豆企画「消失」
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- 今日は、宜しくお願い致します。
- 延命
- お願いします。
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- 最近、いかがですか。
- 延命
- 芝居の予定で一番近いのは、9月頭の芝居の演出ですね。
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- ああ、「豆企画」ですね。
- 延命
- はい、「消失」という作品です。
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- ケラリーノ・サンドロヴィッチさん作の。
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- 俳優の他に演出もされる延命さんですが、延命演出ならではの特徴というのはどのような点にありますか。何かを大事にしているですとか。
- 延命
- 普通やと思いますね。
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- 普通と仰いましたが、例えば役者に演技を付ける時の大きな方針ですとか。
- 延命
- 相手のセリフを聞かないように、という演出は他の人より多いと思いますが。
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- はい。んん? 相手のセリフを聞かない?
- 延命
- セリフを受けて喋る、会話を行う人が二人いる状態よりも、喋っているのに伝わらないであるとか、聞くつもりはあるのに上手く受け取れないであるとか、そういう空気が好きなんですね。
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- ああ、何となく分かる気はします。コミュニケーションが出来ていそうで出来ていないという状態ですよね。
- 延命
- 何か、内容を受けて発言するというよりも、相手が何か言うから言葉を重ねるであるとか。以前演出した時に、片方は一生懸命喋っているし,もう片方は一生懸命喋っている側の言う事を聞こうとしているのに、全く伝わっていないという。そういうのが凄く好きなんですよ。普通だと、相手のセリフを聞いて咀嚼して返す、というのをやってくれるんですが、「あ、そうじゃなくていいよ」と言います。
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- なるほど。出来ていない会話のとぼけた感じというのでしょうか。
- 延命
- 会話は成立してないけど、話を聞いていない人の中ではとても筋が通っているという。キャッチボールをしたいのに、出来ていないという。次の「消失」もそういう感じになると思います。
同じにやっても意味がない
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- その上で9月の「消失」の見所を教えて頂きたいんですが。
- 延命
- 見所、という訳じゃないんですが・・・。ケラさんの会話は凄く好きなんですが、人間を上から目線で見ているのが苦手で。そこは払拭したいと。
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- 上から目線というのは、ぱっと思いつくのは、人間の愚かな部分がぶつかり合う様みたいな?
- 延命
- そうですね。同じにやっても意味がないので、自分好みにしていこうと。作品の最後、築いてきたように見えてた人間関係がバラバラになってしまうんですけど、それでも人間がコミュニケーションをとろうとすることに希望はあるんだ、という終わり方になればなと。あと、劇場のサイズ的に、大劇場での作品を西部講堂でやったらどうなるか、というのもありますね。もっと面白くさえなれるのではないかと。頑張ります。
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- 頑張って下さい。
気持ち
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- 俳優として、延命さんは以前と比べて変わった事とかってありますか?
- 延命
- 気持ちって大事なんだな、という事が最近ようやく分かった、というか体に落ちてきたというか。割と最近まで、段取りだけでいけるもんだと思っていて。
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- 気持ちって言うと、観客は舞台上で演技をしている俳優の体から役の気持ちを感じ取る事が出来る訳ですけれども、その気持ちを舞台で展開させる事が重要だ、という事ですね?
- 延命
- そうです。俳優は気持ちを持つ必要はないだろうと思っていたんですけれど。
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- 何故必要かというと?
- 延命
- お客さんとして、それが見たいなと思うようになってきたんです。それから、面白いなと思っている演出家さんのワークショップに行ったりすると、例えばいわゆるエンタメ系の演出家さんでも、古典系の演出家さんでも、最終的に見せたいのはいわゆる感情なんだなと。地点の「三人姉妹」を見て、三浦さんは絶対そうじゃないだろうと思っていたんですけど、言うたら機械的な演技をしている人から、人間的なものを見たい、というような印象を受けました。
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- 今後は、そういった、気持ちを表現出来るようになりたい?
- 延命
- そうですね。なりきる事とはまた違って、毎回ある状態に自分を持っていく事が演技なんだなと。俳優として、何か獲得したり考えたりするという勉強はその為に必要なんだなと思いました。
段取りじゃなく
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- これまで俳優をやっていて、それまでのご自分を大きく変えた作品などはありますか?
- 延命
- 何だろう、THE RABBIT GANG TROUPのphantom pain,phantom gainという作品でした。あれが唯一、段取りじゃなく出来た芝居だったんです。
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- 多分拝見していないですね。感情で動いたお芝居だったと。
- 延命
- いえ、感情というのじゃなくて、生理とかテンションとかいうほうが近い気がするんですけど。私のシーンは実質二人芝居で、共演の方が感情で演技する事や、相手役から感情を引き出す事を大事にされていたんですね。ただ言われた事に反応すればそれで成立する、という感じだったんです。段取りとか決まっているけど、頭でそれを追わなくても毎回同じ状態になれる、芝居は段取りじゃないんだ、という事に気付いたんですね。それまでは、例えばセリフを被せるタイミングというか、国語をやっていたんですね。
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- それ以降、自分の演技とか稽古に反映されたと。
- 延命
- いや、これをやればいいというのは分かったけど、どうすればできるのかは分からなくなったんですね。むしろ、細かく考えるのをやめちゃって、雑になりましたね。
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- マジですか。
THE RABBIT GANG TROUP
京都を拠点に活動している劇団。
ヨーロッパ仁鶴
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- さて、「ヨーロッパ仁鶴」ですけども。
- 延命
- (笑う)
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- ヨーロッパ企画メンバーからは色々な感情を持たれているであろう「仁鶴」ですけれど。
- 延命
- 謝っておいてください・・・。単純な思いつきでやったら、初演の時に「バカにしている」と受け止められたんですね、お客さんに。
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- 怒られましたか。
- 延命
- 喜ばれました。でもバカにしてやってる訳じゃないんですよ。ヨーロッパ企画さんの成立させている会話の形式って、凄く新しい表現だと思うんですよ。平田オリザさんが始めた静かな演劇と同じくらいの。静かな演劇だって、同じ事を始めた劇団が沢山出てきたから一つのジャンルとして確立したんですね。誰もやらなかったら、平田さん独自のものに過ぎなかったと。ヨーロッパ企画のお芝居も、静かな演劇と同様にフォロアー劇団が増えたら、一つのジャンルになるんじゃないかなと。
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- ええ。
- 延命
- ヨーロッパ企画独自のやり方を、汎用性をもった方法として広めていければと。
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- あ、ヨロパを広めようとしている?
- 延命
- (笑う)というよりは、ヨーロッパ企画のやり方ですね。あれは本当に、静かな演劇の次の世代の現代口語演劇だと思うんです。
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- 確かに、ヨーロッパのお芝居というのは新しいだけでなく、かつ難しい方法を用いている訳ではない。説明は難しいんですけど、新しい発見である事は間違いないですね。何だろう。で、フォロアーという立場の「仁鶴」ですが、今年はどうなんでしょうか。
- 延命
- 人が集まれば・・・。いつもタイトルだけ思いついて台本を書くんですけど、もう思いついていて、「あんなに優しかった○ー○○ー」。
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- (笑う)めちゃ面白そうですね。
パティスリー「ghost」のキャラメリゼナッツ
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- 今日は延命さんにお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。どうぞ。
- 延命
- ありがとうございます。
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- 袋がボコボコですけど。
- 延命
- (開ける)
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- まあ、お菓子ですね。ヘーゼルナッツなどをカラメルで固めたものらしいです。
- 延命
- ありがとうございます。