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長南 洸生

俳優

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スイッチ総研に出演して

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、長南さんはどんな感じでしょうか。
長南 
最近は、立命館大の映像学部の作品に出させてもらったり、それから、本多劇場でスイッチ総研に関われました。それがすごく大きかったです。
__ 
スイッチ総研!私も大好きです。どんな経験でしたか。
長南 
初めて横浜で見た時から絶対に出たいと思っていまして。今回は東京に二週間滞在して製作に関わりました。本番は2日しかなかったんですけど出られて本当に良かったです。スイッチ総研は、お客さんがスイッチを押したら短い演劇が始まるというものなんですけど、それが楽しくて。
__ 
ええ。
長南 
押す側も面白いし、それを横から見るのも楽しいんです。子どもとかが笑いながらスイッチを押す姿が凄く明るくて。やる側に回りたいなとずっと思っていました。演劇だけど、現実により踏み込んでいるんですよね。関われてよかったです。
__ 
私は道頓堀スイッチを見た事があります。大変面白かったです。スイッチの条件とか、タイミングとかがどうなっているのか、職業柄、興味深かったですね。
長南 
お客さんが、ちゃんと入っていけるタイミングを見計らう。スイッチを押した時に、お客さんが気持よく入っていける呼吸を読む。その演劇的な空気の読み合いがありましたね。スイッチを押して、「あれ、何も起こらへん?」と思わせたら負けで、「何が始まるんだろう」と思った時の空気の掴みあい。
__ 
認識の始まり方、ですね。
長南 
僕だけの認識かもしれないですけど、理想的には、押したお客さんが巻き込まれているような、気付いたら自分も舞台上に立っているような、お客さんも俳優にしているというか、演劇に巻き込むというか・・・。もちろんお客さんに触ったりはダメ、でも巻き込んであげて欲しいと、稽古の時に言われたんです。元来、演劇はお客さんを巻き込めるんですよ、その力を目の当たりにすると凄くワクワクするんです。
__ 
演劇の観客への認識については色んな論じ方がありますよね。例えば、サッカーに例えれば、お客さんもフィールドの上の選手であるという見方もある。
悪い芝居

2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。京都を拠点にしながら、東京・大阪などでも活動する劇団。メンバーは12名。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を刺激的に勢いよく噴出し、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する作風が特徴。「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、中毒性の高い作品を発表し続けている。2009年より、パワープッシュカンパニーとして京都の劇場ARTCOMPLEX1928から2011年まで3年間の支援を受ける。そのパワープッシュカンパニーとしての最初の作品「嘘ツキ、号泣」が第17回OMS戯曲賞佳作を受賞。各メンバーの外部活動や、2011年は、劇団事務所である築80年の京町屋で1ヶ月半26ステージの家屋公演「団欒シューハーリー」を敢行するなど、劇場以外でのパフォーマンスも精力的に行っている。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)

スイッチ総研

「スイッチ」を押すと「何か」が起こる!3秒〜30秒の小さな演劇!スイッチの側に書かれている「あるお願いごと」を実行することでスイッチON。スイッチを押したとたん貴方は物語の観客、はたまた主人公に。“オール人力インタラクティブメディアアート”とも称される唯一無二かつ変幻自在な新しい形の演劇。その場所でしか出来得ない作品を目指し、所員達が日夜研究開発を続けている。(公式tumblrより)

ボールのはじまり

__ 
であれば、お客さんがフィールドの上で価値のあるプレイをするにはどうすればいいんだろう?もちろんフィールドに出てもらう事は必要ですが、それ以降、自分の持っている能力であるとか、他の選手(俳優ですね)を信じて走り続けるだとか、パスをトラップする力だとか、特定のポイントに走りこむ決断力だとか。結局は、俳優と観客が、信頼し合える関係性を作る事なんだろうか。一体、それには何が必要だろうか?
長南 
難しいな。
__ 
もちろん、色々な考え方があるとは思いますが。
長南 
僕は、傲慢なのかもしれないですけど、お金を払って席に着いていただいている時点で、信頼する土台は出来ているんじゃないかと思うんですよね。例えば、今からこの喫茶店で何かパフォーマンスをしたところで、他のお客さんにとっては信じられないと思うんですよね。何か変な奴がいる、という状況が出来上がるだけ。でも、これから演劇をします、という準備をしたのなら、そのパフォーマンスが可能になると思うんです。チラシを見て想像する事、劇場に足を運んだこと、チケットにお金を払ったこと。それが、演劇を信じられる土台を作るんじゃないかと思うんです。
__ 
なるほど。
長南 
例えば小劇場なら、お客さんを信じさせるための土台作りを舞台・客席から遊べると思うんですよね。カフェを舞台にするお芝居をするなら、劇場のドアを開けた時にカランコロンと音をならすとか。お客さんが観に来る時点で、信じる気持ちはある。それをどこまで増幅してあげられるか、だと思うんですよね。
__ 
契約があるから。
長南 
そうですね・・・言葉の解釈の違いなんですが、僕のなかでは、それは契約とは少し違うと思っています。お客さんはwantを持っている。願望というか希望というか、見せて欲しいというワクワク感。小学生の言葉みたいですけど、それがあるから、それが支えてくれるから俳優が居られるんだと思っているんです。甘い考えかもしれないですけど。
__ 
願い。それは私の中では「祈り」かな。その観たいという祈りに応える為に、俳優は何をすべきなのか?どう思われますか?
長南 
難しいですね。
__ 
私は「犠牲」を以って応えるのが俳優だと思う。・・・。
長南 
支払う。
__ 
例えば、犠牲を支払わないと出来ない演技もある。どこかから借りてきたみたいな演技には誰も用はないでしょう。面白い演技とは何を指すんだろうか。それは俳優個人が自分の何かを支払って手に入れるもので、それは、お客さんには支払いの重さがきっと分かる。
長南 
何だか、支払う支払わないというのは数学的だなあと思って。凄く分かります、僕も大学が理系だったので。その感覚がいま自分にあるかどうかは置いといて(今は掴めないところにある気がするんですけど)ちゃんと、俳優の胸が痛くなるかならないか、というところだと思うんですよね。それが支払うというところかもしれないですね。あの、支払うという言葉がネガティブに聞こえてしまったので、ポジティブな言葉で捉え直せないかと思って。例えば恋愛のお芝居があったら、ウソでフィクションで、舞台にでっちあげられた恋愛だけども、板の上に立っている二人は、相手を好きになっているはずなんですよ。僕は単純なので。でも終わったらウソになる。でもその時の高揚は、実感として胸に残っている。それをお客さんには、面白く見られたらいいな、興味を持ってくれたらいいなと思います。言葉を借りれば、支払っていないのは、好きなフリをしている演技。それはバレると思います。ある意味本当に、自分の心を動かさない限り、お客さんの心は動かない。僕はどちらかというと、技術よりパッションを愛しているほうなので。
__ 
パッション。

3つの言葉

長南 
どちらかというと技術より気持ちの事をよく言うんですよね。学生劇団で、後輩へのダメ出しが効く時と効かない時があるんですよ。僕の言葉は本番前の方が良いみたいで、気持ちの面の話が良いらしいんですよ。
__ 
パッションをより伝えられるようにするには技術的な面での誘導も必要だろうと思うんですが、その上で何があるべきなんでしょうか。
長南 
僕が演劇を見る時には、3つの感想があるんです。「良いな」「すげえ」「分かる」の3つ。
__ 
ええ。
長南 
「良いな」は憧れ、「すげえ」は尊敬、「分かる」は共感なんですよ。それらをお客さんに言わせた時、お客さんの心を震わせているんです、きっと。僕は少女漫画好きなので恋愛に置き換えがちなんですけど、良い少女漫画ははそういう風に言わせてくれるんです。理想的なそんな道筋を、お客さんと一緒に連れ立っていけるような仕事が出来る俳優が良いと思っています。そして、その真逆でも良いと思うんです。「分からん!」と言わせる。「絶対嫌」と言わせる。なぜそう思わせるかというと、そのお客さんの人生に被っている部分があるからなんですよ。自分はそれを選ばなかった、それを思い起こさせるようでもありたい。一番辛いのは、「へー」とただ無関心に思わせてしまうことだと思うんです。

遠くへ

長南 
僕は何かを見ている時には、感覚的言語なんですけど、遠くに行きたいと思うんです。

カチカンが呼んでいる

__ 
観客個人の価値観を呼び出す一瞬がある。そんな芝居こそが、付き合う芝居と言えるのかもしれない。
長南 
自分を投影させる。それはきっと可能なことなはずで、人生が違っていても、大事にしていることは何かしら近いと思うんですよ。で、全く理解できひん劇団にはお客さんは行かないし、だからこそ劇団はこんなに数多く存在している。ファン層というものもあるんですよね、きっと。
__ 
C言語やったことあります?
長南 
あります。
__ 
不便ですよねあれ。エントリーポイントの前に関数を宣言しないとコンパイル出来なくて、定義はmain()が終わった後にしないといけない。JavaやPHPではそんな構成は考えなくても良い。でも、お客さんが価値観を呼び出すタイミングは、C言語みたいに、芝居が始まる前なのかもしれない。
長南 
お客さんの価値観を呼び出した、という事は、その人自身がそこにいるという事で、そこから一緒にどこかに行けるという事かもしれませんね。
__ 
そういう風に出会えればいい。しかし、俳優が観客を呼び覚ましてくれるのは、実は本当に稀有な事なんですよ。俳優の姿というのは面白いもので、観客がその姿を「見れる」のは、彼が姿を現したその時一瞬限りだ。それはすぐ幻滅し、再生出来ない。「サーファーは、崩れる波にしか乗ることは出来ない」。その一瞬に出会うことの出来た奇跡。逆に言うと、それが、演劇の持っている色々な価値の一つなんじゃないかなと思う。
長南 
そうですね。でも、出会わせられれば最高じゃないですか。その平均点や確率を高められるのが技術だと思うんです。でも、その到達点を技術でやってはいけないんだと思うんです。
__ 
挑戦的な発言ですね。
長南 
いえ、その波の話で言うなら、波とサーファーが最高の到達点だとするなら、どうしても生物はぶれがある。そのブレを調整するために技術がある。舞台に立つにしても、例えば昨日歯を磨いているかいないかだけで何かしらが違うハズなんですよ。そのブレを無視出来るぐらい、水準を持っていくのに技術は必要、お芝居の時間を組み立てるためには。でも、高揚していく気持ちを技術ですべて補おうとするとそれはフィクションなんですよ。それこそ支払いの話だと思うんです。技術は時間を支払って得るもので、高揚に対して支払うのは気持ちなのかな、と思います。支払うというより、使う、動かすということかなと思います。

悪い芝居「メロメロたち」

__ 
さて、悪い芝居「メロメロたち」。7月からということで、あと4ヶ月しかありませんね。意気込みを教えて下さいませんでしょうか。
長南 
僕もまだ、内容とかは詳しく聞かされていないんです。でも、遠くに行けそうな気がします。どこまででも行ける要素があるなあ、と思っています。
__ 
どこまでも行ける要素。
長南 
お客さんに向けて言うべき意気込みというよりも、ワクワクしている気持ちがただ強いんです。お客さんと、連れ立って行ければと思うんです。
__ 
動かないロードムービーという触れ込みが気になりますよね。
長南 
想像力でどこまで行けるんだろう、みたいなことなのかなって。多分恋愛の話が絡むんですけど、人間誰しも通っている道だからこそ、誰しもの気持ちに触れることの出来ることなんじゃないか。「いいな」と思ってくれるお客さんがいると思うし、いたら、僕も「いいな」と思っているし、そういうお客さんと一緒にどこまでも行きたいし、みたいな。なんか上手く言えないなあ。
__ 
それは共感に限界があるからじゃないですか?
長南 
限界か・・・話、ちょっと変えていいですか?
__ 
もちろんです。
長南 
僕、「ウォールフラワー」という映画が好きで。主人公の男の子がスクールカーストの最下層で毎日冴えない学生生活を送っているんですけど、ある日学校で出会った兄妹が自由奔放でスクールカーストなんかに属してなくて、ある日連れ立って外に飛び出そうとするんです。その時にドライブのシーンがあって、妹の方が自分の好きな音楽が流れてきて気分が上がってトラックの荷台で立ち上がって手を広げながらトンネルを抜けるシーンがあったんです。主人公はそれをずっと眺めてて、どうしたと言われて、「無限を感じる」と言ったんです。僕は「ああそうだよ、僕もその為に芝居してる!」って叫んだんですね心の中で。共感って限界はあるかもしれないけれど、これからも歩んでいける余白があるからこそ、どこまでも行けると思うんですよね。それこそ空白がいっぱいある僕らの人生ですけど、そうだよ、そうなっていって欲しいんだよ、というところに無限を感じるんですよね。僕はそこにワクワクを感じるんです。
__ 
ワクワクする要素、か。
長南 
で、人一人の想像力ではどこにも行けないと思うんですよね。自分一人の価値観だけで考えるのは限界がある。僕は、誰かが連れ出してくれることに意義があると思う。別の人だからこそ、自分もどこまでも行けるかもしれない、こうなりたい、という憧れだとか。無限に可能性があるんじゃないかと思うんです。
__ 
トラックの荷台に乗って、無限を感じる。言葉にもならない言葉ですね。
長南 
僕は、何かを与えられるような人間ではないから、誰かに支えてもらわないと生きて行けないと思う。色んな人がいるから、支えてもらっていると感じている一年でした。だからこそ、お客さんと一緒に、知らない場所に行きたいんです。
__ 
その上で問い直したいと思うんですが、お客さんに、そういう「連れ立ってくれる人」として認められるにはどうすればいいのか?
長南 
ああ、どうなんですかね・・・。雑にパッと思いついた事を言うとですけど、汗をかく事ですかね。
__ 
なるほど。
長南 
それは凄くパッション的な事なんですけど、それは気持ちだと思うんです。それから、技術的な事を言うなら違和感を感じさせない事だと思います。地に足を付けて、当然の重心で立って。ちゃんと、こう・・・。汗をかく?いや、もしかしたら、その光景を見て喋っていられるかどうか、なのかもしれません。お客さんに対してのアプローチは僕も全然分かってないですけど、セリフを言う事よりも、聞く事が大事なのかもしれない。誰でもがある種分かっている事かもしれないですけど。どうしても2時間という枠組があるから、そこに没頭させるために、その役に影響を与える相手役の言葉にどれだけ素直に耳を傾けられるか、だと思うんですよね。それが無かったら、お客さんにとっては嘘になるんだと思います。
__ 
そうですね、嘘のある芝居では、人としては認められない。汗も同じですね。
長南 
いま、「そうですね」と言ってもらえて僕はホッとしたんですけど、その反応を舞台上でも出来るようになりたい。それが、お客さんに感じてもらう事に繋がると思います。
悪い芝居vol.18「メロメロたち」

【作・演出】山崎彬 【音楽】岡田太郎 【出演】 植田順平 渡邊りょう 中西柚貴 呉城久美 北岸淳生 畑中華香 長南洸生 岡田太郎 山崎彬 (以上、悪い芝居) 石塚朱莉(NMB48) 大久保祥太郎(D-BOYS) アツム(ワンダフルボーイズ) 【会場・日程】 ●大阪公演 HEP HALL 2016年7月15日(金)〜20日(水) 15日(金) 19:00 16日(土) 13:00/18:00 17日(日) 13:00/18:00 18日(月・祝) 13:00 19日(火) 14:00/19:00 20日(水) 14:00 ●東京公演 赤坂RED/THEATER 2016年7月26日(火)〜31日(日) 26日(火) 19:00 27日(水) 19:00 28日(木) 14:00/19:00 29日(金) 19:00 30日(土) 13:00/18:00 31日(日) 13:00 【チケット】 2016年4月23日、チケット先行発売開始! ●前売 一般 3900円 U25 2900円 高校生以下 2000円 当日券 各500円増 ●悪友割(3人以上1組割引) 一般 3500円/人 U25 2500円/人 高校生以下 1000円/人

待つこと

__ 
話を聞く、か。舞台上の俳優にとって、誰かのセリフとか、世界を待つというのが重要だ、みたいな事かな。
長南 
待つ、ですか。それは自分の中にはない言葉でした。素敵ですね、待つって。
__ 
ものすごく大変ですけどね、待つのは。
長南 
それに目の前の人を突き動かすぐらいの言葉を言いながら、お客さんの心もどこかで意識する。

質問 進野 大輔さんから 長南 洸生さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた進野さんから質問を頂いてきております。「好きな漫画を教えて下さい」。進野さん漫画家ですからね。
長南 
ああ、何かな・・・。高校時代は男子校だったんですけど、恋愛に憧れがあって、片っ端から恋愛モノとか少女漫画とかギャルゲーをやってたんです。一番共感して突き動かされたのは「青春攻略本」というあきづき空太さんの描かれた全2巻の漫画でした。男子校の話で、隣の女子校の女の子に毎日ときめいている男子で、毎日、遠いところから紙でコミュニケーションするんです。ロミオとジュリエットみたいな。その子は先輩なんですけど、卒業するまでに告白したいと。その時にめちゃくちゃをやって、全力で駆けていく。そのがむしゃらさに胸を打たれました。

入団の経緯

__ 
悪い芝居入団の経緯を教えて下さい。
長南 
ワクワクしたからですね。
__ 
何に?
長南 
僕が初めてみたのは「キャッチャーインザ闇」でした。開始15分でドキドキさせられて。あっち側に行きたい、想像上じゃなくて、劇団に入って、そこに行ってみたかったんです。

あなたと輝く

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
長南 
将来どこまで、というのは分からないですけど。必ず、地に足を付けた演技が出来るようになって、人の力を借りて輝くことも自分の力で人を輝かせる事も出来るようになりたいですね。
__ 
なるほどね。
長南 
どうしても、今は自分のことしか見えてないなと思う事が多くて。この人、こんな凄いところあるんやで、みたいな見せ方が出来るようになりたい。
__ 
それは、どうしてそう思われるのですか?
長南 
自分を見てもらえるというのはもちろん幸せだけれど、単純に、自分が好きな人の凄いところを知ってもらいたいんですね、やっぱり。多分僕は、押し上げるよりは、手を繋いで一緒に行こうとするタイプなんです。幼稚な言い方かもしれないですけど。だからいろんな人の踏み台になる演技がしたいですね。他の俳優や、お客さんが遠くに行くための土台だったり。僕がこういう演技や言い方をしたから、もっと高いところに行けたり、だとか。
__ 
引き出す演技ですね。
長南 
それは日常で、みんなしている事かもしれないんですけどね。僕なんかはセリフが用意されていて、読むという事に集中してしまうんですけど、しかも稽古1ヶ月を過ぎると麻痺してきたりして。メリハリを付けて、技術もちゃんと身につけて。
__ 
色んなものを見すぎて退廃した観客というのが居たとして、そんな人でも傑作に立ち会うと、初めて芝居を見て感動している人と同じになるんですよ。その時、みんな心の汗をかいている。汗をかくことを、忘れてはなりませんね。

出会いに行く

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
長南 
うーん、攻めるっていう表現にヒットするかどうか分からないですけど。僕は結構オーディションとかが苦手なんですけど、いっぱい色んな人と知り合って、その人をより知って、自分の事を知ってもらう機会を増やせたらと思っています。売り込むという事じゃなくて、単純に人生で人と知り合うのは楽しいじゃないですか。演劇って自分の人生も投影されるから、自分の人生を豊かにしていけたらな、と思っています。

キウイのバッジ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
長南 
ああ、ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
長南 
可愛い糸・・・凝った包装ですよね。キレイに破りたいなあ。(開ける)可愛い!
__ 
幻の鳥、キウイですね。
長南 
可愛い。何かに付けられるかな。
__ 
男性が付けていて可愛くなり過ぎないものを選んだつもりです。
長南 
嬉しいです。僕もう、可愛いものとか全然付けるんで。
(インタビュー終了)