演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

森口 直美

脚本家。演出家。女優

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春先の暑い昼 1

__ 
今日はパプリカン・ポップの森口直美さんにお話を伺えます。どうぞ、よろしくお願いします。
森口 
よろしくお願いします。暑いですね。
__ 
何でこんなに暑いんでしょうね。
森口 
春一番が吹いたからじゃないですか。
__ 
いえ、まだ夏が終わってないからかも。
森口 
ああ、そうなんですか。
__ 
私の中ではですが。7年前の夏から、まだ色々な事が続いている気がしています。
森口 
長いですね。いつ終わるんですか?
__ 
分からないです。
パプリカン・ポップ

大阪を拠点に活動している演劇ユニット。代表:森口直美。

春先の暑い昼 2

__ 
森口さんは最近、いかがでしょうか。
森口 
この間パプリカン・ポップの本番が終わって。次は石原正一ショー さんに客演させてもらうんですけど、その準備期間です。
__ 
「筋肉少女」 ですね。
森口 
4年前 の作品の再演ですね。前回は私、ウォーズマンの娘役でした。
__ 
それを見ていました、というか、私は舞台での森口さんを以前からよく拝見していまして。ピースピット とか。でもその石原正一ショーの森口さんは特別印象的だったんですよ。あんなポーズで空中を一瞬飛んだじゃないですか。一瞬とはいえ、あんなポーズで。
森口 
ありがとうございます。このお茶、おいしいですね。飲みやすい。苦くもないし。
石原正一

演劇人。石原正一ショー主宰。1989年、演劇活動開始。1995年、"石原正一ショー"旗揚げ。脚本演出を担当、漫画を基にサブカル風ドタバタ演劇を呈示。関西演劇界の年末恒例行事として尽力する。自称”80年代小劇場演劇の継承者”。外部出演も多数。肉声肉体を酷使し漫画の世界を自身で表現する"漫画朗読"の元祖。"振付"もできるし、”イシハラバヤシ”で歌も唄う。(公式BLOG『石原正一ショールーム』より)

ピースピット

劇団「惑星ピスタチオ」(2000年解散)に所属していた役者・末満健一により、2002年に旗揚げされた。特定のメンバーを持たず、公演毎に役者を募る「プロデュース」形式にて、年1〜2本のペースで公演を行う。作品的な特徴としては、作りこまれた世界観、遊び心に満ちた演出ギミック、娯楽性を前面に押し出しつつ深い哲学性に支えられたストーリーなどが挙げられる。作風は多岐にわたるが、「街」などの外界と区切られた括りの中で物語が進行されたり、終末世界が舞台となることが多い。また作中に必ず「猫」が登場することも特徴のひとつとして挙げられる。(wikipediaより)

第27回石原正一ショー「筋肉少女」

公演時期:2013/5/1〜3(東京)、2013/7/5〜8(大阪)。会場:こまばアゴラ劇場(東京)、in→dependent theatre 1st(大阪)。

石原正一演劇生活20周年記念 第20回石原正一ショー「筋肉少女」

公演時期:2009/9/14〜30。会場:in→dependent theatre 1st。

パプリカン・ポップ3.0「薔薇にポケット」

__ 
パプリカン・ポップ、面白かったです。実は以前から、森口さんにはインタビューさせていただきたかったんですけど、「薔薇にポケット」を拝見して、是非と思いまして。
森口 
ありがとうございます。
__ 
見ていて、何だかすごく調和しているなと思ったんですよ。俳優達の演技、戯曲、美術、全てが物語演劇に集約して調和していっているというか。しかも、それを見る時に、舞台上のペースに合わせて解釈したり大目に見たりとかの必要が全くなくて。見やすいうえに飽きなかったんですよ。舞台の上の全てがバランスが良い時に、それを調和、と呼ぶべきなのかなと。
森口 
みんなの力のお陰ですね。私のやりたいことを汲んでもらって、どういう風にしたら調和するか、というのは多分、考えてくれていたと思います。
__ 
全員の力でまとまっていた。
森口 
はい。
__ 
だから、建設的な方向で舞台の空間と時間が成立していったんでしょうね。見ていて凄く楽しかったです。
森口 
私、作品を見たあと「あー楽しかった、わー」っていうのが好きなんです。いろんな思いを抱かせる作品がこの世にあると思うんですけど、例えばボロ泣きさせたりとか笑えたとか。そういうのも好きなんですけど、自分が本当に好きなのは「楽しかった」と思えるものなんです。
__ 
観た後の気分を目標にしているんですね。
森口 
最初からそういうスタンスでやってきています。今回もそんな気分で帰ってもらっていたら嬉しいですね。
パプリカン・ポップ3.0「薔薇にポケット」

公演時期:2013/2/22〜24。会場:in→dependent theatre 1st。

そこじゃないと見れない演技

__ 
森口さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
森口 
親が割と芝居を観るのが好きで、劇場に一緒に連れてってもらったりしていたんです。最初は自分がやるとは思ってなかったんですけど、次第に舞台をやってみたいなと思えてきて。舞台に立ちたくなって、大学の時に養成学校に入っていました。ファントマさんのワークショップを受けたのが小劇場に入った最初ですね。その後、末満さんのHYT(ハーフイヤーシアター)に参加して、今に至ります。
__ 
その頃観た、衝撃を受けた作品はありますか?
森口 
衝撃かどうかは分からないんですけど、ファントマさんの「ジョリー・ロジャー」という作品ですね。あ、こんなに楽しいものがあるんだと思いました。私の演技の根底にあるのは養成所で勉強した新劇系の考え方で、真逆なんです。そんなギャップがあったんですが、それでいいんだ、と。もちろん、どっちも好きなんですけど。
__ 
なるほど。
森口 
関西じゃないと見れない演技だと思うんですよ。だから、大阪に来て初めて見たその文化の演技にびっくりして。もちろん、とても楽しかったです。

妄想とネガティブ

__ 
石原正一ショーで森口さんがやってたギャグが凄く面白かったんですよ。森口さんみたいな上品なイメージの美人が赤塚不二男みたいなタッチの笑いをやると何だかもの凄く映えますよね。
森口 
ありがとうございます。ああ恥ずかしいですね。
__ 
俳優としての森口さんに伺いたいんですが、どんなタイプの役者だとご自身では思われますか?
森口 
うーん。妄想します。台詞を覚えながら、色々考えます。どういう風にしたら面白いのかはもちろん、この人はどう思っているんだろうとか、周りに・観客にどう思われるんだろう、とか。そういう事を妄想して、最後は繋げていきます。結構ぶっ飛んだところまで考えすぎて、行き過ぎたこともあります。
__ 
今まで、一番上手くいった役は。
森口 
上手く行ったとかは全然思わなくて。いつも、ダメだなあと思っちゃうんですよ。周りから「良かった」と言われてようやく安心するんですけど、基本ネガティブなんですよ。
__ 
ネガティブ?
森口 
というか、根暗?ポジティブなんですけど考え方が根暗なんです。困りますよねこんな事言われると。前々回のパプリカンポップはそういう話で、周りを拒絶したひとりぼっちの女の子が一人暮らししている所に、色々な人が来て、というお話だったんですよ。そういう、私の根暗性が出ている話でした。

質問 黒川 猛さんから 森口 直美さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、THE GO AND MO'S の黒川猛さんから質問を頂いてきております。「ザ・クロマニヨンズをどう思いますか?」
森口 
ああー、甲本ヒロトさんが同じ岡山出身ですね。フェスで聞いた事があります。
__ 
あ、フェスに行ったりするんですね。
森口 
でも、そこで聞いた事がある程度です。盛り上がりたい時にはいいかなと。

__ 
俳優として、いつかどんな演技が出来たらいいと思いますか?
森口 
難しいですね。明確には言えないんですが、誰にでも目標にしている人があるじゃないですか。あの人のような演技が出来るようになればいいなあと思います。
__ 
というと。
森口 
当時入っていた養成所の先生なんですけど、芝居をしようか迷っていた22歳の頃にわざわざ時間をとって相談していただいたんです。仕事、将来、色々と。その方は新劇で活躍されている方なんですけど、「とりあえず自分がやりたいんだったら、30歳ぐらいまではやってみたら」と言ってくれたんですね。その人は凄く、優しい芝居をされる方で。その人みたいな芝居がいつか出来たらいいなと思いますね。
__ 
優しい芝居。
森口 
柔軟で、優しい芝居。私の勝手なイメージなんですけど、懐が深いというか。観ていても話を聞いても面白くて。
__ 
柔軟で落ち着いている人は、自分の根本があるんでしょうね、きっと。
森口 
そういう人柄でありたいです。
__ 
「薔薇にポケット」では、それを感じました。
森口 
そういう方向性に行っていればいいですね。

観た後に楽しかったと思える

__ 
いつか、どんな芝居が作れたらいいですか?
森口 
元々私が作りたい芝居は、観た後に楽しかったと思える作品です。でも、今後はもう少し軸が変わっていっても良いのかなと。色んな可能性を探っていきたいです。元の軸には捕らわれずに。その上で、みんなが楽しんでもらえるものがいいなと。
__ 
森口さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?
森口 
マイペースにやっていこうと思います。マイペースに、一回一回を大事に攻めていこうと思います。

咲かないバラ

__ 
あ、作品についてもっと話したくて。
森口 
そうですね、全然喋っていませんでしたね。話しましょう。
__ 
「薔薇にポケット」で凄く工夫されていて驚いたのが、後ろの布地に小道具というか、アップリケをマジックテープで貼り付けて書き割にして、それが絵本のようになるという発想がとても可愛らしいですよね。花で出来たアーチとか、お祭りの風景とか。あれを考えたのは。
森口 
私です。舞台装置をどうしようと思っていたんですが、ページをめくるようなイメージでした。それらを貼り替えるというのなら出来そうだし、絵を描くのも好きなので。背景が変わったら面白いなと思ったんです。何もないところに重ねていくとか、減っていくのが面白いなと。
__ 
あの美術、凄く効いていました。
森口 
ありがとうございます。
__ 
絵本という世界観を一瞬で説明してくれるし、その中で行われる演技もとても絵本調なのに嫌らしくなく決まっていて。感心したのが、場面転換の時、俳優の一人が前に出てきて次の場面の説明をボードでするんですが、その時に後ろを気にする演技をしますよね。それが凄く良かったんです。
森口 
あれはみんなでやってもらったんですが、イメージとしてはニワシティの住人や妖精というものでした。
__ 
いや、何か言葉で言うとありきたりかもしれないんですけど、それを実際に目にすると何故かものすごくびっくりしたんです。だって、あまりにも当然というか、あんなにハマっているメタ演技はないんですよ。そこに演出の手つきの良さを凄く感じたんです。
森口 
そういうのがパプリカンポップでやりたい事なのかなと。もちろん大人向けの作品なんですが、子供が観ても大丈夫、というのを結構意識しています。あの役割も、私がこういう事をやりたいと言っただけで、解釈してくれたんですよね。
__ 
「薔薇にポケット」じつはちょっと、悔しかったです。
森口 
悔しい?
__ 
正直、最初の10分間ぐらい、子供向けの何かだろうと思ってたんですよ。その後の予定があって、ちょっと焦った気分で見ていました。なのに、それが凄く調和されて作られているものだと分かって。
森口 
ありがとうございました。
__ 
結局、赦しの話だったと思うんですよ。咲かないバラが秘めているものが、彼女の思いそのもので。裏切りにあっても許すというのがすごくいい展開ですよね。
森口 
はい。それもテーマの一つでした。

京飴

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
森口 
えっ!! えーっ!
__ 
毎回しているんですよ。
森口 
え本当ですか?いいんですか?えー何だろう。凄いですね。
__ 
どうぞ、開けて頂いて。
森口 
ありがとうございます(開ける)アメだーっ!嬉しいです。アメ大好きです。
__ 
京飴です。「薔薇にポケット」の配色に合わせて選びました。味も結構おいしいですよ。
(インタビュー終了)