劇団ZTON 御伽草子「一寸先の影法師」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い致します。劇団ZTONの図書菅さんにお話を伺います。最近、図書菅さんはどんな感じでしょうか。
- 図書
- よろしくお願いいたします。ZTONの前回公演「一寸先の影法師」が終わって、一息つきたいところなんですが、ぼちぼち本公演の準備が始まっています。稽古自体は9月からなんですけど。
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- ありがとうございます。まずは「一寸先の影法師」、大変面白かったです。演劇的な冒険に溢れた作品だったと思います。
- 図書
- ありがとうございます。稽古している時は冒険という意識はなかったんですけど、最終的にはそういう形になったのかなと思います。楽しんでやれたなぁと。
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- 稽古場は楽しかったですか。
- 図書
- 楽しかったです。(ZTONでは)普段とは違い、人間的な役をさせてもらいました。人間らしい人間ですね。今までの役が嫌いだっていうわけじゃないんですけど、そういう意味では初めてのアプローチをさせてもらいました。
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- 今まで図書菅さんは人外役が多かったですからね。今回の役どころでは、最初はいじめっ子の一人として出てきながら、段々と人間としての厚みを帯びていくみたいな。ポジションが移っていくんですよね。
- 図書
- 今回一番強く意識したのは、小さい頃の嫌な思い出、後ろ暗い感情。これを原動力としてやっていました。いじめっ子って、感情に任せてやってはいけないことをやってしまう。「これはいじめだ」という意識はない、けれども無視したり意味も分からず言ってはいけない言葉を囃し立てたり。今考えると胸が痛くなる、そういう感情です。最終的には久保内さんにパスをする、そういう流れができればいいなと。周りの方の力がなければできないことだったと思います。
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- 素晴らしい。そのいじめっ子の精神的な成長がフォーカスされると思いきや、実はそこに・・・というトリック。
- 図書
- そういう仕掛けの部分でも、もう一度見たいとおっしゃってくださるお客さんも結構いて。嬉しいです。
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- 為房さん、こんなことを考えていたんですね。
なくてはならないもの
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- この公演になくてはならないものは何でしたか。
- 図書
- 参加してくださった皆様。当たり前といえば当たり前なんですけど、ZTONのやりたいお芝居をやろうと思った時に、やっぱり絶対的に出ていただきたい人が出演して下さったのがすごくありがたかったです。そしてもう一つ、ずっと待っていてくださったお客様。
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- はい。
- 図書
- うちの共同代表たちとも話して。一体私たちに何が出せるだろう、といったら、やっぱり作品だったんですよ。それが一番の伝え方だった。何より僕らがやりたいという思いがあって。でもそれはお客さんが見てくれないと意味がない。そういう意味で、待ってて下さったお客様がいたから僕らも芝居が作れたし、次につなげることもできたんです。
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- 図書菅さんが久保内さんと演じた「勇」。いじめっ子だった幼少期から主人公を励まし、己も成長するという、人間的な成長を描いていましたね。
- 図書
- 久保内さんとだいぶ話をしていました。もう一方が出ているシーンをガン見する勢いで見ていました。
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- どんな話をしていましたか?
- 図書
- 台本には書かれていない部分についてですね。もちろんある程度答えは出ているんですが、それぞれが考えていることだったりをすりあわせて、コンセンサスをとると言う。例えば勇が大人になるまでに何をしていたのか、とか。鬼と子供たちの事を覗いている時にどんな気分だったのかを考えたり。
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- そういう事の積み重ねがあって、いじめっ子の内の一人から成長していった。
- 図書
- 大人になったらその過去のことがそれはそれで苦しい。今回の登場人物はみんな人間らしかったと思います。その中でも刺さるものがあったら嬉しいな。
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- マジで村八分にされていた子。あの子だけ身なりが良かったのがなんかの設定なんだろうなと思いましたね。
- 図書
- 異物感。そこはご想像にお任せするというところではあるんですけど。
殺陣オペとはなにか
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- 殺陣オペについて。図書菅氏の殺陣オペのブランド力について。
- 図書
- ブランド力・・・果たしてあるんでしょうか。
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- 役者をやっている菅さんが、わざわざ音響ブースに行ってオペするんですよね?
- 図書
- あ、今回は久保内さんもやってたんですよ。
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- そうなんですね。二人で交代して音響ブースに登ってたんですか。
- 図書
- はい、「出来ればブースで叩きたい」と無理を言いまして。そもそも殺陣オペを始めたきっかけが、新人公演の時に「じゃあ殺陣オペをやってみて」と云われまして。いざやってみたら、意外といけんじゃんと。そこから新人公演とかは毎回僕がやらせてもらっていました。
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- 音がぴったりですよね。
- 図書
- ありがたいことに、それはよく言って頂けます。殺陣作りの時にニュアンスや呼吸やクセを見て、音を選んで。一緒に刀を振っている気持ちで叩いています。
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- 呼吸やクセを把握する。流れを抑える。そういう事を全て自分の体に落とし込んだ上で、リアルタイムに音を入れる事が出来る。
- 図書
- (殺陣で)たまに、これが斬っているのか切られているのかわからない、そういう瞬間があると思うんですけど、それを助けるために音が必要なのかなと思います。オペをする人がそこを認識していないといけない。なるべく稽古場にいて、音のニュアンス確認を殺陣師と演者に取るようにしています。稽古の段階でなるべく音を入れて、指摘を受けて修正していって。もっと言うと、殺陣付けの段階で意識していると「何故戦っているんだろう」とか、物語の流れが認識できてわかりやすいです。
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- 「何故戦っているんだろう」。
- 図書
- 殺陣って、道具として優秀だなと思っていて。力関係を表す道具。(お芝居は)いっぱい人が出てきて各登場人物と設定を覚えながら観るのって、すごくエネルギーのいることだと思うんです。そんな中で殺陣というのは道具として役立つのかなと思います。立ち回りで強さのランク付けができるんですよ。
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- それを細かく分かりやすくお客さんに伝えやすいように表現する時に、彼らの肉体のリアルさを音入れの面からも伝えるのが殺陣オペなのかなと。その時、戦っている二人が肉体と精神を総動員して戦っている様を把握しないと音が出せない。もしかしたら、そういう「理解」「把握」が伝わった時、それはもうアートだし表現ですよね。殺陣が道具として成立し、そこからアートに通じる。
- 図書
- 技術的な話をするんだったら、アウトラインを覚えた上で実際に叩いてみて、刀を振るタイミングがいつもと違ったとしても対応しないといけない。でもそんなの当たり前なんですよね。みんなが同じだったら、極端な話ロボットにやらせても構わない。その場のノリ?というか、一緒になって殺陣を作るんですよ。そういうことをしないとあまり意味がないんですよ。
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- 機械的な音を出すんだったら何らかのテクノロジーを小道具に仕込めば済む話ですからね。
- 図書
- これは人に言われたことなんですけど、「音響ブースで叩いている意味は何か。」そういう意味を見出すためにやっていこう、と。
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- 挑戦してますよね。本番の時ももちろん、一緒に殺陣を作る。意味を見出していく。
- 図書
- 殺陣オペは次が最後かもしれないし、ふわっと振られるかもしれない。それも楽しいですけどね。
これから
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- 「一寸先の影法師」ですごく感心したシーンがあったんですよ。現在と過去の法師が交錯するシーン。門石藤矢さんと高瀬川すてらさんを前に、後ろにアパ太郎さんがシンクロして、そこにノイズとサイドライトが空間をゆがめていくという。
- 図書
- すごく色々マッチングした、繊細なシーンでしたね。フラッシュバックして、音も揺さぶってきて。僕はあれを上から見ていました。僕は藤矢くんの演技が昔から好きで、今回特に思ったのが「いい意味で生きてるのがつらそうだ」と。呼吸するだけで居づらいというのがすごく伝わってきて胸が締め付けられていました。僕はそういう風にはできないので。僕も何かしらそういう風に演技で訴えられたらいいなと思っています。
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- 図書菅さんにしかできない演技の領域もありますけどね。
- 図書
- いやいや。
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- まあZTONはカメレオン集団ですから、いろんなことが期待できますよね。そう、藤矢さん演じる子供の頃の法師が、後ろから子供を突き飛ばすシーン。
- 図書
- 子供の衝動的な行動という風に捉えるとすごくしっくりくるんじゃないかと思います。大人だから冷静な判断はできるけれども。それこそ、僕が演じた子供時代の「勇」だって、「もうどうなっても知らないからな」と言いつつとんでもない行動をしてしまう。
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- 色々な矛盾が人間の中には潜んでいるという作品だったと思います。帰ってきた人が違うから当然ですが、ZTONの新しい歴史が始まったと言えるのではないでしょうか。
- 図書
- 作品を好きになっていっていただければ、嬉しいですねやっぱり。ひとつひとつ丁寧に見ていただいて、心の中に残していただければ嬉しいです。
質問 斉藤ひかりさんから 図書菅さんへ
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- 印象って直感に属するものだと思うんですけど、真面目さをそのまま素直に受け止める事は出来ると思うんですよ。公演を見て直感的に分かることもある。「一寸先の影法師」をみて、ZTONは大丈夫だと思いました。
- 図書
- 僕個人の思いです。今まで僕たちを引っ張ってくれた人がいなくなって困りましたね。今でもはっきりした答えが全部に対して出ているわけではありません。とりあえず一つ一つ重ねて行って、胸を張れる作品を皆さんにお見せできるように頑張るだけです。
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- ええ。
- 図書
- これからどんなZTONを作るか。何をもって自劇団とするか。すごく難しい問題で。劇団員の誰か一人がいなくなったらZTONとは言えなくなってしまう、と考える人もいると思うんですよね。殺陣がなくなってもZTONじゃない、と言う人もいると思う。それぞれ、持ってくださっているイメージが違う。
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- 一方で、ZTONの魅力は殺陣だけじゃない。人間の描写を綿密に重ねて行って、全員が立ち回りをしないという選択が出来るなら、その作品は私は見てみたいです。
- 図書
- 僕も見たいです。ここから先、何を以て自分達とするか。それはこれからずっと考えていかないといけないと思います。
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- ええ。前の自分に戻ろうとしないでください。
- 図書
- そうそう、前に進んでいかないと。
劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」
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- 次は「ソラノ国ウミノ国」ですね。
- 図書
- ハルの書とアキの書の二本立てです(夏と冬はどこへ行ったんだろう)。今出ているビジュアルには海が出てくるんですよね。舞台上が水浸しになるかもしれません。
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- 船の上で戦うのかな。意気込みを教えてください。
- 図書
- 再始動しての本公演ですが、だからといって気負うことはないと思っています。これからまた一つ一つ積み上げていきたいです。これから先の最新作の一つ一つが皆様にとって大切な作品になればいいなと思っています。皆さんが喜んでくださったらそれで万々歳です。
劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」
あらすじ 数百年の昔、ソラノ国はウミノ国の軍勢と戦い勝利を得た。 ウミノ国の軍勢は 異形の物。 目にすれば視界がつぶれ、声を聴けば音を失う。 ウミと交わるな。交われば其は災厄となり、ソラを堕とす。 《ソラノ書 第二節》 親から子へ、連綿と語り継がれる『ウミノ国』の伝説。 『ソラノ国』と『ウミノ国』は、高くそびえたったカイリの壁によって分けられ、その交わりは長きにわたり禁じられていた。 …禁じられていたはずだった。 ソラノ国の貧民街に住む少年、ハル。 ある日、彼は一通の手紙を手に入れる。 差出人の名は、アキ。 届くはずのない2人の願いが交差し、閉ざされた壁が開くとき、ソラとウミの真実が明かされる。 【日程】 2019年11月1日(金)~4日(月・祝) 11月1日(金)19時開演【ハルの書】 11月2日(土)14時開演【ハルの書】 11月2日(土)19時開演【アキの書】 11月3日(日)14時開演【アキの書】 11月3日(日)19時開演【ハルの書】 11月4日(月・祝)12時開演【ハルの書】 11月4日(月・祝)16時30分開演【アキの書】 ※開場は30分前を予定しております。 ※両作品の内容はほぼ同一のものとなっており、話の筋や結末が変わるものではございません。「ハルの書」「アキの書」は、一部のシーンでの視点が変化し、その違いをお楽しみいただけます。 【会場】 in→dependent theatre 2nd (〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋四丁目7-22 インディペンデントシアター2nd) 【チケット料金】(税込) S席(各回限定10席・指定席・一般のみ) 前売料金一般:¥4,500 当日料金一般:¥4,800 A席(自由席) 前売料金一般:¥3,500学生:¥3,200 当日料金一般:¥3,800学生:¥3,500 ※S席は最前列中央寄りの10席です。 ※学生は大学生以下が対象となります、当日受付にて学生証の提示をお願いいたします。 ※未就学児のご入場はお断りいたします。 ※チケットはお一人様1枚必要です。 ※開演時間までにご来場いただけない場合、当日のお客様を優先させていただく場合がございます、ご了承ください。開演5分前までにご来場いただくことを推奨いたします。 【キャスト】 ■劇団ZTON 久保内啓朗 高瀬川すてら 為房大輔 図書菅 ■GUEST 京本諷 堀内玲(リアルム) maechang(BLACK★TIGHTS/Sword Works) 木暮淳(劇団土竜) るりこ(TP-SATELLITE) 三浦求(ポータブル・シアター) 堀江祐未(サテライト大阪/魅殺陣屋) 中 聡一朗(激富/GEKITONG) 山岡美穂 岡本光央((株)キャラ/華舞衆 彩り華) BANRI(Sword Works) 小出太一(劇団暇だけどステキ) 野倉良太(東京ガール) 田中之尚(カンセイの法則) 平宅亮(本若/Sword Works) 新免誠也 岡田由紀 亮介(株式会社イリア・モデルエージェンシー) ■アンサンブル 上野剛吉(リアルム) 上原由子 大塚洋太 神田厚也(リアルム) 菊崎悠那(Sword Works) 澤?真矢 土岐省吾(K-HEAT) 難波優華(Sword Works) 三浦環加奈(テアトルアカデミー) 【スタッフ】 脚本・演出:為房大輔 舞台監督:今井康平(CQ) 照明: 牟田耕一郎(ママコア) 音響:Motoki Shinomy(SAWCRNT/common days) サンプラオペレーター:福島健太(本若) 衣装: 鈴木貴子 ヘアメイク:KOMAKI(kasane) 小道具:劇団ZTON 殺陣・振付:為房大輔 ビジュアル撮影:脇田友(スピカ) 宣伝美術:中森あやか(劇団ZTON) 当日制作:秋津ねを(ねをぱぁく) 制作・広報:劇団ZTON 企画・製作:劇団ZTON
キウイボッコ
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- 今日はですね、お話を伺えてお礼にプレゼントを持って参りました。
- 図書
- ありがとうございました。封印?
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- ゆっくりと開けてみてください。
- 図書
- わあ、なんだこれ。可愛い。アーティスティックな妖怪や。
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- 埃の妖怪「キウイボッコ」です。