KIKIKIKIKIKI「戯舞」
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。御厨さんは、最近はいかがでしょうか?
- 御厨
- 最近はKIKIKIKIKIKIのダンス作品「戯舞」の稽古ですね。2月の15・16日に横浜のTPAMで上演します。
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- そう、御厨さんは役者だけではなく、ダンスもされるんですよね。稽古はどんな感じでしょうか。
- 御厨
- 大分形が見えてきたかなという感じです。2週間程で詰めなければならないので結構大変でした。元々、AI・HALLで作った多人数出演の作品を再構成した作品なんですが、キャストが僕以外30代の男性となりまして。僕だけ20代なので違和感がある立ち位置なのかなと。
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- 物語的な要素がある?
- 御厨
- 現代の民俗芸能を新しく作るという試みなんですけど、言葉を使ったリズム隊みたいなものがありますね。4人が持ってきたものを寄せ合わせながら見せるという作品で、舞を見せる・神を呼ぶという儀式が主なモチーフの作品になりそうです。
夕暮れ社弱男ユニット
2005年結成。当初はライブハウス、砂浜など劇場外での活動を主としていたが、2008年より活動の場を劇場へと移す。従来の客席・舞台という構造の認識を、骨太な戯曲により再構築することを試みている。過去には、客席を破壊/再生した「現代アングラー」(2008年/次代を担う新進舞台芸術アーティスト発掘事業「CONNECT vol.2」優秀賞受賞)や、劇場の真ん中に客席を設置し、その周りをグルグルまわりながら物語を紡ぐ「教育」(2010年/大阪市立芸術創造館セレクション選出)などがある。(公式サイトより)
KIKIKIKIKIKI
2003年に京都造形芸術大学在学中であった代表きたまりを中心に「KIKIKIKIKIKI」を設立し活動開始。観客とグローバルな舞台芸術の共有を視野に入れ、今後は【身体が持つ力こそが、生で舞台を見る喜びになる】と云うマニフェストを提示し、舞台芸術の活動を行っていく。(公式サイトより抜粋)
国際舞台芸術ミーティング in 横浜 ショーイングプログラム KIKIKIKIKIKI戯舞
公演時期:2013/2/15〜16。会場:KAAT神奈川芸術劇場。
ぼくの軸
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- 私が御厨さんのダンスを見たのは、伊藤キムさんと京都造形大学の「go-on〜からだの森をゆく〜」 でした。
- 御厨
- ダンス作品に出始めたのは去年からですね。その「go-on〜からだの森をゆく〜」が初めてです。ダンス経験はようやく一年です。
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- 弱男の公演でも思ったんですが、御厨さんは身体一つだけで深い印象を刻むような印象があるんですよ。例えば弱男のコント公演「夕暮れ社 登場」の時にも、あの一人芝居のキレがまだ残っています。方向性のしっかりした動きですね。身体を動かす為の、何かポリシーがあるんですか?
- 御厨
- そうですね。まず、何故ダンスを始めたのかというと・・・。弱男に入って初めての作品で、ミックンロールという作品があったんですよ。その時に、イジメられっ子として頭にバスケットボールを被らされて殴られたり蹴られたりを、一人だけの演技で表現するというシーンがあったんです。公演が終わって作・演出の村上さんと話していたら、身体がきく、動かせるのでダンスをやってみたらいいんじゃないかと言ってもらえて。僕も興味があったんですね。僕も役者として見た時にあまり言葉が達者ではないので、それ以外での身体の表現を強く意識してやらないと、他の役者さんと並んだ時に難しいかなと。身体として見せる時の立ち姿ってなんなんだろうなという疑問を持ってダンスを始めたというのがあります。
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- 御厨さんにとって、見せられる体とは何を意味していますか。
- 御厨
- 僕はどこにでもいる普通の身体をしていて、それだけで見せられるものじゃない。
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- いえいえ。
- 御厨
- いや、そうなんですよ。でも、その肉体が舞台上に立った時に、すっと、お腹に力を入れて、軸を保っているだけで全然見え方が違ってくるんですよ。弱男の舞台でも四方八方から見られる時があるんですが、その時のために見られる身体にしておかないといけないんですよ。油断なく。それには、身体の軸を作る事が必要なんです。腹筋に本気で力を込めていると、その軸が意識出来ます。
伊藤キムダンスプロジェクト「go-on 〜からだの森をゆく〜」
公演時期:2012/5/12〜13。会場:京都造形芸術大学 人間館・京都芸術劇場春秋座舞台上。
危険さ
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- ダンスの舞台に立って、どのような事を思われるようになりましたか。
- 御厨
- 何というか、キレというものがもっと欲しいんですよ。「コイツは何をしてくるんだろう」と思った瞬間、ガンと、キレのある事が出来れば。爆発力というか瞬発力を得る為には、やっぱりその瞬間まで溜める事が必要なんですね。そこが僕には足りないんじゃないかと思っています。
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- 緩急という事ですか?
- 御厨
- そうですね。コントロールする事も大事なんですが、一方で危険性も出せたらいいなと思っています。
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- 危険性?
- 御厨
- はい。単調にならないように、自分で緩急を意識出来るようになったら、もう少し役者としても深みが出てくるのかなと。
スポンジのように
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- 演劇を始めたきっかけは何でしょうか。
- 御厨
- 最近ずっと弱男の美術をやってくれている小西くんと、実は以前から友達だったんですが、彼がベビー・ピー の「ごった煮」 の美術をやるという事で誘われたんですよ。そこでベビー・ピーの芝居を見て、何だこれはと。プロの演劇を見た事はあるんですけど、こんなに面白いものがあるんだとビックリしたんです。それを見た時に、自分も演劇をやってみたいと思いました。ベビー・ピーの根本さんに相談して、稽古の見学をさせてもらって。初舞台は劇団ケッペキさんのプロデュース公演だったんですが、その後、「はたたがみ」 にも出演させて頂いて。
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- 今、舞台を続けているのはどのような理由があるのでしょうか。
- 御厨
- 大学は造形大なんですけど、入学して3年は展覧会の制作などのスタッフワークを中心にやっていました。演劇を見てから、自分でも舞台に立っていいんだという思いとか、照明に当たった時の喜びがあって。それが毎回の舞台に立つ度に噛み締められるんですね。自分を見に来てくれている人もいて。あとは、演劇という表現ツールしかなかったというのもありますね。何か絵を描ける訳でもない自分でも、体一つあれば出来る表現なんです。
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- これからも演劇を続けて行きたいと思いますか?
- 御厨
- そこが難しいところで、これからやっていくべきなのは本当にお芝居だけなのかというのがあります。ダンサーほど踊れないし、役者と呼べるほど技術力も器用さもない。自分は何なんだろうと毎回自分でも思うんです。その時に、「パフォーマー」という位置があるんだとしたら、そういう事なのかなと。ある人に「御厨君はパフォーマーだよね」と言われたのが最初なんですけど。
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- パフォーマーとは何かを定義していくのが今後の課題でしょうか。
- 御厨
- そうですね。今は、演劇もダンス作品も参加しているに過ぎないんですが、やっていく内に技術を培っていければ、役者・俳優としての形があるのかもなと。中途半端な僕でも、貪欲に吸収していくのが大事なのかなと思っています。
ベビー・ピー
作家・演出家・俳優の根本コースケを中心とした演劇ユニット。 2002年、当時根本が所属していたニットキャップシアターの劇団内ユニットとして結成。 翌々年に独立。以降、公演ごとに役者・スタッフを集めるスタイルで、京都を拠点に活動している。(公式サイトより)
ごった煮
京大の吉田寮でベビー・ピーが開催したイベント。
ベビー・ピー「はたたがみ」
公演時期:2010/7/16〜20。会場:京都大学西部講堂。
質問 宗岡 ルリさんから 御厨 亮さんへ
『がーっ』
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- 「弱男ユニットがDAWとわっしょいしょい!」 の時、能の演技をしていたと思うんですが・・・
- 御厨
- 実は、あれは全く学んだ事がなくて。小学生の時に和泉元彌さんの狂言を見たぐらいなんです。稽古で村上さんに「何か最近、出来るネタはある?」って無茶ぶりされるので。それをやってみたんですが、意外とウケがよくて。何故あれが出来たかと言うと、子供の頃の記憶が刷り込まれていたからというのと、やはり腰の落とし方ですね。
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- 腰の落とし方?
- 御厨
- いわゆる中腰でぐっと落として、すり足でばっと歩いて行くという動作が頭に染み付いているから見せられていたんだと思います。その頃KIKIKIKIKIKIの稽古が功を奏していて、それはやっぱり流れになっていたんですね。きっと。
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- 腰を落とすスタイルでの表現をする資格。
- 御厨
- そうですね。でも、能のコピーをもっとしっかりやるべきだったのか、それともあのままで良かったのかという結論は出ていなくて。能なのか、能のものまねなのか、の境目で成り立っているのがあのシーンだったと思うんです。能ではない事をやり過ぎると、別のものになってしまうので。
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- 先月の「夕凪アナキズム」 も面白かったです。恋愛の話でしたね。彼も彼女も、自分の考えが表向き異なっている事を非常に面白い演出方法で、若干強引に表現されていました。だって、今リアルタイムに考えている事を、背中にコロスが付いて全て代弁する訳ですから。しかも、何人も連なっていくし。
- 御厨
- 稽古場では、あれは本当は沈黙劇で、ものすごく繊細なお芝居だなと。コロスたちの言葉は妄言なんです。それが表に出た時、いかに思っている事とやっている事が違うかが見えて、でもそれがイコールになったりする瞬間も、いつか待ち受けている。それを恋愛劇に持っていくというのは、これは面白いなと思っていました。
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- お気に入りのシーンはありますか?
- 御厨
- 小林欣也さん演じる痛風の入院患者が、結局告白が出来ずに悶々としいて、「世界の終わり」が流れて叫んで。そこから他の全ての恋愛模様がどんどん加速して、カップル達が結ばれたり別れたりヨリを戻したり・・・と入り乱れる。その時のぎゅっと思いが振り絞られるような、そんな大声を叫びたいような気分。それがあのシーンだったと思うんです。僕はあの欣也さんの演技をすごくやりたかったです。単純に気持ちいいだろうなと。
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- なるほど。
- 御厨
- カップル達の全ての物語をかき消すばかりに、欣也さんが音ではなく声を『がーっ』と叫ぶんですよ。何か、かっこいいなと思ってしまいます。弱男の良さだなあと、個人的には思います。
僕が何を出せるのかを
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 御厨
- さっきの自分の課題としてお話したように、去年一年はダンスをメインにとらえてやってきたんですね。今年は、繊細な事が要求される口語演劇をやっていきたいなと思っています。もちろん、ダンスもやっていけたら、自分にもっとプラスされるものがあるのかなと思っています。役者として技術力を必要とされる現場に関わっていきたいですね。
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- 繊細な表現。先ほど仰った溜めであるとか、ニュアンスであるとか、ピッチであるとか、色々な捉え方をもって考えられているようですが。ダンスとはまた違った領域?
- 御厨
- いえ、体をどれだけ制御出来るかというダンスの考え方は、やっぱり役者としての技術力に掛かっていくと思うんです。繊細な演技をするときに、自分の身体に緩急をつけて表現出来るかどうか。
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- 学んでいくスタンスはありますか。
- 御厨
- TPAMに出るKIKIKIKIKIKIの作品に、地点にいらした俳優の方がいて。ダンスをするのもやっぱりものすごく上手なんですよ。僕はまだまだ演劇にせよダンスにせよキャリアが短いので、現場で稽古を見て方法を学んで行ければ。そこで、僕が何を出せるのかを明確にしていければと思います。その先に、パフォーマーとしての可能性が見えてくるんじゃないかと。
竹のわらじサンダル
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
- 御厨
- やった、ありがとうございます。嬉しいです。
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- 大したものじゃないですよ。
- 御厨
- いやいやいや。(開ける)うわっ。めちゃめちゃ嬉しい。僕、最近サンダルを探していたので。滅茶苦茶嬉しいです。
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- 良かったです。まだまだ冬なのですが、暑くなったら。
- 御厨
- そうですね。パカパカいわせながら履きます。