演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

堀川 炎

演出家

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アトリエ劇研でのワークショップ

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願いします。
堀川 
お願いします。
__ 
京都へは、確かワークショップで何度も来られるんですよね。
堀川 
はい。11月は再来週14、15日。12月は12〜13、1月は4〜5にアトリエ劇研で開催します。
__ 
どのような内容なのでしょうか。
堀川 
今回やっているのは、本当に凄く基本的な事なんですよ。あまり普通のワークショップでは扱われないぐらい。例えば11月には立ち方について扱います。
__ 
姿勢の取り方という事でしょうか。
堀川 
実は、キレイな立ち方は俳優が自分で気を付けていても中々難しい事なんですよ。私は体が右に落ちているので、そのままでは客席にまでセリフを伝える事が出来ないんですよね。伝わらないから、言葉の力が弱くなる。
__ 
それは初めて聞きました。それは、シンメトリーである事が美しいという事になりますか?
堀川 
長台詞をばーっと言う時に体が左右どちらかに落ちていると言葉の伝わりが悪いと思うんです。左右どちらかに落ちていると、声のベクトルがずれてしまう。直接言葉を伝えるには、体をまっすぐにするのがベストだと思っているんです。それは片方の鼻が詰まっているだけでも変わります。だから、自分の体のどこがウィークポイントで、どこをまっすぐにしないといけないかを知る、というワークショップにしようと思います。
__ 
そうなんですね、そんな基本的な事をされるんですね。
堀川 
やっぱり20年・30年・・・と生きてくると、生活によって体がどこかに偏っていくんですね。
__ 
あ、そういう話は聞いた事があります。左にヴァイオリンを持ち続けたヴァイオリニストが、重心が左になって、楽器をもってやっとバランスが取れるようになったとか。
堀川 
そういうことを、参加者の方が指摘しあうワークショップにしたいと思っています。
世田谷シルク

2008年1月「15 minutes made vol.3」で旗揚げ。特徴は「踊る大人の絵本」。脚本・演出の堀川炎が考える芸術作品を行う団体。2009年より本格的に劇場で公演を行う。アングラや一律の会話劇でもなく、独特の照明と音響演出で美しい舞台を追求し、多人数のダンス群舞を得意とする。2010年、「第4回公演 渡り鳥の信号待ち」にて世田谷区芸術アワード”飛翔”舞台芸術部門賞受賞。(公式サイトより)

[model:unkei]

__ 
私が初めて世田谷シルクに出会ったのは去年の末でしたね。15 minutes made でした。あの時の作品、面白かったです。
堀川 
ありがとうございます。
__ 
先ほどワークショップの件で仰っていた通り、俳優がモノローグを言う時には客席正面にまっすぐに向かっていましたね。堀川さんにとって、俳優にそういう台詞の出し方を求めるのはどうしてですか?
堀川 
普通に台詞を言うのは面白くないなと思っていて・・・私は元々、山の手事情社という前衛的な作品を作るカンパニーに研修生として入っていたんです。だから演劇の面白さを追求する時に、普通は気付かない角度から考えるようにしているんだと思います。
__ 
なるほど。
堀川 
あの作品では他にも、背景に文字が流れたりとか出演者が懐中電灯で自分を照らしたりとか。会話シーンも、内面の吐露だけではなく、見せ方を色々工夫してた気がします。
__ 
確かに、会話シーンはあくまで構成要素として扱われていましたね。
堀川 
対話は本公演でもやるんですけど、ぱっぱと切り替わるような、身体表現やダンスがめまぐるしく変わる構成にする事が多いです。
__ 
ああ、だからちょっと不思議な感覚だったんですよね。映像アート作品をみている感覚がありました。
15 Minutes Made

東京の劇団・Mrs.fictionsによるショーケース公演。6団体がそれぞれ15分程度の作品を上演する。

夜の公園で

__ 
それから3月に震災がありましたね。
堀川 
その時もショーケース公演で、しかもウチの上演時だったんですよ。舞台に立っている俳優は気づかなかったんですが。
__ 
ええ。
堀川 
途中で上演を止めて・・・お客さんを外に出して、新宿御苑の公園に行って。上演中止になりました。でもその後7月に同じショーケースが企画されて、その作品の続きが出来たんです。でも、最初とは内容が変わりました。
__ 
『轟くヘヤー!!』ですね。 あらすじをHPで拝見しましたが、パチンコ店のお話だそうですね。
堀川 
はい。地震を受けて、あの時の色々を反映した作品にしたかったんですよね。節電中のパチンコ店という設定で。面白そうだと思ったんですよ。
堀川 
ありがとうございます。
『轟くヘヤー!!』あらすじ

朝、パチンコ店の前に行列を作って並ぶ男達。今日は80年代アイドル・エミリーユウナの新台が出る日。彼女はアイドル絶頂期に謎の引退をしているが、未だにそのファンは多い。店内では新しいバイトの面接が始まっていたが、やってきた夢見はエミリーユウナにそっくりで「弟を探すためにお金を貯めたい」と言う。そこで店長は採用を決める。オープンした客のフロアに夢見が現れると、男たちは本物のエミリーユウナだと思いこみ、熱狂的な声援を送るが夢見はとまどいを隠せない。やがて夢見が手をかざしておまじないを唱えた台が確変にはいり、玉があふれフロアを満たし、ついには裏モード「エミリーユウナの過去」に突入する。それはエミリーユウナがアイドルまでの軌跡を描いたダイジェストだった。その時、店長は店の隅でイカサマをしていた寺部を見つけ、問いただす。しかし彼はエミリーユウナは自分の姉で金持ちだからこんなことはやってないといい、事務所のテーブルにあった夢見の履歴書を見て自分の姉だといいはる。だが、夢見の年齢は20代、寺部は50近いことから、店長は取り合わない。そこへ夢見が帰ってきた。お姉ちゃんとすがる寺部。頭がおかしいといい寺部をつまみだした店長に、夢見はこう言った。「相変わらず髪ぼさぼさだったなあ、あの人、あたしの弟なんです。女は、いつでもアイドルでいたいんです。」 ♪ お部屋のなかで轟いて(ヘヤー) ♪ 髪振り乱して轟いて(ヘヤー) ♪ 全部がめちゃくちゃ轟いて(ヘヤー) ♪ いいも悪いも轟くヘヤー!! (公式サイトより)

笑える芸術

__ 
いつか本公演を見たいと思っていました、世田谷シルク。京都でも来年、公演されるんですよね。とても楽しみにしております。さて、これまで転機になった公演とは。
堀川 
あ、第一回から今までの全ての公演が転機です。
__ 
そういえば、HPに掲載されているチラシの変遷を見ると、毎回方向性が変わっているような印象を受けました。
堀川 
あえて言うなら4回目の公演で、毎回出て下さる役者さんたちがいなかったので不安もあったんです。だけど意外と、やったらできちゃって。
__ 
ええ。
堀川 
しかもすごく運のいい事に、世田谷区芸術アワード”飛翔”舞台芸術部門賞というのも頂けて。結局、ある意味凄く孤独な状態で作っていたのが逆に良かったのかもしれません。
__ 
ずっと転機だったという事は、方向性を固定せずに、公演を作る時にはその時の面白さを大切にしているという事ですか?
堀川 
私はまだ、自分の方向性を分かってないんですよね。毎回違うよね、と言われています。色んな事を試したいと思っているんです。それと、原作がある場合が多いので、毎回変わるのは自然なことかもしれません。
__ 
では、今後舞台を作っていく上で、どういうものが拠り所になるのでしょうか?
堀川 
本当は、エンターテイメントが好きなんです。笑える芸術を目指して活動中という事にしているんです。わははって。
__ 
なるほど。
堀川 
前衛的な演劇作りは自体は自由に出来るんです。山の手事情社でもやってきたし。でも、それだけではエンターテイメントにはいけないんですよね。ちょっといびつかもしれませんが、自分が今まで培ってきた技術を生かして、お客さんが心から笑えるような作品を作りたいと思います。

質問 井村 匡孝さんから 堀川 炎さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、京都ロマンポップの作曲家・井村さんから質問を頂いて来ております。重たい質問です。「1.ハンバーグがウリのお店に4、5人で入りました。みんなハンバーグを頼む流れになっていますが、あなたは今とてもカレーライスが食べたい。そのとき、あなたはどうしますか?」
堀川 
カレーライスを頼みます。あまりその時の空気を読まないので・・・食べたい時に食べたいものを食べたいですね。
__ 
素晴らしい。ちなみに井村さんはハンバーグにするそうです。
堀川 
えらーい。偉いと思う。
__ 
「2.演劇には本当にBGMは必要なのでしょうか?」ちなみに、井村さんは芝居の主役は俳優だと考えており、完全な添え物として作曲するとの事です。
堀川 
私はあまり、音楽をBGMとしては使わないですね。ダンスの曲としては使います。
__ 
というと。
堀川 
誰かが会話するシーンで、雰囲気を盛り上げる為に掛けるような使い方はしないですね。絶対この曲でなければならない、という曲を素材としてしか使いません。
__ 
なるほど。
堀川 
ダンスする時に、次のフレーズの8カウントでこういう演技をする、という使い方です。だから、その曲のメッセージがお客さんの耳に届いて、シーンが形作られるのが理想です。

COMME CAとANNA SUI

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
堀川 
これから定期的に、東京だけではなく京都でも公演をやれたらと思っています。
__ 
あ、いいですね。楽しみです。では、どんなお芝居を作って行きたいですか?
堀川 
「SF=すこしふしぎ」というコンセプトを掲げているんですが、そんな作品を作りたいですね。あと、男性はおしゃれな作品が苦手だと思うんですよ。おしゃれすぎず、でもスタイリッシュなものがいいんじゃないかなって思っています。
__ 
お洒落すぎず、しかしスタイリッシュな?何だか分かるような気がします。東京っぽい感じですよね!
堀川 
東京らしい作品って、私の中ではカットチェンジが多くて、パッパとシーンが切り替わるようなのを思い浮かべます。何かわかんないけど(笑う)、SFな感じで、都会っぽさを出していけたらと思います。
__ 
堀川さんの東京的な洗練さとは。
堀川 
コムサにアナスイを足したみたいな・・・ボーダーの世界にチョウチョを足したみたいな。
__ 
では、京都はどんなイメージですか?
堀川 
和ですね。今日も着物の女の子をたくさん見たんですよ。
__ 
私も今日見かけました。気合の入った感じのは舞妓さんなんだと思います。

かんさい絵ことば辞典

__ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。どうぞ。
堀川 
ありがとうございます。あ、本だ。えー、かわいい。今の私にピッタリですね。
__ 
絵が可愛いんですよね。
堀川 
これから関西、マスターしないと。
__ 
この本のいい所は、アクセントがきちんとついているんですよ。今の関西弁をよく表していると思います。
(インタビュー終了)