演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

合田 団地

劇作家。演出家。俳優

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努力クラブ第11回公演 ピエロどうもありがとうピエロ

__ 
ピエロどうもありがとうピエロ。本番10日前になりましたね。
熊谷 
もう?やばいですね。
合田 
そうやで。
熊谷 
チケット売らな。
__ 
合田さん、手ごたえはいかがですか。
合田 
手ごたえ、めちゃくちゃあります。脚本も、演出としても。ここのところずっとショーケースに作品を出させてもらってて、短い作品ですが回数をこなすとやっぱり上手くなりますね。如実に、セリフの運び方とかが上手くなってる気します。
__ 
技術的な面での向上を感じているんですね。
合田 
今回はピエロのような「面白い事をやるヤツ」の話で、ずっとしたかったんです。そういう感じの奴についての話。自分を面白いと思っていた奴が、そこに自信を持てなくなって悩む、という話ですね。
__ 
ありがとうございます。面白さって必ず失われる価値ですから、普遍的なテーマっぽいですね。例えば芝居の稽古で生まれた面白い演技が、練習を重ねると摩耗したりする、みたいな現象もありますよね。面白さと新鮮さってどんな関係を持っているんだろう。
合田 
ビックリする事は常に伴いたいなと思っていて。驚きと面白さは別の事なんですけど、セットになっていないといけない気がしています。稽古し過ぎると自分達に驚きがなくなっていくんですよね。それはあんまり良くないなとは思っています。
__ 
二つを保つコツ、コツって言い方はあんまりかもしれませんけど、どうでしょうか。
合田 
どうなんすかね。ダリが言ってた事なんですけど(うろ覚えなんですけど)「自分がマジメにやっているのかふざけてやっているのか、誰にも知られてはいけない。自分もそれを知っていてはいけない」という言葉があるとどこかで聞いて。それはいつも、心がけるようにはしていますね。
__ 
言いそうですね。
合田 
ダリ言いそうですね。
熊谷 
ダリ(笑う)。
__ 
真剣にふざける。
合田 
そうしていたら、本当に頭がおかしくなる、その瞬間が待っていると思うんですよ。
努力クラブ

2011年3月に佛教大学劇団紫で団長をしていた合田団地と立命館大学劇団西一風で座長をしていた佐々木峻一を中心に結成。現在団員は四名である。京都を中心に活動している。本公演では、ネガティブな題材を用いてコメディをする。不条理なナンセンスコメディなんて自分たちでは言っているが、果たしてどうでしょうか。必見コント集というコントの企画では、今まで笑いの材料として用いられていないものを使って笑いを作ろうと思っています。そういうコントをしようと思っています。なんとなく嫌なものに対しての救いになりたいというのが、僕らの希望です。嗚呼、駄目なものに対して優しくありたい。アトリエ劇研サポートカンパニー。(公式サイトより)

努力クラブ第11回公演「ピエロどうもありがとうピエロ」

作・演出=合田団地 日時=8月5日(金)~8日(月) 8月5日(金)19:15~◇ 8月6日(土)14:00~/19:15~ 8月7日(日)14:00~/19:15~◆ 8月8日(月)14:00~ ◇終演後トーク:月亭太遊 ◆終演後トーク:西マサト国王(B級演劇王国 ボンク☆ランド)・丸山交通公園(丸山交通公園ワンマンショー) 会場=アトリエ劇研 料金=一般前売2,000円 一般当日2,500円 料金=学生前売1,700円 学生当日2,200円 キャスト 安藤ムツキ(劇団月光斜) 池浦さだ夢(男肉 du Soleil) 大石英史 キタノ万里(dracom) 熊谷みずほ 酒井信古 佐々木峻一 杉本奈月(N2) 西野恭一(劇団ちゃうかちゃわん) ヒラタユミ(ナマモノなのでお早めにお召し上がりください。) 丸山交通公園(丸山交通公園ワンマンショー) スタッフ 舞台監督=濱田真輝 照明=吉津果美 衣装メイク協力=若松綾音 制作=築地静香 宣伝美術=きんにく 築地静香 協力=劇団月光斜、男肉 du Soleil、dracom、N2、劇団ちゃうかちゃわん、ナマモノなのでお早めにお召し上がりください。、丸山交通公園ワンマンショー、B級演劇王国 ボンク☆ランド、アートコミュニティスペースKAIKA 共催=アトリエ劇研 企画・製作=努力クラブ

ピエロに対して言いたい放題

__ 
ハイタウン2016 での「道をたずねるコメディ」が大変面白かったです。道を踏み外してそのままどこか知らないところへ言ってしまう彼らの彷徨っている姿が美しかった。
合田 
マジすか。美しかったって感想は初めてです。人によっては怖かった、と思われた事もあるみたいで。
__ 
例えばゲームの画面があったとして、彼らはその枠の黒い部分にはみ出ていくんですよ。そのはみ出た姿を克明に描いていたと思うんです。理由はともかく、あてどなくだけれども、どこかへ。外へはみ出すというのは、内にこだわっているからなのかな、とふと思った。今回のテーマである「ピエロ」も、本質的にはハミ出すみたいなところがあるのかなと思う。
合田 
はあ。
__ 
梅田駅にはたまにピエロが出没して手品を見せてくれるんですけど、私も一度みた事があって、すごくナーバスな気分になった事がある。異物感と健気さと・・・。
合田 
存在として悲しいですからねピエロは。人を喜ばせるためだけの存在ですから。
__ 
なのに子供って、ピエロを見たら絶対に泣きますよね。
合田 
感情が見えないから、じゃないでしょうか。
__ 
大人の姿をしているから、かな。
熊谷 
見た目だと思うんですけどね。人って、普通の人と異なるのは怖いじゃないですか。子供からしたら、いつも見ている大人よりも異様に白かったり鼻が赤くて大きかったりするんじゃないですかね。
__ 
ああ、分かります。人類の生活には登場しないですよあのデザインは。ちょっと思いついたんですけど、子供にしてみたら、ピエロは絶対に自分の要望は聞いてくれない。
合田 
ふふふふふ。
__ 
ピエロは結構厳しい存在なんですよ。
ヨーロッパ企画presents ハイタウン2016

公演時期:2016/5/5~8。会場:元・立誠小学校。

残酷なことに時間は平等

__ 
でもピエロの良いところって、一生懸命には生きているところですよねー。人生、そういう目的があったら良いですよね。これまでの努力クラブの作品には生きる目的を見出せない人がたくさん登場しているように思います。
合田 
ああ登場してますね(笑う)。
__ 
そういう人々って、これから先の生きていく時間に対してどんな捉え方をしているんでしょうか。
合田 
どうなんですかね。でも、わりかし辛くは無いと思うんですよ。努力クラブの脚本に登場してくるような人たちですよね。あの、ちょっと逆説的な言い方になるんですけど、生きる目的がないという状況自体は辛いと思うんですけど、辛い状態で居てるという事は、そんなに辛い状態ではないと思う。変な言い方になるんですけど、辛くないという状況が、辛かったり苦しかったりするんだと思う。生きる目的がないという状況があるために、その状況に甘えられると思うので。何の喜びもないし、辛さもないし、でもただただ時間が過ぎていくという生活をしていくんじゃないですかね。
__ 
自分が抱えている無目的さに凭れてしまう。
合田 
その状況自体は辛くはないと思うんですよ。そういう人に瞬間、楽しかったり辛かったりするのが訪れたら、それは極端な経験になると思うんですよね。それはその瞬間だけで終わってしまう。すぐ消えてしまって、感動するというところまで行かない気がしますね。
__ 
自分に何もないうえ、他人とのつながりを持つのも下手な人は何をするんだろうか。テロか?
合田 
それはきっと体力のある人なんだろうと思うんです。

質問 いのりさんから 合田 団地さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいたいのりさんから質問を頂いてきております。「ジブリは好きですか?どの作品が好きですか?」ちなみにいのりさんは、ハウル・ラピュタ・ポニョ・紅の豚が好きだそうです。
合田 
好きですよジブリ。宮崎駿じゃないんですけど、平成狸合戦ぽんぽこが好きで、あの脱力の感じがすごく好きなんですよ。ドキュメンタリーみたいな感じで進むじゃないですか。
__ 
渋いですよね。戦争年代記ですもんね。
合田 
ヒロインの狸が凄い可愛くて、ジブリの作品の中で一番、あの子が好きです。

太陽の周り

__ 
次の方への質問を頂けたら、と思います。次回は多分、ドキドキぼーいずの松岡咲子さんです。いかがでしょうか。
合田 
あー・・・じゃあ、「不良になりたいと思った事はありますか?」
__ 
なるほど。ちなみに合田さんは?
合田 
あの、昔クラスの女の子に不良っぽいけど凄い明るい子がいて、好きだったんですよ。その時ちょっと不良になりたかったですね。
__ 
あー、分かる。分かりますよ。私もそうでしたよ。太陽みたいな感じの女の子でした。
合田 
結局、何も無かったんですけどね。
__ 
溶けなくて良かったですね。
熊谷 
あはは。
合田 
あー。
__ 
今はどうですか、いわゆる太陽への憧れはありますか?
合田 
そんなに無いですね。土の中も暖かいことに気づいたので。太陽への憧れも無いことはないですけど。

激しく眩しい

__ 
熊谷さんは、いつかどんな演技が出来るようになりたいですか?
熊谷 
観て喜んでもらえたら。でも、演出の理想に近づけたらなといつも思っています。
__ 
どうですか、合田さん。熊谷さんは。
合田 
何か、舞台上で凄く強い気がするんですよ。輪郭がしっかりしているというか。周りの状況にあまり左右されない芯の強さがあって。それと、勘が凄く良いと思います。
熊谷 
うれしい!
合田 
何か、恋される感じ。その強さに委ねられる感じがあります。
__ 
今日は恋の話多いですね。
熊谷 
私がいるからですかね。
合田 
でも努力クラブ、大体恋が出てきますけどね。
__ 
「彼女じゃない人に起こしてもらう」なんてタイトルからしてそうですからね。
熊谷 
あの話、最終的には付き合うんですか?
合田 
あの後どうなるんですかね?ずっとだらだらと付き合いそうですけどね。
__ 
ああ、心中はしなかったのか。あの二人。
合田 
結論は出さなかったですけどね。まああの二人はだらしなさそうですから。
__ 
あの二人は本当に、太陽とは関係ない感じですよね。
合田 
いや、太陽の元におんの辛いですからね。眩しいし。

努力クラブの「個室」

__ 
努力クラブにおける「個室」の表現って面白いですよね。「船の行方知れず」で風俗店がいっぱい出てくるじゃないですか。その中に入ると男性が幼児化したり、男女とも決まった役割を演じるだけで良いという安心感があったり・・・。現実の個室の方はというと、例えば会社のトイレの個室だとみんな、その時だけは孤独になれたりする。
合田 
ええ。
__ 
太陽が眩しいから個室に逃げるのか。
合田 
逃げる、というのもあるかもしれないですね、暑いし。あの、太陽が絡むとちょっと分かりづらくなる気がする・・・
__ 
あ、失礼しました。
合田 
でも、何かから守られる為に個室に逃げると思います。
__ 
孤独を得るための個室が生存に必要だとは思いませんか?努力クラブの作品は孤独に辿りつくための個室そのもののような気がするんですよ。どうでしょう。
合田 
いやでもすごく、肯定はしていると思います。何者にも成れなかった人がみて面白いと思ってもらえたら凄く嬉しい。何か、勇気とはちゃうんですけど、度胸を与えられたらって思うんです。
__ 
度胸。
合田 
ピエロに憧れる男の話なんですけど、自分の殻を破る度胸です。根幹に関わる話なので言葉を濁しながらですけど・・・自分を閉じ込めている相手に対し、反撃する度胸が付いたらな、と思っています。上手くいってない奴って、上手く行っている奴に何かを奪われていると思っている感じなんじゃないかと思うんです。自分の上手くいっている感じを取り戻すための度胸。革命家とか、虐げられてきた人たちのリーダーって勇気をもらうじゃないですか。そんな話になったらいいなと思っています。
__ 
殻を破る勇気ですね。

もっと見てもらいたい

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
合田 
最近、人に見てもらう事がやっと嬉しくなってきて。たくさんの人に見てもらいたいですね。今まではちょっと、照れみたいなのがあって、まあ何か、うちみたいな変に薄暗いのを好きな人にだけ見てもらったらいいやみたいに思ってたのが。
__ 
私も、努力クラブが単純に色んな人に見てもらえるんだったらそれは嬉しいです。何故、そういう風に変わっていきましたか?
合田 
人の影響なんですけど、中村文則っていう小説家がいてて。その人はすごい暗い話を書くんですよ、読むのがいやになるほどの。その人が、「皆に読んでもらいたい」と発言してたのが大きいですね。中村文則でさえそんな事を言うんだったら、僕も、色んな人に見てもらいたいという欲に素直になってもいいかな、って。

GOOD BAR BOOK 関西版

__ 
今日はですね、お話しを伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
合田 
ありがとうございます。あ、前回と同じく本っぽい。(開ける)バーだ。
__ 
まあ、合田さんもそろそろ、バーに行く時期に来ているのではないかと思って。
合田 
でも・・・お酒飲まないんですよね(笑う)
熊谷 
お酒飲まなくてもいいんですよ。お酒じゃないメニューもありますよ。
合田 
そうなんや。バー、面白いですもんね。色々グチってる人とかいて、やっぱり悩みのある人っておるんやなって思いますもん。
(インタビュー終了)