暗くて息も出来ない
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い致します。丸山さんは最近はどんな感じでしょうか。
- 丸山
- おかげ様で、結構忙しくさせて貰っています。KAIKAのgate でやらせてもらう公演の脚本と、9月のコント企画の本の執筆と。月面クロワッサンのドラマの撮影もあって、結構忙しいですね。
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- 丸山さんはどんなコントを書くんですか?
- 丸山
- 暗い奴を書きますね。明るいのは、ウッてなっちゃんで。どうしても、暗い方を好んで書いてしまいます。
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- それは、人間の暗い部分を描いているという事ですか?
- 丸山
- 何でしょうね、筒井康隆さんの影響をめちゃくちゃ受けていると思います。3本のコントを書いたら、1本は人の肉を食べてるような。暗さを突き抜けて笑けてくるようなのを目標にしている所がありますね。それで笑って貰えると一番嬉しいですね。
月面クロワッサン
2011年、本公演の全作品の脚本と演出を、作道雄がつとめる演劇団体として設立。劇団員は随時募集しているが、基本的には作品ごとにキャスト・スタッフを集め、公演を行っている。2月、「月面クロワッサンvol.0/どっちみち阪急河原町」が、京都学生演劇祭にて第2位、最高総得点を記録。6月、「バイバイ、セブンワンダー」を京都市内2会場で公演、380人を動員。緻密でスピード感溢れるストーリー構成の脚本と、観客からの視覚的構図を意識した演出で独自の劇的世界を構築する。(公式サイトより)
つくる場・KAIKAの試演会 特別版『gate in コックピット』
公演時期:2013/9/14〜15。会場:KAIKA。
月面クロワッサンvol.6「オレンジのハイウェイ」
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- 月面クロワッサン「オレンジのハイウェイ」 が終わりましたね。面白かったです。脚本協力という役割だったそうですが、どんな事を。
- 丸山
- ありがとうございます。作家の作道くんが書き始めるぐらいの初期から話し相手になるぐらいの役割ですけどね。面白かったんだったら、それは作道くんが面白かったんだと思います。
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- この作品、時間のずらしが大きな構造としてありましたね。その構造自体が人物表現に一役買っているという、ダイナミックな使い方がとても良かったと思います。しかも、あの2ndで、ですね。
- 丸山
- independent theater 2ndさんは大変良い劇場で。またもう一度やれるように京都で頑張ります。
月面クロワッサンvol.6「オレンジのハイウェイ」
公演時期:2013/6/21〜24(京都)、2013/7/13〜14(大阪)。会場:元・立誠小学校 音楽室(京都)、in→dependent theatre 2nd(大阪)。
こんな近くに
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- 丸山さんがお芝居を始められたのはどのような経緯があるのでしょうか。
- 丸山
- 元々、小学校一年から高校三年生まで剣道をずっとやってたんですよ。高校の頃はキャプテンで、ずっと続けようと思ってたんです。でも、太ってるのもあって、膝とか腰を痛めて。医者に「辞めた方がいいんじゃない」と言われて。声も大きいし顔も大きいので演劇とかいいんじゃないかなと。大学の演劇部に入って、そのまま続けています。
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- お芝居を始めた頃にご覧になった衝撃作はありますか?
- 丸山
- 京都の小劇場という意味なら、ユリイカ百貨店 の「chocolate horse」 でした。あれを最初に見て、演劇面白いやばいなと。今思い返したら凄い役者さんばっかりでしたね。
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- 意外ですね。私も拝見しました。懐かしいですね。
- 丸山
- めっちゃ、質の良い、面白いものだと。それまで距離があったんですが、こんな近くにこんなにレベルが高いものがあるんや、と感動しました。
ユリイカ百貨店
2001年に脚本・演出を担当するたみおを中心とするプロデュース集団として結成。その後劇団としての活動に形を変え、2005年4月、再度プロデュース集団となる。幼い頃の「空想」と大人になってからの「遊び心」を大切に、ノスタルジックな空気の中に、ほんの少しの「不思議」を加えたユリイカ百貨店ならではの舞台作品を作り続けている。(公式サイトより)
ユリイカ百貨店 8th Stage「Chocolate Horse(チョコレート・ホース)」
公演時期:2008/4/25〜4/29。会場:アトリエ劇研。
お前何してんねん!
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- 丸山さんを初めて拝見したのは、努力クラブ の「牛だけがもつ牛特有の牛らしさ」 でした。その後も努力クラブで何度か拝見しました。「旅行者感覚の欠落」 では人を思いっきり蹴ってましたね。
- 丸山
- ああいうちょっと危ないような役が好きでしたね。月面クロワッサンではそういう役に付かなかったので間があって、思いっきり蹴れなくて。演出の合田さんにアホほど怒られましたね。
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- 蹴れない事で怒られた。
- 丸山
- 「お前何してんねん!」って。あんなに怒られるとは思ってなかったです。
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- でも、躊躇なく振りぬいてましたね。
- 丸山
- 相手の人には本気で嫌がられましたけど、でも、中途半端にやったら相手の人が可哀想じゃないかと、自然にそう思えるようになりました。
努力クラブ
元劇団紫の合田団地と元劇団西一風の佐々木峻一を中心に結成。上の人たちに加えて、斉藤千尋という女の人が制作担当として加入したので、今現在、構成メンバーは3人。今後、増えていったり減っていったりするかどうかはわからない。未来のことは全くわからない。未来のことをわかったようなふりするのは格好悪いとも思うしつまらないとも思う。だから、僕らは未来のことをわかったようなふりをするのはしない。できるだけしない。できるだけしないように努力している。未来のことをわかったふりをしている人がいたら、「それは格好悪いしつまらないことなのですよ」と言ってあげるように努力している。(公式サイトより)
「牛だけが持つ牛特有の牛らしさ」
公演時期:2011/6/3〜5。会場:人間座スタジオ。
努力クラブ5 旅行者感覚の欠落
公演時期:2012/12/7〜10。会場:元・立誠小学校 音楽室。
面白い言い方がぽっと思いつく
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- 丸山さんが初めて舞台に立ったのはどのような。
- 丸山
- 小学生の頃、文化祭で生徒会が40分くらいの芝居をやったんです。加古川小学校で加古川コマンという役でした。半ズボンで赤いマントの。
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- 最悪ですね。
- 丸山
- (笑う)大仰なドラの音がなって出てくるという役でした。ウケました。それが初めてです。
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- 今、どんな役者になりたいですか?
- 丸山
- 東映のヤクザ映画に出てはった、室田日出男さんという人の演技がめちゃめちゃ好きで。狂ってるような人なんですけど、哀愁と可笑しみがある人なんですよ。ああいう役者になりたいですね。
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- いつか、こういう演技が出来るようになりたいとかはありますか?
- 丸山
- 今、わりと「笑いを取って来る」事を期待されるんです。自分自身としても、笑いが起きてないと怖いです。シーンとしたら、セリフが飛んでいる状況と一緒ですね。むっちゃ怖いんですよ。そんな事を思わんと、普通に演技をするようなのがしてみたいですね。
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- なるほど。
- 丸山
- 舞台に立つ上での怖さが、人一倍あるんじゃないかと思うんです。ウケんかったらイヤやなと思って、雑になってしまう事もあるんです。丁寧に演技をしたいという欲求もあって、そこら辺の感情をうまくしたいなと。結構悩んでいて。
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- 思うに、丸山さんの演技のイメージを伝える速度はとても早くて鋭くて。個人的にはそうした事が出来る人を天才と呼んでいるんですが、そうした演技のイメージ作りはどこから来るのですか?
- 丸山
- これは結構、良くないんですが・・・ゲネぐらいで気づきますね。「ああ、これや」と。下手したら、5回ある本番で2回目ぐらいで正解見つけて、みたいな。申し訳ないんですが。お客さんいないと、自分の中の何かがサボっちゃうんですね。ウケへんという不快感がないとサボっちゃうみたいで・・・。ウケを取るのが目的ではないセリフがあったとして、本番でお客さんを前にした時に、面白い言い方がぽっと思いつく。想定が出来てないんですね、良くないなあと思いつく度に思います。
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- 考え始めるのが遅くても、発想の切れ味が鋭ければ、まだいいじゃないですか。
- 丸山
- そう言ってもらえると。でも、申し訳なく思いますね。
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- こういう演技は許せない、とかはありますか?
- 丸山
- どうでしょうね・・・。自分の主観の強さを全く制御出来てない時や、そういう人を見ると、あかんなあと思っちゃいますね。
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- 主観が強い?
- 丸山
- 「主観が強い」って、口癖になっているんですけど、「自分を客観視出来ていない」という意味です。まあ、完全に客観的になる必要は無いんですけど、主観に凝り固まっちゃうのは良くないんじゃないかと。泣かんでいいところで感情が昂って泣いてしまったりとかは無茶苦茶良くないと思うんですよ。それで気持ちよくなっちゃったりとか。そういうのは嫌ですね。
質問 嘉納みなこさんから 丸山交通公園さんへ
二つの幸せ
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- 月面クロワッサンの魅力を教えて下さい。
- 丸山
- いい意味で、敷居が低いところです。敷居を上げたい人も多いと思うんですけど、敷居みたいなものを取っ払って、取っ付き易い感じにしたいです。それがうまいことできれば魅力だと思います。作道君とは作家としては考え方が違うんですけど、方向とかについては共感していて。一緒にやっていきたいと思っていますね。
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- 「オレンジのハイウェイ」。個人的にはとても、月面クロワッサンの作品なんだなあと思うものでした。この作品はきっと、彼らにしか作れないだろうなあと思ったんですよ。もし、丸山さんが作家だとしたらどういう事がやりたいですか?
- 丸山
- ああ、もうそれはですね、西村さんにひどく不幸になってもらいたいですね、地獄を味あわせたいと思います。それを基軸に、結構暗い話をしたいです。意外性があるんじゃないかと思うんですけど。
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- 彼らの生にリアルさを与えられるかもしれない?
- 丸山
- そうですね。最終的にはハッピーエンドになるんですけど、それは西村さんが嬉しそうな顔して風俗で働いているというような、そんな幕引きにしてしまうと思います。実際それは幸せな事だと思うんですが、観客は「そんな事ないやろう」と突っ込みたい。でも、実際には幸せだと。不幸な人だってそれなりに幸せな瞬間はあるんですよ。橋の下に住んでいる人の幸せとビルゲイツの幸せは、同じぐらい楽しいと思うんです。僕の根底には、その二つの幸せって同じなんじゃないかという思いがあるんですね。
明るい場所
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- 最近、考えている事はありますか?
- 丸山
- 参議院選挙で、京都の選挙区から出た新藤伸夫さんの政見放送がめっちゃ面白かったです。
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- というと。
- 丸山
- 最初に自作の歌を一しきり歌って、その歌がめっちゃ面白くて。で、最後になるにつれしどろもどろになってしまって。でも最後に「私に大量票をお願いします」と言うてはって。それはどうやら本気なんですよ。これは演劇は勝てへんわ。どうしようと。ちょっと悩んでますね。ドキュメンタリー凄いわ、演劇は勝てへんかもしれん。
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- ドキュメンタリーも文学作品として認められる場合はあると思います。そういう意味で言うと、「オレンジのハイウェイ」にはドキュメンタリーの要素もあったとは思うんですよ。その真っ直ぐな道をスピードを上げて行く事にした彼らにしか出来ない演劇。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 丸山
- 月クロのスタンスと、僕の立ち位置はこのまま進めて行ければ。明るい場所にしていきたいと思います。出来たら、もっとたくさん笑いを取って行きたいです。僕個人としては、9月以降にまた劇作の仕事があって。そちらの方は普段考えているような暗い思いを表現する場にしていきたいと思います。役者も脚本演出も頑張りたいですね。
蕎麦皿と薬味入れ
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 丸山
- ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 丸山
- 開けていいですか?
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- もちろんです。
- 丸山
- (開ける)あはは、蕎麦皿ですか。
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- そうですね。
- 丸山
- それと薬味入れ。
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- はい。
- 丸山
- 父親が出石そばとかが好きで、送ってくるんですよ。使います。