努力クラブ「牛だけが持つ牛特有の牛らしさ」
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- 今日はどうぞ、宜しくお願いします。先日の努力クラブ「牛だけが持つ牛特有の牛らしさ」大変面白かったです。お疲れ様でした。
- 合田
- ありがとうございます。ふざけたタイトルですよね。
努力クラブ
元劇団紫の合田団地と元劇団西一風の佐々木峻一を中心に結成。上の人たちに加えて、斉藤千尋という女の人が制作担当として加入したので、今現在、構成メンバーは3人。今後、増えていったり減っていったりするかどうかはわからない。未来のことは全くわからない。未来のことをわかったようなふりするのは格好悪いとも思うしつまらないとも思う。だから、僕らは未来のことをわかったようなふりをするのはしない。できるだけしない。できるだけしないように努力している。未来のことをわかったふりをしている人がいたら、「それは格好悪いしつまらないことなのですよ」と言ってあげるように努力している。(公式サイトより)
「牛だけが持つ牛特有の牛らしさ」
公演時期:2011/6/3〜5。会場:人間座スタジオ。
みんな死にましょうよ
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- 一瞬聞いただけで残りますよね。さっき気づいたんですが、五・七・五ですよね。
- 合田
- あ、ホンマや。全然気づいて無かったです。
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- いいタイトルですね。牛の鈍重さ、4回も反芻するという執拗さ、時折発揮する野生。そういう、上品さとは無縁の牛らしさ。それが芝居の様々な場面に反映されていました。
- 合田
- はあ・・・。ちょっと分からないですけど。
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- お互いが話していてもちっとも理解の進まない登場人物たち、ほぼ全てのコントが最後は同じ結末―つまり全員が何か殺害されて、やがて夕陽に照らされると生き返って立ち上がり、斜陽に目を細めて終わる―を迎えるという繰り返し。
- 合田
- ふふふ。
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- まず、それにはどういう意味があったんですか?
- 合田
- とりあえず、ルールは守りたいなと思ったんですね。各コントの終わりに夕陽に照らされるというルールが決まったんですよ。で、やってる内に、「みんな死にましょうよ」って事になって。夕陽か死か迷ったんですけどね。先に死んで、夕陽を浴びる事にしました。
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- その、下らなさはもちろんとして。夕陽を浴びると今までのがまるでコントだったかのようになるんですよね。
- 合田
- 夕陽、関係ないですからね。
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- だからあの一瞬、当助人物が本当に生き返ったという描写と、コントの練習が終わった役者たちの黄昏という図が同時に成立するんですよね。コントで描かれる下らない人々と、それを練習している役者達のわびしさが。
- 合田
- そうですか。めっちゃいいふうに解釈して下さって(笑う)。
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- いや、もちろん全部悪ふざけと取りましたよ。本当に下らないし。でも、あってもなくてもいいような芝居ではなかったですね。
- 合田
- ありがとうございます。
失敗する人間が好き
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- 「牛」、一番のお気に入りは。
- 合田
- 数字の奴が気に入ってるんですよ。あんまり周りの評判はよくないんですけど。
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- あ、私は好きでしたよ。ただただ「光る」という事しか言及されていない数字の表示をめぐって、エンジニア?と使用者?の男女が使用説明に振り回される話ですよね。やっぱり全員死ぬし、徒労感が素晴らしかったです。時間の無駄でした。
- 合田
- ありがとうございます。全く意味のない事を積み重ねていったりとか、同じ事を失敗するとか、わざと失敗するとか。そういう人間の行動がすごく好きなんですよ。
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- 私も興味があります。人間はたまに、失敗したくなるんですよね。
- 合田
- 昔、劇団紫の時に「バナナの皮」というコントをやったことがあるんです。道に落ちているバナナを見ている二人が、すべってこける人を想像するという話です。「そのすべった人は、起きあがってもう一度同じバナナに滑って転ぶはずだ」とか。
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- 人間は、あえて失敗したがりますからね。
- 合田
- そうですか?
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- 成長したい・進化したいという気持ちと、失敗したい・落ちこぼれたいという気持ち。実はどちらも、人間に備わっているんじゃないかなと。生命が持っている、進化へのベクトルとは矛盾しながらも。
- 合田
- マジすか。
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- 失敗したところを誰かに見られたいとか、失敗した自分を可愛がりたいという自己愛とか、未熟な自分を認めてそのポジションにいることを確認したいとか。
- 合田
- 耐えられないですもんね。ちゃんとしてる自分って。完璧な自分でいることには、疲れるし、そうありたくないのかも。
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- あるいは、他人の失敗を見たいという欲求もあるのかもしれません。
- 合田
- ああ、自分もあいつも駄目やと思って安心するんですね。完璧なものを求められるから、正しいやり方で仕事するんですけどね。
質問 森田 真和さんから 合田 団地さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、尼崎ロマンポルノの森田さんからです。
- 合田
- 凄いとこの人やないですか。ありがとうございます。
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- 「今後、一緒にお芝居をやってみたい人はいますか?」
- 合田
- 難しいなあ。やっぱり、上の世代の人とやってみたいのはありますね。京都ロマンポップの向坂さんに演出をさせていただきたいというのはありますね。お世話になってきたんで、単純にまた一緒にやりたいって感じで。あと、いわゆるおっさんに興味があるんですよ。
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- おっさん?
- 合田
- 具体的に誰というのはないんですけど。立ってるだけで、こみあげてくるものってないですか?
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- わかります。味があるというか。
尼崎ロマンポルノ
2005年1月近畿大学在学中、橋本匡、堀江勇気を中心に旗揚げ。劇団員は6名。「劇団のための作品ではなく、作品のための劇団」がモットー。実在の事件や状況を扱い、「フィクション」でも「ノンフィクション」でもなく、「フィクションに紛れるノンフィクション演劇」として上演を続ける。現実と妄想、あの世とこの世など、自由に空間を行き来しつつも、ノスタルジックな雰囲気を舞台化する。エンタメやアングラやポップやアヴァンギャルドなどの枠に囚われず「本格物」で勝負できる劇団をめざして活動中。(公式サイトより)
おじさんについて
- 合田
- 上の世代の人の事をばかにしてしまうかもしれませんけど・・・例えば、パパと一緒に下着洗わないでとか、年頃の娘に煙たがられるおじさんの、哀愁を誘うエピソードが一般的にあるわけじゃないですか。
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- ありますね。
- 合田
- そこに立ってるだけで、そういう情報がまといつくんですよね。そういうのとは違うおっさんもいるかもしれないですけど、そこに立ってるだけで悲しい存在、一緒に舞台に立っていただけたらと思いますね。
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- 私もちょっと角度は違いますけど、面白いと思っています。ストリップ小屋の客席のおっさん。
- 合田
- あ、行った事ないです。
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- 面白いですよ。ストリップ小屋ってある意味健全で。舞台上のストリッパーもいいですが、その下の客席で盛り上がってるおっさんや、飽きて寝ているお爺さんとか。マドンナに沸く男性というのが昔から好きなんですが、何だか、生命そのものって感じがするんですよね。
- 合田
- めっちゃわかります。実はおっさんって、幸薄そうな雰囲気でも、かっこいいんですよね。はげてて、情けなさそうで、小腹が出てても、ほんまはかっこいいんですよね。
団地妻について
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- おじさんに興味があるとの事でしたが、女性についてはどう思いますか?
- 合田
- おばさんという事ですか?
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- いえ、女性の好き嫌いですとか、女性の性的魅力であるとか。
- 合田
- いや、ネットに載せられない事しか言えないので・・・でも、女性で面白い人ってあんまりいないですよね。
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- うーん、「面白さ」が、さっき言われたように「新鮮さ」「意表を突く」と切り離せないのであれば、やっぱり女性性とは結びつきにくいのかもしれませんね。宇宙のロマンとか、過去の歴史ミステリーとか、男性性だと思うんですよ。
- 合田
- 女性はもうそれだけで宇宙ですからね。そんなのに構ってられないでしょう。オシャレしたり、恋したり忙しいですよ。
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- 女性は嫌いですか?
- 合田
- いえ、好きですよ。ネットラジオでずっと、そういう事言うてますもん。
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- あ、「団地妻撲殺ラジオ」ですね。
- 合田
- そうです。中学生の頃の同級生とやってます。
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- いいネーミングですよね。団地妻も撲殺も、まったくリアルじゃないのに血生臭い。
- 合田
- 今日び、団地妻なんて聞かないですしね。団地妻なら撲殺しかないでしょう。
何考えてるかわからへん
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- 今後は、どんなものを書きたいですか?
- 合田
- 僕はあんまり、劇団や作品を定番化したくないんですよ。この劇団ならコレ、みたいな。ぜんぜん予想が付かないような作品づくりをしたいんです。
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- それは何故でしょう。
- 合田
- ダウンタウンが出始めた時の評論に「彼らの笑いは予測が付かない、だから面白い」というのがあったんです。その言葉に影響を受けてます。
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- お客さんを純粋に驚かせたいという事ですか?
- 合田
- 「面白い」の過程の前に、「驚き」は常にあると思うんですよ。最終的な目的は「面白い」ですので・・・
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- では、今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 合田
- 今、色んな劇団が旗揚げされていますでしょう。
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- ええ。
- 合田
- その中に埋もれたくはないですね。「昔、努力クラブってあったね〜」って、思い出されるくらいにはなっておきたいですね。
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- ああ、30年後ぐらいに回想されたらいいですね。
- 合田
- もう辞めるみたいな(笑う)。あと、さっきの意表を突く話に戻りますけど、何をやってくるか分からない感じになりたいですね。いつもはヘラヘラしてる担当で、あいつら基本はいい人やけど何考えてるかわからへんって思われている。不気味な感じになってたいですね。
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- うわさ話に困る感じの。
- 合田
- あそこの作品はヘラついてるぞ。みたいな。
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- ちょっと距離を置かれてるけど・・・
- 合田
- 目を離せないみたいな。
ヨガ雑誌「Yogini」
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
- 合田
- ありがとうございます。開けさせて頂いても・・・
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- はい。
- 合田
- おほ、これはすごい。ビューティフルライフ? ヨガですか? いま、ヨガ流行ってるんですか。
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- まあ、定番ですね。
- 合田
- ちょっと大学で、インドの事を習ってからこの辺の事には興味があるんで。
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- あ、そうなんですね。良かった。