雨の日に
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- 本当に久しぶりですね、ユーコさん。最近、ユーコさんはどんな感じでしょうか。
- 山本
- なんすかね。年開けてから、舞台の稽古と本番が続いて。結婚したんですけど、そっちの家に帰れてないですね。
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- 連絡はしてるんですか?
- 山本
- してるけど、ねー。そんなに別に話す訳でもないし、オットは農業やってるんですけど、それを手伝ってもないし、嫁としての焦りがありますね。ぐらいですかね。
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- 重たい話題ですね。
- 山本
- そーなの。今日気圧が低いから、まあ体調悪いんですわ。
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- インタビューする日としては最悪のコンディションなんですね。せっかくの、メルセデスベンツスペシャルカフェなのに。
- 山本
- 『ベンツ』ですからね。でもいっぱい人入ってくるね。みんな車買わんでしょ。
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- 少なくとも我々は買う気では来てないですからね・・・。
青年団
青年団は平田オリザを中心に1982年に結成された劇団です。私たちは、平田オリザが提唱した「現代口語演劇理論」を通じて、新しい演劇様式を追求してきました。このまったく新しい演劇様式は、90年代以降のわが国の演劇シーンに少なからぬ影響をあたえ、演劇界以外からも強い関心を集めてきました。(以下略、公式サイトより)
ロボット演劇版「銀河鉄道の夜」
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- ユーコさんがいま出演中の、ナレッジシアター のこけら落とし公演・ロボット演劇版「銀河鉄道の夜」 、大変面白かったです。
- 山本
- ありがとうございます。どっちを見ました?
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- 私はBチームを拝見しました。ご自身としては、どんな体験でしたか?
- 山本
- 青年団としてはこれまで何度もロボット演劇はやってきていて。私はロボットに対しては偏見を持っていて、全く関わってこなかったんですよ。
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- ええ。
- 山本
- 出演が人間だけの「銀河鉄道の夜」(青年団)には出演していたし、大阪で公演してみたかったので、参加させてもらいました。大変な事は沢山ありましたが、勉強になりましたね。
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- 私が拝見した時はものすごくスムーズだったんですけど、芝居が止まる事もあるそうですね。
- 山本
- うん。止まる。もちろん、スタッフさん達がその度に同じ故障をしないように対策を重ねていくんですけど、にしても毎回、色んなところで止まる。それは建物の通信状態とか、お客さんの持ってるWi-fiとか、限定のしようがなくて。予想しようがないんですよ。さらに、ロボットが台詞を言うタイミングは全部決まっていて、つまりこちらの演技を待ってくれる訳じゃないです。そういう意味で、ロボットがこちらの動きを制限してくるんです。
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- 全ての演技と台詞の出力が予めプログラミングされているのであれば、電波の干渉って受けないんじゃないかと思うんですが。
- 山本
- 受けるんですよ。本当に。一時間のお芝居全てをプログラミングしちゃうと、かならずズレが出てくるので、いくつかのシーンのかたまりで分けてプログラミングしてあるんですけど、それでも。例えばロボビーがいるシーン、一連の台詞と動きはコンマ何秒までを稽古で決めて、役者はそれに合わせて演技を稽古して。そうやって決めた芝居を、本番に入ったらロボビーの方から崩してくる訳。
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- それはきついですね。
- 山本
- そうきついの。キツいと思ったらただのイヤな演劇になっちゃうから。何するか分からん役者が一人舞台上にいると思ってやると、逆に楽しい。「あ、そのセリフ言わへんのねじゃあうちらでフォローするわ」という判断が瞬間瞬間であって。
ナレッジシアター
大阪・梅田グランフロント大阪ビル内の劇場。
大阪大学ロボット演劇プロジェクトx吉本興業 世界初演!ロボット演劇版 銀河鉄道の夜
公演時期:2013/5/2〜12。会場:ナレッジシアター。
ロボビー、再起動!
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- 私が見た回は何の破綻も無かったけどなあ。
- 山本
- いや、結構な回数止まってるよ。どこかしらはあった筈。一回止まっちゃったら、一回再起動を掛けるのよね。
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- ええ!
- 山本
- 上手の幕にオペレーターさんがいるんだけど、そこから再起動を遠隔で指示するとガクンってロボビーが首を倒して白目になんねん。
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- ええ!
- 山本
- で、1分くらいすると次のプログラムにいくんだけど、その1分のフリーズを役者がつなぐねん。その間のロボビーの死んでる顔を見て欲しかった。本当に怖いから。確実に機械音がするから。いやあ、まだまだ色んな事があるやろうね。でも格段に性能が上がったらしいで。海外で公演した時に舞台から落ちたり、関節が故障したり、異音を発したり。出てこないとか喋らないとかは可愛いもので。
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- 出てこないとかあるんですか。
- 山本
- 今回も一度、ラストシーンで下手の幕にハケず、ずっとそのままだったとかありましたね。
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- そういう裏話とかでもう、ひとつのエンターテイメントだなあ。今回の作品に参加して、何を学ばれましたか?
- 山本
- 結局のところ、ライブやなあ、と。ロボットのプログラムを完璧に組んでも、止まった時は生きている役者がどうにかしないといけない訳やから。それを逆に認識しなおした。何回も止められたけど、その分、役者の力を。
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- 今回の作品、純粋な意味では平田オリザ作品だったじゃないですか。分かりやすいセリフなのはもちろん、物凄く深くまで想像が入っていってくれるような。
- 山本
- うん。
こんな面白さもある、そんな面白さもある
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- これまで数多くの舞台に立っているユーコさんですが、これを機に変わったと実感した作品はありますか?
- 山本
- 東京に行く前なんですけど、石原正一ショー ですね。
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- なるほど。ドカコと野球狂の詩子。
- 山本
- 演出方法というよりも、共演した兄さん姉さんの楽しそうっぷり。それまで私は頭でしか演劇をやってなかったから。武士道でやってたから。そういう価値観だけじゃない、まず自分が楽しくないとお客さんも楽しくないやん、みたいな事を、言われるのではなく実際に目にしてん。凄く考え方が変わったんです。少なくとも心持ちは変わって。で、東京に行ってからはコントやっててん。
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- コント。
- 山本
- 「ラ・サプリメント・ビバ」という。言うたらお笑いの人やねんけど。その人がお芝居よりのコントをやりたいという出演者募集のチラシを見て、同時にリリパット・アーミーの舞台にも出演が決まったから、両方同じ時期にやって、その後に平田オリザ・松田正隆の「天の煙」にも出て。違う種類の作品にどんどん出会えて、こんな面白さもある、そんな面白さもある、って。
石原正一
演劇人。石原正一ショー主宰。1989年、演劇活動開始。1995年、"石原正一ショー"旗揚げ。脚本演出を担当、漫画を基にサブカル風ドタバタ演劇を呈示。関西演劇界の年末恒例行事として尽力する。自称”80年代小劇場演劇の継承者”。外部出演も多数。肉声肉体を酷使し漫画の世界を自身で表現する"漫画朗読"の元祖。"振付"もできるし、”イシハラバヤシ”で歌も唄う。(公式BLOG『石原正一ショールーム』より)
地続きになりたい
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- いつか、どんな演技が出来るようになったらいいとおもいますか?
- 山本
- 市原悦子さん。
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- おおっ。
- 山本
- 正確に言うと、映画「青春の殺人者」で水谷豊の母親役をやった市原悦子さん。が、父親を殺した息子を庇おうとしたり、一転して殺そうとしたり。その時の、気が触れたんじゃないか、この人演技しているけどちょっと違ったら完全にキマっちゃうな、みたいな。日常とお芝居が地続きになっているような。
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- 地続き・・・。
- 山本
- 今怒ってますよみたいな演技ではもちろんなくて、見てる側が「あ、あっち側なのね」と思うようなお芝居でもなくて。普通の日常と繋ぎ目がないようにしたい。
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- 分かったような気がします。変身済みのキャラクターがいて演技をキメているんじゃなくて、同じ肉体を持つ人間をリアルに見てとれて、彼の芯の向こう側に何かがガーって広がってる感じ。
- 山本
- うん。市原悦子さん、ある舞台でどんどん狂っていくシーンがあって、その稽古から本番までずっと見ていた人に聞いたんだけどね。毎回、本番中に「あ、今日こそは完全に狂ってもうた」って思っちゃったんだって。
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- それは凄い。
- 山本
- 初めて見るお客さんはともかく、毎日見ている人でもそう思うって、凄いなと。いつか、端っこからでもいいから拝見したいです。
質問 古藤 望さんから 山本 裕子さんへ
質問 清水 智子さんから 山本 裕子さんへ
あはは、そーなの
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- 今後、出てみたい劇団や作品は?
- 山本
- 真面目に言うと、松田正隆さんの作品。あと、石原正一ショー。もう一回、バスタオルを巻かせてほしい。そして、ラックシステムにいつか出させて欲しいです。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 山本
- そうですね・・・。もっと露出しようとしています。TV・映画・CFと、どんどん入れていきます。
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- 頑張って下さい。成功を祈っています。
- 山本
- あざーす。
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- 私はその、ユーコさんが東京に行ってから活躍している事を6年くらい知らなくて。
- 山本
- 生きてました。
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- ピタットハウスのCMかな。TVで見てビックリしましたよ。
- 山本
- あはは、そーなの。
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- これからも活躍してくれるととても嬉しいです。
無印良品・ホームフレグランスセット
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って来ました。
- 山本
- ありがとうございます(開ける)おおぉーお!
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- 新居にどうぞ。
- 山本
- 匂いモノが好きなので。ありがたく使います。