演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫
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上達

水波
昔学生だった頃はね、ま一年ていうのが12月じゃなくて3月で終わりっていう感覚で考えてたからね。で大体一年を振り返るときに、この一年で何を得たか、何を学んだかで充実した一年かどうかて考えてたんだけどね。最近そういう風に振りかえらなかったんだけど。
__
ええ。
水波
最近あれやね。ものを覚えるより時間が経つのが早いね。またその、素人に近い状態じゃないから。上達の速度も遅いからね。
__
相対的にそれは遅いでしょうね。
水波
昔はね、周りに特にものすごい人たちがいっぱいいたから。その辺の人らと何年差があるのか、っていうのをいつも考えてて。いま、例えば俺が21歳の時に23歳のひとがいるわけやん。俺が23になった時に自分の能力を見て「ああまだ及ばへんな」ってちょっと焦ったり。この23歳になりかたはいいのかどうか思ったりしたね。回りをみまわして、遊さんとか蓮行さんとかが25歳のときにこれだけやってはったって、で自分も25歳になってどうなのか、それだけのことができるのかどうなのか。
__
なるほど。
水波
自分の目標の人の年齢を重ねて見てたりもしてたけどね。ていうかね、先輩って言うのはいつまでたってもかなわへん気がするし。
__
ああ、それはありますね。
水波
遊さんにはいつまで経ってもかなう気がしないね。いつまで経っても。ほんまに。
__
うーん。
水波
やっぱそうやね、もうあと三、四回年をむかえると30歳になってしまうからさ、それはちょっと危険やなと思うし。やはり30歳になるまでに自分のまあ、形みたいのを作っときたいと思うからさ。
__
なるほど。
水波
その30歳になったときに確固とした形であったり方向性なりがあれば、その後の30年も向かっていけるなあと思う。30歳になってもまだ不明確な状態ではやっぱちょっと怖いし。20代の時はやっぱりまぁ、何をやってもいいと思うし。自分に限った話だけど。
__
そうですねえ。

生き方

水波
高橋君は卒業したらなんかやりたいことあるの?
__
まだ決まってないですけどね。
水波
ああ。
__
サラリーマンが夢ではあるんですけどね。世間でいうほどつまらないとはどうしても思えませんからね。
水波
まあ仕事の内容にもよるけどね。お金のためだけに仕事をするのはやっぱりちょっとつらいと思うしね。かと言って、好きなことと楽なことを一緒にしちゃうとなかなかそれはお金には結びつきづらいし。
__
そうですね。
水波
それにはやっぱ努力が必要だとおもうね。
__
・・・・・・今日ちょっと古本屋行ってて、でなんか生き方についての本がありまして。
水波
ああ。
__
その本にですね、一番重要なのは無駄な努力だと書いてあったんですよ。
水波
うん。
__
ためになる努力は努力じゃないと。本当に成功するために必要なのは一見無駄にみえる努力の積み重ねだと。
水波
うん。
__
高橋尚子選手が「本当に楽しい42.195キロでした」と言ったのは、その言葉の裏にいままで走ってきた何万キロというコースがあると。
水波
なるほど。
__
やはり努力ですね。
水波
うん。
__
努力が嫌いな人っていますかね。
水波
ああ。
__
モノによりますかね。
水波
そうやね。すべてにおいて真面目に着実にっていうのはそれだけで才能やからね。
__
そうですね。
水波
高校の時に真面目だけが取り柄だっていう友達がいたんだけど、何事に対しても真面目に取り組めるってことはそれだけで才能だと思う。まあ逆を返せば皆自分の好きなことにしか努力しないという。宿題を出されなければなかなか勉強しないというか。
__
ああ。
水波
怒られるから塾に行く、みたいな。ほんとに勉強の出来る人は自分で自分に宿題をだしてクリアしていくからね。なかなか自分に対して公平にハードルを置いて、それを独力で乗り越えるってのは難しいと。

ヒース

水波
俺大学4年のときイギリスに一ヶ月行ってたんだけど、だからイギリスの事が書いてある本は全般的に好きかなあ。
__
ああ、イギリスですか意外ですねえ。
水波
行ってたんがねランカスターっていうばら戦争のあったところなんだけど、そこの大学に精華大の交換留学制度で行ってたんやけど。
__
ああ。
水波
うん・・・・・・いわゆる都会な街じゃなくて、でも田舎じゃないんだけど、いわゆる一般的なイギリスの都市っていう。市の中心に城があって、端に駅、それを中心に町が栄えていて、外郭部が住宅地になっていて、さらにその外周には牧場やら農場やらがあると。つまりすべて市内で自給自足であると。市内で需要と供給が成り立っているという。
__
なるほど。
水波
そういうわけなんですよ。
__
京都に似てますね。
水波
うん・・・・・・でも日本と違うのは、日本は生産と消費が分かれていて、それが面白いなと思った。
__
ええ。
水波
俺がホームステイしていた家は学校へ行くまでに農場を突っ切らなくちゃ行けなくて、そこで普通に牛が飼われてて、でその牛から取れた牛乳をこう、町で売っている。それが何か面白いなあと。でも、それは本来至極当然のことなわけで、そう考えると日本はずいぶん歪んだ発達の仕方をしているなと。そんなんもあって、色々イギリスの本を読んでるなあ。
__
ええ。
水波
イギリスは・・・・・・だいぶね、自然を保護していて、遺跡とか土地とかそのままになってるから。
__
へえ。
水波
遭難しかけてん。
__
え!
水波
えっとね、エミリー・ブロンテっていう「嵐が丘」の作者のゆかりの地が日本人向けのガイドブックにも紹介されてて、でそこにすごい行ってみたくて、行ったんよ。だけどルートをちょっと外れただけで誰もいなくなって、
__
ほお。
水波
で日本てわりと起伏が激しいから、どちらに山があるか見るだけで方角が大体分かるんだけど、向こうは平地だから、どっちを向いても地平線しか見えなくって。
__
ああ、分かる分かる。
水波
迷ってヒースの中を走ってたらそのうちに暗くなりそうになってきて。
__
ああ・・・・・・
水波
イギリスは夏は夜が遅くて、九時くらいまでは明るいんだけど、でも六時頃にすでにやばい、道を見つけないと帰れなくなると焦ってたらなんかものすごい向こうの方に人影が見えて。
__
あれあ。
水波
あっ助かったと「おーい」って走ったら羊やって。
__
羊か。
水波
かなり脱力して、でもふっと閃いて、この羊も家に帰るはずだと。で追いかけってたら何とか道に辿り着いた。
__
なるほど。
水波
これが荒野かと。
本の話

どんな本を読みますか?という質問をしたため、本の話題になった。

過去のチラシを見る

__
ああ、あったあった。
水波
おお。
__
大体五年前から京都にいるわけですが、やっぱり、こういった当時のチラシと比べると時代の流れというか、流行とか、進歩してますよね。今の方が正直かっこいい。
水波
うん……たぶん技術とかパソコンの普及とかがあるやろね。この五年なんて、デザインに関してはあんまし変化なんてしてないんやろうけど、デザインのためのシステムが簡単に個人利用できるようになったのが大きいだろうなあ。あ、これ昔参加してたやつだ。
__
そうなんですか。懐かしいですね。あ、「風とともにドリフ」ありますよ。
水波
あー。昔ニットこういう路線でいってたよね。いまはもうこれじゃいけへんね。
__
確かに。あ、クセノスは変わらないですね。
水波
長い劇団だからね。ああでもこの時期でもだいぶ洗練されつつあったな。このデンユウの尚のチラシデザインが京都の学生劇団でも有名になってね。
__
どんなですか。
水波
ケッペキのRomanticWorriorsっていうユニットがあったんやけど、そのチラシデザインしてて。今のデンユウみたいになんか芝居のチラシじゃなくて、映画のポスターに近くって。こんなかっこいい芝居のチラシが!って。
__
そういえば映画のポスターってやっぱかっこいいですよね。
水波
だから噂になってん。チラシのデザインってそれまであまり重要視されてなかったところがあったからね。デザインも難しかったし。白黒でコピーしたみたいなのや、それに色がつきました程度のものが多かったし。
__
99年の時点でか。なるほど。パソコンの普及でしょうねやっぱ。
水波
やる気があれば、技術の習得はわりと簡単なんだけどね。
チラシのデザインの発達

小劇場のチラシのデザインは昔に比べ、格段にレベルが上がっている。本稿にある通り、個人のDTP環境が発達したためなのは当然だが、するとその昔のチラシでは人が集まらなかったかというとそうでもない。 問題は、チラシを作る環境と技術が浸透し、作品の内容やトーンをチラシから伝える事が出来るようになったとは言えないか。これは、濃密な関係が演者と観客の間に結ばれやすい状況が発生する事を意味する。これから創作する作品の内容に共感する観客を集めやすくなったからだ。

(インタビュー終了)