デ・4「名づけえぬもの、断片的な記憶」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。川北さんは、最近はどんな感じでしょうか。
- 川北
- 最近はバイトして稽古しての毎日で、忙しいですね。「デ」の「名づけえぬもの、断片的な記憶」に出演するんですけど、その稽古です。でも、ものすごく面白いんですよ。
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- おお。
- 川北
- まず台本が、今まで見たことがない感じで。ほとんど小説みたいで・・・
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- え、見せてもらっていいですか?あ、本当だ。演技を全部文章にしてるんですね。
- 川北
- こういうふうに台詞のカギ括弧がほとんどなくてト書きなんですよね。
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- というか、ほぼ小説なんですね。ところで、今回の「デ」に出演するきっかけをお聞きしてもよろしいでしょうか。
- 川北
- 2、3年前に出演しました烏丸ストロークロック さんの作品で、私を見ていただいてたみたいで、今回この出演が叶いました。
「デ」
2011年、市川タロの個人ユニットとして活動開始。場所と記憶を俳優の身体を通しながら見つめ直すことを模索する。過去の活動に2011年10月『ルーペ/私のための小さな・・・・・・』。(公式サイトより)
デ・4「名づけえぬもの、断片的な記憶」
公演時期:2013/2/12(京都)、2013/3/12〜13(横浜)。会場:UrbANGUILD(京都)、横浜STスポット(横浜)。
烏丸ストロークロック
1999年、当時、近畿大学演劇・芸能専攻に在学中だった柳沼昭徳(劇作・演出)を中心とするメンバーによって設立。以降、京都を中心に、大阪・東京で公演活動を行う。叙情的なセリフと繊細な演出で、現代人とその社会が抱える暗部をモチーフに舞台化する。(公式サイトより)
スタッフワークも俳優も
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- 川北さんはテクニカルスタッフであり俳優なんですよね。そうなっていったのはどのような経緯があるのでしょうか。
- 川北
- 近畿大学の演劇学科では、みんな演技コースの他にスタッフワークを一つ選ぶ事になっているんですよ。そこで照明を選んでいたら、卒業後も照明をする事になって。あと、音響や制作関係にも手を伸ばしていきたいなと。
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- 凄いですね。何でもできる感じですね。
- 川北
- いえいえ。でも極めていきたいのは俳優の方で、それで京都の各団体に出させていただいているんです。最近。
質問 榊菜津美さんから 川北 唯さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた、東京で俳優をしている榊菜津美さんから質問です。「テクニカルでの経験が俳優の仕事に生きる事はありますか?」
- 川北
- 最近、俳優をやっていて分かったんですけど。声とか、身体の動き一つで表現の結果が変化する事に改めて気づいて、凄い事だなと驚いています。演技を加減する事と、オペで微妙な変化を調整する事って、似ている気がするんですよね。
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- ええ。
- 川北
- 本当に感覚的な話なんですけど。照明のフェイドとカットで操作する時、俳優として舞台に立つのと同じぐらい疲れる時があるんです。一つのシーンを暗転させて、「ああ、一緒に演技してたんだな」という感覚があるんですよ。
自然光
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- 照明を操作するとき、舞台の上の俳優と同じように演技している感覚があるという事ですが・・・。
- 川北
- そこは本当に感覚的なので、それこそ技術的にやらないといけないなあと。それが課題ですね。
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- 川北さんがそういう感覚を得られたのはきっと、自分の言動がライブでリアルタイムに表現になっていく現場にいるから得られる感覚なんでしょうね。照明卓と舞台という二つの視点から、その一瞬に立ち会うから。
- 川北
- そうかもしれません。
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- そこでどのようなものをどう表現するに意識的になれるか。少なくともそれは、アーティストとしての必要な要件の一つかもしれませんね。
- 川北
- もちろん、どちらをやっている時でも目立ちすぎるのは良くないし、かと言って目立たなすぎるのも。例えば昨日、下鴨車窓 の「煙の塔」 を見たんですけど、やっぱり魚森さん凄い!って。自然だけど、でも強調する部分があって。
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- あれは確かに、自然により近づいた表現でしたね。霧の中の夕焼けなんて、普通でも中々体験しないのに分かる。光の波長が違うのかな。PCのディスプレイの光と自然光って全然波長が違うから、それが結構、人の認識に影響を与えるんじゃないかという気はする。
川北さんの照明プラン
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- 川北さんが照明プランを作る時にまず気を付ける事はなんでしょうか。もちろん、指定もあるとは思いますが。
- 川北
- 大切にしている事。一度、男肉duSoleil の照明をやっていたとき、舞台セットのプランに併せていった方が良いのかなと思ってたんです。でも、その前に男肉の照明をやっていた人に、「もっと個性を出していった方が良いよ」と言われたんですね。自分にしか出来ないプランを組んでいったほうが良いのかなと思いました。だから、それは役者としても同じなんですけど、これはやった事ないでしょうみたいなのを考えたいです。淡水の照明をしている時も、凝ったやり方を意識しています。
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- 具体的にはどんな?
- 川北
- 人物を目立たせるのはもちろんですが、「自然光には勝てない」という認識がまず大事なんですよね。私、葛西健一さんの照明が凄く好きなんですけど、自然光にリアルに近づけているんですよ。そういうことが出来たら素敵やなと。男肉はそういうのではないなと思ってたんですけど、自分がプランを組んでいるんだったら、もっと工夫を加えていってもいいのかなって。
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- いかに自然に迫れるか。
- 川北
- この間組んだ作品のプランでも、自然光と時間の経過を再現しようとしていました。今後も、そこにはチャレンジしたいですね。
男肉duSoleil
2005年、近畿大学にて碓井節子(うすいせつこ)に師事し、ダンスを学んでいた学生が集まり結成。J-POP、ヒップホップ、レゲエ、漫画、アニメ、ゲームなど、さまざまなポップカルチャーの知識を確信犯的に悪用するという方法論のもと、唯一無二のダンスパフォーマンスを繰り広げている。
役者さんとバチッと合った瞬間
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- 照明スタッフとして、喜ばしい瞬間は何ですか?
- 川北
- 感覚的な事になってしまうんですけど、役者さんとバチッと合った瞬間が一番好きですね。
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- 表現に対する両者の思惑や実践が、ライブで噛み合って、理解したという実感があったんですね。
- 川北
- そうですね。例えばある場面転換で、役者さんが下を向いていきながら溶暗するんですけど、そのタイミングと絵を合わせられるか、ですね。「あ、出来た」と思えた時は、その役者さんと通じあえた気がして、うれしいですね。
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- 俳優としては嬉しい瞬間は。
- 川北
- この間イッパイアンテナ の「バードウォッチングダイアリーズ」 でずっと走らされたんですけど(笑う)キャッツさんに「走った後の顔の火照りと汗だけで2000円取れる」と言われて。そういうのを言われると凄く嬉しいですね。一生懸命という言葉って格好悪いなと思うんですけど、実際にそれを見せられたらカッコいいんですよ。そういう姿を生でみたいんじゃないか。それを見せられたら良かったと思いますね。
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- 行為としてね。存在として見せる。
- 川北
- そうですね。
イッパイアンテナ
同志社大学の学生劇団「同志社小劇場」のOBを中心として、2007年11月に旗揚げされた演劇団体。主な演目はコメディとコント。劇場を気持ちよく走り抜けるライブ空間にすべく日夜活動している。(公式サイトより)
クールキャッツ高杉のイッパイアンテナジャックvol.2「バードウォッチングダイアリーズ」
公演時期:2012/12/13〜17。会場:スペース・イサン東福寺。
「オセロット企画」
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- 今後、やっていきたい事はありますか?
- 川北
- 私、オセロット企画という劇団に所属しているんですよ。去年の8月に公演してから動けてないんですけど、私自分の劇団が凄く好きなんですよ。台本が凄くよくて、脚本・演出の水上宏樹の本を作品にしたくてしょうがないです。台本はいいんですけど演出と役者が良くないと言われてしまうんですよね。だから、今いろんな舞台に出させてもらっています。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 川北
- 私、4月で26歳になるんです。
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- 若っ。
- 川北
- いえいえ。もうどんどん若い子がでてくるので、半端な事は言ってられないなと。言ってられない時期になってきたなと。俳優としての弱点が分かってきたので、どんどん克服していきたいです。
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- なるほど。
- 川北
- 2月・3月の「デ」で、新しい面を見せられたらと思っています。
ベレー帽
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 川北
- ありがとうございます。プレゼント、貰うのなんて久しぶりですね。(開ける)あ、ベレー帽!
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- はい。
- 川北
- うち、めっちゃ勇気がなくて手が出なかったんですけど可愛いなと思ってて。ありがとうございます!うわ可愛い!
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- おっ、似合いますね。
- 川北
- やったー。めちゃくちゃテンションあがりました。横浜に持っていきます。