劇団ガバメンツ「警部パハップス(全10回)」(2015/11/13~15@道頓堀ZAZA HOUSE)
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い申し上げます。最近、西岡さんはどんな感じでしょうか。
- 西岡
- 最近は、今月の本公演に向けて稽古の日々です。いつも通り、笑いとは何ぞやという空気が漂う中、さらに面白いものを探っている作業が続きますね。
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- ガバメンツの稽古場は、非常に追求型の雰囲気だそうですね。
- 西岡
- コメディなので稽古場も楽しくやっているみたいに思われがちなんですけど、それはそれはもう。繊細な作業がずっと続いています。基本は楽しいんですが、たまに「これ悲劇作ってるんじゃないかな」と(笑う)何が面白いのか、という、答えの無い取り組みなので。
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- 「この演技はこれが面白い」というのを探して決めるのが肝要だと思うのですが、その基準の持ち方は、ガバメンツではどういうところにあるのでしょうか。
- 西岡
- 何でしょうね。でも、何が面白いのか、という答えは一つなんでしょうね。それを色んな人が色んな角度からアプローチを掛けるんです。その結果、正解じゃないところでも正解レベルのクオリティになったりもするので。面白いか面白くないのか、が基準だとは思います。
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- また重要なのは、「答え」の示し方ですよね。ただ示せばいいというワケでは決して無い。もちろん、方法はある程度脚本に書かれていると思うんですが。
- 西岡
- そうですね。示し方すら分からない事もありますからね。台本を読んで笑いのポイントが掴めたとして、それが出来るかどうかは別になってきます。私たちは笑いを追求していますけど、ドラマも大事にしています。登場人物の一人である以上、放り込まれる笑いに対応するには、それまでの感情の流れをきちんと踏まえないといけないですし。そう簡単には示せばいいというものではない。
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- そうですね。さきほど近藤さんへの取材で、ミルフィーユのように積み重ねられた作品研究が、結果的には劇場の空気をうねらせることになると仰っていました。その求道を、私は劇団ガバメンツに期待しています。
- 西岡
- ありがとうございます。単純に笑わせるという仕事をするにしても、単純なウケ狙いなら変顔をしたら笑ってもらえるんですけど、そうじゃないところで攻めているので。ミルフィーユというのは良い表現ですね。てっぺんのイチゴが笑いだとしたら、生クリームが無かったらおいしくない。面白くないんですね。メレンゲから作るのが私たちの仕事です。今の稽古の段階では、生クリームを泡立てています。
劇団ガバメンツ
「コメディしかできません、でもいろんなコメディができます」シュチュエーションコメディばかりがコメディじゃない。ラブコメディ、サスペンスコメディ、スクリューボールコメディ、トラジコメディにコメディコメディ。喜劇はこんなにあったのか。喜劇を愛する全ての人と、そうでもない全ての人へ。1年に1回しか演劇を見ない人の為に、さまざまなスタイルの喜劇に挑戦している。(こりっちより)
劇団ガバメンツ本公演 木曜ドラマ「PERHAPS」警部パハップス(全10回)
作・演出 早川康介 雨にふられた殺人現場。 落ちていたのはあの果実。 何も見てない家政婦に、ヘコヘコはじめた警察犬。 現れたのは「たぶん」が口癖のあの警部。 だらだらと続く連続殺人に、なんとなく疑われた容疑者たち。 一話完結、いつも未解決。 「犯人はあなたです、たぶん」 なんて連続ドラマ、毎週見てはいられない。 だから、今日だけコメディで。 会場:道頓堀ZAZA HOUSE 日程: 2015年11月13日(金)~15日(日) 11月13日(金)19:30 11月14日(土)15:00・19:30 11月15日(日)13:00・17:30 チケット: 日時指定・自由席 前売・当日とも一般 3,000円 U-22 2,500円(要証明書) 【出演】 近藤貴久 西岡裕子 浅雛拓 石畑達哉(匿名劇壇) 賀來正博 片山誠子(PEOPLE PURPLE) 是常祐美(シバイシマイ) 佐々木ヤス子 永津真奈(Aripe/ブルーシャトル) 山本禎顕(スクエア) 【ギター演奏】福島大
ガバメンツの個性
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- ガバメンツのコメディ集団としての個性はどこにあると思われますか?
- 西岡
- やはり、ドラマがあるところですかね。私個人が好きな部分ですが、「コメディです!」といいながらドラマもあって温かいしときには泣けたり、みたいな。登場人物がみんな大事にされていて、飛び道具も出てこないし。けして下品ではない、自分で上質っていうとあれですけど、そんな雰囲気にいながら、笑いの扉が開いたときに大笑い出来るんです。初めて見た時からそう思っていました。
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- 上品さってすごく重要ですよね。
- 西岡
- オシャンティな、ですね。
全10話のTVドラマ演劇、の謎
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- そこで、次回公演の「刑事パハップス」。どんな作品になりそうでしょうか。
- 西岡
- 連続ドラマです。全10話のTVドラマを一本の演劇作品でやる、と。またウチの早川がおかしな事を思いついて。
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- 色々なやり方や、ひねりの効いた工夫がありそうですね。
- 西岡
- それは見てからのお楽しみに、で(笑う)。よく聞かれるんですよ、10話全て見れるの?って。それに関してはちょっともう、一文字も言えません。私も、今回初めてTVドラマをやると聞いた時「1話を長めにやって2話目は短く、以降順番にやっていくのかな」とか一瞬は思ったんですが、貰った台本を読んで「まあそんな訳ないよな」と。また新しい感じです。でも、ちゃんと全10話のドラマを100分の演劇で見せています。お楽しみに。
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- ガバメンツの企みはいつも楽しみです。
- 西岡
- もう、毎回、何かやらんとあかんのかなと思ってるかもしれませんね(笑う)でもまあ生きてる限りは頭を絞って何かをしないといけないですし。お客さんも増えつつ合って、有り難い限りです。自分としても楽しみです。
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- そこで、お客さんに一言、期待させるような事を仰ってくださいますか。
- 西岡
- 「安心してください」と。お金もお時間も頂戴するのでそのご期待に添えるのはもちろんですが、それ以上の「何か」がありますので。
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- なるほど。ガバメンツは硬派ですよね。作品に殉じるというスタイルに、非常に強くポリシーを感じます。
- 西岡
- 何か、作品だけでやっているのは個人的にも好きです。そうあるべきだと思いますしね。メンバー同士もプライベートの事とかあまり知らないですし。
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- あ、そうなんですか。
- 西岡
- お互い、いい意味であまり関心がなくて、作品だけでつながってる感じです。
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- へー。私でさえ、西岡さんが教職についている事は知っているのに。
- 西岡
- あ、そうなんです。教職についてるのはさすがに知ってくれてると思いますが、何を教えてるのかまでは知らないと思います(笑う)
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- 大阪芸大と言うのは共通しているんですか?
- 西岡
- 私は違いますね。あ、正確には、違いました。でも私ちょっと勉強したい事があって、この間、大阪芸大に入ったんですよ。結果、全員大阪芸大の劇団になったんです。だからみんな先輩なんです。
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- さっき、近藤さんにインタビューした時に、母校の後輩に一言という事で伺ったら「輝け」と。
- 西岡
- あ、分かりましたパイセン(笑う)。
質問 京都造形大 舞台芸術学科卒業制作の皆さんから 西岡 裕子さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた方たちから質問をいただいてきております。京都造形芸術大学の舞台芸術学科の卒業公演が3チームあるんですが、代表の方々から。まずは、ダンス公演をされる藤井さちさんから。「笑いを取る秘訣を教えて下さい」。
- 西岡
- むずかしい(笑う)やろうとしている事を面白いと思わないと笑いは取れないと思います。これは面白いんだ、と信じてやるだけです。
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- ありがとうございます。次は南風盛もえさんです。「美容室に行く時、どんな言い方をしたら伝わるんでしょうか。伝え方が分からなくて自分で切っています」。ちなみに南風盛さんはこんな髪型をしています。
- 西岡
- まずは、気の合う美容師さんを見つけてください。希望する長さを伝えて、「お任せで」と言えばお気に入りの美容師さんだったらどんな髪型にされても気に入ると思うので。私は美容師さんを変えられないタイプなんです。その方は話も気持ち良いし、似合わない髪型をしようとしたら止めてくれるし。そんな気の知れた美容師さんを見つけた方が良いと思います。
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- ありがとうございます。最後はルサンチカの河井朗さんから。「全くウケなかったら反省会するんですか?」
- 西岡
- 例えば130の笑いを取れる時に、129しか取れなかったとしても反省会を開きます。1%でも足りなかったら反省します。本番と本番の間も、休憩時間はあんまりありません。
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- なるほど。「では、スベった時はどうしますか。」
- 西岡
- フォローしてもいい場面とかはあんまり無いと思うんですよ。一瞬外してもすぐにドラマに戻るので。スベっても一瞬で忘れるようにします。
質問 近藤 貴久さんから 西岡 裕子さんへ
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- そして、近藤さんからも質問を頂きました。「何故、そんなにセリフを覚えるのが早いのですか?」
- 西岡
- あっはっは。そうなんですよ。いや、近藤が遅すぎるんですけどね(笑う)確かに私は早い方みたいですが、その、文字を覚えていません。どう思ったか、だけを覚えています。相手役にこう言われたらこう思うんだ、と覚えたら文字が出てくるんですね。台詞を覚えている訳じゃなくて、文字と文字の間を覚えるという感じですね。
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- それは完全に俳優術ですね。能力として誇っていいものですね。
- 西岡
- ありがとうございます。これは両親に感謝ですね。
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- いつか、どんな演技が出来たらいいですか?
- 西岡
- 難しい。私は、ナチュラルな芝居が好きなんですよ。ナチュラルではない芝居はしたくなくて。演技をしながら頭がカチカチになってしまう事があるけどそれは決して見せず、どんなシチュエーションでも全てナチュラルにこなせる、みたいな。なんせ自然な演技がしたいですね。頭が働いてるな、みたいな部分が見えないようにしたい。あとは、女優と言われるのが嫌で。女優じゃなくて役者でいたい。それをこれからも大切にしていきたいです。
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- そう自覚して悔しくなる、という事は、もしかして、そもそも演技する事に恥ずかしさを覚えている?
- 西岡
- いえ、恥ずかしいということはないですよ。演劇って宇宙人とか熊とか木みたいな、人間ではない役を演じないといけない。でも、基本的には全て生きているじゃないですか。石コロでも生きていると思うんです。生命あるものを生命あるものが演じているんだから、ナチュラルじゃないものなんてないんですよね。演技していますって役者を見せたい訳ではない。自然の者が舞台の上に出てきて虚構を見せるというのが大切で、そこに西岡裕子が1ミリでもいたらいけないと思うんですね。宇宙人としてそこにいられるかどうか。
なりきること
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- ナチュラルさにこだわりを覚えたのは、いつごろから?
- 西岡
- 劇団ひまわりの研修生時代、会話劇の授業で先生が教えてくださるんですけど。で、泣く演技をするんですよ。したら講師の方に、「人間、そんな泣き方するか?」と言われて。ああ、こういう泣き方はしないわ、普通だったらどうするのか、という事を心がけていくようになってからは、お芝居の楽しさとか気持ちよさが増えてきて。何だか自分が出していくものも変わってきて。まだまだですけど、役者としての私がやりたい事ってそれなんだなあ、と。
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- ありがとうございます。なりきる、か。
- 西岡
- なりきる、というよりは、成るですね。役作りって言葉も好きじゃなくて、作るんじゃなくてなればいいじゃん、と。役の分析もあまりしないし、どんな性格なのかなと思うぐらいで。その性格だったらそのセリフはこう吐くかな、と。それが繋がっていくんですよね。
ガバメンツ、もっとたくさんの人に
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- 座右の銘があったら教えて下さい。
- 西岡
- 「思い立ったが吉日」です。私は亥年なんですけど、性格も猪で。その時やらないと気が済まなくて、深夜3時にビールが飲みたいと思ったらパジャマでコンビニに行ったり、海行きたいと思ったら特急に乗って行ってしまったり。でもそれで生きてきた結果いい事ばっかり起こっているんで、やりたいと思った時にはやらないという選択肢は取らない事にしています。
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- ありがとうございます。さて、そろそろこのインタビューも終わりに近づいていますが、何かお話しておきたかったこととかはございますか?
- 西岡
- 私がガバメンツに入った事があんまり浸透していないみたいで。私、ガバメンツなんです。最後にそう書いておいてください。(笑う)
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- 分かりました。では今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 西岡
- ガバメンツを、もっとたくさんの人に見てもらいたいです。シンプルですけど。なんせ一人でも多くの人に。
マニキュア
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持っていまいりました。つまらないものですが。
- 西岡
- ありがとうございます。開けても良いですか?
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- もちろんです。大したものではないんですが。
- 西岡
- プレゼントって嬉しいですよね。(開ける)あ、女性っぽい。
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- ハロウィン仕様のマニキュアですね。
- 西岡
- ありがとうございます。うわ、嬉しいです。ちょうど、マニキュアが足りなくなってたので。これ、キラキラするやつですよね。