演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

渡辺 ひろこ

女優

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劇団飛び道具「四人のショショ」

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。最近は渡辺さんは、どういう感じでしょうか。
渡辺 
飛び道具の公演「四人のショショ」が終わって、5月に愛知に行く準備をしています。
__ 
なるほど。
渡辺 
愛知に行くって言ったらみんな「名古屋に行くの?」って聞いてくるんですけどね。みんな、その地名を言ったら「どこ?」って。私の方が叫びたいぐらい知らない土地なんですよ。工業地域で、農業してて、でも海もある不思議な土地です。京都とあまりにもかけ離れていて、やんややんや文句を言ってました。
__ 
今でもまだ、喧嘩している?
渡辺 
いや、今はそんな土地があっても良かろうと。本拠地は京都で、長期出張に行くみたいな気持ちです。
劇団飛び道具

京都を拠点に活動する劇団。

四人のショショ

公演時期:2013/3/21〜24。会場:スペース・イサン。

右往左往

__ 
劇団飛び道具「四人のショショ」。大変面白かったです。渡辺さんは看護師役として、右往左往してましたね。
渡辺 
ありがとうございます。私、一度「アイス暇もない」 の時にやってたんですよ。看護師役を。でもその時は上手くいかなくて、苦手なのかなと。
__ 
というと。
渡辺 
看護士さんって、一見自然に振る舞っていても計算されているんですね。いい意味で。どういう風にすれば患者さんと距離を詰められるかとか、とか。「アイス暇もない」の時は、もっと考えるべきだったんですよ。今回は助産婦の役で、「助産婦って何だろう」と色々見て研究したんです。大内さんによると、やっぱりどんな事があっても冷静でいないといけない。出産って一大事だから。
__ 
なるほど。
渡辺 
バタバタと右往左往するでもいいんですけどね。実は私の役は一番出ハケが多くて、重いテーマの話なので、空気を切り替える役目を果たせていたらと思います。上手くいけてたかどうかは分かりませんが。
__ 
いや、変えられてましたよ。
渡辺 
良かったです。空気を変える役は、結構難しいですね。まあ、その狙いが分かられてしまったら嫌なんですけど。
アイス暇もない

公演時期:2004/3/3〜7。会場:アトリエ劇研。

子供が出来たら・・・

__ 
渡辺さんは結婚して、愛知に行くんですよね。
渡辺 
はい。
__ 
出産は考えていますか?
渡辺 
今回、「四人のショショ」をやるにあたって、妊娠と出産について女性陣で勉強したんですよ。そこで分かったんですが、私は出産したいと思った事がないんですよ。
__ 
なるほど。
渡辺 
子供が嫌いという訳じゃなくて。その、結婚・妊娠・出産・子育てというのが、世間一般では自然な事だとされているけれども、実は凄く難しい話だと。結婚してなかなか子供が出来ないみたいな話がありますからね。まあ、結婚したんですけどね。
__ 
自分が子供を産むとは思ってない?
渡辺 
一緒に暮らしたら何か変わるかもしれませんね。環境によって違うだろうし。子供はめちゃめちゃ好きだし。
渡辺 
今は子供を産まない、という選択肢を、何故自分は取っているのか。なんですよね。
__ 
渡辺さんの遺伝子がまだその時期ではないと思っているから、なのかなとはちょっと思います。邪推だな。
渡辺 
いいですよ邪推でも。
__ 
今は子供を作るべきではない、みたいな。
渡辺 
そうなのかな。ゲームで言えば、フラグが立ってないという事なのかも。自分で立ててないのかもしれないですけど。
__ 
もしそうであれば、環境が変わったらきっと凄く変わるかもしれませんね。
渡辺 
どうなるんでしょうね。子供が出来たらもうちょっとしっかりするのかな。あんまり変わらないんじゃないかな。ちょっと楽しみではありますね。

出会う

__ 
渡辺さんがお芝居を始めた経緯を教えてください。
渡辺 
大学に入って一年目、京大の11月祭に遊びに行ったら、高校の同級生が劇団の宣伝をやっていたんです。誘われて観に行った「名人戦」が、劇団その1 との出会いでした。もう、物凄い迫力でびっくりして。終演後に入団説明会があったんですが、ちょっと怖くて帰ったんです。で、次回公演の「桜ジェット」を吉田寮で見ました。駒田さんが主役でした。「桜ジェット」も全然意味が分からなかったんですが、すさまじくて。入団しました。
__ 
分かります。私も「桜ジェット」を見ています。とにかくものすごい熱量でしたね。
渡辺 
しばらくその1でやってて、辞めた後に椎名さんにおすすめされて飛び道具の公演に当日受付で入らせてもらったんですよ。それが初めての飛び道具でした。
__ 
いかがでしたか。
渡辺 
こんな、静かに喋る演劇もあるんだって。もちろんすごく面白かったです。入りたいなあって、思ったんですよね。
劇団その1

京都を拠点に活動していた劇団。後のHANAFUBUKI。

質問 九鬼 そねみさんから 渡辺 ひろこさんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、努力クラブの九鬼そねみさんから質問です。
渡辺 
「そねみ」?
__ 
はい。
渡辺 
嫉妬心が強いのは、いい女ですよね。
__ 
そうですね。「本番前に緊張してしまった時はどうしますか?」
渡辺 
私も物凄い緊張しいなんです。でも、自分を俯瞰するとほぐれるみたいです。私の場合、自分を斜め上から見下ろしてるつもりで緊張している自分を自覚すると笑えてきちゃって。「あはは〜緊張しとる」って。その時はもう緊張してないですね。

寄り添う僕ら

__ 
飛び道具の良さは調和だと思っています。それは、舞台上の人間関係や会話が様々なレベルで非常に調和されて美しくまとまっているという事だけではなく、演劇作品が、そのテーマが持つ重みに対して肉薄しているという印象がありまして。会話がキャッチボール出来ているというか、それが当然の効果を持って演じられているというか。
渡辺 
舞台上で自然に会話のキャッチボールが出来ているんですよね。私も初めて見た時からその印象は変わっていません。そこが驚きなんです。
__ 
やっぱり。
渡辺 
全体的に、奇をてらわないからかも。お客さんをきっちり楽しませるスタンスだし。でも、みんな心の中ではくそっと思っているんじゃないかなと思います。もしかしたらそれがとっても大事なところかも。
__ 
というと?
渡辺 
主役でも端役でも、表現する時に「自分がどうしたいか」という根幹が関わってくるんですよ。いわゆる「我が(わが)」はあると思うんです。それが、その役の中心点に迫っていたらいいんですけど、集団で作る作品は必ずしもそうじゃない。集団で人々を描くとは何か?それが、七刑人の時にはよく話されていたと思います。
__ 
飛び道具「七刑人」 。罪人達が死刑に向かう、非常に重厚な演劇作品でしたね。大変面白かったです。
渡辺 
俳優個人がどうしたいか、それは一旦どうでも良くて。その役の中心にどこまで行けるか。もっと言うと、この人達はどこに向かおうとしているのか?が大切なんだ、って。集団で何かをやるのって、そういう事なんだろうと。だから、ワガワガにならないんじゃないかと思います。逆に、ワガワガは簡単に出来るんです。
__ 
俳優個人を超えた調和を実現する。それはきっと放任する事じゃないんですね。むしろ、個人の可能性をずっと思考し続ける事かもしれない。
渡辺 
「お前の役はこういう性格で、こういう存在なんだ」とかは言われないです。役割としての話はされますけど、具体的にこうあれとかこうしろとかは言われない。「そんなん、ナンセンスや」って。どれだけ物語に寄り添えるかが、飛び道具のお芝居の本質なんじゃないかなと思います。それは優しい所ですよね。この人達、凄いなあと思いますね。新参者の気持ちが続いています。
__ 
そうですね。
渡辺 
人に寄り添うという事については、ここ数年思いますね。藤原さんが言ってたのかな。例えば職場に嫌な人がいたとしても、その人の出来ない事はみんなでフォローするんです。まず、自分の出来る事をやって、その人をフォローして。社会としては排除するのが一番効率的なんですけど、みんなが輝ける場を作るのが、飛び道具で学んだ事でした。
飛び道具「七刑人」

公演時期:2012/5/24〜27。会場:アトリエ劇研。

つづく

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
渡辺 
既成台本というか、古典の戯曲に挑戦してみたいですね。一度、東京国立劇場にオーディションを受けに行ったときに長台詞を読むというのがあったんですが、全然言えなくて。それと、引っ越しはするんですが、メインは変わらず京都のつもりです。飛び道具の公演は、確実に受付に立ってると思います。でも、その愛知の引っ越し先でも、演劇WSは行われるみたいなんですよね。
__ 
あ、そうなんですか。
渡辺 
まずはそこで、演劇未経験者を装ってWSを受けてみようと思います。

ショッピングバッグ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
渡辺 
ありがとうございます。
__ 
つまらないものですが・・・
渡辺 
(開ける)あ、袋?
__ 
ショッピングバッグですね。まあ、お買い物に使っていただければ。
渡辺 
これ、折り畳めるんですね。便利そう!いいですよこれ。使わせて頂きます。
(インタビュー終了)