演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

若旦那 家康

俳優

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若旦那のポジション

___ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。若旦那さんは、最近はいかがでしょうか?
若旦那 
実は一年前から芸術創造館で働き初めました。その上で外の公演にも色々参加しています。スケジュールの調整が大変ですけど、充実していますね。
___ 
色々なところで若旦那さんを見かけますよね。こないだはサクゴエラボラトリーのふたりしばいセレクション で司会をされていましたし。最初にお会いした時は舞台監督という役割でしたね。
若旦那 
舞台監督の教育は特に受けていないですけどね。制作チーフという役割の時もあるし、役者として声がかかる事もあります。僕を呼んでくれる方が、僕が最初に出会った時に何をしていたかでポジションが決まるみたいですね。
コトリ会議

2007年結成。一生懸命になりすぎてなんだか変なことになっちゃった人たちの生活を部屋のすみっこだったり銀河に浮かぶ惑星だったり所かまわず描いています。おもしろいものが好きな劇団です。2010年にspace×drama2010という演劇祭で優秀劇団に選んでいただきました。ますますこの劇団の作品はおもしろくなるなと心密かに確信しながら毎日動きつづける劇団です。(公式サイトより)

サクゴエラボラトリー

「ダメ出しは力だ!」をキャッチコピーに、さらなるスキルアップを目指す参加者たちが観客全員の審査によって勝敗を決する『一人芝居一本勝負』をメインとする、短冊ストライプのイベントセクション。(公式サイトより)

(無題)

___ 
えー、実は先ほどから、若旦那さんの事をどう呼んだらいいのか分からないんですよ。「若旦那」は既に尊称なので、さんをつけるのはおかしいし。
若旦那 
あっ、全然いいですよ。魔人ハンターミツルギさんをミツルギさんと呼ぶのと一緒なので。
___ 
では恐れながら「若旦那」で。「総理」や「総裁」のように。今後のメールの一行目の宛名も「若旦那」だけにします。
若旦那 
最近、大学生の演劇部の子とかが現場に手伝いに来てくれるんですよ。僕が劇場付のスタッフさんから「若旦那」って呼ばれているからか、「若旦那、この三角どうしておきましょうか」って。「きみは年下だろう」とか(笑う)、心の狭い事も思いつつ。
___ 
それはやっぱり、既に敬意がこもっているんですよ、きっと。どういう経緯で、その芸名が付いたのでしょうか。
若旦那 
最初に入った劇団が、面白い芸名をつけるところだったんですよ。他の候補が「若旦那康人」か「若旦那」だけかだったんですよ。まあ、せっかくなので豪華なものを選び、今に至ります。

面白そうにしているからかも

___ 
なぜ、そのように多岐にわたるようになったのでしょうか。
若旦那 
あまり良くないんですけど、何でも安請け合いするように見えるんでしょうね(笑う)。
___ 
話を振りやすいというのは、この人なら安心して任せられそうな、という安心感があるのではと。
若旦那 
よく言われるのは、「落ち着いているから」。本当はめっちゃテンパってるんですけど。今でも緊張しているんですよ。
___ 
表情に出ないのは得だと思いますけどね。
若旦那 
あとは、面白そうにしているからかもしれないです。どんな現場でも楽しそうにしているからとか。
___ 
演劇LOVEなのかもしれませんね。
若旦那 
悩んだんですけど、結局演劇LOVEなんですよね。好奇心があるので、毎回見に行く劇団と初めての劇団が被っていたら初めての方を取りがちですが。

傀儡政権

若旦那 
ここ数年、自分の専門は何だろうと悩んでいたんです。したら、「自分が面白いと思うものを広めたい」欲が強いという事に気づいて。最近はピンク地底人 、コトリ会議、かのうとおっさん ですね。例えばピンク地底人を応援する時。彼らがやりたいと思っている事がスムーズになるように、色々手伝いたいなと。舞台監督という肩書きですけど、それに関わらず、大阪で宣伝したいのであれば、チラシを撒く。リクエストに応じて、役割さえ決めておいてくれればそこに収まる。スキマ産業みたいですけど。
___ 
なるほど。
若旦那 
好きな所は、時間が許す限り手伝う。というのが、僕がやりたい仕事なんだろうな思います。
___ 
サッカーでいう、スイーパーみたいな役割なのかもしれませんね。
若旦那 
そうですね。現場は時間も人材も素材も限られていて、例えば舞台監督が舞台美術を兼ねている現場だとセットにリソースが割けない事もあるんですよね。そこで、僕みたいなのを据えておくと、セットの簡素さを音照でカバーする、みたいな調整が出来るかもしれない。緩衝材という役割があるのかもしれませんね。
___ 
少ない資産や時間でも、有機的に結果を生み出せるという事ですね。そして、現場での仲介役もあるんですよね。その現場が初めてで、勝手の分からない人が問い合わせする人、みたいな。
若旦那 
傀儡政権ですね(笑う)。
___ 
ええ。色々な意味で。
ピンク地底人

京都の地下は墨染に生まれた貧乏な三兄弟。日々の孤独と戦うため、ときおり地上にあらわれては演劇活動をしている。夢は関西一円を征服することと、自分たちを捨てた母への復讐。最近は仲間も増え、京都を中心に大阪にも出没中。(公式サイトより)

かのうとおっさん

『かのうとおっさん』とは?:嘉納みなこと有北雅彦による、大阪発男女脱力系コントユニット。1999年、ともに大阪外国語大学(現・大阪大学)在学中に結成。フットワークの軽さを武器に、全国各地を舞台にコント作品を発表し続けている。独特の台詞回し、奇妙だが納得してしまう展開、印象に残るビジュアルでファンを拡大中。(公式サイトより)

質問 稲森 明日香さんから 若旦那 家康さんへ

___ 
前回インタビューさせて頂いた、弱男ユニットの稲森明日香さんから質問を頂いて来ております。「最近のお気に入りバンドはどこですか?」
若旦那 
稲森さん、知り合いなんですよ。あー、僕にピッタリの質問ですね。芸創の事務所でFM COCOLOが流れてるんですけどね。少し古い曲が流れていたりするんです。
___ 
懐メロいいですよね。
若旦那 
ほら、若い時に聞いた曲を今になって聞き返すと、当時は分からなかった意味に気づく事があるじゃないですか。THE BOOMの島唄が、恋愛の別れの曲だと思っていたら戦争の歌だったというような。もう一度、新しい気持ちで古いバンドを聞きたいですね。あと、来週くらいにハマっていそうなのはEARTH WIND AND FIREですね。
___ 
というと。
若旦那 
元いた劇団で、EARTH WIND AND FIREの曲をアップの時に使っていたんですよね。で、つい先日、珍しいキノコ舞踊団を見に東京に行ったんですよ。そこでEARTH WIND AND FIREが使われていたんです。凄く良かったんですよね。前列の人が踊りだしてました。ダンス見て楽しくて泣きそうになったのは初めてなんですよ。アップに使っていた曲なのに、全然印象が違って聞こえました。

質問 ピンク地底人3号さんから 若旦那 家康さんへ

___ 
ピンク地底人3号さんからも質問を頂いて来ております。「もし仕込みに遅れてきた人がいたら、どうしてくれますか?」
若旦那 
うーん。その時の状況や僕に心の余裕があればですけど、よっぽどじゃなかったら大喜利を出して答えてもらうとかかな(笑う)。面白い遅刻の理由を言いながら入ってきてもらいます。あとは、面白い差し入れをお願いします。
___ 
(笑う)そんな時間ないのでは・・・。
若旦那 
僕もあまり怒れないタイプなので。遅れた方も電車の中で走ってもしょうがないので頭使ってもらって。僕もイラついても仕方がないので。遅れてきた人は、その分マジメに働くと思うんですよ。公演への貢献で取り返してもらうしかないですね。
___ 
私は寝坊してゲネに参加出来なかった事があります。土下座してまわりました。
若旦那 
ゲネに遅刻はキツイですね。と言いながらも、僕も余裕をこいて遅刻したことがあります。
___ 
というと。
若旦那 
その時は役者で出てたんですけど、ノリ打ち公演の時の本番日でした。9時集合なのに10時だと思っていて。起きたのは8時なんですけど、メールとかしていたら9時に電話が掛かってきたんです。「9時入りですけど」って。そこで知ったんですね。「はーっ、すいません」ってなって(笑う)。自転車に乗りながらどうしようどうしようって考えてました。
___ 
分かります。
若旦那 
劇場について、何も分からないのにまず平台を担ぎました。「これをどこへ!?」って。素無視されました。
___ 
小屋入り期間の遅刻は本当にダメージが大きいですからね。
若旦那 
本当にそうですね。

新しい、知らない人

___ 
若旦那は、今後どんな感じで攻めていかれますか?
若旦那 
新しい人を見つけて、恩を売っていきます(笑う)。僕のターニングポイントは、大阪ショートプレイフェスティバルに参加して仕事した事なんですよ。凄い人も、誰も名前を知らない若手も、同じように15分の作品を上演するんですよね。有名無名関わらず。ABC春の文化祭にかのうとおっさんを紹介して、ABCの人に気に入られたり、ピンク地底人を推したり。知られていない人や、若手をどんどん売っていければいいなと思います。
___ 
その、ショーケースの話。確かに若手もベテランも有名無名関わらず並べる事は出来ますよね。でも、カオスにする事は出来ない・・・って、twitterのエントリがあって。一体どうすれば、混沌としたショーケースに出来るのでしょうか。
若旦那 
ジャンルにこだわらず、まず見てみて、それで面白いと思った人を推していくという事じゃないかなと思います。一つの事にオタクな人もいると思うんですが、商店街のショーウインドウに目移りするように、とりあえず気になった公演に行って、その上で面白い、ちゃんと勧められると思われるものを勧めるという事ですかね。客寄せパンダよろしく、この人で集客しようと思ってエントリしない事だと思います。
___ 
客が来るという事が条件ではない。
若旦那 
そうですね。さらに、順番一つで本当に変わるし、そもそも舞台表現がジャンルレスになってきているのもあります。例えばきたまりさんが喋ったりとかMuDAとか、マイクパフォーマンスを取り入れたり。「声も一つの踊り」と言っていました。その作品一つですでにカオスな状態もあるわけですしね。
___ 
チラシのプログラムに載っている情報だけでは、上演中の事なんて何も分からない。でも、とりあえずは、面白いからそこに並んでいるはず。通常の演劇公演でも同様ですね。まずは劇場に行かないと、面白いかどうかは分からないですが。

ミリメシ

___ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
若旦那 
ありがとうございます。重たい。開けて大丈夫ですか?
___ 
もちろんです。
若旦那 
ははは(笑う)、すごい。中々のボリュームですね。
___ 
緊急時にどうぞ。
(インタビュー終了)