演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

蜜 比呂人

俳優

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もう・・・楽しいですよね

_  
今日は、宜しくお願い致します。
蜜  
いえいえ、宜しくお願い致します。
_  
最近、いかがですか。
蜜  
最近ですか(笑う)。
_  
ええ(笑う)。
蜜  
ZTONの番外公演、本番を二つ抱えていて、台本二つも入んねー、という(笑う)。
_  
進み具合としては。
蜜  
ZTONが始まったばかりの感じですね。
_  
ZTONと言えば、この間出演されていた劇団ZTONの公演「沙羅双樹のハムレット」。非常に好演でしたけれども。
蜜  
ありがとうございます。
_  
ご自身のBLOGによりますと、5回の公演の内1回が物凄く良く出来たとの事ですが、それはどういう・・・。
蜜  
ああ、自分の中で、ですけれども(笑う)。もちろん稽古でやってきた事を信じてやってるんですけど、そういう回が出てきてしまうというのは、やっぱり稽古での出来の他に何かあるんじゃないかなと。もちろん、やってきた事を全て出しているつもりではあるのですが、たまにスッと入れる回があるんですよね。自分を後ろから俯瞰で見ている感覚と、ドカンとハマって演じている感覚の両方がある回が。そういうのはSHOWDOWNでも1度あって。
_  
集中出来たという事なんでしょうか。
蜜  
そうですね。例えば掛け合いとか、稽古でもやっている事がズカンとしっくりかみ合うというか。大体、ヤバかった回の後に出ますね(笑う)。僕の中では神の回ですね。それをやってしまうと、もう・・・楽しいですよね(笑う)。
_  
ええ、感覚は凄く分かります。
蜜  
感覚の話なので、上手く説明出来ないんですよね。
劇団ZTON

和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、ロクソドンタフェス2008でアキコ伊達奨励賞・衣装デザイン賞を、東放エンターテイメント芸術祭2008で第二位を受賞。旗揚げから一貫して日本の歴史を題材に、オリジナルの歌や楽曲、殺陣やダンスなどのエネルギッシュな身体表現を交えた新たなスタイルの「活劇」を提供し、多くの観客の心を捉えている。(公式サイトより)

劇団SHOWDOWN

元ニットキャップシアターのナツメクニオを中心し、2001年5月に旗揚げ。既成の劇団という枠にとらわれず、いろいろな物を貪欲に吸収しながら、「頭のいらないエンターティメント」をテーマに大衆娯楽の王道を追及する。(公式サイトより)

劇団ZTON vol.3「沙羅双樹のハムレット」

公演時期:2008年3月6〜9日。会場:京都市東山青少年活動センター(京都)。

一つのバランス

_  
重要なキーワードの一つに、「稽古」があると思うんです。ご自身のBLOGで、「公演の本番の為に今まで積み重ねてきた稽古で作った作品に自信があるから、舞台の上でお客さんを沸かせる為にアドリブを気まぐれで入れてしまっては崩れてしまう」という事を仰っていて。非常に共感したんですよ。
蜜  
ありがとうございます。
_  
それは、私が衛星の稽古場に居た時に代表がよく言っていた事と同じで、ちょっとびっくりしたんで。
蜜  
あ、そうなんですか。へー。嬉しいな。
_  
もちろん、アドリブの楽しさもあるし、お客さんと共有する事も重要だけども、舞台でポッと出てきたものが稽古で培ってきたものよりも面白いわけが無いんだ、と。
蜜  
あ、はい、正にそうなんです。
_  
それから、同じくBLOGで「舞台作品が生モノというのは、一つのバランスを崩されたら途端に腐ってしまうからだ」と書かれておられますよね。
蜜  
そうです。それは最近思いついて。あ、これだと思って。そうなんですよ。毎回変える奴は本当に嫌で。
_  
意図的なアドリブコーナーはまた別としても、基本的な事ですよね。
蜜  
だと思うんですよ。こないだ、北島さんのナントカ世代に出た時に、「舞台上と客席を切ってくれ」と言われて。
_  
あ、確かにあの作品はそういう感じだったかも知れませんね。
蜜  
「稽古場通りの事をしてくれたらいいから」と。もちろん、それに100%納得はしませんが共感しましたね。やっぱりそういう考え方もあるんだと。あれは楽しかったですね。
_  
ああ・・・。
蜜  
やっぱりフリーとして役者をしていると、全く関係の無かった人達に誘われるじゃないですか。そこで、全然別の考え方をで芝居を作る人に会えると、嬉しいんですよね。

あの時代

_  
そのナントカ世代の作品、去年の秋あたりに拝見したんですけども、いつもとは違う蜜さんの姿が新鮮でした。いかがでしたか。
蜜  
まあ、今までやってきた芝居とカテゴリーが違うじゃないですか。静かな芝居というのが単純に好きではなくて。会話劇って、固定観念なんですが見た事ないリアルを追求してて、それって面白いの? と思っていて。初めて観た芝居がキャラメルボックスなんですよ。大学時代に。キャラメルの会話って前切りでワーって喋る芝居じゃないですか。
_  
しかも凄い説得力がありますしね。
蜜  
ツバとか汗とか飛んでくるのがたまんないですね。あれが好きなんですよ。やっぱり最終的にはそこに行き着くんです。
_  
なるほど。ところで・・・大学に入って、未踏座から始められたそうですが。
蜜  
ええ、岡嶋さんがいた時代ですね。あの時代は本当に凄い人がいて、はっちゃけた人ばっかりでした。
_  
それはもう、虹色の時代ですね。
蜜  
最初に演出を受けたのが、中野劇団の中野さんだったんですよ。
_  
ああ、歴史ですね・・・。それからSHOWDOWNに入られたと。
蜜  
当時、未踏座のOB劇団って無かったんですよ。上田直人さんという先輩と、じゃあ作ろうという話になって。それからしばらくは劇団に入ったりしていましたね。THE RABBIT GANG TROUPE、SHOWDOWNと。
ナントカ世代

「正確な日本語」と嘯く特異な言語感覚に支配された規律(ルール)と、したたかな美意識によって用意する絵本のような突き放した風景描写(マナー)により織り成す、独特としか言えない割には中庸な世界観が身上。(公式サイトより)

未踏座

龍谷大学の公認サークル劇団。

物凄いエネルギー

_  
今後、蜜さんはどんな感じで。
蜜  
NHKの朝の連ドラに、ヒロインのお兄さん役で出る、という目標がありますね。
_  
それはいいですね。
蜜  
漠然と(笑う)。まあ、これは冗談ですけども。・・・THE RABBIT GANG TROUPEでの公演をやらせてもらって、それ自体は楽しかったんですが。何かもう、いいかな、と思っていて。もちろんやってたんですけど、燃えてこないんですね。SHOWDOWNをやっていた頃はチャリ乗りながら寝てた事もあるほど出来たんですけどね。
_  
マジすか。
蜜  
入院していた時期もあって、辞めようかなとすら思ってたんです。そういう中、HOMURAの公演で河瀬君と出会ったんですよ。河瀬君はSHOWDOWNでの出演も見てくれていて、声を掛けてくれてやっぱり嬉しかったんですね。大学の3〜4年で劇団を立ち上げていたりとか、そういう子らの力になりたいなと。
_  
なるほど。
蜜  
まあ、もちろんお互い利用しあうみたいなのもあるんですけど(笑う)、この子らと一緒に売れたらいいなと。
_  
なるほど。ところで、ZTONの魅力というのは。
蜜  
ZTONの魅力か。あー。
_  
まあ、もちろん若さというのがあると思うんですけども。
蜜  
ああ・・・。あいつらに魅力!?(笑う)彼らと一緒に芝居を始めた時、河瀬君の家に飲みに行ったんですよ。したらSHOWDOWNのビデオがあって、そこで僕が台本1ページ分の一人台詞を言うシーンを見せられたんですよ。「僕これ完コピしましたよ」とか言ってコイツ馬鹿じゃねえのと思ったんですけどね(笑う)。でも、そう言ってくれるのは嬉しかったですし。彼らは団員が9人いて、スタッフワークが9人で賄えているんですよね。まあ、ありふれた言葉ですけど可能性を感じたんですね。
_  
考えてみれば、それは凄いですよね。
蜜  
ZTONの旗揚げというのは、河瀬君が3回生の時だったんですよね。3回生でですよ。その時についてくる人がそんなにいたんですよ。劇団を作るって物凄いエネルギーが要るじゃないですか。羨ましいんですね。近くで彼らを見ていたいし、何らかの形で関わりたいんですよ。そういう、人間の熱さというか。言えてないんですけど。
_  
それでは、役者としてはどんな感じで今後攻められていきますか。
蜜  
そうですね・・・。基本能力として、演出家の感覚をちゃんと表現出来る役者にはなりたいですね。当たり前の話ですけど、その役者が立っていると、客が安心する役者っているじゃないですか。
_  
その世界観に調和しているというか、ちゃんと世界の中の人としていてくれると物凄くなじむというか、安心しますよね。
蜜  
演出家に、舞台を任せられる役者になりたいんですね。舞台の広さを、自分の支配下に置きたいというか。出てきた瞬間に、舞台上を把握してしまうというか。
_  
安心しますよね。
THE RABBIT GANG TROUPE

京都を中心に活動する劇団。

ナツメクニオ氏

SHOWDOWNの作家・演出家・俳優。

少年

少年は、2003年度に京都大学劇団ケッペキを卒団した松本健吾(以下少年A)と延命聡子(以下少・F・年)を中心として、京都を拠点に活動する演劇サークル。(公式サイトより)

神戸アートビレッジセンターKAVC

神戸市兵庫区新開地。演劇・美術・映像・音楽などにかかわるさまざまなアーティストたちの制作・練習・発表の場(公式サイトより)。

河瀬氏

劇団ZTON代表。作家・演出家・俳優。

GEORGE'Sで購入した緑のペンケース

_  
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
蜜  
あ、筆箱? すげえ。何か入ってる。
_  
シャープペンですねそれは。
蜜  
僕、本当によくペンをなくすんですよ。一公演に一本くらい。ありがとうございます。使わせて頂きます。
(インタビュー終了)