KUNIO「更地」
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。武田さんは、最近はいかがでしょうか?
- 武田
- 最近は、KUNIOの稽古とマレビトの会 の稽古に参加しております。並行して沢山の作品に関わるのが難しくて。両方セリフを覚えたりするのが得意な方ではないので、でも、どちらにも関わりたいので。ジレンマが。
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- 一つに没頭し切れないという。
魚灯
関西で活動している劇団。(詳しくは公式ブログ。)
KUNIO
杉原邦生が既存の戯曲を中心に様々な演劇作品を演出する場として、2004年に立ち上げる。俳優・スタッフ共に固定メンバーを持たない、プロデュース公演形式のスタイルで活動する。最近では、杉原が2年間務めた“こまばアゴラ劇場”のサミットディレクターの集大成として、初めて既存戯曲を使用せず構成から杉原自身が手がけた、KUNIO07『文化祭』や、上演時間が約8時間半にも及ぶ大作『エンジェルス・イン・アメリカ』を一部、二部を通して上演するなど、その演出力により戯曲はもちろん、劇場空間自体に新しい風を吹き込むことで、作品を生み出している。(公式サイトより)
【KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム】 杉原邦生/KUNIO KUNIO10『更地』
公演時期:2011/9/27〜30。会場:元・立誠小学校 講堂。
マレビトの会
2003年、舞台芸術の可能性を模索する集団として設立。代表の松田正隆の作・演出により、2004年5月に第一回公演『島式振動器官』を上演する。2007年に発表した『クリプトグラフ』では、カイロ・北京・上海を巡演するなど、その活動は海外にも広がる。非日常の世界を構想しながらも、今日におけるリアルとは何かを思考し、京都を作品製作の拠点として創作を続ける。主な作品に、『島式振動器官』『クリプトグラフ』『声紋都市ー父への手紙』『PARK CITY』『都市日記 maizuru』などがある。(公式サイトより)
マレビトの会 「アンティゴネーへの旅の記録とその上演」
- 武田
- 一つの作品でいっぱいになれて、純粋に一つの作品だけを考えられたらいいんですけど。(どちらか一方のお稽古なり本番なりを行っている時)片方をほったらかしてしまっているような罪悪感が・・・。
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- マレビトの会。もう始まっているんですよね。
- 武田
- そうですね。8月から始まっているんですが、ネット上と路上で公演していて。ブログやtwitterで更新して、お客さんがそれを読みつないで物語を構築していくんですね。登場人物は、福島で盲目のひとりのお客さんの為に【アンティゴネー】という作品を上演したいと言う演出家とその劇団のメンバー。その劇団員のひとりに一目ぼれして、自分の書いた【アンティゴネー】を上演してほしいと願う青年、東京の恋人たちとその同僚など。彼らのブログに、例えばミーティングの日時と場所(=上演がある時間)が紹介されていて、そこにお客さんも行ってそれを見るとか。私も、始発の電車から降りてくる恋人を待つという路上の公演を行いました。
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- 面白そうですね。どのような公演だったのでしょうか。
- 武田
- 高円寺で。他の女の人と一緒に電車から降りてきた彼氏を見て、絶叫するという。
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- へえー!よく捕まりませんでしたね。
- 武田
- 一応、お話は通してあって。一般の何も知らない人もいる中で。スタッフさんも側にいて何もならないようにして下さったんです。お客さんが側まで来て、私の演技(台詞など)を観察して公演だって確信したり(上演テキスト(台詞など)は事前にサイトにアップされている)。そういう様子も伝わって来ます。事前にテキストなどをチェックしていない人は近付かなければ声も聞こえないわけですから、何が何だかわからないシーンもあるでしょうが。
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- ありがとうございます。私もチェックしたいと思います。
- 武田
- 私はブログは書いてないんですけど、他の人達凄いんですよね。もちろん登場人物たちの名前で書いているんですが、視点が凄い、俳優で作家で演出家であるかのうような文章なんですよ。こんな人いるよね、って思うぐらい。
マレビトの会 「アンティゴネーへの旅の記録とその上演」
公演時期:2012/8〜。会場:インターネット上・日本各所。
演じること、関係性
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- KUNIO「更地」もうじきですね。いかがでしょうか。
- 武田
- 時間が欲しいですね・・・!邦生くんはいつも忙しくて、いろんなお仕事をする中、出演者の多い作品も仕上げているので、二人芝居と言うのもあって、今予定してるお稽古時間で充分仕上がると思っていると思うんですが、私は時間が欲しいなと。
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- というと。
- 武田
- 「更地」には戯曲として、確固としたものがある作品なんですが、邦生くんは、元々初老の夫婦の設定で書かれてあることもあり、出演者の見栄えに無理もあるし、設定そのままのテンポや出力方法にしたくないと。太田省吾さんの作品を大切にしながら、そこを離れてKUNIO式にしたいと。そこが難しいですね。一応、作品としてはポップカルチャーにしたいんですが・・・。
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- なるほど。
- 武田
- 私がポップではないので、どうかなあ?って。時間がもっと要るんじゃないかしらん。とにかく元気に行かなきゃなと。相手役の大窪君もとにかく若いので、老夫婦の会話にどれだけ新しい解釈を与えられるか、を探って行きたいです。夫婦役として、お互いに頼り合うような関係性を作れたら。
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- 期待しております。
- 武田
- 『更地』は太田さんが私の卒業した大学の先生であったこともあり、いつもより、同じ学科卒の人からも気にかけてもらえています。また、杉原邦生くん演出の評判が良いのか、東京から青年団の友達とかからも稽古場に見学に行っても良いか?と言われて驚いています。
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- 関係性。大切ですよね。KUNIOの「エンジェルス・イン・アメリカ」 の時も、共演者同士の関係性がかなり重視されていたように思います。「更地」でも、そうした親密な関係になるのにハードルがあるのかなと。
- 武田
- そういう事を考えると、掛け合いの時以外の空気が必要なんですよね。テキストは一切変えないので。二人の歴史を感じさせるような関係を成立させないと、落ちてこないセリフが結構あるんです。邦生くんも含め、3人の間で最初からどこか理解し合えていない部分があって。例えば私だけ古風な戯曲の読み方をして、暗いとか思われたり(その場はアハハってヘラヘラしてましたけど、へこんでました)。
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- なるほど。
- 武田
- 出演者の方は、俳優同士がどうであれ、本の中の役割がどうであれ、その役になれれば関係性が保てるところはある。でも、邦生くんの作り方は、本はテキストで、作家の世界で邦生くんが好きな部分・中心軸を残して、他はちょっと若者にも見やすく崩しちゃおうぜというスタンスなんじゃないかなと。今のところ勝手にそう解釈しています。
KUNIO09『エンジェルス・イン・アメリカ』
公演時期:2011/9/23〜25(京都)。2011/10/20〜23(東京)。会場:京都芸術センター講堂(京都)。自由学園明日館講堂(東京)。
感覚が広がって・・・
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- 武田さんは京都の劇団、魚灯のメンバーなんですよね。
- 武田
- はい。
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- 私、魚灯の作品を見るのは結構怖いんですよ。
- 武田
- あら。
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- モノローグなんて一つも出てこないのに、会話シーンだけなのに、いつの間にか人間の深部を覗き込むような気分になっているんです。つまり、自分の奥底を見ているような。
- 武田
- そう仰って頂けると嬉しいです。例えば、最新の作品の「着座するコブ」。
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- あれは面白かったです。後半の、世界の解釈が変容する感じがいいですね。
- 武田
- そうですね。山岡としては珍しい、お芝居だから出来る展開だったと思います。作家、演出家としての山岡は本当に厳しいんですよ(笑う)。自分の作品にずっと不信感を抱きながら、本番まで諦めずに改訂をし続けるんです。私にしても、安易な、自分の範囲内で作った芝居(演技)は必ず見破られるんです。
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- なるほど。
- 武田
- 魚灯は山岡の作演出なので。出来上がらない状態だったらそのシーンはカットするぐらいストイックです。毎回すごくしんどくて、ハードルが高くて。終盤乗り越えられなかったり間に合わなかったり・・・でも、公演ごとに自分の領域を広げてくれる環境でした。他のメンバーも向上心のある先輩だったんです。背中を追いかけるじゃないですけど、特訓してもらったり。
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- 武田さんは、俳優として今までどのような目標を持っておられましたか?
- 武田
- 今もなんですけど、色々なジャンルのお芝居に出られるような俳優でありたいと思っていました。やっぱり色々な経験を持たないと、幅は広がらないって。私、演出家さんが「これをやってみて」と言われないと、初めからあえて極端な事はしないんですね。演出家が強烈なイメージを持っていて、例えば「断末魔を上げて」「踊って」「狂って」とかイメージとともに言われると、感覚が広がって極端な事も想像範囲内になる。
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- なるほど。
- 武田
- たくさん現場を経験させて頂いて。松田正隆さんのように信頼出来る演出家の方にも出会う事が出来ました。
質問 小林みほさんから 武田 暁さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、小林みほさんから質問を頂いてきております。「稽古は楽しいですか?」
- 武田
- はい。楽しいです。
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- 「他の現場とどう違いますか?」
- 武田
- 若い演出家の人とやるのが久しぶりなんですよね。だいぶ上の年代の人とやっていたので、経験の絶対量が多いし、自分の世界を持っているんですね。邦生くんにもそれを期待させてもらっています。邦生くん、知らない世界にどんどん飛び込んで行くタイプなんです。今のところは、リズムを最重視してる感じがあるなと思っています。絵やテキストよりも、リズムを。
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- そうしたやり方が、骨太の戯曲と出会って、誰も知らなかった価値を発見出来ればいいですね。
- 武田
- そこの足を引っ張らないように。
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- (笑う)
- 武田
- そこなんですよ、彼のやり方が成功するもしないも、私達に掛かっているんですね。あと、彼はものすごい量の仕事をしているんですが、スタッフさんもどんどん仕事を進めていかれる・・・彼のアイデアよりも先に道具が揃っていくんですね。「先に動いて下さい」って。
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- 彼は舞台美術家でもありますからね。どんなセットになるか楽しみです。
期待に応える
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- これまでの目標と、今後の目標を教えて下さい。
- 武田
- 今後となると本当に難しいなって。続けていけるかどうか分からないので・・・。いま携わっている企画に出来るだけ迷惑を掛けないように終わりたいですね。いま、素晴らしい人達と作品作りをさせて貰っていて。みんな、ベタベタしない割に助けてくれるんです。こんな人達が、よく私の相手をしてくれてるなと。
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- なるほど。
- 武田
- 認められていて、人生を楽しんでおられる方たちがよくも私を誘ってくださって。その期待に応えられればなと。
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- ごく個人的には、武田さんがずっと芝居を続けていられればいいなと。ご自身のペースで続けられればいいような気がしています。というか、武田さんみたいな色々なテキストを備えた方が辞められるというのは考えられないですね。
- 武田
- あんまりネガティブな事は言ったらいけないとは思っているんですが・・・。すみません。
オリーブオイルの石鹸
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- 本日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
- 武田
- 私、すみません・・・開けてもいいですか?
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- もちろんです。
- 武田
- あ、これ。モロッコの石鹸? このお月さんのロゴが可愛いですね。
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- オリーブオイルを原料とする石鹸だそうです。