演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫
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カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、松原さんはどんな感じでしょうか。
松原 
宜しくお願いします。最近は元気です。毎日稽古をしています。
__ 
カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」ですね。フラッシュフィクションという形式の、短い作品が数多く次々と上演されるスタイル。とても楽しみです。どんな公演になると思われますか?
松原 
私、まだがっかりアバター さんの作品は見てないんです。今からすっごい楽しみです。今は自分の劇団の作品を作っていて、これをがっかりアバターさんの作品と合わせたらどんな感じになるんだろうと。
__ 
素晴らしい。どんな事になるんでしょうね。今回の公演の、意気込みを教えて下さいますでしょうか。
松原 
どうだろう、面白いものにしたいという気持ちはあります。超短編一つ一つどれも全く違う作品なんですが、丁寧に。でもはっきり切り替えていけるように。
__ 
丁寧なフラッシュフィクション。
松原 
確実にやっていくというか。一つ一つをないがしろにしないで、確実にやっていけば、一本通しで見た時に面白いものになっているんじゃないかと思います。
匿名劇壇

2011年5月、近畿大学の学生らで結成。旗揚げ公演「HYBRID ITEM」を上演。その後、大阪を中心に9名で活動中。メタフィクションを得意とする。作風はコメディでもコントでもなく、ジョーク。いつでも「なんちゃって」と言える低体温演劇を作る劇団である。2013年、space×drama2013にて優秀劇団に選出。(公式サイトより)

カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」

作/福谷圭祐(匿名劇壇)・坂本アンディ(がっかりアバター)・演出/福谷圭祐(匿名劇壇)・坂本アンディ(がっかりアバター)。公演時期:2014/11/7〜9。会場:SPACE9(スペースナイン) 阿倍野ハルカスウイング館9階。

がっかりアバター

結成2011年6月。主催の何とも言えない初期衝動からほぼ冗談のように結束。2011年6月vol.1『岡本太郎によろしく』2012年11月vol.2『啓蒙の果て、船降りる』(ウイングカップ2012受賞)2013年6月vol.3『俺ライドオン天使』(公式サイトより)

4年間

__ 
松原さんがお芝居を始めた経緯を教えて下さい。
松原 
元々、舞台に立つ仕事がやりたいなと思っていたんです。でもどう始めればいいのか分からないし、なかなか食べていけない道である事は分かっていたので、誰にもやりたいと言えませんでした・・・高校卒業時、大学に行くにあたって、やっと自分の道は自分で決めてもいいんじゃないかと思えるようになって。高校の時にジャズダンス部に入っていた事もあり、実技試験で入れる近畿大学の舞台芸術専攻に入学しました。
__ 
東さんと同じ部活だったそうですね。
松原 
そうなんです。お互い全然進路の事は話していなかったんですけど、後々聞いてみたら同じ大学の同じ専攻を受けてて。ビックリでしたね。
__ 
近畿大学に入っていかがでしたか。
松原 
自分達で一から作品を作る勉強になりました。あとは何人かとの良い出会いがありました。基本的には4年間自分達でやりたい事をやっていましたね。
__ 
匿名劇壇の旗揚げの経緯を教えて下さい。
松原 
上回生が1回生にスタッフワークを教える勉強会公演というのがあるんです。その上演作品に福谷が立候補して、それで出演者として声を掛けられたのが今の匿名劇壇の初期メンバーですね。福谷、芝原、佐々木、そしてあともう一人今就職しちゃった子がいるんですけどその子と、私の4人です。そこから次も公演やって、その次もやって、気付けば今に続いています。

匿名劇壇の魅力

__ 
東さんにインタビューした時、旗揚げに声を掛けられなかったと悔しく思ったそうですよ。
松原 
あの時は、たしか東は別の公演に参加してたんですよね。次の公演の時はすぐ声を掛けられてましたよ。
__ 
そうなんだ!個人的にホッとしました。では、匿名劇壇の前身としての最初の公演の感想を教えて下さい。
松原 
実は福谷がどんな作品を書くのかその時全く知らなかったんです。だから内心怖かったんですけど、渡された台本を読んだら面白くって。面白い作品だったし、刺激的な公演でした。毎日稽古場に行くのが楽しみでしたね。
__ 
公演後、どんな事を話しましたか。
松原 
特に何も話さなかったです。終わってしばらく経った日の授業後に福谷から「次また公演をやろうと思うんだけど、もし良かったら出てくれる?」と言われました。で、次も出た。みたいな。旗揚げしよう!という感じは全然なかったですね。
__ 
匿名劇壇の魅力を教えて下さい。
松原 
自分でやってるのでなかなか客観的には分からないですけど、私から見るとどの役者も素敵に思えるし、どの作品も面白い事です。本当に幸せな事に、今のところずっとそう思えています。

スベるのが怖くて怖くて

__ 
昨日、杉原さんに「いま、匿名劇壇で面白い役者は誰ですか」と聞いたところ、松原さんだと即答されまして。
松原 
おおーっ。
__ 
何故かというと、1回目の立ち稽古から面白い演技を提案してくるからだ、と。単に面白いんじゃなくて、その役として合っている、「分かってるなあ」と思わせる演技をされるという事でした。
松原 
それを私で思うとはかなり意外です。私そんなにアイデアマンでもないから、1回目の稽古嫌いなんですけどね。もう何にも出来ない状態から始まってるので、前半は苦しくて苦しくて。いやぁ、意外ですね。
__ 
なるほど。私が最後に松原さんを拝見したのは、「二時間に及ぶ交渉の末」 の時でしたね。ギャグが面白かったです。人質役のリアクション芸と、家電販売員のセルフノリツッコミが光ってました。
松原 
もうスベるのが怖くて怖くて・・・でもやってみると楽しかったですけどね。
LINX'S PRIME

公演時期:2014/9/27〜30。会場:TORII HALL。

とにかくやってみよう

__ 
松原さんの、最近の役者としてのテーマは何ですか。
松原 
最近は、とにかくやってみよう!というのがありますね。凄く。今、自分の中で芝居が凄く楽しくなっていってるんです。これまでは出来ない事だらけで苦しかったんですけど、最近は「出来なくてもいいじゃないか」ぐらいには思えるようになって。
__ 
素晴らしい。
松原 
人に嫌われたくなくて極度に自意識過剰だったのが、今やっと人並みに落ち着いてきたのかもしれません。失敗して嫌われてもいいやと思えるようになって、何でもやってみよう精神になったんです。すると、芝居ってこんなに楽しかったんだと思えてきて。出来ない事は山ほどありますけど。今は出来ない事は自分の伸びしろを発見したと無理矢理思うようにしています。
__ 
素晴らしい。では、今、注目している劇団員は。
松原 
これは全員ですね。本当に。最近になって入った新しい団員の存在もみんな面白くて注目しています。彼らが入って来たのが私自身のターニングポイントになったというか、正直凄く刺激を受けました。これからも、もっと盗んでいけたらなと思ってます。元々いる皆は、成長の幅が見えると焦りますね。うわぁ、あんな事も出来るようになったのか!みたいな。

質問 杉原 公輔さんから 松原 由希子さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、杉原さんから質問を頂いてきております。「良い役者とは」。
松原 
難しいなあ。相手役の方自身が(演技巧くなったな自分)と思えるような演技が出来る人かな。
__ 
というと?
松原 
相手役に気持ちよく芝居させてあげられる役者が良いんだと思います。
__ 
会話劇を例にすると?
松原 
相手役Bが怒るという芝居をしなければならない時、B自身が「怒る」に持っていくのではなく、気づいたら怒っていたみたいな。それが良い役者というか。Aの役者がコントロールしているという事なんですけど。相手が出したい音をこっちが引き出す、みたいな。
__ 
相手役が、怒っている事に気づかないぐらいスムーズに怒れる。そんなコントロール力。
松原 
という事はAの役者は、凄く怒らせる言い方が出来たという事ですよね。現象を生める役者が上手いなあと思います。
__ 
会話のキャッチボールの筋書きを把握して、逃さない人と言えるのかもしれませんね。
松原 
会話劇が凄く上手な人と演技した時って、自分もなんか上手になったような気がしてしまうんですよ。向こうが返してくれるし、自分が動きたいように動けるし、みたいな。
__ 
つまり、向こうがこっちの演技を理解してくれている、という事なのかな。
松原 
ゴール決めた人より、そこまでの道のりを的確なパスでアシストした人が、私は魅力的に見えるし重要に感じます。その人が蹴りやすい足元に、蹴りやすいタイミングでボールを出してあげれば、あとはもう相手役が思いっきり足を振り上げるだけでキチンとゴールできる。
__ 
そのシーンが必要としている内容とその為の文法を前もって理解している事が前提ですね。細かいレベルで言えば、その会話で出すべき答えにたどり着く道筋を内外から検証している事。もっと細かく言うと、会話ってものすごく微細な要素に分解出来るんですけど(例えば目の瞬きの角度とか目を閉じるテンポも表現の要素のパーツだし、相手のそれらへの注目/無視も重要な情報だし)。意外にそれはお客さんに響いていくんですよね。それらのやり取りが呼吸を劇場に呼び込んで、共感が生まれて、重なり合いが出来て。
松原 
うんうん。
__ 
それはめっちゃ難しいですね。
松原 
難しいですけど、それが出来ている人を見ると上手だなと思います。

私たちが作りあげたものについて

__ 
本番が上手くいく秘訣は何だと思いますか。
松原 
本番といえど、稽古と同じく一個一個確実に丁寧にやっていく事ですね。それが一番、私の中では上手くいく方法です。本番だからとテンションを上げて、ワッーとやってしまうと大変な事になるなと。そういう感じはしますね。
__ 
なるほど。
松原 
そういうので間を逃したりするので、冷静に着実に。稽古でみんなで作り上げたものを、そのまま持っていこうと思っています。

学びと私

__ 
いつか、こんな演技がしたいとかそういうのはありますか。
松原 
さっき言ったような自分が思う良い役者に近づいていければと思います。派手なタイプでもないし、華で人を引き寄せられる訳でもないので、技術を積み重ねていければと思います。技術で、行けるところまで行きたいです。
__ 
それは、近畿大学で学んだ事は役だってますか?
松原 
あ、役立ってる事もあります。近畿大学でやった芝居で今の私がある程度出来たと思います。大学を卒業すると誰かに教わる事はもうないので、まだまだいろんな人の演技を見て盗んだりしてもっと学んで行きたいですね。

芝居

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
松原 
ずっと演劇を勉強していきたい欲も強いですし、とにかく色んな経験をしたいという気持ちです。そうですね、もっと芝居したいです。いろんな人と芝居してみたいし。いろんな場所で芝居してみたい。自分の劇団以外で芝居した経験も少ないので、活動の幅を広げて行きたいですね。
__ 
がんばってください。
松原 
はい。ありがとうございます。

ハロウィン帽子のカチューシャ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
松原 
ありがとうございます。ご丁寧に。開けてもいいですか?
__ 
大したものじゃないですけど。
松原 
ドキドキする。(開ける)あー、可愛い!もうすぐハロウィンですからね。
__ 
ちょっと折れちゃってますけど、カチューシャですね。
松原 
ハロウィン用のアイテムが出来ました。毎年何もしないので。今年はこれを使います。
(インタビュー終了)