泣きそう
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。ベルギー公演 、お疲れさまでした。お帰りなさいませ。
- 小中
- あ、はい。ただいまです。
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- 日本に帰ってきて、最近はいかがですか?
- 小中
- 他のメンバーより二週間長く滞在していて、そろそろ日本に慣れつつあるんですけど、向こうのご飯がおいしかったなあと。手作りのクスクスや、ホームパーティーで出された料理やお酒。もう全部ですね。こっちに帰ってきて、自分で作ろうとはしているんですけど。
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- 料理の味って、同じ材料とか調味料を持ってきてもなかなか再現出来ないというか、違いますよね。
- 小中
- そうそう。そうなんですよ。気持ちの入りようも違うんですよね。たぶん、食べさせてあげようという気持ちが通じるんです。大事にされてるなあって感じがして、泣きそうになりました。こんな、言葉の分からない日本人に。
子供鉅人
2005年、代表の益山貴司、寛司兄弟を中心に結成。奔放に広がる幻視的イメージを舞台空間へ自由自在に紡ぎ上げる。(公式サイトより)
子供鉅人 演劇公演ツアー 2011 バーニングスキン
公演時期:2011〜2012。会場:東京・大阪・ベルギー各地。
最終的にもらった拍手
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- しかし実際、言葉の通じない海外にいくという勇気が凄いですよね。行こうと思えば行けなくはない、でも実際行動に移すのは、中々出来ないですよね。
- 小中
- そうですね。行く前は怖かったんです。不安が凄くあったんですけど、行ってしまえば怒濤の2ヶ月でした。すごく忙しかったです。
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- 素晴らしい。海外で上演したバーニングスキン。日本での公演とどのように違いましたか?
- 小中
- 向こうはフランス語なので、字幕はつけてるんですけどニュアンスだけでは通じないんですよ。だから、役者同士のリアクションとか、コミュニケーションを意識する事で会話を表現していました。だからお客さんの反応は日本とは違っていました。でも、最終的にもらった拍手はものすごかったです。思ってた以上の反応が返ってきて、ちょっと泣きそうでした。自分達が意図した内容が伝わったかどうかはともかく、満足していただいた事は確実で、スタッフさんに「ベストアクトだった」と言ってもらって。
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- 良かったですね。そうだ、ライブツアーでも回っていたんですね。
- 小中
- そうなんです。バーニングスキンではあんまりお客さんと交流出来なかったんですが、「where is crocodile」という作品で各地のライブハウス等を回っていました。公演後はお客さんと出演者関係なく混ざる時間があって、そこで「楽しかった!」って声が聞けて。嬉しかったです。
「もっと行ける」
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- 小中さんは、芝居を始めたのはいつぐらいからでしょうか。
- 小中
- 高校の卒業式の時に大学の劇団さんに出たのがきっかけでしたね。
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- 今続けているのはどういう理由が。
- 小中
- 私、結構いろいろな事が3年づつで切れるんですよ。仕事や劇団も3年づつ変わっていて、でも芝居はやめていません。
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- 3年づつ。
- 小中
- そのぐらいで節目が来るんです。「変わらないな」と思ったら、次の世界が見つかるんです。
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- 子供鉅人は、新しい世界でしたか?
- 小中
- そうですね。見たことない事をしようという意気込みはどこの誰よりも強いんじゃないかと思います。どこかで見た事があったらやめる、みたいな。
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- 大切だと思います。確かに子供鉅人は劇団としても、独立している感じがいいですね。
- 小中
- 芝居はずっと続けていますけど、もっと次の場所に行けるっていうか、目標に達していないというか。毎回しんどいんですけど、終わる頃には「もっと行ける」と思ってるんですよね。
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- 終わらないですね。
- 小中
- まだまだ、足りないです。
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- 今は、どのような目標がありますか?
- 小中
- ヨーロッパで新しい目標を見つけたので、そこにチャレンジしようと思っています。向こうで2週間、皆よりも長く残ってワークショップを受けていたんです。サーカス出身の人の劇団の稽古場でアクロバティックの訓練をやっていました。この歳になってこんな事をって思ったんですけど、例えば支えてくれる人に身を任せればぐっと持ち上げられる。私は体の芯をブレさせずにキープしていればいい。怖がると支えてくれる人もぶれるから。という、気持ちと肉体の訓練でした。
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- 子供時代のように身体を活発に動かす代わりに、身体をコントロールするんですね。
- 小中
- そうなんです。怖がらなければ出来るんですよ。30歳を越えてるからとかじゃなくて。もっと、出来るようになりたいですね。私はここで、行く、みたいな精神があれば意外と出来るんです。
青版斧女
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- 子供鉅人で小中さんがよく演じている斧女について。バーニングスキンでは青版斧女が出ましたね。あれ、凄く面白いと思います。
- 小中
- これまでピンク版のような女の子を演じる事が多かったんです。青版も当初は違うキャラクターだったんですけど、自分で稽古場に持っていって。稽古を重ねる毎に確立していきました。
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- いいですよね、しかもパーティー好きでカーチェイスもするし。
- 小中
- あのシーンはね、ヨーロッパでは静かだったんです。そこが日本との大きな違いでした。向こうのスタッフさんが言うには、あそこは3Dみたいでカッコ良く映ってたそうです。
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- へえ。カーチェイスを表現するのに自分で前後に移動するってマイム(?)って、確かに日本の小劇場ならではって感じがしますからね。ヨーロッパでやってるような印象が全然ないな。
質問 片山 誠子さんから 小中 太さんへ
求められていたい
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- 小中さんは、今後、どんな感じで関わっていきたいですか?
- 小中
- 難しいなあ。自分が芝居に見放されないように・・・ですかね。いつか自分が芝居に飽きられないように。私が芝居に寄り添っているかもしれないように。
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- 芝居に必要とされていたい?
- 小中
- そう、それ。私が必要とされていたい。
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- 必要とされるために、どんな感じで攻めていかれますか?
- 小中
- そうですね、いままでやっていた事を精進しつつ、肉体改造を。あと、向こうで活動するにあたって、語学をもうちょっと(笑う)。
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- なるほど。
- 小中
- コミュニケーションは取れるんですよ。でも打ち合わせで深い話が始まるとついていけなくなってしまうんですよ。私は結果だけ伝えられるんです。
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- 本当は、その間の話が大切なのにね。
- 小中
- そうなんですよ。稽古で演技を試したりとかは出来るんですが、ミーティングには参加出来ないのが、何だかなあって。
ハイソックス
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
- 小中
- ありがとうございます。プレゼントって嬉しいですね。開けていいですか?
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- どうぞ。
- 小中
- (開ける)これ、いいですね。ハイソックス。これから打ち合わせなんですけど、足元が寒くて。後で使います。