セッション
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い申し上げます。兵頭さんは最近、どんな感じでしょうか。
- 兵頭
- 今参加している「ギア」 と、オリジナルテンポ がスロベニアのアーティストと共同製作をするんですが、そのプロジェクトが始まっています。どんな感じになるのか楽しみですね。特に「ギア」はロングランなので。
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- そうそう、いつ終わるのかすら決まっていないんですよね。
- 兵頭
- そうなんですよ。半年とか一年以上の期間だと思います。柿喰う客のツアー公演で慣れているとはいえ何が起こるのか。不安ですが楽しみです。あと、今回は新作を海外で作る事になるんです。
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- どうなるんでしょうね。
- 兵頭
- 音楽も芝居もセッションしながら作っていくんですよね。オリジナルテンポは何度も海外に行っているし、メンバーの結束が強いんですので不安はないんですけど。実は去年の夏、共同制作の準備としてスロベニアに一週間だけ滞在したんですが、色々驚くことがあったんです。
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- というと。
- 兵頭
- その日は一日リハーサルで、昼過ぎに一旦区切りを入れたんですよ。18時から再開するんですけど、その間、飲みにいくんです。
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- えー!
- 兵頭
- 飲みにいっちゃうんですよ。それがスロベニアの習慣なのか、そのカンパニーのやり方なのか。私は好きだし、いいなと思うんですけどね。
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- 本当に文化が違うのかもしれませんね。
- 兵頭
- 色んな意味で大きさが違うんですね。彼らはフリークライミングが好きで、大自然で山に登るんです。それは日本では感じにくい空気感なんですよ。
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- 日本では味わえないですね。
- 兵頭
- 滞在最終日にクライミングとラフティングに連れていってもらったんです。やっぱり気持ちいいんですね。大自然の中での自分の居方というか。山の色や川の水が違うし、空気が違うし、食べ物や飲み物が違うし、使っている言葉も違うし。全てひっくるめて、この人達はこういう風に生きている、そりゃ違うわって。そこで初めて、やっと、彼らと私たちは生きてきた背景が違うんだなって思えるようになったんです。
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- どんな作品になるんでしょうね。
- 兵頭
- そうですね。彼らは今年、日本に来てくれるんです。リハーサルも楽しみだけど、彼らが日本でどういう生活をするのか楽しみです。
ギア -GEAR-
公演時期:2012/4/1〜(ロングラン公演)。会場:アートコンプレックス1928。
THE ORIGINAL TEMPO
2002 年に演出家ウォーリー木下を中心として設立されたThe original tempo(TOT)は、海外での作品発表を目標とし、台詞を一切使わないパフォーマンスグループとして活動しています。TOT では、国内で評判のよい作品を海外で発表するのではなく、はじめから海外で発表することを目的として、ポータビリティや言葉の問題などを意識し、作品に反映させていくことを活動の主題としています。(公式サイトより)
原点、エネルギーのもと
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- 兵頭さんがこれまで目標にしていたものはありますか?
- 兵頭
- 目標というとちょっと違うかもしれませんが、今現在も目標にしている事があります。いつか、カンヌ映画祭の赤絨毯に戻りたいと思っているんですね。
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- なるほど。
- 兵頭
- 本当に、あの時は衝撃で。それでこの世界に入ったんです。当初は女優をやろうだなんて全然思っていなくて。
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- どんな体験だったのでしょう。
- 兵頭
- 映画祭初日に赤絨毯を歩いて、お客さんが3000人からいる会場に入って、どわあって沸いた瞬間の有無を言わさず涙が出てくるあの感じ。震えが止まらなくって。巨大スクリーンに自分が出ているのがちょっと信じられなかったです。見終わった後に、スタンディングオベーションで凄い大歓声を頂いて。
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- どんな実感がありましたか?
- 兵頭
- 自分が凄いというよりも、たくさんの人が一夏、一つの目標に向かって戦って。それが、自分の生の体験となったというのが凄い印象になりました。それが自分のキッカケになったし、エネルギーの元になっているんですね。原点だと思います。
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- そう考えると、近いようで遠い目標ですね。
- 兵頭
- 十年後かもしれないし、二十年後かもしれない。もちろん、こんな事叶わない人の方が多いんですよ。もし叶うなら、今度はもう少し実感をもって(笑う)。
動きが自分に返ってくると凄く嬉しい
- 兵頭
- 正直、だったら映画の方をやればいいじゃないと言われる事もあるんです。でも、根本としては、自分が発信したものの反応を生で感じたいという思いが強いんですね。
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- 映画祭の拍手のようにね。
- 兵頭
- 目指しているところはそこなんですよ。「やりました」っぽーんって、投げっぱなしがイヤなんですね。表現したものを受け取ってくれて、元気になったとか、笑ったとか、そういう風に誰かが影響された動きが自分に返ってくると凄く嬉しいです。
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- そうですね。私も舞台に出ていた事はあるんですけど、舞台側からの観客席は、まるで暗い海のような眺めで。そこから聞こえてくる反応はめちゃくちゃ嬉しいですよね。
- 兵頭
- それは時には厳しい批判かもしれないんです。でも、それでもいいんです。私は、出演した作品を見た人と、作品を共有したいんです。
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- なるほど。
- 兵頭
- それが出来れば、別に日本じゃなくていい。だから、海外でノンバーバルの試みをしているのかもしれません。
幸せのうそ
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- では、なぜ感動を共有したいと思われるのでしょうか?
- 兵頭
- これは、文章にするのは難しいんですけど・・・一人じゃ生きられないから、より多くの人と共有したいんだと思います。去年は重大な事件が沢山あって、考えさせられる事が多かったんです。やっぱり自分が生きている事って、誰かがいないと実感出来ないと分かったんですね。
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- ・・・。
- 兵頭
- 生きる可能性を高める為には、より多くの人と人がつながらないといけない。つながる為には、辛い事よりも楽しい事の方が良いんです。だから共有するんです。
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- なるほど。
- 兵頭
- 話がちょっとずれますけど、実は私、ミシェルって呼ばれているんですよ。
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- ああ、twitterの名前がそうなっていますね。
- 兵頭
- それは実は私のうそが原因で。バイト初日の自己紹介の時に、ポンと「ミシェル」ですって言っちゃったんですね。
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- えっ。
- 兵頭
- 「え、ハーフ?」って返してくれたから、いやハーフは気が引けたので「いやクォーターやねん」って言ったらみんな信じちゃって。
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- うわあっ。
- 兵頭
- 店のオープニングスタッフだったので、忙しい中ずっとミシェルって飛び交ってて。シフト表とかは「兵頭」ってなっていたので、ミドルネームという事にしたんです。「あーだから肌が白いんや」って信じられてたんですけど、そういう、ありえないうそをついていてさすがに心が痛かったから「ごめん、純日本人やねん」って(笑う)。
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- 勇気がいる告白でしたね。
- 兵頭
- いまさら祐香に戻せないので、それでもういいやという事になって。ニックネームとして残りました。その知り合いが広まって、みしぇるFUNクラブなるものが設立されました。
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- おお。
- 兵頭
- それは、みんなが楽しいものをシェアするためのクラブなんですね。面白い場所やパーティーを一緒に楽しむための。Tシャツ作ったりもするし、悲しい事があればそれも共有するし。そういう、楽しい事をシェアしようという活動が、お仕事にも生き方にも定着していきますね。
質問 武田 暁さんから 兵頭 祐香さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた、武田暁さんから質問です。「1.オリジナルテンポに参加している理由とは。」
- 兵頭
- 世界に行けるからです。
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- 「2.最終目標は?」
- 兵頭
- カンヌ映画祭です。
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- あえて伺いますが、中間地点ではないのですか?
- 兵頭
- 今のところは、私の中ではゴールに近いです。それほど難しいんですよ。自分の活動の最初の方で行ってしまった為に、周囲の人が簡単な事だと思っているみたいなんです。
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- ええ。
- 兵頭
- でも、ものすごい難しい事なんです。毎年世界で撮られる何千本の映画が選考に通らないといけない。その作品には主役級の関わりをしないといけない。もう目標というよりは、自分の原動力となるような夢なんですね。なぜならそれは、とても難しい事だから。
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- なるほど。
- 兵頭
- 最終目標という事なら・・・難しいなあ。うーん。いま、やりたいという事は叶いつつあるんです。専用の劇場でロングラン公演をするというのはギアで実現しそうです(もちろん、課題が山盛りなんですけど)。国内にこだわらず、海外でたくさんの人に関わった活動をしたいというのもオリジナルテンポに関わって叶いつつあるし。
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- そうですね。
- 兵頭
- 自分がやりたいと思っていた事をずっと持っていたから、何となくでも光がみえてきているのかもしれません。だから、今の仕事を何としても成功させるというのが、今の最終目標ですね。
沢山の人と出会って繋がる
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- さて、今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 兵頭
- 変わらないと思います。今ここにあることを一生懸命にこなす事が自分のやり方なんですね。本当は、色んな事を同じにこなせる器用さが必要なのかもしれませんが、どうも私には苦手みたいで(笑う)。もちろん、やっているんですけど。
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- そうですね。
- 兵頭
- 目の前の事に手を抜かず仕事します。相変わらずだねと言われるかもしれない。あえて攻めるというなら、沢山の人と出会って繋がる事で何か面白い事が出来るんじゃないかなと思います。人と知り合えたらその分領域が広がるんですね。
「戦う」
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- さきほど、「戦う」という表現を使われましたね。兵頭さんにとって、「戦う」というのはどういう感覚を指していますか?
- 兵頭
- 作品を作るという事自体が、私にとっては戦いなんです。
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- というと。
- 兵頭
- 悔しいんですが、どうしても出来ない事が出てくるんですね。自分の限界を思い知るんです。その場で泣いてやりたくなるくらいに悔しい。自分より上手に表現する人がいたら、やっぱり悔しいと思う。出来るようになるまで頑張るんです。お芝居には点数は無いんですが、やっている本人たちが一番分かるんです。この人が舞台に出てきただけで持って行かれた!って思ったり。
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- なるほど。
- 兵頭
- それから、いまギアの現場に参加していて、やっぱり周りの出演者がすごく戦闘力が高いんですよ。
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- そりゃあそうですよね。日本のトップが集まってる訳ですから。
- 兵頭
- 人を惹きつける力が強いという事ではなくて、戦い方を知っているんですよね。苦しい戦いも、楽しんで戦う事も。違うジャンル同士が、リハーサルで調整しながら戦っているんですよ。私は演じる事は出来るけど、頭で回る事は出来ないし、バトンを操る事も出来ないし、何かを隠す事も、見えない壁を作る事も出来ない。だから、守っていてもつまらないんですね。だからみんなと仲良くするポジションで、劇場ごと元気にしていきたいです。
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- 私は何回かギアを拝見しているんですが、兵頭さん演じるあの人形は引きこまれますよね。4月から無期限上演ですね。
- 兵頭
- そうですね。とりあえず3ヶ月上演はするんですが、私たちは今後1年、2年、10年と代替わりしていくのを夢見ています。もちろん、お客様の応援が絶対必要なんですけど、京都のお客さんに元気を与えられたらいいな。
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- 頑張って下さいませ。
BY Senteur et Beaute ルームスプレー リリーガーデニア
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
- 兵頭
- ありがとうございます。何だろう何だろう(開ける)わー。嬉しい。
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- ワンちゃんに影響がないよう、なるべく控えめなものを選びました。
- 兵頭
- いいにおい。ウチの犬、お部屋用の香り付き消臭スプレーを掛けると自分に擦りつけるんですよ。大丈夫です。わー、ありがとうございます。かわいいー!