2009年9月近況
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- 今日は、宜しくお願い致します。最近はいかがですか?
- 伊藤
- France_panの公演が今月にあるんですけど、11月にもまたPan_offIceのプロデュース公演があります。それは凄い面白いですよ。
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- おお。
- 伊藤
- 自分で言っちゃいましたが、お客さんも沢山入るといいなあと(笑う)。あとは、月イチで中之島のアートエリアB1という場所で、シアターカフェというイベントをやっています。
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- それは、どのような。
- 伊藤
- 演劇について話し合う、無料のカフェイベントですね。この間は今年度の演劇計画事務局の代表もしています。
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- お忙しいですね。
- 伊藤
- 同時に色々な事が進んでますので。楽しいから全然いいんですけどね。
France_pan
04年結成。演劇における恥ずかしい境界を壊しつつ護りつつ、覚束無い言葉のコミュニケーションを軸に、真面目と不真面目の中間地点を探り続ける。揺らいじゃった身体性、現代人の悲喜劇性、ペンペケピーな前衛性。作品はポリリズミックに展開。観客の過剰な能動性や批評眼の重要性を各方面に訴えながら、演劇知の可能性を弄ぶ。(公式サイトより)
アートエリアB1
京阪中之島駅構内。文化・芸術の創造と交流を目的として作られたスペース。
演劇計画
京都芸術センター主催。関西のみならず、広く全国から演出家とその作品を募り、上演を含めた育成プログラムを展開する。
C.T.T大阪
C.T.T.とはContemporary Theater Trainingの略で「現代演劇の訓練」を意味する。1995年に京都のアトリエ劇研で発足し、70回以上の上演会を行う。現状、3カ月毎の上演会を予定。(公式サイトより)
2009年9月19〜21日「点在する私」
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- 次回作の「点在する私」。今月の19日から21日までアトリエ劇研で上演ですね。どのような作品になるのでしょうか。
- 伊藤
- 今回の作り方は面白いんですよ。役者個人へのインタビューから始まっているんです。
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- インタビューですか。
- 伊藤
- 僕が俳優に対して手紙を書いて、彼らに渡す。対する回答を録音、それを再構成したテキストを上演するんです。皆さんがあまり観たことが無いような、ちょっと変な芝居になると思いますよ。
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- ええと、伊藤さんはもしかして変な芝居を目指しているのでしょうか?
- 伊藤
- いや、そういう事ではないです。明快で分かりやすい答えを作品に求めるお客さんに対して、もっと能動的に答えを探してほしいと思うんですよ。たとえば、現代美術にしたって一緒に美術館に行った人同士で意見が食い違う事はままありますね。
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- はい。それが面白いところだと思います。
- 伊藤
- ところが現代演劇になると、観てても意味の分からないシーンがあったら拒否というか、鑑賞するのをやめちゃうんじゃないかなと。日本の観劇教育にはそういう未熟なところがあるんじゃないか。そうじゃなくて、色んな深読みをしてもらいたいんですよね。
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- 例えば色んな見立てで作品を解読していくと。
- 伊藤
- はい。そういう理由で、僕の作品では静かさを大事にしています。言葉を多用すると説教臭くなる気がするんです。ただでさえ、演劇って何でも出来るんですよ。名画や名曲をスクリーンや音響で流したり。その上役者に言葉を出させると、これはやり過ぎな気がして。
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- 説明を控えたシーン演出ということですね。
- 伊藤
- 静寂が好きなんですね。
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- 「点在する私」も、そのようなお芝居に。
- 伊藤
- はい。新しいリアルを感じに来てほしいですね。
France_pan 15th「点在する私」
京都芸術センター舞台芸術賞2009ノミネート作品。公演時期:2009年9月19日〜21日。会場:アトリエ劇研。
時間と芸術
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- さて、前回公演の芸術創造館での「どれい狩り」。さんとの合同公演で、上演時間が2時間以上でしたね。
- 伊藤
- はい。
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- 前半、実は若干ついていけるか不安だったんですよ。前半は暗い照明の中で静かなシーン、後半はふざけたお祭り騒ぎが始まると。一瞬も飽きなかったんですが、これは初めての人にはどうなのかなっていう。
- 伊藤
- たとえば携帯でもYouTubeが見れる今の世の中で、もう最初の三分でいかに観客を掴むか、多くの人に再生させるか、という即時性の勝負が繰り広げられている訳じゃないですか。そういうものしか流行らないのはちょっと嫌なんですよね。
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- 確かに、時間が短くてすぐ分かりやすいものが好まれる傾向が強いですね。
- 伊藤
- 演劇は他のジャンルに比べて、観るのもやるのもやはり多少の忍耐がいるんですよ。1時間以上、ずっと観客に付き合ってもらわなければならないので。映画だって撮影と編集に膨大な時間が掛かるのに、チャプターで飛ばせますから。飛ばせないのが演劇の魅力でもあるんですけど、そういう所に無頓着では居られないなと思います。その辺りをちゃんと考えないと、2,010年代以降、演劇を見るお客さんが増えないんじゃないかなぁと思います。
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- まあ、映画と演劇では観客の数は全然違うでしょうね。
- 伊藤
- 映画の興業で一つ凄いなと思うのは情報公開ですね。例えば配給会社が特設サイトを作って、映画の内容が大体分かっちゃう。演劇ってそういうのがほとんど出来ないでしょ。会場に行くまで内容がわからないってのは演劇の面白さかもしれないけど、大衆的に考えれば、やっぱりデメリットの方が多いなと思うんですよね。
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- そうですね。
- 伊藤
- 例えばお芝居の冒頭を10分だけでも見られれば、興味を持って足を運んでくるお客さんも増えるんじゃないか。ちょっと情報開示をしてあげたらいいんじゃないかと。
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- 今France_panのトップページに、動画が載っている模様ですが。
- 伊藤
- あれ、練習風景なんですよ。
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- あ、そうなんですか! 何かかぶり物とかしてますけど、衣装なんですね、あれ。
France_pan×トイガーデン混同公演 どれい狩り
安陪公房の原作を舞台化。公演時期:2009年4月24日。会場:芸術創造館。
トイ・ガーデン
大阪の若手劇団。安武剛氏を中心として、エンゲキらしきものを表現することを目的に結成。
ペンペケピー
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- さて、France_panの紹介文に「ペンペケピーな前衛性」とありますが。これはどういう意味なのでしょうか。
- 伊藤
- それ、面白い話があるんですよ。以前、アゴラのサミットに参加した時に、チラシ製作の関係で「ペンペケピー」を英訳するために正確な意味を教えて欲しいと言われて。その時は、なんか上手く答えてたなぁ。
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- そうなんですか。
- 伊藤
- 何て言ったかな・・・。いや、深い意味は多分ないんです。
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- あ、そうなんですか。
- 伊藤
- 擬音語が好きなんで付けたんですよね。擬音語って、触れた時に「感じ」がダイレクトに生まれるじゃないですか。「ペンペケピー」って聞いたら、まず馬鹿みたいって思う。そういう、その場のノリが好きなんですね。
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- おふざけだったんですね。
- 伊藤
- おふざけって、大事だと思うんですよ。国境を越えられるユーモアだと思います。あとは、パ行が好きだからですね。パピプペポって、ちょっと可愛い印象があって。
貝を棒でRMX
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- France_pan、C.T.T大阪に参加されているんですね。どんな作品を出されたのでしょうか。
- 伊藤
- ポカーンとされたのがありまして。「貝を棒で」というウチの作品のワーク・イン・プログレス公演として、その作品の中の台詞をリミックスした30分ぐらいの作品を上演したんです。
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- リミックス。ユーロビートみたいですね。
- 伊藤
- 「貝を棒で」は前半が公衆便所に籠る男の子の芝居、後半が女の子が妊娠したりする芝居で、比較的セクシャルなセリフが多く出てくるんですよ。その台本の、ちょっとエロいセリフだけをピックアップして、番号を付けて、役者に覚えさせるんです。128個ありました。それを僕が指揮者のフリをして番号を出すと役者がポンポン言う・・・。
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- それはめっちゃ面白そうですね。
- 伊藤
- それをやった時に、若い子はウケるんですけど、おじさんおばさんはポカーンとして。最終的にお客さんに止められたんですよ。もうやめろって。こんなのは演劇じゃないって。
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- 素晴らしい。
- 伊藤
- で、上演終りの合評会の時に「あれはサクラですか?」って聞かれて(笑う)。
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- サクラだったら最高でしたね。
- 伊藤
- サクラではなかったんですけどね。勉強させてもらいました。あの時は、アングラの時代ってこういうものだったのかもな、って。
質問 澤村 喜一郎さんから 伊藤 拓さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、ニットキャップシアターの澤村さんからご質問を頂いてきております。これは役者向けの質問かもしれませんが、1.もし何の制限もなかったとしたら、どんな役をやってみたいですか?
- 伊藤
- 自分の家族をやりたいですね。オカンとか、妹でも弟でもいいし。「点在する私」にも関わってくるんですけど、役者が何かの役をやる時はその役についての情報が必要じゃないですか。でも家族の場合は個人の思い出があるので、それが滲んで来るのが面白いんじゃないかと。「点在する私」も、役者が役者個人をやってるんですよね。それも、ちょっと変わった方法で作っています。
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- 非常に興味深いです。2.好きな俳優さんは誰ですか?
- 伊藤
- 親族に映画好きが多くて、やたらロバート・デニーロを勧めてくるんですよ。ヤバいぞと。で見てみたら確かにクレイジーなんですよね。それから何本も立て続けに見ました。アル・パチーノも好きです。
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- 3.役作りってどうしてるんですか?
- 伊藤
- 役者さんって、引出しが多ければ多いほどいいと思うんですけど。うーん。イメトレと実際のトレーニングを両方やるしかないんじゃないですかね?
ニットキャップシアター
京都の劇団。代表・演出はごまのはえ氏。個性的な俳優陣と高い集団力をもってごまのはえ氏の独特な世界観を表現する。
11月「京都かよ!」
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- 伊藤さんは、今後どんな感じで攻めていかれますか?
- 伊藤
- とりあえず今年は9月に「点在する私」、11月にはPan_offIceプロデュースで「京都かよ!」というプロデュース公演をアトリエ劇研でやります。京都の劇作家さんに書いてもらって、それを大阪の俳優でやるという。一人芝居は悪い芝居の村上慎太郎さん。この企画は僕もワクワクしています。
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- 楽しそうですね。
- 伊藤
- 来年は2月に精華小劇場製作作品の演出補をやります。その後の予定は決めてないのですが、海外には行きたいですね。せっかく英語を勉強したので、演劇の勉強に行ってみたいです。
悪い芝居
作家・演出家・俳優の山崎彬氏と俳優の四宮章吾氏を中心に2004年旗揚げ。挑戦的な作品を、誠実な姿勢で創作。
司辻有香さん
劇作家。演出家。辻企画代表。
下鴨車窓
京都の劇団。アトリエ劇研プロデューサー、田辺剛氏が演出・脚本を務める。
夕暮れ社 弱男ユニット
2005年、京都造形芸術大学にて村上慎太郎の個人ユニットとして始動。ゲルニカとテポドンが戦ったり、男同士が愛し合いゴリラを人の子に育てて不幸になる等チープなストーリーと、俳優の個性や爆発力のある演技・スピード感溢れるテンポの良い芝居作りが特徴。(公式サイトより)
月光荘画材店 スケッチブック
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- 今日はですね、伊藤さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
- 伊藤
- もう、ありがとうございます。プレゼントなんて久しく貰ってないです。
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- つまらないものですが。
- 伊藤
- (開ける)これは、メモ帳的な。さっそくこれにダメ出しを書こう。ありがとうございました。