Quiet.Quiet「赤色エレジー」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、呉城さんはどんな感じでしょうか。
- 呉城
- 最近は、Quiet.Quiet.の赤色エレジーの稽古です。
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- どんなお話になるのでしょうか。学生運動の話ですよね?あさま山荘事件みたいな、革命戦士達による自己批判リンチとか?
- 呉城
- いや、普通に当時の学生達の話ですね。そういう活動の話は少し出てくる程度で、青春に苦悩する若者達の話です。
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- 意外。あのチラシからは不穏な空気を感じました。呉城さんはどんな役回りになるんでしょうか。
- 呉城
- 匿名劇壇の佐々木君の元恋人の役で、好きやけど彼がだらしない、ので、他の男の子との間で揺れ動く、みたいな。
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- あ、ラブコメなんですね。
- 呉城
- コメディではないです!いや、違うのかな。ラブストーリーがメインではないと思うんですけど。
悪い芝居
2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。京都を拠点にしながら、東京・大阪などでも活動する劇団。メンバーは12名。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を刺激的に勢いよく噴出し、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する作風が特徴。「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、中毒性の高い作品を発表し続けている。2009年より、パワープッシュカンパニーとして京都の劇場ARTCOMPLEX1928から2011年まで3年間の支援を受ける。そのパワープッシュカンパニーとしての最初の作品「嘘ツキ、号泣」が第17回OMS戯曲賞佳作を受賞。各メンバーの外部活動や、2011年は、劇団事務所である築80年の京町屋で1ヶ月半26ステージの家屋公演「団欒シューハーリー」を敢行するなど、劇場以外でのパフォーマンスも精力的に行っている。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)
Quiet.Quiet「赤色エレジー」
公演時期:2015/2/25~3/1。会場:KAIKA。
さようなら、天上底
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- 呉城さんにインタビューするにあたり、どうしても話したい事がありまして。一昨年の悪い芝居「春よ行くな」 での呉城さんがですね、もの凄く良かったんですよ。
- 呉城
- ありがとうございます。
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- まず、声が独特ですよね。
- 呉城
- そうなんですか、私、自分の声はちょっと・・・この間受けたWSで「何その高い声。舞台用の声?」って。めっちゃお腹に力入れて低い声を出してようやく、ええんちゃうって。私の声、どんなですか?
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- 受け止めやすい声だと思いますよ。ストレートで、心情が伝わってくる声だと思います。
- 呉城
- ありがとうございます。そういって下さるのは嬉しいですけど悩み中です。キーンって高い気がして。もっと、確かな声を出したいです。
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- ラストシーンの叫び声が印象的でした。「春よ行くな」、彼女の口から出た出まかせというか、彼女のよく分からん処世術に全員が巻き込まれているとも見れるし、逆に、本当に彼氏が失踪した、可哀想な彼女を描いた話なのかもしれないし。
- 呉城
- 可哀想ではないですけどね。あの人はああいう風になってしょうがないと言えるかもしれない。
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- 天罰?
- 呉城
- 天罰?天罰じゃないかもしれないですけど(笑う)。ふらふら生きとったらあかんねんなと。
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- ふらふらしてたから、最終的にはよくわからない自己啓発セミナーの人と一緒になってしまうと。
- 呉城
- でも、そう思ってても人間、流されるように生きちゃいますよね。
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- だらしなく生きてしまう?
- 呉城
- 結構、流されて生きてしまうような気がしますね、あんまり良くないとは思いますけど。
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- 私もね・・・今の生き方を続けてしまっているのが悩みだなあ。自分で自分の人生の主導権を握って、例えば25歳とかで会社を興してたらどうなってたかなあ。演劇界でもITででも、「何でもやります!」の姿勢で。もしくは静岡に帰ってもっと家族と時間を過ごしていたら。
- 呉城
- でもまだまだお若いじゃないですか。いや私が言う事じゃないですけど。
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- ありがとうございます。勇気が出ました。
- 呉城
- はい、あ、いまの赤色エレジーの現場って何か、若い子ばっかで、私が最年長で、どう思われてんのかなあって。21の女の子がいるんですよ。この可愛い子たち、みたいに思うんです。
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- ギャップが激しい?おジャ魔女どれみ世代と?
- 呉城
- あはは。私はセーラームーン世代でした。
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- おジャ魔女どれみかプリキュア世代に囲まれているのですね。いやその、子ども時代に実家で何を見ていたかが結構重要だと思うんですよね。手足の伸びきったセーラームーンが格好良く敵を倒すのか、自分たちと変わらないおジャ魔女が学級や家族や地域社会の問題に向き合うのか、プリキュアが同志と心を合わせて敵を倒すのか。恋愛番組も重要で、「あいのり」か「テラスハウス」のどちらを見ていたか。これもかなり恋愛観に影響を与えるんじゃないかと思う。
- 呉城
- あー、確かにそれはありますよね。「テラスハウス」はあんまり・・・「あいのり」を見ていた方が純粋に育ちそうですよね。
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- 要は、自分がどんな恋をすべきなのか発見するタイミングを思春期で捉えておく事が大事で。それをしないと未熟な関係性で満足するようになってしまうのではないか?天上底には誰もが惚れてしまうけど、彼女はこちらの思いを知ってか知らずか、良く分からないどこかの隙間に行ってしまう。そこに、他者との関係性を上手く作れない未熟さがあるような気がする。まあ、彼女の逃げ続ける孤独な旅には思わず共感してしまうんです。あの不可解さ込みで。恋をされると逃げたくなるあの感じとか。
- 呉城
- え、そうなんですか。
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- あれ、ありませんか?私は恋されると恐怖しますね。
- 呉城
- あ、そうなんですね(笑う)それめっちゃ面白いんですけど。恋をされると逃げたくなる?
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- ゴジゲンの昔の作品で、童貞の集団が合コンして、彼らは全員恐れをなして逃げるんですけど、ラストシーンで女のひとりが童貞らの集まっている部屋に近付いてきて、彼らは集団自殺するんですけど・・・
- 呉城
- 何それ!めっちゃ面白い。
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- めちゃくちゃ面白いんですよ。私もDVDでしか見てないんですけど。恋を引き受けられないという恐怖感がなぜかあるんですよね。
- 呉城
- へー。じゃあ、自分から好きにならないと恋が出来ないんですか。
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- 私は多分そうですね。というか、好きな人に告白されても怖くなるのかもしれない。
- 呉城
- えー、それは幸せになれないですよ(笑う)
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- そうですね・・・
- 呉城
- いやそんなことないでしょうけど。だってねえ。好きな人と結ばれたいものじゃないですか。めっちゃ難しい性格ですね。
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- 松居さんも、というか草食系男子というのはそういうものだと思います。そう思うと女性は、いやこれめっちゃ社会的ジェンダーのバイアスが掛かった見方ですけど、恋愛をモチーフにした文化を見て育って来ているから、引き受ける力を持つんだと思う。
- 呉城
- ずっとストーカーみたいな事をされたら気持ち悪いですけど、普通だったら、まあそういうのはありがたく頂きます、じゃないですか?そういう拒否感とかを「春よ行くな」の時に感じたんですか?
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- うーん、下敷きにあったからこそ強く感じていたんだと思います。
- 呉城
- へー。
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- 冒頭にあった、大塚さんと呉城さんの、ラブシーンになるかどうかの、あのせめぎあい。あれに全てが集約していくような気がする。
- 呉城
- ああ、あれ、拒否するぐらいなら行くなよと思いますよね。
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- 恋愛、嫌いなんだよ俺は。
春よ行くな
2013/8/22~27 in→dependent theatre 2nd(大阪) 2013/9/11~17 駅前劇場(東京)。
初めての人と舞台に立ったこと
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- それから、去年は朗読劇「8-エイト-」にも出演されていましたね。いかがでしたか。
- 呉城
- はい。朗読劇と言っても普通に動いてましたね。感情のままに動いてみて、という指示があって。私は悪役で、窮地に追い込まれるんですよ。でも、私たちにはそのドラマの文脈が下地にはないので、例えばワーって盛り上がるシーンがあったとしてもそれが盛り上がりになっていないような気がして。
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- なるほど。
- 呉城
- 何とか盛り上がれるような作品にしようと頑張りました。楽しかったですね。出演者も色んなところから集まってきていて、普段は役者をやっていないい人もいて、個人的に仲良くなりました。今でも繋がりはあって、この間一緒に高尾山に登りました。
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- 山に登ったんですか。
- 呉城
- 色んな話出来るし、めちゃ楽しいです。めちゃいいですよ。
わたしの役と相手の気持ち
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- 呉城さんが演劇を始めたキッカケを教えてください。
- 呉城
- 田中遊さんの劇研アクターズラボが最初です。あれが最初じゃなかったかな。平田秀夫さんのWSとかを週に1回受けてて、公演クラスに行ってて。それを2回ぐらい。
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- 呉城さんは独特の存在感ですね。良く言われませんか?「春よ行くな」を引きずり過ぎてしまっているのかもしれない。まあいいや。今日聞こうと思ってたんですけど、俳優の仕事ってどういうところから始まると思います?
- 呉城
- えっ、何そんな。
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- 例えば、良く言うじゃないですか「相手の気持ちを考えよう」って教訓。これはもの凄く難しい事だと思うんですよ。私は自分にはそういう才能は全く無い事を自覚していて。まあそれはホテルでバイトしていた頃に発覚したんですけど。
- 呉城
- ああ、サービス業だとよく言われますよね。相手の気持ちを察する。
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- でも、相手と同じ場所にいる時に、“自分の”気分には素直になれるじゃないですか。これはつまり、関係を連続していく内に、相手の気分と同調出来る可能性があるという事なんですよきっと。これは共感への道のりと言えるんじゃないか。気持ちに素直になるって、これはもう俳優の仕事の第一歩なんじゃないかなと。でも、その第一歩が分からない。
- 呉城
- 相手の気持ちと同調する方法・・・赤色エレジーの稽古場では佐々木君と役について結構話していて。「この役はこの話が終わった後はどうこうするに違いない」とか。自分の劇団では良く、読みが浅いと言われているんですけど、今は読もうとしています。そういう話をした日の稽古は普段とはちょっと違う気がする。自分でもちょっと楽しいというのはありますね。
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- なるほど。
- 呉城
- 役についての話が増えていくと自分も楽しいんですよね。今はまだ、辻崎さんの話はまだ理解しきれていないんですけど、それでもとりあえずやってみる、そういう姿勢です。今の稽古場はそういう人が多いですね。他の人の稽古をちゃんと見とかな、って人ばかりで。私も全体を見て、視野を広げていようとしています。そうしないと失敗するタイプなんで。
自分像?
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- これから目指したい自分像は?
- 呉城
- お芝居が上手くなりたいです。私はホンマに何も出来ないので。歳をとるのは嬉しい事でもあるけど、技術が重なっていかないんです。それはワークショップで補えるものじゃないのかもしれないけど、ちょっとずつストックしていかなあかんのかなと。これまではその現場現場でやってきたんですけど。
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- なるほどね。
- 呉城
- ちょっとずつ肌もボロボロになっていくし(笑う)いや分からんけど。歳に追いつくようになりたいです。始めたんも遅いし・・・人一倍努力しないとあかんのに。
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- 次の質問。舞台上で嫌いな瞬間はいつですか。
- 呉城
- えー、第一回の一番最初はキライですね、緊張しいなんで。
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- 緊張はどうしてもありますもんね。それと・・・今どんな事に興味がありますか?
- 呉城
- 姿勢を直したいです。体の。昔からなんですけど肩がイカってて。それをどうにかしたくて、整体に行きたいです。身体とかをちゃんとしたくなって。
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- 整体の器具の一つで、寝た姿勢で肘とか膝とか身体の全ての部位をベストな位置に設定するマシン。
- 呉城
- そんなのあるんですか。
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- 昔やったときにあまりの気持ち良さに気絶しかけた事がありました。
- 呉城
- ああ・・・いいなあ・・・全体的に健康になりたくて。お風呂とか、女子っぽいものにそんなに興味なかったんですけど、整体とかやって身体をちゃんとしたいし。
質問 福井 俊哉さんから 呉城 久美さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、福井さんから質問を頂いてきております。「なぜ、女子高に男子が入学してはいけないのでしょうか。」
- 呉城
- (笑う)知らんわ。どういう事ですか?あ、女の子になりたかった?
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- いや、本人曰く、性的な嗜好とかではなく、純粋な、入学という意思だそうです。福井さんは中学卒業時に、女子高への願書を間違えたフリをして提出したんだそうです。その時は担任の先生に怒られて止められたそうなんですが。
- 呉城
- それは、女の子に会いたいからという理由で?
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- 分かりません。そこは全く語ってくれなくて。でも本人によると、別に女の子に行き過ぎた興味があるとかではなくて、ただ入りたかったと。
- 呉城
- 入りたかったら行ったらええやん。
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- でも、先生に止められましたから。担任の女の先生に。その人もきっと分かっていたんでしょうね。
- 呉城
- 本気で行きたかったんかな。
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- 願書を用意するぐらいですから。
- 呉城
- でも・・・ねえ。あ、私も男子校に行った女子ですよ。私の入学年から共学になったんです。
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- ああ、そうすればいいのか。どうでしたか?
- 呉城
- みんな優しかったですね。でもだからといってか、逆に男子とは喋らんかったかな。大学入ってもクラスの女子は八分の一程度だったし。そうだ、看護学校を狙ったら良かったんじゃないですかね。
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- そっちか。仰る通りです。
悪い芝居vol.17『キスインヘル』
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- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
- 呉城
- いやもうとにかく、自分じゃないものになりたいです。結局いつも自分になってる気がするので。別にわたしなんか誰もみたくないし、私じゃないものになりたいです。
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- 自分のどんなところが嫌なんですか?
- 呉城
- え、もっと性格の良い人になりたい。もっと人の為に献身出来るような。
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- 献身は時には痛みを伴うものだと思いますが。
- 呉城
- でもいつも自分の事ばっかりなんでね。自分の人生なんて・・・。せっかくこういう事をしているんだから、誰かをね。
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- 機械の発達に伴って、これからどんどん人間の仕事は無くなっていくと思うんですが・・・逆に心の価値はガンガン上がっていくと思うんですよ。これからはサービス業ですね。機械が追いつけない仕事が。
- 呉城
- 質問なんでしたっけ?
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- 自分のどんな所が嫌?
- 呉城
- ああ。
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- あと、尊敬する人に一言。
- 呉城
- 「お母さん、ありがとう」。あ、ダメですか?
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- いや、いいと思います。それから、これから演劇を始める人に一言。
- 呉城
- 一緒に頑張りましょう。
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- ありがとうございます。今日、もっと話しておきたかった事はありますか?
- 呉城
- 悪い芝居の本公演が6月にあるんで 、これは来て欲しい!という事を伝えたいです。
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- 楽しみです。
悪い芝居vol.17『キスインヘル』
作・演出:山崎彬 音楽:岡田太郎 日程・会場:2015/6/18〜23 HEP HALL (大阪) 2015/6/26〜30 赤坂 RED/THEATER (東京) 出演者:植田順平 岡田太郎 北岸淳生 呉城久美 中西柚貴 畑中華香 山崎彬 渡邊りょう (以上悪い芝居) 四万十川友美 田中良子(ブルーシャトル)土屋シオン 横田美紀
呉城さん
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 呉城
- もう、出れるだけ出たいです。芝居って出たら次の舞台まで一月空いてみたいになりがちですけど、ずっとやっていきたいです。びゅんびゅんびゅんと。
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- ユニット茶ばしら。に出てた呉城さんが見たかったです。気になりましたね。いいなあと思いましたよ。
- 呉城
- 楽しかったですよ。年上の方ばっかりで、可愛がってもらって。
スナックボウルとチーズクラッカー
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- 今日はですね。お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。どうぞ。
- 呉城
- ありがとうございます。開けていいですか?
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- はい。
- 呉城
- 何だろなんだろ(開ける)あめっちゃかわいい。何この器、めっちゃかわいい。このボールにこれを注ぎ?
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- はい。スナックのボールのイメージで。