忙しい向井さん
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、向井さんはどんな感じでしょうか。
- 向井
- よろしくお願いします。最近ですか。次にAI・HALLのbreak a legの企画で弱男でやる「モノ」 の稽古と、その後のいなもり支店という企画 があって、それが三都市公演があるのでそのこととかをやっています。大変ですけど、楽しくやっています。
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- 頑張ってますね。
- 向井
- まぁそうですね。
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- いなもり支店、凄く昔に見た事があるんですけど、それからずっと拝見出来てなくて。
- 向井
- 以前の作品の再演になるんですけど、東京ではこまばアゴラ劇場、京都では元・立誠小学校、広島ではアステールプラザでやります。
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- 絶対行きます。稲森さんの言葉の感じが好きです。台本欲しいと思った事を思い出しました。
- 向井
- それ、嬉しいです。稲森さんに伝えておきます。喜ぶと思います。
夕暮れ社 弱男ユニット
2005年村上慎太郎の個人ユニット「弱男ユニット」を結成。砂浜や劇場ロビー、ライブハウス、会議中の事務室前など劇場外での公演を数多く行う。2008年それを前身とし、さらに活動の場を広げていくためにメンバーを募り、「夕暮れ社 弱男ユニット」と名前を改める。過去作品には、観客が舞台上にあげられ、先ほどまで座っていた椅子が目の前で俳優の手によってぶん投げられながら物語が展開していく「現代アングラー」(大阪市主催CONNECT vol.2優秀賞受賞/2008年)や、 劇場の真ん中に客席を設置し、俳優がその客席の周りをグルグルと廻り続け演じるという独自の方法でデモ行進する人々を描いた「教育」(大阪市立芸術創造館/2010年)や、俳優が地面を終始、転がりつづけながら青春群像劇を演じた「友情のようなもの」(2012年/元・立誠小学校)などがある。(公式サイトより)
AI・HALL次世代応援企画break a leg 「モノ」
○開催日時○ 2016年5月28日(土)29日(日) 5月28日(土) 15:00/19:00 5月29日(日) 13:00 ※開演の60分前に受付開始、30分前に開場 ※当日、会場にて受付順に入場整理番号を配布 ○会場○ AI・HALL (伊丹市立演劇ホール) 〒664-0846 兵庫県伊丹市伊丹2丁目4番1号 TEL:072-782-2000 ○チケット○ 料金 一般/前売2,800円 当日3,300円 学生/前売2,500円 当日3,000円 (要証明) 【日時指定・全席自由】 作:フィリップ・レーレ(原題:『Das Ding』) 翻訳:寺尾格 演出:村上慎太郎 出演:稲森明日香、向井咲絵、南志穂(以上、夕暮れ社 弱男ユニット) 鎌谷潤吉(僕らの陰謀)、金田一央紀(Hauptbahnhof)、小林欣也、 古藤望(マゴノテ)、松田裕一郎 西マサト国王(B級演劇王国ボンク☆ランド) 舞台監督:浜村修司(GEKKEN staffroom) 照明プラン・オペレーター:吉津果美 照明アドバイザー:筆谷亮也 音響プラン:genseiichi 音響オペレーター:森永キョロ(GEKKEN staffroom) 劇中映像:柴田有麿 映像オペレーター:中野響馬 衣装:若松綾音 チラシ・制作:稲森明日香 票券:池田みのり 共催:伊丹市立演劇ホール 協力:大阪ドイツ文化センター、僕らの陰謀、マゴノテ、Hauptbahnhof、B級演劇王国ボンク☆ランド、徳永のぞみ、山本悟士 京都芸術センター制作支援事業
いなもり支店「ちょっと待って、エントロピー」ツアー2016
京都・広島・東京6月~7月。
稲森さんとコンビ
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- 向井さんは稲森さんとコンビみたいな感じですよね。
- 向井
- 私たちイコールコンビ、みたいに考えた事はないですけど、でも、言われてみればそうかもです。稲森さんとは、バランスがいいというかお互いに自分に欲しい部分を持っている感じがする。
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- 呼吸の合い方がものすごく合っているんですよ、二人は。それは弱男ユニット全体で、ほわほわって固まっている感じ?
- 向井
- なんかそれは感じます。同じような色やな、というのは。
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- 村上さんに聞いたんですけど、弱男ユニットって、血の通った芝居を作れる人たちなんじゃないかという話になったんです。血の通った、とはどういう事なんだろう、と思っていて。それはもしかして、自分ではない何かになりたいとかいう本能じゃなくて、そのままで舞台に立てる力を持っているのかなと思ったんです。前から思っていたんですけど、彼らは素の部分が非常に強く舞台に出ている。この人達はこの人達なんだなあ、って。
- 向井
- なるほどなあ。昔から村上さんが言ってる事ってあんまり変わってなくて、器用な人とかよりも、元々が面白い素材の人を持ってきているな、と。だから何かになりたいとかみたいに「役者」としてはあんまり考えてきていなくて。
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- なるほど。
- 向井
- 脚本にも関西弁が多いのも私にはやりやすくて。その人の言葉や身体を大事にしているんだなあ、って。
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- その、俳優個人の土着的なものがあり、その上でのふわふわしたな何かがあると思うんですよ。浮遊感がある。彼らが人間過ぎて、時たまファンタジーのように感じられる事がある。
- 向井
- なるほどな。浮遊感がありますか。
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- そんな気がする。
- 向井
- それは感じた事はないけど・・・そうなんかな。変わっているな、とは思いますね自分とこの団体。
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- 格好付けている人がいないのがいいと思います。
「メガネ」
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- 次の出演は。
- 向井
- 次はハイタウンに出ます。私は努力クラブの合田君が演出する「道をたずねるコメディ」に出るんですよ。私あんまり客演に出た事はなくて。イエティとユニット美人ぐらいですね。
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- 楽しみですか?
- 向井
- お祭りごと好きなので楽しみですけど、緊張はしますね。毎回、やってみたら楽しいですけど。面白い人ばっかりだし。今回のは努力クラブに出てるみたいな人が結構でてるから。それでちょっと、気は楽かなと思っています。合田くん面白いし。
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- そうですね。最近の出演で言うと、この間のBRDGのイベントでのメガネのコント面白かったです。向井さんと稲森さんとメガネと彼氏の、ズレをめぐるようなお芝居でしたね。半径、その場でクルクル回るレベルの。
- 向井
- あれは何度かやっている作品で、一番最初は「弱男ユニット」って短編集の公演で、その後いなもり支店でもやったし、その後外でやる事もあって。弱男ユニットとしては唯一ぐらいの持ちネタで。前日に二人で久しぶりに練習して調整しました。あれ、すごく難しいんです。
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- どのあたりが。
- 向井
- メガネを偶然落とす演技があるんですけど、そのタイミングが。あれ結構、重力に任せてるとこがあって。
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- そう、すごく自然な間でした。あの間が抜けているのが、向井さんが演じている女の子の性格だとか生き方とかを端的に表現していたんですよね。あれは本当に面白い演技でした。でもちょっとした掛け違い、例えば少し感情表現の勢いとかトーンが違っただけで別の方向にそれていってしまう。その上で面白い演技が成立するって奇跡だと思う。
- 向井
- うん。
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- ここで聞きたいんだけど「面白い演技とは何か」。
- 向井
- あー。何でしょうね。面白い演技。
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- もちろん追求したら際限無いですけど、じゃあどこまでいったら一旦終わり、に出来るものなの?
- 向井
- メガネの場合は思い出し稽古でしたから。二人の会話が混ざったりしないように台詞のタイミングを気を付けたりして。私がすごいキャンキャン言うから。
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- あのぐらい混乱した掛け合いの激しい芝居でも、調節の末、一つの形にまとめられるって凄い仕事をしていると思う。あんなに不定型な作品なのに。何回もやっている作品なら、お客さんへの訴えかけるポイントだとか、そういう部分も把握しているし。
- 向井
- ありがとうございます。
ハイアガール の話
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- ハイアガール、大変面白かったです。泣きました。お疲れ様でした。ある町の話で、仲の良い女子高生の内一人が銭湯の煙突から飛び降り自殺してしまって、片方が苦しんで、周りの人たちも苦しんで・・・でも、全員が這い上がっていく。暗転が開けて1年後、町が変わるというのが示されるんですけど、私にはその描写の方にこそ泣いてしまって。銭湯の煙突が無くなって、代わりにドイツ製のボイラーが来る。
- 向井
- 劇的な事があっても、周りの人の時間は続いていて。カップルが成立したり子供が出来たりだとか・・・劇的には変わらへんのやろうなって。人間変わらなかったり、お互い寂しくて付き合ったり。生きている人等は生活が続くから。ふつうの生活に戻っていったな。こんな言い方は村上さんに怒られるかもしれないけど、そんなもんなんかな、って思ったりはします。
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- 村上さんは、「人間はものすごいどん底に落ちてしまっても這い上がってしまう」本能を持っていると言っていましたね。
- 向井
- ほんますごい、生活は続くんですよねー。落ちても、終わる訳じゃないから。続くからなー・・・って。
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- 続くのが悔しい?
- 向井
- 続くんのが悔しいとも思わなかったですね、自分の場合は。悔しいというより、それが当たり前というか。立ち止まらないんですよ。自分の身にそうゆうことが起きたとしても、立ち止まってられない。浸っている時間はなくて。次の日になったら、私だって仕事があるかもしれないし、食べていかれへんし。結構、思っているより、自分は中心ちゃうぞ、と。思ったよりも世の中はめちゃくちゃ動いてるぞ、と。
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- 自分は中心じゃないと思った時、どうだった?悔しかった?
- 向井
- 悔しいというよりは、ハッとした。中心だと思ってしまっていたことにハッとする。中心ちゃうし、そんな余裕ないやろう、と。続くから、流れていくから、だからあの二人は付き合う事になったんちゃうかな。這い上がらざるを得えへんというのは、そういう事なんじゃないかなと思う。お前なんか中心ちゃうぞ、って。浸ってんちゃうぞ、そんな余裕ないぞ、と。
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- 誰もこの世界の中心じゃないけどね。
- 向井
- 誰もいないと思います。中心人物なんて。
夕暮れ社弱男ユニット演劇公演「ハイアガール」
公演時期:2016/1/20~24。会場:京都芸術センター講堂。
出来るようになりたい
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- これまで演劇を続けてきて、決定的な変化ってありますか?
- 向井
- 実は、あんまり無いんですよ。村上さんの芝居に立たせてもらう事が多いから、そのまんまの感じで出る事が多いんです。
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- いやそんな向井さんの芝居が好きですけどね。
- 向井
- でも何年か前に、「あ、お芝居出来るようになりたい」って思ったんですよ。一般的な意味での。でも結局、普通のちゃんとしたお芝居がやりたいんだったら、それは別に弱男じゃなくてもいいんじゃないか、って。クセがあるというのは一つの武器だし、しっかりそれをやっていった方がいいんじゃない?って。ああ、そうかな、と。
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- まあ、向井さんに類する役者はいないですからね。
- 向井
- それは嬉しいんですけど、恐れ多いというか。面白いと思って下さっているのを、大事にしたいなと思っています。でも、今やっている演技体で、最大限やりたいなあと。応えたいと思っています。
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- 例えば稲森さんは、客演に出ればそこに合わせられる器用さを持っている。向井さんがユニット美人に出た時、向井さんとして出てくれてて。私はそれが凄く嬉しかったです。
- 向井
- そうなんですよね、私不器用なんですよ。稲森さんとのコンビとのバランスが良いのはそこかもしれないですね。羨ましいんですよ。普通に芝居が上手くなりたいと思ったのも、きっとそこから。バランスは取れていると思いますね。
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- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか。
- 向井
- コメディをちゃんと出来るようになりたいですね。
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- やってるじゃないですか。私の中では、ボケを正確にこなす人ですけどね。
- 向井
- でも器用さはもう、あまり求めないかも。何やろうなあ。自分の特性をもっと分かって、やる事かな。自分の事をまだまだ分かってないんですよね。自分で自分を生かせていない。もっと器用に、自分を生かせられるような・・・面白いことをしていたいなあ。単純に。
次回公演「モノ」
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- 次の5月にAI・HALLでやる「モノ」、楽しみです。壮大な話だそうですね。
- 向井
- いや、面白いと思いますよ。客演さんも面白いし。前回に引き続きの人もいるし、今回初めての方もいるし。実はこの作品でリーディング公演を行ったんです。その時はものすごい早口でセリフを喋ったんですが、全然不安だったんですけど意外と好評で。なんか、そういうのに自分から気付けるようになりたいですね。演出に、もっと自分から発信出来るようになりたいかな。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 向井
- そうですね、今年は結構色々なところに行かせてもらえるし、もっと色々なところに行きたいですね。そんな攻め方ですかね。あとキレイな格好でもしてみようかなと。
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- やってみて欲しいです。向井さんは自分が美人である事について無頓着過ぎるのではないか。
- 向井
- ああそうですか?でもあんまり言われ慣れてないから。恥ずかしいんですよね。
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- いや美人ですよ。それを出して行こうとは思わない?
- 向井
- あんまり。面倒臭がりなんで。
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- 内面を磨くとか?
- 向井
- 内面ね・・・言葉遣いを丁寧にするとか?でもこれが自分の普通だし、まあ、もっと自分を理解したいかな。
足田メロウのブローチ
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
- 向井
- ありがとうございます。開けていいんすか?
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- どうぞ。大したものじゃないんです。
- 向井
- (開ける)へえ、可愛い。どこに付けようかな。
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- そういうのを付けてる印象ないですけど、たまにはいいんじゃないかと思って。
- 向井
- ありがとうございます。