トリコ・A演劇公演2011「和知の収穫祭」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近は、和知の収穫祭シリーズに入っておられますよね。和知での公演、行きたかったのですが・・・
- 山口
- いえいえ。遠いところでしたので。
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- 手応えとしてはどのような。
- 山口
- まず場所がすごかったんですよ。明隆寺観音堂で、国の重要文化財に指定されているところなんですよね。音楽も、照明も良かったし。私は演出というよりはセッティングに徹していたみたいな。照明も役者も、全部自分たちでやってくれた感じで。
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- いやいやそんな。そういえば、第一部の公演をみる限り、あまりストーリーを重視した作品ではないのでしょうか。
- 山口
- ストーリーはあります。男の人が、妻と子供を捨てて理想の女の人を追いかけて出ていってしまうという。
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- そうなんですね。めっちゃ面白そうですね。ピカレスクじゃないですけど、色悪ものというか。
トリコ・A
トリコ・Aは、山口茜が「自分で戯曲を書いて演出をしてみたい」という安易な気持ちを胸に、1999年、勢い余って立ち上げた団体です。当初の団体名は、魚船プロデュースと言いました。以来11年間、基本的には上演ごとに俳優が変わるプロデュース形式で、京都を拠点に演劇を上演してまいりました。やってみると意外と大変だった事が多い様に思いますが、皆様の暖かいご支援のもと、現在も変わらず活動を続けております。(公式サイトより)
トリコ・A 演劇公演「和知の収穫祭」
オープニングパフォーマンス 「Scenic−風景−」公演時期:2011/9/4。会場:京都府京丹波町大迫・とうがらし畑(雨天の為山口自宅にて)。和知公演「Fete−祝祭−」公演時期:2011/9/24〜25。会場:京都府京丹波町下粟野 明隆寺観音堂。京都公演「React upon−反応しあう−」公演時期:2011/10/28〜31。会場:元・立誠小学校。
街を離れて
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- そういえば、和知に住んでおられるんですね。いかがですか?
- 山口
- 私、都会にいると周りの人の気配がすごく気になるんですよ。越してからはすごく静かで快適です。音楽要らないんですよね。
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- そうですよね。私も田舎育ちだったので分かります。
- 山口
- おおっ。どこですか?
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- 静岡県の、富士山の近くです。もう、近くの家まで車を使わないといけないくらいの田舎で、地平線が見える酪農地帯でした。
- 山口
- あ、私が住んでいるところと一緒ですね。
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- 冬になると、静かさの音が聞こえるぐらい静かで。
- 山口
- そう。
トリコ・Aがやってくる
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- それぐらいの田舎だから、じゃないですけど、地元の人としてはきっとワクワクしてたと思うんですよ。娯楽がないから、とかじゃなくて、僕らが住んでいる町にサーカスが来るってきっとすごく刺激的な事だとおもいます。
- 山口
- そうやと思います。お世話になってばかりなのに、律儀に見にいらしてくれるんですよ。ご近所さん同士の仲が良くて。都会と違ってネットワークの力が明らかに強いじゃないですか。
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- 強いんですよね。私の村もそうでした。
- 山口
- みんな知り合いみたいな。
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- とはいえ、本番が終わるまでどんな反応が来るか予想が付かなかったのでは。舞台芸術に日々触れていたら話は別ですが。
- 山口
- 地元の人は小劇場を見た事がないから、楽しんでもらいたいと思ってパンフレットにあらすじを書いたりしたんですよ。だから、訳が分からないというご意見は無かったです。
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- やっぱり、地元の文化遺産での催しですからね。その上で評判になっているというのは良いですね。
面白いということって
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- 私が最初に見たトリコ・Aの作品は、「肉付きの面 現代版―絵―」 でした。それからは断続的に拝見しています。凄く好きなんですよ。
- 山口
- そんなー。ありがとうございます。そう仰って頂けるだけで。
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- いえいえ。ぜひ伺い事があるんです。私はトリコ・Aの作品を拝見する度に、「男性らしく・女性らしく」という意味でのジェンダーを強く意識するんですが・・・
- 山口
- それはもうちょっと詳しく聞きたいです。
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- 私が勝手に思っているだけの事かもしれませんが、何だか演劇で受ける面白さの根元って、いわゆる男性的な攻撃的発想からくる事が多いんじゃないかなと思うんです。これはもちろん、実際の性とはあまり関係なく、文化的な役割としての男性性で。一方トリコ・Aの作品は豊かなイメージがあって、それが女性性的な印象があります。たぶん、論理的にユーモアを作り出していくんじゃなく。
- 山口
- ええ。
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- だから、最初に反発が自分の中に立ち上がる事もあるんです。ラストに近づくにつれて、良さに転化していくんですけど。面白さを定義づけて構築する余裕よりも、良さを生み出す力強さを感じる。
- 山口
- 私は自分の作品を、女性的なものと言うよりは、未熟だなあと思っています。その未熟さの事を女性的であると言うならば、私はその女性的な部分を良いとは思わない。それに、私が常々感じる面白さは、その男性性的な面白さなんですよ。・・・昨日、子守歌代わりに「笑の大学」のDVDを見たんですけど、めっちゃ面白かったんです。ああいうのを見ると私にはとても真似出来ないと思うんですが、でもこういうレベルにまで行きたいとも思うし。
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- はい。
- 山口
- 未熟であるが故の訳が分からなさには、安住したくないです。
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- いや、感性に訴えかける作品と、「せりふのないガラスの動物園」 のように構成の強い作品もあって、何か意識されてるんじゃないかなと思っていました。あれは、本当に「男性性的な」面白さがあったと思う。
- 山口
- えー。ホンマですか。無意識ですね。明確に分けてないです。
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- そうなんですね。意外です。「ガラスの動物園」は本当に面白かったです。最初は脚本のシーンをダンスで表現したコンピレーションかとかと思わせておいて、徐々に物語りが姿を現して、最後は会話劇が展開するのはゾクゾクしました。
- 山口
- ありがとうございます。そう仰って頂けて。頑張ります。
接点
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- 劇団のポジショニングについて。KYOTO EXPERIMENT のシンポジウムでこういうテーマがあったんですが、劇団が演劇村及び社会の中で生きていくには、自分たちがどういう団体であるのかを作ってプロデュースする事を意識していくべきだという話がありました。トリコ・Aは、どのような団体でいたいですか?
- 山口
- うーん。常に、演劇を全く見ない人たちと関わっていたいですね。活動を続けていると、どうしても狭いしちっちゃいから、その中で自分がどういう風に見られているかを意識し始めると勘違いを起こしやすいから。それを避けるために、全く関係ない人たちとの接点を持っていたい。「演劇活動をしています」という事を声高に言うんじゃなくて。
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- 大事な事ですよね。
KYOTO EXPERIMENT
KYOTO EXPERIMENTは、京都国際舞台芸術祭実行委員会(京都市、京都芸術センター、公益財団法人京都市芸術文化協会、京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター)が主催する、国際舞台芸術フェスティバル。(公式サイトより)
フィンランドから
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- さて、フィンランドに2年もの長い間研修にいらしていて 、まずはいかがでしたか?
- 山口
- 今年の9月で日本に帰ってきて、ちょうど2年になりました。これまでは、人にそれを聞かれたら「しんどかった」って答えていたんです。でも、最近になってようやく、余りにも貴重な体験だった、楽しかったと思えるようになりました。
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- なかなか行けないですからね。
- 山口
- ヨーロッパの町並みを何かで目にしたり、向こうの友達から連絡が来ると、郷愁が生まれるんですよ。そんなこと、行く前はなかったなあって。
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- それは絶対そうですね。住んでいた町ですもん。
- 山口
- 行ってみてください。
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- ああ、行きたいなあ。私、実は中学生の頃はホームステイしていました。
- 山口
- どこですか?
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- アメリカの、インディアナの酪農地帯でした。
- 山口
- 酪農に縁がありますね。
フィンランドに研修
山口氏は2007年から2年間、文化庁新進芸術家海外留学制度研修員としてフィンランドに留学している。
質問 田中 遊さんから 山口 茜さんへ
集中への入り方について
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- 今後、山口さんはどんな感じで攻めていかれますか? 普段の生活でも何でも結構です。
- 山口
- 最近になってようやく、集中に入るやり方を掴んだんですよ。でも、そうするとボロボロになってしまって。
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- どのようなやり方ですか?
- 山口
- とりあえず、自分が男とか女とかを忘れるんですよね。自分が女だと考えている内は集中出来ないんです。朝起きた格好のまま、洗面所にも行かずに書き初めて。一日中、書く事が頭から離れないようにするんです。
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- ハードですね。
- 山口
- でも頭だけが先行すると身体がボロボロになるんですよ。どうやったらバランスがとれるかなという。
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- それは、体力を高めたらいいんじゃないですか?
- 山口
- そうですね、何か始めようと思って。
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- ウォーキングすると心肺能力が上がって、体が酸素を取り込む力が上がるんですよ。私もやっていますが、いいですよ。
- 山口
- 歩くか。分かった。
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- さて、今後、トリコ・Aとしてはどんな作品を作っていかれたいですか?
- 山口
- 単純に、お客さんが楽しんで笑って帰ってくれたらそれだけでいいです。道のりは長いですけど、頑張ります。
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- 分かりました。個人的には、踊る岩田由紀さんがみたいですね。クリスチネの時に、ガスマスクを付けて踊る姿が可愛かったです。
- 山口
- 私もそう思います。踊ってもらいます。
中深の絵皿
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- 今日は、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 山口
- ありがとうございます。
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- ちょっと割れ物ですので・・・
- 山口
- あ、可愛い。
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- 絵皿です。ちょっと変わった形ですが、少し深いので便利かと思います。カレーとか。
- 山口
- 私、フィンランドに行ってからお皿集めに凝りだして。ありがとうございます。
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- それは良かったです。