空晴第三回公演「引っ越しのススメ」
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- 先日の精華演劇祭での「引っ越しのススメ」、大変面白く拝見しました。
- 岡部
- ありがとうございます。ところで、どんな理由で来て頂けたんでしょうか?
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- 実は以前から、岡部さんの客演を拝見する機会がありまして。そこで空晴の存在を知ったんですね。クロムモリブデンの板橋さんも出るし、もうこれは行くしかないと。
- 岡部
- 何かね、板橋君の知り合いからは「彼の普通の芝居が見れた」って感想が多かったんですよ。
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- あの人はなんて言うか、キワモノの役が大変にハマりますからね。
- 岡部
- 私も、板橋君の芝居を見たのはおじいちゃん役ばっかりだったんです。でも、人間としての彼が好きなんですよ。それで今回出演して頂きました。
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- そうだったんですね。今回はご本人の人柄の良さが出ていました。かえって斬新だなあと。
空晴第三回公演「引っ越しのススメ」
精華演劇祭vol.11・第19回下北沢演劇祭参加作品。会場:大阪−精華小劇場、東京−OFF・OFFシアター。公演時期:大阪−2008年12月18日(木)〜23日(火・祝)、東京−2009年2月3日(火)〜8日(日)。リーディング公演「一番の誕生日!」との二本立て。
クロムモリブデン
主宰・青木秀樹氏。1989年、大阪芸術大学映像学科を卒業した青木秀樹を中心に、同大学の学生らを主要メンバーに結成。積み上げてきた独自のスタイルを基盤としながらも、ポップさを前面に押し出したコメディ色の強い作品を制作。(公式サイトより)
板橋さん
俳優。2007年、クロムモリブデンに入団。鋭い眼光が印象的な、キレのある演技。
客演さん
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- さて、今回の精華演劇祭で上演された「引っ越しのススメ」。岡部さんにとってはどんな作品だったのでしょうか?
- 岡部
- 3つ目に書いた長編の脚本だったんですよ。短いのはそれまでに何本か書いていたんですが。
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- あ、そうだったんですね。
- 岡部
- ランニングシアターダッシュという劇団の若手公演で、「たまたま、素敵。」という作品を作ったんです。次に男女2チームに分けるという公演があったんですけど、その第2弾が「引っ越しのススメ」だったんですよ。
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- 再演だったんですか。
- 岡部
- はい。当時は宛書きで作ったんですけど、今ビデオで見返してみると酷いんですよね。その時は面白いと思って作っていたんですけど。
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- 今見返すと、そうでもなかったと。
- 岡部
- それは役者だけの問題じゃなくって。だから、昔の作品をスキルの高かったり貫禄のある外部の人たちでやってみたらどうなるんだろうか、と。うちのメンバーの能力が低いとかじゃないですけど。
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- そういえば、今回出演者にかなりの割合で客演がいましたね。
- 岡部
- はい。以前に「ボクのサンキュウ」という作品を再演させてもらったときも客演を色んな方にお願いしたんですけど、やっぱり面白かったんですよ。私の予想外のところから突っ込みを受けたりとか。
ランニングシアターダッシュ
岡部さんが所属されていた劇団。
宛書き
脚本家が、演じる役者をあらかじめ想定して台本を書くこと。
スクエアの北村さん
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- ラストシーンで、スクエアの北村さんが後ろから蹴りを入れられながら暗転するのが面白かったですね。最後まで楽しみのある、いいエンドでした。
- 岡部
- あの二人も仲良くなるんだろうなあと、そう予感させたいなあと思っていたんです。最後暗転していく中で何か演技させるのは、旗揚げからやってますね。終わりまで目を離さないでほしいと。
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- 個人的に、ずっと北村さんからは目を離せませんでしたね。二枚目で物静かなのに、どこか様子のおかしいみたいな。
- 岡部
- あの役は元々他の人に宛てて書いたんですけど、キャスティングで一番早く決まりましたね。結果、凄くハマってて。あまり多くを語らない中国留学生役でしたが、私の中ではベストオブ北村守でした。
北村守さん
スクエア所属。俳優。二枚目だがコミカルな演技が非常に面白い。
劇団にこだわって
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- 空晴を旗揚げした経緯などを伺えないでしょうか。
- 岡部
- 2005年まで、今のメンバーが全員ランニングシアターダッシュという劇団にいたんですよ。解散する時に、当然私は芝居をやめたくなくて。そしたら、私の芝居が好きだと平本が言ってくれたんです。
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- あ、それが空晴の旗揚げのきっかけだったんですね。
- 岡部
- 私の作品をやりたいと言ってくれて。「またやろうか」と。いざ解散するとどんどん話がまとまっていったんです。
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- 旗揚げまではしばらくの間、フリーというか。
- 岡部
- はい、色んな劇団に客演をさせてもらいました。売込隊ビームとか。
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- 沢山出ておられましたね。私も何度も拝見しました。
- 岡部
- どこ行ってもやっぱり劇団っていいなと思いまして。
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- 劇団にこだわったと。
- 岡部
- 嫌なところも一杯知ってるけど、良いところも知っていましたから。ずっとそれでやってきたし。だから、やるとしたら一回こっきりのプロデュースやユニットじゃなくて、自分のホームグラウンドとしての劇団が欲しかったんです。
「そういえば、私にも」を
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- 今回の「引っ越しのススメ」。大きく言うと登場人物がみんな素直になっていくという流れだったと思うんですけど、やっぱりいいなあと思ったんですよね。ハートフルというか。そこで伺いたいのですが、岡部さんは空晴の作品を通して、どんな事を表現されたいのでしょうか。
- 岡部
- 非日常やスペクタクルなものを見せているつもりはないんです。どこかの部分で、「そういえば、私にもそんな人がいた」と共感してもらえる。そういうことを大事にしています。
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- 共感というと。
- 岡部
- ウチの芝居では、よく舞台上には出てきていない人の話をする事が多いんですよ。今回で言うと、西さんという女性の。
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- ええ、マドンナ役ですよね。
- 岡部
- 他の作品だと、買い物に行ったまま帰ってこない両親とか。そういう、今はいない人達を語ると、舞台上に出てくるよりも想像が広がるんですよ。それで、観ている人にも誰かの事を思い出して貰えたらいいですね。
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- あ、それ私もなりました。家族の事を思い出しました。
- 岡部
- 観て頂いた方それぞれにとっての、ある人の顔を思い出すという。それがいいんじゃないかなと思います。「実家の母に電話したくなりました」とか、アンケートに書かれていると嬉しいです。
ハートウォーミングパニック会話劇
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- 岡部さんは、いつ頃から脚本を書き始めたんですか?
- 岡部
- 小学校、中学校の時にみんなでマンガを書いて回し読みしてたのが最初だったんですよ。今読むとありえない、例えば転校初日に遅刻した女の子が男の子とぶつかるみたいな。
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- ああ、よくある感じの。今見るとシュール系ギャグになるんですかね。
- 岡部
- その頃からお話を作るのは好きだったんですね。中学は演劇部だったんですけど、高校からは放送部で。そこでラジオドラマのコンクール用の作品を作ったりしてました。
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- ああ、いいですねそういうの。どんな作品を。
- 岡部
- 高校なんで、道徳的なお話だったんですね。ラストに主人公が選択を迫られて、「私は・・・」って終わる感じの。
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- 含みを持たせて終わるみたいな。
- 岡部
- その頃からそういう傾向がありましたね。
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- 何か、影響を受けた作品というのはありますか?
- 岡部
- 当時バリバリ出てきてた三谷幸喜さんが好きでよく見てたんですよ。
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- ああ、あれは面白いですよね。
- 岡部
- 面白かったですよね。その時気づいたのが、あれはレストランの中だけで話が進んでいたんですよ。他のドラマだと、ある人が会社ちってその帰りに何か起こって、という。これは凄いなって思ったんですね。
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- 確かに、画期的ですよね。そういえば「引っ越しのススメ」もそういう形式でしたが、言わば影響を受けたと。
- 岡部
- 私の書くジャンルもシチュエーションコメディと言えばそうなんですけど、ちょっとおこがましいなあと。で、企画書を作る時に劇団の先輩が「ハートウォーミングパニック会話劇」と付けてくれました(笑う)。
三谷幸喜さん
劇作家、脚本家、映画監督。
「王様のレストラン」
1995年、フジテレビ。全11回。
質問 眞野 ともきさん から岡部 尚子さん へ
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- 先日インタビューさせて頂きました、笑の内閣の眞野ともきさんから岡部さんにご質問を頂いてきております。
- 岡部
- 笑の内閣?
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- チラシを持ってきているんですけど、ここはいつも芝居中にプロレスをやるんですよ。それが結構面白くて。
- 岡部
- へー。私も結構プロレス好きですよ。
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- 3月にin→dependent theatre 2ndでやるらしいので、良かったら。1.朝はパン派ですか?ご飯派ですか?
- 岡部
- 朝に限らずご飯派ですね。無類のご飯好きです。
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- あ、ご自分で炊かれるんですか?
- 岡部
- もちろん。
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- 2.いきつけの喫茶店を教えて下さい。
- 岡部
- あんまりないですね。近くにサンミっていうオーガニックのお店があるんですけど、一時期通ってました。あと、京都の烹菓っていうクッキーのお店があるんですけど、そこのプレーンとウォールナッツにハマりました。
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- あ、おいしそうですね。今度行ってみます。3.小銭入れと財布を別にしていますか?
- 岡部
- してないです。
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- そうですか・・・。4.今年の初夢は何ですか?
- 岡部
- それがね、覚えてないんですよ。去年のは覚えているんですけど。タクシーに乗って、値段が高いって運転手とケンカする夢だったんですよ。ひどい夢でした。芝居のしの字も出てこない(笑う)
笑の内閣
2005年、元劇団紫高間響が代表をつとめるプロデュース団体として結成、後に劇団として旗揚げ。プロレスを演劇に組み込んだ作品を作り続ける。派手なプロレス演出の完成度は高く、しかも笑いを取るための努力を惜しまない。
親しまれる劇団に
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?個人としてでも、空晴としてでも。
- 岡部
- 空晴としては、いつの間にか存在していきたいですね。
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- というのは。
- 岡部
- 私たちのやってる事は、圧倒的なエンターテイメント性はないけど普遍的な事を扱っているつもりなんですね。こんなんしか出来ないですけど、良かったら・・・と地味にやり続けていって。でもみんな知ってるという存在になりたいです。地方にも行きたいし、ロングランもやっていきたいですし。
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- なるほど。
- 岡部
- とある人に、私の書く本は戯曲賞を取るようなものではないと言われたんですよ。それは私にも分かってて、文学チックではないなと自覚はしているんですよ。でも、それを面白いって言って見に来てくれるお客さんがたくさんいたらいいじゃないかと。
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- 親しまれる、みたいな。
- 岡部
- そうですね。もちろん、賞なんていらないという意味じゃなく、貰えるものなら欲しいですけど。でも、とにかく長く存在出来たらと思いますね。
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- 個人としての思いなんですが、心が動くようなそんな芝居をこれからも作っていって頂きたいなと思います。頑張ってください!
- 岡部
- はい。ありがとうございます。
ui-bagの小銭入れ
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- 今日はですね、岡部さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
- 岡部
- ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 岡部
- この袋は破ってしまっていいんですか?
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- ええ、どうぞ。
- 岡部
- (開ける)おっ。
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- 小銭入れですね。
- 岡部
- 小銭入れじゃないですか。じゃあ、これを機に。
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- まあ、小物入れみたいな感じで。
- 岡部
- かわいらしいじゃないですか。こういうのを使いこなせるような人になれるように。ありがとうございます。