ぼーっと
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。11月はLINX'S 03 と一人芝居フェス と、お疲れさまでした。最近はいかがでしょうか。
- 上原
- まあ、ぼーっとしてますね。立て続けに芝居していたというのもあって。今は直近に予定がないので、久しぶりに。
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- いいですよね、ぼーっとする時間。大事だと思います。
月曜劇団
2001年3月旗揚げ。主に大阪、神戸など関西を拠点として活動中。上原日呂と西川さやかの旗揚げメンバーに加え、2007年からはヤマサキエリカが入団。現在はこの3名で構成されている少数精鋭ぽい集団。シュールで明る暗い会話劇をベースに、なんちゃってダンスやコスプレなども取り入れたいざというときに一言でジャンルを説明しづらいお芝居を展開中。(公式サイトより)
LINX'S 03
公演時期:2011/11/18〜21。会場:シアトリカル應典院。
最強の一人芝居フェスティバル
公演時期:2011/11/24〜27。会場:in→dependent theatre 2nd。
底辺にあれば、それでいい
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- 私が初めて月曜劇団を知ったのは、「背骨と灯台」のチラシを拝見した時でした。カラフルだったり目を引く要素があったりと目立つチラシが多いなか、モノトーンの本チラシというのは初めてに思いました。とはいえチープでもなく、シンプルで美しいなと。
- 上原
- ちょうどその頃、カラーのチラシが多かったので、逆に目立つやんと思ったんですよね。
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- その、月曜劇団の作品性について。勝手に思っているのですが、演技自体はエンタメ的な方向でありながら中身はドライな感触があるように思います。そこが、「背骨」のチラシとイメージが重なる気がするんです。
- 上原
- 芝居を見るのが好きなんですけど、重たい内容の芝居を見ると「別にええやん」ってなるんですよ。現実世界の方がひどい事いっぱいあるし、お芝居を見に来ていながらそういうものを見たくないなと。
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- ええ。
- 上原
- 自分が作品づくりに関わる時は、重い伝え方をしなくてもいいんじゃないかと思うんです。底辺に訴えたいものがあれば、それでいい。むしろ軽い演技の方が、伝えやすいんじゃないか。その方が普通に見れたりする。むしろ、重い経験をした人には何となく伝わると思うんです。
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- 伝わりやすさ。
- 上原
- どう取ってもらってもいいかなと。全員が全員、こう思えという作り方はしていないんです。見た人それぞれ、感想が違っててもいいなと思います。
「なら、こうしてみたら?」
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- LINX'Sで上演された「月曜劇団の会議は踊る」。これは、まさに人によって感想が変わる作品だと思いました。路上でのシチュエーションコメディとも取れるし、お笑いを取るための単純なコントかもしれないし、「お馬鹿」が生んだ混乱の先に結束があるという希望的な結末というメッセージもある。
- 上原
- 座長の西川が色々考えて書いたものですが、20分に要素を詰め込むとなるとやはりああいう形になりますね。僕は演出をするだけなので、内容ではなく見せる事に責任を持っています。その分業性が上手くいってるのかもしれません。
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- 上原さんの演出のやり方について。「会議〜」を拝見して、役者の出ハケの整理が非常に優れているなと思ったんです。本番に出るライブ性を確保しながら、限られた稽古期間で役者に良いパフォーマンスをさせる指示や、コンディションの持っていき方のスマートさを感じたんです。
- 上原
- 稽古をやっている時に役者の体が反応しているのが見えるんですよ。(ああ、この人はこうしたいんやな)って。「なら、こうしてみたら?」って言えるんです。これは僕も役者やってるから、そのあたりの生理が見えるんです。
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- なるほど。だからか、すごく筋肉質な作品だと思いました。演出された無駄なシーン運びで、結果、ストレスのない観劇体験でした。
- 上原
- そうですね。ストレスのないようには気をつけていますね。でも「絶対的にこうしろ」みたいな事は言わないです。その人がどうしたら伸びるか、生き生きするかという事しか考えていません。だから、演出家としては大した事ないんですけど・・・
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- いえいえ。どうしたら伸びるか、という事を考える。つまり、役者がどうしたらきれいに見えるかという意味での交通整理だけではないんですね。
- 上原
- 稽古期間なんてずっと流動的なんですよ。完結へのプロセスをあえて考えない。ここでこう見せたいというのは何となくあるんですけど、それは100じゃないんです。稽古場でお互いが持ち寄ってきたものを合わせて、100に作っていく感じですね。
ウソをつきたくないのかも
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- 一番面白かったのは、回想シーンに入る前に上原さんが「ハッ!!」と客席に叫ぶネタでした。「言われてはっとする」というテキストの演技を過剰、むしろ客席に向いて叫ぶという、もの凄く思い切りのよいネタだと思いました。
- 上原
- あれはもうキッカケというアピールですね。音響さんにタイミングを教えるという(笑う)
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- 何というか、ポイントを押さえながら爆発的な何かも出来る感じですが、例えば失敗する事はありますか?
- 上原
- よくありますよ。シーンにまるまる出てこなかったり、セリフが全く出てこなかったり、小道具壊したり、リアルに役者を殴ったり。
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- そんな事があるんですか!
- 上原
- 小道具の棒で相手の尻を刺してしまって、痔を悪化させてしまった事もあります。手加減が出来ないというか・・・何でしょうね。行ける所までの実感がないとだめなんでしょうね。
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- 納得出来ないとだめ。
- 上原
- ウソをつきたくないのかもしれないです。お芝居という大きなウソをつくのに、小さなウソをついたらあかんって。小さなウソをつくと、大きなウソは成立しなくなる。
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- 小さなウソとは。例えば、言えないセリフを言えてしまう事だったり?
- 上原
- 気持ちがないのに段取り通りにやってしまったり。あれ? って思うと、お客さんも分かるんです。すると崩れてしまうんですね。殺陣だったら、切れないという約束ごとがあるから成立するんですが。芝居の部分でそういうのがあるとちょっと嫌やなと。
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- 見てるこちらも、それはすぐ分かると思いますけどね。
- 上原
- だから、小さなウソはなるべくつかないようにしたいです。いやー、上手くなりたいですね。
2割
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- 勝手な話、私は上原さんを演技の天才だと思っているんです。別にお世辞を申し上げている訳ではなく。
- 上原
- ほほ。
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- イメージを観客の予想よりずっと素早く的確に表現する俳優を天才だと思っているんですが、上原さんは正にそれだと。
- 上原
- そうした勘は、関西の文化である漫才やお笑いが元かも知れませんね。ツッコミみたいに、反射的にやれるというのがあると思います。さらに、月曜劇団の場合は素の部分を出す事があるんですよ。演じているのが8割、素の部分が2割となるようにあえて残しています。
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- それは、ライブ性を大事にするからですか?
- 上原
- そうですね。だから以前客席で携帯が鳴った時、芝居止まったんですよね。
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- えっ。
- 上原
- 僕が出ていたシーンで、携帯が客席で鳴って。振り向いたんです。
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- 素晴らしい。
- 上原
- 僕がバーテン役で舞台に立っていたんですが、「オーダーでーす」とかいう着ボイスが鳴ったんですよ。「注文受けるの俺やから!」ってなりました。
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- すごいですね。だからこそ、客席と空気を共有出来ているのかもしれませんね。「素の部分を残す」。どのような効果があってほしいと考えておられますか?
- 上原
- 効果的には、同じ時間を過ごしながら一緒に覗いているという事になってほしいですね。月曜劇団の舞台セットは3方がパネルになっている事が多くて、客席との間に透明な壁があって、それを越して見て貰ってる感覚があります。こちらが、演技の中で素になっている部分を残している事で、お客さんと一緒に醒めながら自覚的に作品を覗けるんんじゃないかと思うんですね。
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- では、その空間の中の人々には、どのような存在であってほしいですか?
- 上原
- 自由であってほしいですね。誰よりも。台本通りですけど(笑う)でも、どんな役でも楽しんでほしいと思います。
まだあるのかもしれないのに
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- では、自由ではない俳優とは?
- 上原
- うーん・・・、同じ事ばっかり出来る役者ですね。スキルとしては重要なんですけど。たとえばコンディションというものがあるんですが、それを無視して同じ事ばっかりやってしまう。「それはあなたじゃなくてええやん」って。
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- ええ。
- 上原
- そうじゃなくて、その時のコンディションに合わせて、最低ラインは超えた上で、自由にやれる役者がいいんじゃないかなと思います。
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- 不自由な俳優。
- 上原
- 可能性がまだあるのかもしれないのに、演出家の指示を守っているのか、追求しようとしない役者は、自由ではないと思いますね。
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- それは多分、一つの演技の後ろに様々な選択肢がある事を忘れて精度ばかりを上げようとしているのかもしれませんね。
- 上原
- 恥をかくことって大事なんですよ。装う事も重要ですけど、失敗しないようにしていたら、経験は広がっていかないんじゃないかな。
質問 植田 順平さんから 上原 日呂さんへ
「どくはく」
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 上原
- 役者として借り出された時に、求められた事を楽しんで仕事したいですね。
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- 私も、楽しんでいる上原さんを見たいです。
- 上原
- (笑う)どんな舞台でも楽しみたいですね。
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- 演出者としては。
- 上原
- 応えてくれる俳優には、最大限報いたいと思います。こないだの一人芝居の大西さんみたいに。
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- あれは凄かったですね。
- 上原
- あの作品は、もうそのまま素直に演出させてもらった感じですね。
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- 「どくはく」大変面白かったです。演出をされておりましたね。途中から、見てはいけないものを見ているような気がしていました。
- 上原
- 脚本の力ですね(笑う)。実はめっちゃ細かく段取りを付けました。大西千保という役者の存在感がずば抜けている上に踊れるので、緊張と緩和を上手く使えるんですよね。30分間ずっと緊張していても面白いかなと思って作りました。
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- 最後、大西さんにしては珍しく汗だくになっていましたね。
- 上原
- そうですね、普段大西さんはそんな状態になりませんからね。
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- 役柄は「思いの強い人」でしたね。
- 上原
- 内面から出てくる腹立たしさを鍵に作りました。彼女の中ではグルングルンしたと思いますよ。せっかく、演出が別だから「どくはく」は玉置君がしないであろう遊びをしてみたり。色々な試みに応えてくれたと思います。
ちっちゃくたってイタイワニー
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 上原
- 貰えるものなんですか。
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- もちろんです。どうぞ。
- 上原
- (開ける)ワニ。面白そうな奴じゃないですか。
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- 3〜4人が遊べます。皆さんで遊んでみてください。
- 上原
- 劇団員と遊びます。