美学
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、為房さんはどんな感じでしょうか。
- 為房
- 最近はですね、5月に劇団ZTONの本公演「天狼ノ星」 、6月に客演した笑撃武踊団さんが終わりまして。それからはしばらく稽古がひと段落していたんですが、ちょっと仕事でまた東京に行くのでその準備に追われています。
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- というと。
- 為房
- 戦国BASARAのイベントなんですけど、その準備ですね。
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- 実は、戦国BASARAに為房さんがでている事は知っていました。拝見はしていませんが・・・
- 為房
- あ、そうなんですか。これで4本目くらいになるんです。僕は役についている訳じゃなくてアクションチーム、つまり斬られ役なんですけど。普通は、斬られ役って本来は目立たないみたいな事を思われてるんですが、結構随所随所で悪ふざけする人も多くて。
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- 素晴らしい。
- 為房
- 影響の無いところで勝手に階段落ちしてたりとか。自分達の出番が無いところはただ待ってるだけなので、勝手に斬ったり斬られたりしてますね。普通はNGと言われるんですけど、結構・・・。
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- そういうのはお客さんも楽しいですよね。
- 為房
- そうですね、リピーターのお客さんが多いので、「あ、あそこであんな事やってる!」って見つけて貰えたりして。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(公式サイトより)
劇団ZTON「天狼ノ星」
公演時期:2013/5/9〜12。会場:京都府立文化芸術会館 。
劇団ZTON「天狼ノ星」を終えて
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- 天狼ノ星を終えて。ZTONの傑作として記憶に新しいですね。大変面白かったです。私の考え方だと、傑作って作品だけではきっと成立しなくて、客席も含めた劇場が置かれている時代背景がかなり影響していると思うんです。そうして初めて演劇は必然性を持って現在の我々の前に現出しうるのではないか。天狼ノ星は、多文化共生社会の到来と東アジアとの国際関係に悩む現代日本を背景に、他国の国民とこれから向き合うであろう世代の横顔を、ループ状の物語構成を借りた演劇作品として鮮やかに表現されていました。もちろん芝居としても非常に完成度が高く、素晴らしい演劇になりました。為房さんは、一人の役者として、どのような経験でしたか?
- 為房
- ありがとうございます。お芝居を作るにあたって何が一番大事かって、話が一番大事だと思っていたんです。僕が何かお芝居やパフォーマンスを見る時、やっぱりお話を見るんですね。脚本家が書いたものの起承転結がきちんと魅せられるか。そこに徹するあまり、自分が演技をする時も「色がない」「安定感が凄いよね」「もっと余分な事をすればいいのに」と言われる事があって。
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- そんな事を言われますか。
- 為房
- 安定はしているけどね、って。でも今回に関して言えば、早い段階で稽古が回ってこなくなって。つまり殺陣指導をはじめ稽古を見る時間や、自分自身のプラスアルファを考える機会が多かったんですね。さらに、団員の平均年齢があがるにつれ、僕が、絶対的に話を魅せる側に回らないといけないと自覚したんです。地の章では割と、一本の柱としての役なので、もっと我を張らなくてはならないと。今までは誰がメインなのかによって、そこに意識を集中させるために考えて、それはもちろん大切なんですけど、その中でも我を持つようになったというのが個人としては大きい変化でした。
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- 話を律する立場を意識するようになった。
- 為房
- そうなるのが遅すぎると言われそうですけど。ホントに極端な事を言うと、話が壊れてもいいから僕が目立てばいいかなというぐらいの気持ちになった、というのが大きいですね。
「当たったら死ぬ」
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- 今回、ZTONの殺陣では「当たったら死ぬ」という作り方をしていたという事で。大変迫力を感じました。ただし、地の章でレストランまさひろさん演じるセタだけは押谷さん演じるユクに斬られまくったのにも関わらず生きてましたね。
- 為房
- 面白いのは、台本に「セタの死骸」ってト書きされてたんですよ(笑う)
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- 数シーン後には、天の章で裏切った親友ハクトの決闘を応援するという超燃え展開がありましたね。やはりジャンプ読者としては強さ議論が気になりますよね。稽古場でも盛り上がったそうですが。
- 為房
- ツイッターでも強さランキングを書いて下さいましたよね。やはり、自分の役はどんな強さがあるのかとか、相性とか得意武器とか。僕なんか最初はものすごく弱かったのに、ライバルが現れたら強くなったり。でも難しいですよね、稽古を見る立場という事を考えると・・・。アクションが出来る立場だし、出来る殺陣を作らないとZTONとは言えないし、そこが強みだし。
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- そうそう、あの世界の時空を越える神・レタルのビーム攻撃が当初の構想にあったそうですね。とても見たかったです。
- 為房
- (笑う)実際にあったら凄いでしょうね。
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- さっきまでチャンバラしてたのに、今度はビームを相手にしないといけないという。
- 為房
- 熱いですね。
意図
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- 天狼ノ星で印象深かった殺陣。地の章で、森さん演じる鷹の王ニソロが弓と刀の二刀流で戦った時、ニソロが倒した敵の背中に刀を突き立てて、しかも背中に足を載せて、弓をつがえて離れた別の敵を攻撃してたのが物凄くカッコ良かったんですよ。あれ、倒れてる人が協力してましたよね?
- 為房
- そうですね。してないと出来ないですね。
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- 刀を脇に挟んで、真っ直ぐ立てていました。大変キレイでした。あれは素晴らしかったです。
- 為房
- アレは森君が考えた筈です。僕と河瀬さんがアイデアをちょっと吹きこみつつ。背中に足を載せるのは僕のアイデア、刀と弓矢の二刀流にしたのは河瀬さんのアイデアですね。
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- 素晴らしかったです。為房さんが思い入れのある殺陣はどれでしたか。
- 為房
- 自分の個人戦よりはアンサンブル戦ですね。集団戦が好きで。槍で狼の軍と戦う時。槍を使うのは初めてだったんですが、思いっきり振らせてもらいました。良い意味で自分勝手にやらせてもらえたのは貴重でした。それから、自分がアイデアを出したシーン。シュマリ隊長が死ぬ瞬間をいじらせてもらいました。セタの前で隊長が槍に貫かれるんですが、その切っ先がセタの目の前に来るようにしてもらったんです。そういう、ドラマのある立ち回りの一枚絵にはこだわっています。
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- 切り結ぶだけじゃなくて、ドラマがある。
- 為房
- 何て言うんですかね、ただキレイでカッコイイだけじゃない、人の感情が動く殺陣が僕は好きですね。
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- それは、ある種、殺陣こそが行ける領域なんじゃないかなと思うんですよ。身体の動きに物語がまとわれる訳で。抽象的なダンスだと意味に揺れが生じ、演劇的所作だと現実が近くなる。
- 為房
- 普通の立ち回りだけだと、慣れてくるんですよね。目が。最初は刀でガンガンと打ち合わせていてもいいんですが、慣れてきてしまうと、具体的な意図がないと見続けられなくなるんです。感情的な動きでなくても、彼らの行動に理由付けが見えると、それだけでお客さんには強く伝わると思うんですよ。例えば何かの事情があって刀を使わずに斬り合っていて、別の事情と理由が生じて投げ渡された短刀で相手を斬れる、とか。ただ刀を振っている訳じゃない、というのが伝わるのが、ZTONの個性に繋がると思っています。
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- 有効な筋立て、という事ですかね。物語、殺陣の組立、それらを組み上げる演出が咬み合って、それでようやく見応えのあるものが出来るんだと思います。
ざわつく
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- 為房さんがお芝居を始められた経緯を教えて下さい。
- 為房
- 高校の演劇部からですね。運動部で体育会系という訳でもなく、文化部でもなく。でも、二つを兼ね備えた感じが真新しかったんでしょうね。それで演劇部に入ったのが始まりで、そこでの経験が楽しかったのが今に繋がっているんだろうなと思います。
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- いつか、どんな演技がしたいですか?
- 為房
- そうですね。僕の演技で拍手がしたくなるような、そんな演技がしたいです。BASARAの舞台に出させてもらったとき、カーテンコールで拍手をもらうんですよ。お客さんみんなが立ち上がりそうなほど感動していて、拍手をしていて。ただ、これは僕へじゃないな、という感じがすごくして。公演が終わって「成功だねえ〜」というムードなんですけど、僕は悔しくて。落ち着かない気持ちになりました。それを出来ればZTONで、あわよくば僕に拍手がしたくなるような演技がしたいです。もちろん演技だって好き好きですからね。笑いが好きな人もいれば感動させる演技が大事だという人もいるし。
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- なるほど。
- 為房
- どこに残っても良いので、心を打って、感動して拍手したくなるような演技がしたいです。
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- 分かりました。観客が特定の役者に拍手したくなる時ってどういう事だろう・・・?きっとそれは、周りに合わせた拍手ではなくて、単に面白い演技を見せてくれたから、でもないんじゃないかと思うんですよ。
- 為房
- はい。そうですね。
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- きっと、その役者から何かを受け取ったら、それでようやくその役者に返す拍手になるんじゃないかと思うんです。それはもう、役の演技でも何でも。だから、役者がお客さんに渡すものをきちんと持って行かないと駄目なんだろうなと思うんですよ。何か持っていければいいですよね。小さな役でも関係なく。
- 為房
- さっきの立ち回りの話じゃないですけど、どこかで目に止まればいいなと。目に止まった上で心に止まらないと、拍手したいという気持ちにならないというか。
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- そうですね。
- 為房
- 初見のお客さんは、僕らの名前なんて分からないですしね。役の名前でしか認識出来ないんです。何だったら、役の名前すら覚えてないかもしれない。それでも見せ場でお客さんが感動するのは、台本上のプロセスを一つ一つ大事に押さえてこれたからなんですよね。与えられたストーリーを消化して、舞台上の時間で押さえていくというのがいい役者だと思うので。伝える事、表現力の強さを磨いていきたいと思います。
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- 台本を一つ一つ押さえるから、それは物語になる。物語に登場する人物は、いつか重みをもって舞台の上に存在する。
- 為房
- 何だったら、もうじき読み終わる小説のページをめくるときのあの「もう終わってしまう」という焦りと興奮感。それをお客さんに持って帰って貰いたいですね。
奥底
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- ZTONの次回作について。
- 為房
- ZTON下半期としては、かなり数は多くなりそうです。でも、お仕事関係、イベント関係の活動になりそうです。次回作としては、河瀬君自身も気づいていない心の奥底に眠っている作品になるのかなと。僕個人は、これまでいわゆる歴史物で来て、今回初めてのオリジナル物でしたので、さあ次どうなる、という感じですね。
質問 石田1967さんから 為房 大輔さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた石田1967さんから質問を頂いて来ております。「劇団ZTON MK?みたいな派生ユニットは作らないんですか?」
- 為房
- 石田さん・・・!そうですね、僕は、作りたいとは思わないですね。
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- というと。
- 為房
- 僕の中に、演者としての欲はあっても、団体を持ちたいという欲は今のところないです。自分の世界を作りたいというのが無いんでしょうね。土肥君はMk?でしか出来ない事をやってたと思うんですが。僕は、お芝居の中の振付のパートとして、そこで見せたい世界を作りたい、磨きたいというのは強くあります。ユニットを組んで・・・というのは、まだ無いです。
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- 直に出てくるとは思いますけどね。
- 為房
- そうですね。
武器
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 為房
- 演劇人として、ですよね。武器を増やしたいですね。
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- なるほど。
- 為房
- やっている事の特性上、つまりアクション系のお芝居に関わる事が多いと、(演技はもちろんなんですが)やはり色んな引き出しを持っていらっしゃる方が・・・。僕もZTONで沢山得てきたものはあるんですが、まだまだ。そういったものを得ていく事で、「僕はこれが出来ます」と言えるようになるんです。それが沢山ある人が、現場を勝ち得ていくんですよ。
風鈴・蕎麦焼酎・猪口
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- お話、ありがとうございました。今日はお話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
- 為房
- ありがとうございます。
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- どうぞ。これ、アレルギー無いといいんですけど。
- 為房
- (開ける)あっ・・・僕、蕎麦アレルギーなんですよ(笑う)
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- うわ!大変申し訳ございません!
- 為房
- いえいえ、全然駄目じゃないですよ。あと、お猪口ですね。それと風鈴。どっちも凄く欲しかったんですよ。
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- 風鈴の方は音で選びました。お猪口は涼しい見た目ですが、冬も使えます。