- それって、どうなのかなと最近思っています。自分の思い上がる感情を世界にぶつけたいという事にならないんですよ。それをQ本かよさんに相談したら「いいんじゃない」って言われたんです。役者として媒介になれたらなと。作り手にはなれないなあと。
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- 10年ぐらいの間に、またちょっと感覚は違っていくんじゃないでしょうか。
- 佐々木
- そうですね。これ作りたいとか思うようになってたらいいですね。
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- でも、次は一人芝居をするんですよね。
- 佐々木
- そうです!シンガーソングライターの友達がカフェでイベントをするというので、そこで。脚本はちがう方にお願いするんですけど。カフェの新作ケーキ発表会だという事で、友達も明るいので、明るい感じにしたいです。
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- 佐々木さんは、自分が明るい人物ではないと?
- 佐々木
- 明るい人間ではないなあと(笑う)明るいつもりなんですけど、興味がエロに向いていたり、自分は違うんだなあと思っているんですけど。
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- 私はムッツリスケベという自分の属性を、それなりに愛すべきものだと思っているんですけど。
- 佐々木
- それは何故ですか?
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- 確かに、健康=性は生物としての人間に必要不可欠な要素だと思うんです。それが無ければ死ぬから。しかし、その真裏にある死=エロスは人間の知恵・優しさを育む為に必要なんじゃないか。ムッツリスケベは可能性そのものなんですよ。極めたらいいんじゃないかと。
- 佐々木
- そうですね。日本特有らしいですからね、奥ゆかしさって。嬉しいです。この話題しかしていない気がしますが、大丈夫ですか?
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- いいえ、大丈夫ではないですね。
- 佐々木
- 切り替えませんか?
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- はい。
質問 丸山交通公園さんから 佐々木 ヤス子さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました丸山交通公園さんから質問を頂いてきております。「女性である事は面白いですか?」
- 佐々木
- うーん、私はあんまり面白くないです。
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- それは何故ですか?
- 佐々木
- 私は男性に憧れていて、社会の立場的に女性で良かったなと思う事はあるんですけど、男性の強さとか存在感とか、筋肉とか。私には届かない存在で。だから憧れています。
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- 自分の事を男性だと思っている?
- 佐々木
- いえ、女性だと思っています。でも、なれないから憧れています。子供の頃から憧れています。走っても負けるし。男性のダンサーは重宝されるし。
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- 女性にはしなやかさがあるのでは。
- 佐々木
- そこで益山寛司さんに出会って。強いけどしなやかで。あの人は憧れですね。
めざせ、変幻自在
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- お芝居をしていて嬉しい瞬間はありますか?
- 佐々木
- 役を通して、日常では絶対しない感情になった時ですね。日常ではあまり怒らないので。
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- いつか、どんな演技がしたいですか?
- 佐々木
- 佐々木ヤス子としての自分を出し過ぎることはなく、でも、この役は私にしか出来なかったと評価される役をやってみたいですね。どの役をやっても同じやり方をしてしまわないような。そのバランスが出来たらと思っています。
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- 自分でないといけない役でありながら、予想されない。
- 佐々木
- 劇場に行く前から、あの人はこういう演技するんだろうなあみたいな予測はされたくないです。変幻自在になりたいですね!
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- 変幻自在であり続けるという事は、毎回、新しい領域を開拓するという事ですね。
- 佐々木
- そうですね、大阪BABYLONの時の下級妖怪のように。あと、オタクの役をやってみたいです!単純に興味があります。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 佐々木
- とりあえず、12月末までは関西で頑張ろうと思います。いつか東京に行きたいと思っています。恥ずかしい。でも、色んな所に呼ばれたいなあと。オーディションを沢山受けて。色んな演出や脚本をやらせていただいて、もっと変幻自在になりたいです。
本気玉(花火)
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 佐々木
- 実は、私も。
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- え。
- 佐々木
- 私の地元、宇治市で取れた抹茶のゼリーです。あんことか白玉入りです。
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- ありがとうございます。
- 佐々木
- お口に合えばいいんですけど。
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- 頂きます。
- 佐々木
- (開ける)あー(笑う)凄い。打ち上げ花火だ。夏ですもんね。『5メートル以上離れられる所で』。