三都市ツアー2012『短編集:仇野の露(あだしののつゆ)』
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。さて、2012年には「仇野の露」の全国ツアーですね。
- 阪本
- はい、2月3月と、三重、舞鶴、岡山に行きます。
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- 頑張って下さい。
- 阪本
- はい。幅広い年代のお客さんに来て頂きたいですね。
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- 初演を京都で拝見したんですが、烏丸の作品としては、取っつきやすいという印象があります。
- 阪本
- そうですね。どんな環境に置かれている人でも、共感したり心が動くようなものを作りたいですね。圧倒的な何か、ではなく。
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- というと。
- 阪本
- もちろん前衛性の度合いが高い芸術作品には大変価値があると思うんですよ。でも、私たちがやるのはそこではないなと思っていて。普段の生活に密着したものの方が、お客さんが受け止めやすいんじゃないかなって。それは、笑いを取る作品のことでもなく、単純な作品を作るという事でもなく。生活で抱えているもやっとした何かを、表現したいと思いますね。
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- なるほど。
- 阪本
- 見て、「はー面白かった」というような感想は出ないかもしれないです。
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- そのぶん、受け止めやすい感覚があるんですね。
烏丸ストロークロック
1999年、当時、近畿大学演劇・芸能専攻に在学中だった柳沼昭徳(劇作・演出)を中心とするメンバーによって設立。以降、京都を中心に、大阪・東京で公演活動を行う。叙情的なセリフと繊細な演出で、現代人とその社会が抱える暗部をモチーフに舞台化する。(公式サイトより)
舞鶴・津・岡山 三都市ツアー2012 『短編集:仇野の露(あだしののつゆ)』
舞鶴公演・公演時期:2012年2月19日。会場:まいづる智恵蔵。津公演情報・公演時期:2012年3月9日〜11日。会場:津あけぼの座スクエア。岡山公演・公演時期:2012年3月17日〜18日。会場:上之町會舘。
劇場で上演している時しか出せない空気
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- 烏丸ストロークロック。私はこの5年くらい拝見しています。2010年の作品、「八月、鳩は還るか」 。大変面白かったです。最後の、部屋の間取りを地面に書いてからのシーン。
- 阪本
- 稽古場でいろいろ試してみてメンバー全員で創っていきました。
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- 痛々しいシーンでしたね。ごっこ遊び療法というか。あのシーンで、照明が回りながら落ちてきて、空間を閉じながら昇っていく演出が見事でした。あそこで一気に世界観が広がるようでした。さて、烏丸の芝居は、何というか空気感があるんですよね。客席を世界の中に取り込んでしまうような気がするんです。
- 阪本
- 最近ようやく、烏丸のお芝居を客観的に見れるようになってきたんです。確かに柳沼さんが作った作品のイメージもあるんですけど。その、劇場で上演している時しか出せない空気ってあるじゃないですか。一緒にお客さんがいてしか体験出来ない空気が。
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- ええ。
- 阪本
- それには音響も照明も俳優も、もちろんお客さんも必要なんだなと、最近は思っています。
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- お客さんがいてこそ、というのはありますよね。それぞれの本番における観劇体験の仕組みを言葉で説明するのは、本当に沢山の説明をしないといけないと思っています。お客さんに与えたイメージで、劇世界が膨らんでいくのが基本的な構成だと思いますが。
- 阪本
- そこに、やる価値があるのかなと思うんです。そこが、他の芸術とは違うところはないかもしれないって。
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- そうですね。しかも、大事な部分が崩れるとすぐ破綻するし。
- 阪本
- 怖いですよね。編集が出来ないですからね。ダンスにしても同じですね。だから余計に魅力を感じるんだと思います。
「八月、鳩は還るか」
烏丸ストロークロックが2010年までの5年を掛けて創作したシリーズ「漂泊の家」。この作品はその総集編。公演時期:2010年3月5日〜14日。会場:アトリエ劇研。
質問 小林 洋平さんから 阪本 麻紀さんへ
「上手だな」って感じさせへん人
- 阪本
- でも、それは過程ですので。苦痛という訳ではないですね。柳沼さんの世界を体現するに当たって、どういう感覚を持てばいいのかを私は何となく分かるんですけど。その、さっき言った空気をどういう風につかめばいいのか。やっていくことでしか分からないし作れないんですよね。
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- 書いた人じゃないから、分からない事もありますしね。では、空気をつかむ力ってどうすれば分かるようになるのでしょうか。
- 阪本
- 私が凄いなと思う俳優は、「上手だな」って感じさせへん人なんです。あ、そこにいるよね、というぐらいの。いらんものをとっぱらって、すっと没頭出来る人をみると、凄いってなります。
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- ええ。
- 阪本
- そういう存在になりたいし、そういう作品に出会えると嬉しいです。だから、役者さんに技術や能力があっても、私はそこはあまり重視していなくて。もちろん上手だなとは思いますけど。
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- すっと、そこに自然に立っているんですね。
- 阪本
- そうです。その作品の世界観をどこまでリアリティを持って立てるかというのが俳優の力なんじゃないかなと思います。
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- 宛書きというのが、一つのアプローチかもしれませんね。だから、全然別の文脈や文法の役柄を振るときには勇気がいるのかもしれません。
- 阪本
- 昔、シェイクスピアの作品に出させてもらった時にデズデモーナ役を演じる機会がありました。まずはオードリーヘプバーンの映画を見たり、高貴な方の振る舞いを研究したりしました。
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- なるほど。
- 阪本
- まず身体が全然違って。でも、自分と共感するところを探して、そこを軸に作っていきました。その役と、自分が生きてきた中で得てきたものがリンクして生まれたものがあれば、その人でしか出来ない演技なんじゃないかなと思うんです。そういうのを見たいしやりたいと思います。それが稽古なんですね。
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- その俳優でしか出来ないこと。
- 阪本
- 私は他の人になるという事が出来ないと思うんですよ。どうしてもその人が出るんだと思います。
深夜
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- お芝居を始めた理由は。
- 阪本
- 高校の演劇部です。ずっとピアノをやっていて、ピアニストを目指していました。
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- あ、そうなんですね。
- 阪本
- 中学校の時、生徒会でサザエさんの演劇をやったんですね。顔を黄色に塗って太陽役をやったら大受けで。それから、ピアノのレッスンが息詰まった時にたまたま演劇部の公演を見て、「これや」って思ってそのまま入部しました。
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- 烏丸に出会ったのは。
- 阪本
- 私が在学中に、柳沼が既に旗揚げしていて。2回目の公演の「クヨウミチ」に手伝いに入ったんですよ。その上演を見て、感動しました。
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- 面白かった。
- 阪本
- 今まで体験した事のない舞台の空気を感じて、やりたいって思ったんです。
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- それから入団したんですか?
- 阪本
- いえ、実は入団前に自分でやりたい作品があって。自分でユニットを組んで2回ほど公演をしてから入っていたんです。
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- どんな。
- 阪本
- 深夜(フカヨル)という。
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- あ、もしかしたら名前を聞いた事があるかも。どのような作品だったのでしょうか。
- 阪本
- 実は近しい人が精神的にダウンして、どうしていいか分からなかったんです。「自分自身が外に出たいと思ってからでいいよ」と伝えたくて。表現したくて。
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- なるほど。
- 阪本
- 2回目は一人芝居で。でも、演出をするというのはやってもらう人に感覚を分かってもらう必要があるんですよね。それが分かって、まずは自分が演じる事が出来てからだと思うようになりました。
ロウソク型ミニライト
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- 今日はですね。お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
- 阪本
- ありがとうございます。これは・・・?
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- 中にREDライトが入っています。息を吹きかけると明かりが消えるんですね。自然な感じで。
- 阪本
- かわいい。これ、ベッドサイドに置いてみます。