演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

鈴木 正悟

俳優

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名古屋

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今は、トリコ・A
鈴木
そうですね、いま稽古している最中で。もう試演会も二回やって、東京公演も終っています。全部ワークインプログレスという形で進んできているんですが、今は名古屋公演に向けて、という形なのかな。
__
なるほど。
鈴木
今から、一ヶ月ちょいくらい詰めて詰めて、という感じですね。
__
私はちょっと、見られなかったんですが、役どころとしてはどんな感じだったんでしょうか。
鈴木
役どころですか。何でしょうね。医者の役で、妻から疎ましく思われていて。何ていうんだろう。自分はもっと妻と仲良くなりたいんだけど、どうにもならない状態でずっと暮らしている男なんですよね。
__
演じていて、いかがですか。役作りとか。何ていうんでしょうか、演出と、ご自身の二人で作り上げていく形だと思うんですが。
鈴木
そうですね、演出と二人でというよりは、トリコ・Aの作り方というのもあると思うんですが。山口さんは山口さんで、こうして欲しいと稽古場に持ってきているものもあって。僕も、他の役者さんも稽古場に持ってくるものもあって。もうぐちゃぐちゃに混ざり合って、それを山口さんがまとめる、という事が多いですね。
__
ぐちゃぐちゃ。それがまとまると。
鈴木
稽古中に山口さんが「こうしてみて」とヒントを出してくれるのを、自分達なりに解釈して、またぐちゃぐちゃに。その上で、山口さんが面白いなと思ったものをまとめていくという。だから、台本を読んで考えて考えて、という事もあるんですけど、稽古場の中でいつのまにか自分のやっている事が役になっている事が多いですね。
欄干スタイル

鈴木正悟と前尚佳を中心にしたユニット。京都を中心に活動中。(公式サイトより)

トリコ・A

山口茜氏による演劇上演団体。

トリコ・Aプロデュース『豊満ブラウン管』

公演時期:2006年11月29日〜2007年5月13日、京都・東京・名古屋各地で上演。公演紹介ページ: 豊満ブラウン管 | トリコ・Aプロデュース [演劇公演紹介] ★CoRich 舞台芸術!、 公演記録:トリコ・Aプロデュース『豊満ブラウン管』。

山口茜氏

主に京都を拠点に活動する劇作家。 トリコ・Aプロデュース主宰。

拾う

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稽古場をぐちゃぐちゃにするために、ネタを稽古場に持ってきて、自分の演技を提案する、という感じなんでしょうか。
鈴木
そうですね、提案する、というよりか・・・。例えば、稽古場で『私は、あなたの役はここでこういう風に感情が動くと思うから、あなたこうしてみて』というやりとりが役者間であったとするじゃないですか。それって、すごい矛盾が生じることで。こうして話をした時に、例えば面白い話をして、笑うじゃないですか。そういう反応って凄くリアルだと思うんですけど。
__
反応ですか。
鈴木
さっき言ったような刷り合わせをした場合には、何だろう。ホントに作られたものしか出来ない。『そこで笑って』と言われて、あはは、笑う事は簡単に出来るんですけど、その人から出たものではないと思うんですよ。
__
その人、というのは、役ですか、俳優ですか。
鈴木
ええと、僕の場合は稽古場では「その人」だと思ってるんで稽古場で、不意に出てきてしまったものを拾っていくのが大切だと思っているので。稽古場では、役がどうこうというより、「僕」ですね。
__
その、俳優としての仕事をしている鈴木さんですね。
鈴木
そうですね。稽古場で出てきてしまったものを拾うのが役者の仕事だと思っています。それをどう見えるようにするのか考えるのは演出の仕事なんですけど。本番までに出てきてしまったものをいっぱい集めていくという。
__
それは、死にませんかね。
鈴木
死ぬ?
__
芸が死ぬとか、よく言いますが、そういう意味で。
鈴木
あー。死ぬ(笑う)。
__
段々ギャグが面白くなくなっていくとか。
鈴木
ああ、でもそれに耐えるのも役者の仕事だと思います。一番面白いのは、それが初めて稽古場に出てきた時だと思うんですが。それが、何回かやっていくうちに段々面白くなくなっていく。やろうとするんだけど、あざとい感じが出てきてしまう。でも、それを続けていくという忍耐力が必要だと思うし。ある程度、信頼の置ける演出家さんとかの稽古場だったら、その人が面白くないと思うまで続ければいいわけだし。

これから

__
その、俳優としてのこれまでとこれからについてお話を伺いたいと思います。
鈴木
これまでとこれから。うーん。今までですよね。結構、ある時点で役者としての気持ちの持ちようが変わりまして。何ていったらいいのか。大学を出て、京都に出てきて。やっと、就職せんとこれでやっていこうと決めた時は、今よりは凄く浅はかな気分で決めてた。演劇できればいいや、というぐらいのノリでやってて。で、それで劇団だった頃の山口さんのトリコ・Aに入らせてもらって。で、トリコ・Aが解散したんですよ。
__
2002年くらいでしたね。
鈴木
そうですね。で、劇団員だった人たちと山口さんで話したことが、『役者としての不安感をいいように使おう』と。こんな事言ってたのかな、僕としてはそう受け止めたんだけど。劇団という形であって、いい事も沢山あるんだけども、『次もこの劇団での仕事があるから、何もしなくても芝居に出れるわ』という状態が凄く役者をダメにする。作・演出の人は、まあ自分で書いて演出して、でチラシとかで一番最初に名前が出るから名前も覚えられ易いけど。役者の場合は、『あそこの劇団の人でしょ』という状態でいると何も努力しなくなる。作・演出の人は賞とか取ってどんどん知られていくけど。そうすると、あそこの劇団の人だから大丈夫に思われる・・・という状態は、それでいいのか、という話。
__
はい。
鈴木
解散した理由はそれだけじゃないですけど。まあ、一番大きいのはそこで。役者自身が何も努力しなくなるというか。芝居をする上で何をしなくちゃならないのかを全く考えなくなってしまうのではないか、という。そこからですね、気の持ちようが変わっていったのは。もうフリーだから、自分からアクションを起こさなければどこかに呼んで芝居をやらせてもらったり出来ないし。自分に何か無ければなおさら呼んでもらえない。今までは運良く、山口さんとか、マレビトの会とか、前田さんとかのに出させてもらってますけど。これから、他に色んなところに出させてもらうのには、もっと努力しなくちゃならないと思いますね。
マレビトの会

2003年、舞台芸術の可能性を模索する集団として設立。非日常の世界を構想しながらも、今日におけるリアルとは何かを思考し、京都を作品製作の拠点として創作を続ける。(公式サイトより)

鍛錬

__
俳優としては、これからどういった方向で。
鈴木
今までは、トリコ・Aの山口さんに呼んで頂いて、断続的にお芝居には出れていたんですけど。それを頼りにしていても始まらないなと。今年は、それを頼りに出来ない状態になりますね。山口さんが文化庁の研修で海外に2年間行く事になったので。劇団解散してから、本当に自分で何とかするしかない期間がやってくるんですね。ちょっと前から思ってた事なんですけれども、俳優って他の劇団から呼んで貰ったり、オーディション受けたり。何かしら受身の状態でいるじゃないですか。それよりは、自分が好きだな、と思える演出家さんとか、劇団さんに『出して欲しい』という事が必要だと思うんです。
__
ええ。
鈴木
そう言うには、自分の鍛錬も必要だと思っていますし。そうするほうが、ずっと健康的だと思います。
__
売り込む。普通に重要だと思いますね。
鈴木
芸能界みたいにマネージャーがいるわけじゃないですから。どうかしようと思ったら自分で何とかするしかないんですね。だから、訓練が必要ですね。自分の演技を他人に見てもらったりとか。

グラス

__
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
鈴木
すみません。何か、読んでていつも大変だなあと。
__
いえいえ。どうぞ。
鈴木
あ、ありがとうございます。開けていいですか?
__
どうぞ。
鈴木
Georges・・・これを開けるのが緊張する(開ける)。おお。何ですかこれは。
__
グラスですね。
鈴木
おー。すげー。うち、あんまりパッとしたグラスがないので。ありがとうございます。すいません。
__
いえいえ。
鈴木
焼酎いれます。
(インタビュー終了)