演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

小島 聡太

舞台監督

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スタッフワーク

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最近どうですか。
小島
今週・先週は忙しさのピークでしたね。
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多忙ですね。
小島
ようやく仕事が来るようになったので。月3本ペースで。
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舞台監督の仕事っていうのは、まあ例えば先を読んで仕事するみたいな事だと思うんですが、スタッフワークについて、何かお考えになっている事はありますか。
小島
そうですね。去年とかは、主に他の現場で学んだ事を自分の現場で真似というか生かして仕事していたんですが、ここ最近は、自分の中でそれらを順序立てて整理して作業出来るようになってきましたね。こういう話が来たら、こういうリアクションをする、みたいな態勢がちょっとづつ整ってきました。まだまだですけど、仕事に出来てきているというのがありますね。
__
現場を回せるっていうのが当たり前になってきたと。
小島
そうですね、昔は要望を言われて初めて「あ、じゃあやろっか」となっていたんですが、最近はもう、こういう事したいんじゃないかなという読みが出来るようになってきたと思います。
__
はい。
小島
ですが、まだ作品を見れるようにはなっていないので。現場で作る作品に対する自分なりの解釈を持つ、それが出来る状態になっていければと。もちろん、そうなっても口出しするわけじゃないですけどね。舞台監督の仕事ではないので。
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色んな、現場を渡り歩いていると思うのですが、これはという自分なりの特色などは。
小島
そうですね、今、それを探してる所なんですが。依頼を下さっている方が僕のどういう辺りを買ってくださっているのが考えますね。期待されている分、ちゃんと出来るようになりたいですね。
__
はい。
小島
逆に、僕が舞台監督を受けた時には、これはちゃんとしてくれるなあ、という特色を持ちたいなあと考えています。・・・どういう方向ですかね(笑う)?
__
(笑う)。
小島
模索しているというか。色んな舞台監督さんを見て、色々考えるんですよ。この人はこの部分が強いとか。言い方おかしいですけど、この人に頼んだらこれは絶対大丈夫だ、とか。まだ、自分のこれが売りです、というのがないので。まあ、そういう所を作るのが今後の目標ですね。
__
なるほど。
小島
逆に、最近だんだん、単発で受けて、それ以降の次回公演とかもお願いされる事も増えてきているので。一度受けた劇団さんのやり方はお互いに覚えていますので、やり易いですね。
__
ええ。
小島
その上で、公演をさらに良いものにするための何かを提供出来ないかと考えますし。そうなれば、劇団の演出さんと僕とで、互いに良い物を持ち合う、という形になりますね。
劇団衛星

京都の劇団。代表・演出は蓮行氏。既存のホールのみならず、寺社仏閣・教会・廃工場等「劇場ではない場所」で公演を数多く実施している。

京都大学西部講堂

京都市左京区。京都大学の施設でありながら、演劇・ライブなど様々なイベントが開催される。

汲み取る力

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最近何か、印象に残った現場ですとか、そういうのを伺っていきたいんですが。
小島
この頃は大阪の現場が増えてきたんですね。元々は京都の学生劇団さんからの依頼が多かったんですが、大阪の劇団さんが呼ばれる事も多くなりました。
__
はい。
小島
で、ちょっと独特な事をされる劇団さんに依頼を受けまして。まあ、凄く過激なんですよ。開演して明転したら全裸の男がいたりとか。それで客席に飛び込んだり。
__
過激ですね。
小島
劇場からストップが掛かるんじゃないかとか、そういう恐れもあったり。ですが演出家さんはそれを凄くやりたいんですよ。自分が訴えたい事をお客さんに提供するためには、こういう演出手法を取らなければいけないんだ、という主張を持った方だったので。それを踏まえて。もちろん、それが嫌だというお客さんもいるので。途中で帰ったり。
__
なるほど。
小島
または、ホールさんからちょっとこれは、と言われる場合もあるだろうと。でも演出家さんの意向を形にするのが僕の仕事なので。一旦それを汲み取って、こういう形なら出来ますよ、と提案したり。途中退席されるお客さんの為の退路を作ったりと。色々勉強になりましたね。
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凄いですね。
小島
まあ、最終的には、そんなに帰られるお客様も出ず。アンケートには色々書かれていたのですが、まあそれは作品面の事ですから・・・。

職業

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しかし、舞台監督。かなり独特な職業ですよね。
小島
そうですね。
__
やはり、京都だけで営業するには限界があるんでしょうか。大阪からも受注しなくてはならないと。
小島
そうですね。やっぱり、京都だと公演の本数が限られてまして。しかも京都に舞台監督さんはもっといるので、限られた現場をその人数で取り合うという事になりますね。結構、余ってます。そうすると、外部に仕事を求める事になります。大阪でも同様に余ってるのですが。
__
ありがとうございます。所で。私が考えるに、舞台監督って作品自体を作るのではなく、もちろん公演をマネジメントするのでもなく、単純に舞台を製作するという立場にいらっしゃる訳ですけれども。
小島
そうですね、大きく言うと作る側ではないですね。実際に現場を進行させ、上演成立の為のバランスを取っていく立場だと思います。とは言っても劇団さんはそれぞれ、作品の製作過程において舞台監督・演出の比重の偏り方が違うんですね。
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つまり、演出家さんによっては、作品の演出に非常に重点を置いている人もいれば、その公演の社会的な役割を考えている人もいる。はたまた、スタッフワークを含めた舞台作品としての出来栄えを強く意識する方もいる、という事だと思うんですが。そうした中で、どのような現場がやり易いですか?
小島
まあ、何がやり易いかというと、舞台監督への要望が明確な現場はやり易いです。「ここをこうしたい」、「こうしたいんだけどどうすればいいの」とか。
__
なるほど。
小島
もちろん、そういう現場ばかりではないんですけれども。一番困るのは、それが誰の仕事か明確にならないという現場ですね。混沌としてきて。だれが最終的に責任を持つのか、とか。例えば舞台装置の設置場所を最終的に決めるのは、美術さんなのか演出家さんなのか舞台監督なのか。明確にならないと、非常にやりにくいと。あとは、現場に呼ばれるという立場では作品内容については立ち入れないんですね。意向を尊重する仕事なので。「これをどこに置きましょう」という質問に対して、結局演出家さんに振りなおすしかないという。それに終始してしまう現場だと、大変んだなと。
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そうですね。
小島
逆に、演出家さんがしっかり意見を持っている現場ですと、その意見は汲み上げやすいですね。僕の役割がしっかり決まっていなくても、例えば美術さんに振る事が出来安かったり。
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なるほど。
小島
その劇団さんなり演出家さんなりのやりたい事があって作品がある訳ですから。それらが明確に出てくると、非常にお手伝いし易いですね。それを、如何に劇団さんが望む形で具体化して無理なくお客さんに提供するか、というのが、仕事だと思っていますので。

スタンス

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やっぱりこう、これも先入観だとは思うんですが、演出家をやってみたいと思っている人は潜在的にかなりいると思うんですよ。受信者が手軽に発信者に成り代われる時代ですし。
小島
はい。
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そういう人の希望というか、それをうまく形にするという役割は、今後どんどん必要とされていくのではないかと思います。プロデューサーなり、舞台監督なり。
小島
それに関してですが。特に、僕より若い方で、舞台監督をお願いされる事がありまして。それは凄くありがたい事で、引き受けるんですが。なんかちょっと、舞監の仕事が凄く大変だとか、何だろう、大事だとか偉いとか、そういう意識が先走りしていて。
__
ええ。
小島
「舞監さんこれどうしよう」とか、「こういう事がやりたいんですけどどうすればいいんですか」というのを振ってくれないんですね。何か違うんですよ。「こういう事したいんですけど、いいんですかね?」というスタンスで。
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はい。
小島
「こういう事したいんだけどどうすんねん」というスタンスで来て欲しいんですよね。僕としても、関わる作品ですからそこに意見を持つんですよね。演出家からの、そういった相談を受けて色々提案が出来る。そういう環境が出来ればいいなと思ってます。

MOLSKINのカードケース・ブック

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今日はですね、素敵なお話を伺わせていただけたお礼に、プレゼントがありまして。
小島
うわ。マジすか。ありがとうございます!
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どうぞ。
小島
人から何かを貰うのは久しぶりです(開ける)。おお。
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何か、チケットを入れる手帳のようなものみたいです。
小島
ありがとうございます。色々入れます。名刺とかチケットとか。大事に使います。
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ええ。
小島
わーい。
(インタビュー終了)