AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』
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- 今日はどうぞ、宜しくお願いします。
- 田中
- お願いします。
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- 今回の「異邦人」に出演されるとの事で。楽しみです。
- 田中
- ありがとうございます。頑張ります。男を見せられるように。
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- ああ、そういえば確か、周りは全員女性でしたね。
- 田中
- そうなんですよ。稽古の度にいじってもらってます(笑う)。
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- ところで、本番まであと一ヶ月程度ですね。稽古はどんな感じですか?
- 田中
- 今は、役者全員に台詞が入って、一回目の通しをやった状態ですね。とはいえ、軽く流してやってみる、という形です。
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- というと。
- 田中
- 演技をものすごく付けるわけではなく、たとえば役者が自分の気持ちのいい間で芝居をするのではなく、流れを確認していくような感じですね。
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- どのような効果が出るのでしょう。
- 田中
- 今はまだ、俳優同士の関係性が浅いんですよ。だからこそ、少しずつでもいいから場が固まるのを待っているんだと思います。
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- 場ですか。
- 田中
- 舞台上の空間です。それをものすごく意識するので、俳優が会話する時の摩擦で、空間に熱が入るのを待っているんだと思います。
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- では、まだ特別な演出は入っていない?
- 田中
- そうですね。台詞がポンポンとキャッチボール出来るように。なんかこう、台詞を言う為の間もとらないようにしています。
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- 俳優同士の人間関係に、身体が慣れるようにしている感じですね。
Will Be SHOCK Entrance Gate
京都を中心に活動する演劇ユニット。
AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』
山岡徳貴子・作。柳沼昭徳・演出。公演時期:2011/6/9〜12(京都)、2011/6/18〜19(愛知)。会場:京都芸術センター、愛知県芸術劇場小ホール。
自然に何かが
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- 今回、役者としてやってみたい事はありますか? 先ほど伺った、「男を見せる」の他に。
- 田中
- 今回は会話劇なんですけどね。そこで行われている会話自体は割と普通の言葉なんですけど、その裏に確実にあるものが表現出来たらと思っています。
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- 山岡さんの作品ですからね。その、裏に潜んでいる人間性の影がね。
- 田中
- ええ、台本を読んだ時からずっと、何かあるなと思っています。
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- ええ。
- 田中
- 誰でも生活する上で、絶対に悩むと思うんですよ。僕もそうだし。本番に自分の演技持っていって、ちゃんと悩んでやっているんだって見えたらいいなと思います。台本に書いてある文章の下に、生活が根ざしているんだ、って。
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- そうやって、田中さんご自身が悩んでいるんですしね。何だろう、どこかで伝わると思います。
- 田中
- 本当に、そういう事なんでしょうね。僕の想像力がないせいだと思うんですけど、ステレオタイプな、パターン化されたような表現しか想像出来なくなってたんですけど。そういう、むやみに力が入ったものは嫌がられる現場なので。自然に何か出てくればと思うんですよね。
そういう「恥ずかしい」
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- ご自身は、悩む体をさらす事について、抵抗はありますか?例え舞台の上の演技としても。
- 田中
- うーん・・・。もしかしたら、そういう「恥ずかしい」という気持ちも表現しないといけないかもしれませんね。
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- そうそう、山岡さんの戯曲のすごいところは、人間関係の中の自意識の描き方にあるんじゃないかなと思っていて。登場人物が相手と話しながら、自分のキャラクターを作り上げていくんですよね。そこには嘘があったり、弱みが見え隠れして、たまらないんですよ。
- 田中
- そうですね、弱いところも強いところもありますよね。悩みますよね。
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- 身体作り、人間作りか・・・。いま思いついたような事なんですが、京都の舞台芸術が得意とするところだと思うんですよ。
- 田中
- ああ、そうかもしれませんね。そこに仲間入り出来るように頑張ります。
変われた事の証明
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- 田中さんは、今後どんな感じで攻めていかれますか?
- 田中
- あのー・・・。実は、作演をしたいという願望があって。
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- おお。観たいです。
- 田中
- 大きいところに出させてもらうというのもありますので、今年なのかなと。自分の中で、何かやらなければいけないのではという思いが沸き上がってきているんです。でも、自分より若い人の作品を観ていると、よくみんなこんなものを書けるなと思って・・・。
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- なるほど。ええと、どのような初期衝動があるのでしょうか。
- 田中
- 芝居を始めた当初からその思いはありまして。当時つきあっていた彼女に、「俺しんどいねん」「めっちゃ頑張ってるのにうまく生きていけない」って、弱音でしか自分を表現出来なかったんです。だから、そういう自分を表現する芝居がしたかったんですよ。
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- なるほど。
- 田中
- もし次に付き合う女性がいたとしたら、そういう事じゃない事を言いたい。
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- どうして、そうネガティブになっていったのでしょう。
- 田中
- なかなか周りに馴染めなかったからでしょうね。喋っている相手の気持ちが分からなかったり。だから僕なんかが芝居なんか、やっていいのか不安でした。
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- それが、どこかで馴染む力を手に入れた?
- 田中
- はい。何とか、芝居を始めた頃から少しずつ。絶対それはあるんですよ。だから演劇には感謝しています。変われた事の証明として、自分の中で残したいだけなのかもしれませんけど。
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- 変化ですね。
- 田中
- だから、あまり派手で明るい作品にはならないと思うんですけどね。
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- 私はその、それが結局上演されなくても、この話が聞けただけで十分ですけどね。
質問 ごまのはえさんから 田中 浩之さんへ
penco TAPE WRITER
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
- 田中
- ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 田中
- (開ける)これは・・・?
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- シールパンチャーですね。
- 田中
- すごい。よく劇団の工具が無くなるので、貼っておきます。こんなんあるんですね。