ブレヒトだよ!
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- 今日は宜しくお願いします。すみません、稽古後の疲れているところを。
- 小林
- いえいえ。宜しくお願いします。
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- 最近は、ブレヒトの稽古が。
- 小林
- はい、最近は毎日。昨日は公開稽古だったのですが、お客さんも来て頂いて。
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- 反応はいかがでしたか。
- 小林
- お客さんも劇団員もおおっという感じになりました。詳しくは話せないのですが、ある仕掛けもあったりで・・・。
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- サプライズもあったと。今回の「ブレヒトだよ!」、小林さんはどんな感じの役回りなのでしょうか。
- 小林
- 銀行のお姉さん役ですね。ぽーっとした感じの性格なんですけど。まあ、稽古場の仕事としては、植村さんがいない時に台本の製作を手伝っています。あとは、日替わりギャングのスケジュール管理とかですね。
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- 昔の根本君の役割みたいな感じかな。衛星での小林さんの役割って、そういう感じですか。
- 小林
- そうですね、制作の現場業務が中心ですね。挟み込みの管理とか、置きチラシとか。後は、例えば珠光の庵という作品では、有り難いことにいくつかの和菓子屋さんなどに協力して頂いているんですが、その周辺の営業ですね。
難解さ
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- 小林さんが衛星に入ったのって、何がきっかけなのでしょうか。
- 小林
- 最初に関わったのはティーンズステージですね。高校から入ろうと思ってたんですが、他の事もやろうと思って部活動をしていました。2006年の大陪審を見て、改めて入団しましたから、今は2年目です。
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- 衛星の芝居のどこが面白いと思ったのでしょう。
- 小林
- それは凄く話したい事なんですけど・・・まず初めて見た小劇場が衛星だったんですね。中学生の時に「千年王国の避難訓練」を見たんですけど。やっぱりこう、凄い衝撃を受けました。その衝撃をどう言葉で表していいか分からないんですけど。もちろん、小劇場ならではの刺激もありましたが、あの、難解さがあるんだけども全然置いていかれないところとか。
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- 確かに、あの感覚はちょっと説明出来ないですよね。
- 小林
- ええ。あと、個人的に蓮行さんと感覚が近い部分がありまして。何かの選択をする時とか。作品作りの方法にしても、感覚的に合うというか。
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- 作品作りの仕方ですか。
- 小林
- はい。植村さんも言っていたかもしれないんですけど、衛星の稽古場では口立てという方法を使って作品作りをしているんです。そこでは稽古場での会話で出てきた話題やネタがそのまま作品に繋がったりするんですね。脚本ありきで作る作品とは全く違っていて。面白いです。
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- 今回は銀行強盗の話ですね。
- 小林
- ええ、銀行強盗をする劇団と、もう一つの劇団の主宰が銀行で鉢合わせするという。実はこれは、まんまそうとは言えないけども蓮行さんの二面性を表しているという捕らえ方を稽古場ではしていて。お金の事でどうしようもなくなった劇団が、最後にはどうするのか、という。
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- 追い詰められた劇団か。
- 小林
- 例えばこれを見た演劇人や、他の追い詰められた人達とかも、色々考えちゃったりするんじゃないかなと思います。
ティーンズステージ
京都市東山青少年活動センターが十代の青少年向けに実施していた、演劇公演の発表を最終目標とする企画。劇団衛星代表の蓮行さんがこの2001年度の演出を受け持っていた。演目は別役実作「マッチ売りの少女たち」。
千年王国の避難訓練
劇団衛星作品。初演・2000年5月
力
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- それから色々な業務に関わっている小林さんなのですが、今後はどうなっていきますか。
- 小林
- 結構、ドライで現実的な性格ですので・・・。大学に入った時にこんな考えを持っていまして。3回生後半から就職活動するじゃないですか。その時点で自分に芽がないと思ったら演劇を辞めようと。それをファックさんに言ったら「芽がないってどこで判断するの」て笑われたんですね。性急に色々な事を決めてしまう節があるんですが、20代のうちは迷ったっていいんだと思うようになりまして。色々な事をやっていいんだと思っています。
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- では、もし、今後小劇場で生きていくとして。自分の成長に必要なものはなんですか?
- 小林
- 自分をプロデュースしていかなければならない、という事ですね。「ブレヒトだよ!」の企画で、100人にチケットを渡しに行くという企画をやっていまして。
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- やってますね。
- 小林
- そのチケットを売る為に、人に知って貰わないと駄目じゃないですか。つまり、宣伝の事ですね。
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- では、今ご自分に欠けているものと言えば。
- 小林
- それは最近言葉に出来たんですけど、「失敗を恐れない」。衛星は、世代的に私の上は結構あくんですね。特に役者間は。稽古場で作品を作る時に、役者も色々アイデアを出すんです。で、自分は年が下というのもあって、「絶対こんなん通らへん」「スベったらどうしよう」って思って言わないというのがあって。そういうのが良くないなあと。何か、それで何も出来なくなったらどうすると。
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- まあ、勇気ですかね。
- 小林
- で、こないだ笑の内閣さんに出させて貰った時は意見を言いやすかったんですよ。環境的にも。衛星でも自分の発言を臆せず言えるようにならなければ、と思います。
役者
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- 小林さんの役者としての長所として、声が非常に良い、というのがあるなと思うんですが。例えば、舞台上でセリフを言うに当たって、何か気を付けている事ってありますか。
- 小林
- 逆に、今まで気を付けていなかった事なんですが、重要な単語や情報を分かりやすくお客さんに提示する事を全く考えずに演技してまして。人に言われて気づいた事なですが、考えてなかったんですよ(少し笑う)。後は、キャラクターに合わせた物言いをする事ですね。
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- 例えばどのような。
- 小林
- フルベースの時は、高校生アナウンサーの役だったんですけど、就職活動の為の実況という設定だったんですね。自分の中で「セリフを噛んだら不採用」とか裏設定を作ったり、スポンサー企業をマイクの前で言うんですが、その時は絶対に噛まないようにしたりとか。
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- なるほど。役作りですね。
- 小林
- 今日は実はユニット美人のワークショップで。年配の方もいらっしゃったんですけど、人生の厚みとかが芝居に出ていて面白かったんですね。私も、日常生活における経験とか、自分の事は自分でやる姿勢とかを増やしたり身につけていければいいなあと思います。
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- その、年配の方の演技と言うのはどんな。
- 小林
- 二人いらっしゃったんですけど、その方の職業とか普段の生活を私は知らないんですが、例えば言葉に独特のキャラクターがあったり、存在感があったり。
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- それは役作りとは違う、別の分野ですかね。
劇団衛星新春興業フルベース
公演時期:2007年1月27日〜2月4日。会場:東山青少年活動センター。
ユニット美人
劇団衛星所属俳優の黒木陽子と紙本明子で2003年11月に結成。あまりに人気がない自分達が嫌になり「絶対モテモテになってやる!」とやけくそになって制作に福原加奈氏を迎え正式に結成。「女性が考える女性の強さ・美しさ・笑い」をテーマに日々精進中。(公式サイトより)