演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

丸山 真輝

俳優

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1月の忙しさ

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。丸山さんは、最近はどんな感じでしょうか。
丸山 
最近は、おかげ様で忙しくしています。壱劇屋の稽古と仕事ですね。今年は初めて、正月に仕事が入ってしまって。大阪城のイベントの仕事だったんです。今年初めて、実家には帰らなかったですね。壱劇屋で僕だけ、事務所に入っているので、そういう仕事がくる場合が。スケジュール調整がちょっと大変なんです。
壱劇屋

2005年、磯島高校の演劇部全国出場メンバーで結成。2008年より大阪と京都の狭間、枚方を拠点に本格的な活動を開始。主な稽古場は淀川河川敷公園で、気候や時間帯をとわず練習する。マイムパフォーマンスを芝居に混ぜ込み、個性的な役者陣による笑いを誘う演技にド派手な照明と大音量の音響と合わせ、独自のパフォーマンス型の演劇を行う。イベントではパントマイムやコントをしたり、FMラジオにてラジオドラマ番組を製作するなど、幅広く活動している。(公式サイトより)

劇団壱劇屋 第22回公演『Lumiere Dungeon』

__ 
壱劇屋の次回公演、「ルミエール・ダンジョン」ですね。いまはどんな感じでしょうか。
丸山 
ちょっと追い込まれてますね。いつも通りといえばいつも通りなんですけど。でも、面白い事はギリギリまで詰め込みたいといういつものパターンなので。本番までそれを続けます。いまは半分くらいまで詰め込めたのかなと。
__ 
おお、二週間前で半分。
丸山 
まあダメなんですけどいつも通りのペースです。事前に完成して何度も通し稽古をする、というのが出来ていないですね。
__ 
面白い事を詰め込みたいから、なんですね。
丸山 
一通り作っては、まだ足りないとか、アイデアが湧いてきた、とか。本番直前でも盛り込めるならそうしてますね。これからまだどれぐらい盛り込まれるのかは未知数です。台本が早い方ではないので、台本が上がった瞬間にパッと伸ばさないといけない。リアルタイムで進化していかないといけない。終わってから色んなアイデアを思いついてからでは遅いので。
__ 
今回の見所を教えてください。
丸山 
壱劇屋らしい作品ではあるんですけど、劇場大ホールの全てのものを大きく広く使ってます。そこらへんを楽しんで頂ければなあと。見たことのない感じにはなるかなあと。
__ 
例えば。
丸山 
普通の演劇だと、お客さんが客席に座って舞台上の俳優を見るというのが普通なんですけど。お客さんが移動する事で視点が変わる事で、視覚の動き方や感覚が変わるというのが、ちょっと映画に近いんじゃないかなとは思いますね。
劇団壱劇屋 第22回公演『Lumiere Dungeon』

公演時期:2014/1/22〜24。会場:門真市民文化会館 ルミエールホール 大ホール。

見たことあるんだけど、見たことのない

__ 
丸山さんが壱劇屋に関わったのは、どんな経緯があったのでしょうか。
丸山 
まず、僕は高校演劇から始めていて。大学でもやってたんです。就職してから2年ほどは出来なかったんですが、大阪に出てきて芝居を初めて。壱劇屋を初めて見たのはLYNX’Sです。こりゃ面白いぞと思って。回想電車と金魚鉢を見て。劇団員募集の告知を見て、これは入ろうと。それまで、自分で演劇ユニットに参加して1年に一本くらい舞台に出たり、事務所に入っていたのでメディア関係の仕事はしていたんですけど、なかなか舞台に立つ時間は無かったので。これが年齢的にも、挑戦するには最後かなと思いまして。
__ 
壱劇屋、どういうところが魅力的だと思われたのでしょうか。
丸山 
台詞に頼らずに話が展開出来る床ですね。アイデアの豊富さというのもあります。一番最初に見て感じたのは、古くさい演劇的手法を、全く新しい使い方で見せたりしてくるんですよね。見たことあるんだけど、見たことのない使い方。

眠っていたものがふっと目を醒ました

__ 
舞台上で好きな瞬間を教えて下さい。
丸山 
本番で、新しい関係が生まれた瞬間ですね。相手役が、何だかいつもと違う表情であると。その時、僕もこれまでの演技と同じではダメだと悟って、つまり相手の演技を受けた瞬間ですね。
__ 
その時、ご自身も即、対応出来る。もしかしたら、気付かなかった関係性を発見したという事かもしれませんね。
丸山 
眠っていたものがふっと目を醒ました、もしくはふっと上に表現が重なった時ですね。
__ 
それはきっと相手役にも伝わるんじゃないかなと。
丸山 
そう思いますね。手の動き方が一つ違っても、変わった事してるなあと思うので。
__ 
手に気付く。
丸山 
そうなんです。そういう時、表情からは逆に分かりにくい気がしています。手はやっぱり目立つ部分だし、お互いが関係しているシーンだとものすごく意識されるところなんです。

手探り

__ 
これまでの壱劇屋で、丸山さんが思う、ご自分が一番輝いてた瞬間は。
丸山 
入ってまだ1年半なので手探り部分が多いですね。でも、「6人の悩める観客」の京都公演では手応えを感じていました。正直大阪公演は突貫工事で、舞台で本番するのがやっとだったんです。でも京都公演はじっくりとシーン練習をやって、練り込めたかなと。
__ 
確かに。
丸山 
段取りの多い舞台なのでその緊張感はあったんですが、すでに一度上演しているので、自分達で盛り込みたいものを持っていって、お互いに拾い合うという事が出来たと思います。あの瞬間は非常に刺激的でしたね。
__ 
拾っていく。
丸山 
あの芝居は、途中からお客さんを認識してもよい芝居だったんです。アクティングエリアを客席にまで延ばして。大阪公演は終わらせるのがやっとという状態だったので。

質問 竹村 晋太郎さんから 丸山 真輝さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、竹村さんから質問です。「壱劇屋に入る前と入った後のイメージを教えて下さい。」
丸山 
いつも、チラシの壱劇屋の紹介文で「高校演劇部のメンバーが今も続けている団体です」みたいに書いてあるんですけど、それは今でも同じですね。
__ 
というと。
丸山 
長い間お互いの気心が知れたメンバーでやっていて。その雰囲気が作品から伝わるんじゃないかなと。そこを感じてほしいですね。本編のスタイリッシュなイメージは、実はないです。実情は、もっと泥臭いやり方。スタイリッシュになれる方法を泥臭く探す人たちなんですよ。いいものを作ろうと足掻いて足掻いた結果、あそこに行けているんじゃないかなと思います。
__ 
その関係性が素晴らしいですね。
丸山 
大熊君が作演出で出演もする。だから王様扱いかというとそうではなく。いい意味で王様としては考えなく、みんなで作っているんですよね。最終的に決めるのは大熊さんなんですけど、そこに至る経緯までは好きな事を言わせてもらう。納得のいく組み方を最後まで続けるのが、壱劇屋の良いところなんじゃないかと思います。

アプローチ、アプローチ

__ 
丸山さんにとって、優れた俳優とは何ですか。
丸山 
難しいですね。人によって考え方は違うと思うんですけど・・・少なくとも作品に対してアプローチ出来る事が最低条件だと思っています。ある演出で狙われている効果を察して、そこにアプローチを掛けられる事で、ようやく役者としてのスタートラインだと思うんです。その積み重ねで作品の方向性をお客さんに伝えられるんです。そうでなければ、漠然とした時間になってしまう。
__ 
そうですね。
丸山 
それは最低条件で、演出をより効果的に感じてもらえるというのがいい役者なんじゃないかなと思います。さらに、その人でしか出来ない演技が出来ればその人がオンリーワンなんですよね。
__ 
そこが、行き着くべき場所ですね。
丸山 
その為には、自分のやりたい事を全面に出すというよりは、そのシーンでなすべき事に積極的なアプローチ、例えば役作りや打ち合わせ、段取りの整理や確認。それは、ある程度経験のある役者であれば誰でも出来る筈の事なんですが、いかにサボらずに丁寧にやれるかなんじゃないかなと。
__ 
そうですね。
丸山 
ただ、そこにこだわりすぎても面白くない演技が続いてしまうので。いかにその積み上げを忘れた身体になれるか、なのかなと思います。若手のいい俳優さんは個性でガッといけてしまうんですけど、ベテランさんになるほど、派手な演技じゃなくても一つづつのプロセスを積み重ねた仕事を手早くこなして、圧倒的な存在感が出せる。そんな人が求められるんじゃないかなと思います。

演じる

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
丸山 
理想を言えば、芝居全体を支えられるような演技が出来たら最高やなと思います。共演者がいて、スタッフがいて。そういう中で、例えば僕が出ていないシーンでも、僕の演技が染み渡っているかのような。自分が作った演技があるからこそ他のシーンの別の要素が成り立っている。というのは実はどんな演技もそうなんですよね。繋がって支え合っている筈で、でもそれは用意に出来る事じゃない。
__ 
そうですね。
丸山 
自分の台詞しか覚えない、自分の出ているページしか読まない。それは違うと思うんですね。台本を全て把握して、自分が生きるべき、輝くべき演技は、それが作品上どのような役割を担うべきか考えて、本番でも全体のバランスを考慮しつつ。余分な仕事はしないように、でも、自分じゃないと出来ない部分はエゴを持って堂々と演技する。そうありたいと思います。

一つの作品を届ける

__ 
今後、壱劇屋以外で一緒に作品を作ってみたいのは。
丸山 
一緒にしてみたいというとアレなんですが、いま夢中になっているのは突劇金魚です。サリngさんの作品は必ずチェックするようにしています。
__ 
これは自分を変えた、そんな演劇経験があれば教えてください。
丸山 
壱劇屋に入る前に参加していたユニットの最終公演ですね。僕はそれまでずっとそこで主役をやっていたんですけど、そこで初めて準主役だったんですよ。主役の新人をサポートする的な役柄の。その時に芝居を全体から見る事、役者として我慢する事を覚えたんですね。そいつに教えながら演技をしていたんですが、つまり演技を裏側から見る事が出来たんです。他人にこういう事をしてもらう為には、全体を捉えた考え方をしないといけないので。それまでは、演じている瞬間の気持ち良さや役の中に入り込んだ熱さだったりが大事だったんですが、全体を重視するようになってからは、本番が終わった時の充実感が凄いんですね。
__ 
お客さんに一つの作品を届けられた時、それは舞台に立っている側も分かりますか。
丸山 
分かりますね。全体を見れていればそれは感じられると思います。

底上げをしよう

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
丸山 
壱劇屋の今後の予定がどんどん決まってきて。壱劇屋の芝居に、僕もぼつぼつ慣れてきている状態でして。お客さんに、僕の個性が届くように作っていきたいですね。壱劇屋の認知度というと大熊と竹村でしょ?みたいな状態だと思うんですよ。彼らだけじゃない、僕や、小刀や河原などの新人組もいる。彼らのスキルにも見せられるんだぞと。もちろん僕もその中で埋もれるつもりはないし。そういう風に、レベルアップが出来ればなと。そうなれば周りの評価も上がるし、入ってくる仕事も変わる、と。
__ 
素晴らしい。
丸山 
まずは欲張らずに、そういう底上げをしたいですね。いま、転換期にはあると思います。ベースは変わらないと思うんですけど。大熊さんのイメージを全員が現場で演出して、僕ら役者が120%の力で演じるという。
__ 
それを短い期間でやらないといけないと。しかし、しんどそうですね。
丸山 
それは、めちゃくちゃしんどいのは間違いないんですけど、しんどくなっても険悪にはならない。「うわあしんどいぜー」って楽しんでしまえる。
__ 
そこですよね。
丸山 
苦しみに対して共有が出来るので、けしてへこたれないし。全員で作らないと出来ない構造の芝居なので。自分だけがしんどいとか弱音を吐いてたら全体が終わっちゃうんですよね。
__ 
そこは壱劇屋動画日記からも伝わりますね。

バンテリン(クリーム)

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
丸山 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
丸山 
(開ける)バンテリンですね。
__ 
辛い時に使っていただければと思います。
(インタビュー終了)