あの時の服
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。久しぶりですね。
- 紙本
- 久しぶりやなー。最初の時はもう何年前?
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- もう5年以上前ですね。
- 紙本
- あの時の服、まだ捨ててへんわ。あかんな。
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- ああ、ボーダーの。あれはよく似合ってました。
演劇演劇してない
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- 紙本さんは、最近はどうですか?
- 紙本
- 人生においてってこと?
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- そうですね。人生において。
- 紙本
- 舞台にたつ事ばかりを考えなくなったかなあ。他の事も結構ばたばた、忙しくなってきていて。前まではそうでもなかったんだけど、知り合いが増えて行く事が楽しく感じてるなあ。
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- 演劇ばかりの生活ではないと。
- 紙本
- 最近は一般企業とか、教育委員会とか、行政とかの方の知り合いが増えるねんか。そういう方にワークショップに参加して頂いたり、公演を見に来て頂く事が多いですね。
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- そういう人たちと仕事して、どういう時に手応えを感じる?
- 紙本
- 楽しいと思うのは、やっぱり「演劇って凄い」と言ってもらう時かな。俳優としてのパフォーマンスを観てもらって、刺激を受けてもらうのは嬉しい。そういう時にまず大切にしているのは、「笑い」を取る事かな。
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- なるほど。どんな感じで笑いを取っていく?
- 紙本
- 演劇人って、たいていいい加減と思われてるやんか多分。でも時に真面目に喋ってみたりして、「あ、意外にきっちりしてるな。ほ。」みたいな。
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- 意外性がね。
- 紙本
- で、パフォーマンスをして「あ、何かこの人やっぱり面白い人だな」、みたいな。いい加減な演劇人ときっちりした社会人の境目を狙ってるみたいな感じ?いい加減やから、ちょっと真面目にするだけで、まともに感じてもらえるだけかもしれへんけど。
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- そうですね。固い一般企業の人からしたら、ワークショップで演劇人のいい加減さに触れてみたいという気持ちはあるでしょうね。
- 紙本
- そうかもね。
最初の挨拶で
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- 初めて出会う人との仕事が多いと思うんですが、そういう場合、早く打ち解けるコツみたいなものってありますか?
- 紙本
- 衛星の名刺って結構ふざけてて、ファックさんの適当なイラストやねんで、でも社会人の人ってきっちりしてるから、「かわいいですね」って言ってくれるんやけど。
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- うん。
- 紙本
- 劇団のロゴとイラストの配色が変えれらるねん。私はピンクで、植村さんはオレンジだったかな。まあ、電通のマネやねんけど。
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- ふふふ。
- 紙本
- 「かわいい名刺ですね」って言われた後に、「自分の色を決められるんですよ。電通のパクリなんですけど」て。褒められた後にちょっと笑かすとか。このコンポタージュめっちゃ美味いね。でも、最初に会う人と打ち解けるのは毎回難しいな。
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- ちょっと緊張する人もいるかもね。
- 紙本
- うん。でもいつも勉強になるで。普通に仕事している人は、ホンマにすっごい面白いねん。ワークショップ、いつも盛り上がるねんで。
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- それはちょっと分かる気がする。
ユニット美人には愛が欠けている
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- 私が最後に見たユニット美人は、カラフル金沢 でしたね。大変面白かったです。
- 紙本
- 遠くまでありがとうな。ほんまに。
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- カラフルで他にプログラムは、coffeeジョキョニーニャと試験管ベビーだったんだけど。やっぱりユニット美人の技術力は抜きん出ていて、会場が魔術に取り込まれていたようだったんですよ。ああいう訳の分からない引力が、ユニ美にはあると思う。
- 紙本
- あの回はお客さんのウケが良かったと思う。会場が沸いてた。
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- うん。すごかったよ。それでもやっぱり、紙本さんの前で言うのはアレだけど、ジョキャニーニャはそれ以上に感動したんですよ。
- 紙本
- おお。
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- だって、凝ってないし、ストレートで、全照で、僕らが考えているイカした何かではない、けれどそこで培われた演劇の洗練された姿だったと思うんですよ。俺、静岡から出てなかったらああいう芝居を目指していたと思う。泣いたわ。
- 紙本
- 変に影響を受けずに、好きだから演劇を続ける!って感じがしたね。ストレートやったな〜。「砂糖風呂一本で一時間いけるんやな〜」黒木さんと話題にあがったよ。
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- そうそう。これからも、ショーケースとかでもユニット美人が見られたら嬉しいなあ。
- 紙本
- そやね。条件を合わせられなくて断ったりした事もあったけど、ユニット美人を知って貰えるいい機会やもんね。ありがたいよね。今後、増えていけばいいと思う。
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- そうですね。本公演も楽しみです。
- 紙本
- うん。・・・色んな人から「もっと見たい」と言ってもらってて。頑張らなあかんとは思ってんねんけどな。いかんせん、面白いだけだったり作品を作りたいだけじゃあかんなというのが身にしみて分かるよね。
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- というと。
- 紙本
- 企画をプロデュースする為の時間と、愛がないとね。
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- 愛!
- 紙本
- 愛! ユニット美人には愛が欠けている気がする。
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- 本当ですか。愛とは、どういう意味での愛? いや、分かる気がするけど。情熱ですよね。
- 紙本
- 情熱かなあ・・・難しい話になるねこれは。
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- 決意と愛ですね。
カラフル〜金沢ラウンド〜
公演時期:2011/09/17〜19。会場:金沢市民芸術村。
エール
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- 次は。
- 紙本
- gate で、「スルわたし、サレるわたし、企画」 やね。
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- あ、朝平陽子さんとやってるやつですね。朝平さんは面白いよね。ユニット美人じゃないけど、ユニット美人を体現してると思う。
- 紙本
- そやね。朝平さんは面白いし、ユニット美人の事を好きでいてくれるのが嬉しい。今度は、朝平さんの台本です。
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- そうなんだ。どんな話になるのか。
- 紙本
- 人が書く台本、緊張するなあ。自分がやってて、これで合ってるかどうかわからんしな。そういうのが緊張するよね。
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- 前回は紙本さん作でしたね。面白かったです。一人の女性がおめでとうを言えなくなる話。
- 紙本
- ありがとう。結構みんなに褒められたんです。死ぬほど大変やったけど、乗り越えた先の手応えというのは得難いものがあるね。実はな、妹に向けたメッセージがあるねん。
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- そうなんだ! どんなメッセージが。
- 紙本
- うちの妹な、すっげー真面目やねん。でも目標とかを持って生きているタイプじゃなくて。そういう部分がイライラするというか、素直に接てあげれないというか。
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- なるほど。
- 紙本
- 「お姉ちゃん(私)が実家に帰ってきたら、やいやい言われる」みたいになってて。いつも、思ってないのに「あんたもっとしっかりしいや!」って。いつも、酷い事を言ってしまってるなあと思いながら酷い事言ってるねん・・・。そんなもやもやした気持ちをぶつけた芝居やったね。妹、見に来てへんけどな。
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- でも、妹さんへのエールでもあるんでしょう。伝わっているといいですね。
- 紙本
- せやね。
カラフル〜金沢ラウンド〜
KAIKAがプロデュースする短編連続上演企画。KAIKA本公演前のトライアル上演としての位置づけでもある。イベント終了後にはワークインプログレスの一環として、併設のギャラリースペースAKIKANにて「カフェ」という意見交換会を開きます。(公式サイトより)
「スルわたし、サレるわたし、企画」
紙本明子/朝平陽子。一人芝居の作演出・出演をそれぞれが担当し、一つの作品を二人で交互に演じる。
質問 三國 ゲナンさんから 紙本 明子さんへ
形態模写
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- 紙本さんの大きな武器はアレですね。形態模写が面白いよね。門脇さんから、一度も見たことの無い少年王者舘のモノマネを、ほんの少しの演技指導だけで再現出来たとか聞いてます。
- 紙本
- あー。身近な人のものまねがやっぱり得意やね。清水さん(デザイナー)のモノマネとか、門脇君に褒められたんですよ。
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- 何故、そんなに上手なんでしょうか。
- 紙本
- 揚げ足取りやからと思う。人の揚げ足を取ろう取ろうと、常にアンテナを張ってるから、その人が恥ずかしいクセを瞬時に読み取ろうとしてしまうんやね、本能的に。意地悪やねん。
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- なるほど。私のベストは奈木野さんのモノマネだなあ。
- 紙本
- そんなんしてたっけ(笑う)。忘れたわ。あ、昔のバイト先のトダ君のモノマネが得意やで。大爆笑やった。髪型ばっか気にしてる子で、こうすんねん。
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- (爆笑)・・・紙本さんのモノマネの面白さは、多分演技中の(無表情に近い)真面目さがこちらの想像力をかき立てるからだね。
- 紙本
- その人の顔になりきっているつもりでおるからな。
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- 能で言う、固定された表情が不意を付いて、それで面白さがいきなり湧き出る感じなんだよなあ。
- 紙本
- 芝居を観に行って面白かった時も、これは黒木さんに伝えなければ!って思って、事務所でモノマネしてます。逆につまんなかった芝居は、全くそう思わないな。感動した時はモノマネポイントがわっと出てくんねん。
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- 愛だな。
送り出してくれるような本番
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- 今後、紙本さんはどんな感じで攻めて行かれますか?
- 紙本
- 一番楽しいのは本番の時やから、本番の機会を沢山増やしたい。でも、何でもかんでも舞台に上がるというのじゃなくて、劇団が認めてくれて送り出してくれるような本番をいっぱいやりたいなと。誰かに迷惑を掛けてやるようにはしたくない。
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- なるほどね。
- 紙本
- それが集団としてやっていく事の大変さやけど。極力、周囲に認められるように活動をしていきたいなと思います。関わってくれた人にもっと観てもらえたらと思います。
フットワーク
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- ユニット美人は、京都にあってどんなポジションの存在でありたいですか?
- 紙本
- 黒木さんはどうか知らんけど、京都はあんまり意識してないかな。別の地域に行って上演する事が増えて、「京都から来た」って紹介される事が多くなって。思うのは、京都の芝居ってこんなんかって勘違いしてもらえたら嬉しいな。
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- なるほどね。
- 紙本
- 京都って恵まれてるやん、多分東京の次くらいに。色んなお芝居が見れるし。その環境をふんだんに取り入れた集団でいたいね。うん、フットワークが軽い存在でいたいです。
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- いや〜、ユニット美人は京都らしい芝居すると思うけどなあ。
- 紙本
- あー。
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- 質的に完璧なパッケージを目指すのではなくて、確からしい演技を追求していく感じ。
- 紙本
- うん。ちょこっと目的がズレている感じというかね。
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- その結果、カッコ良くなるとかさ。その辺が何か、らしい気がする。
耳あて
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
- 紙本
- 今日な、誕生日やねん。
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- えっ。マジで。そういえばそうか。ごめんごめん。
- 紙本
- いえいえ。誕生日プレゼントやなー。
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- どうぞ。
- 紙本
- おっ。これは耳あてだな。可愛い。ありがとう!サイズもピッタリだよ。
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- 良かった。似合ってます。