演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

植田 順平

俳優。デザイナー

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「猿に恋」〜進化Ver.〜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はいかがですか?
植田 
最近は、悪い芝居の「猿に恋」の再演と、ピースピットの「TRINITY THE TRUMP」の稽古ですね。
__ 
ピースピット。植田さんが大阪で芝居をするのは初めてだと思うんですが、稽古場の雰囲気はいかがですか?
植田 
そうですね。意外にも大人しい人が多くて、稽古場では僕が一番うるさいぐらいです。芝居では元気いっぱい演技されると思うんですが、そのギャップが面白いなと感じました。
悪い芝居

2004年12月24日、旗揚げ。メンバー11名。京都を拠点に、東京・大阪と活動の幅を広げつつある若手劇団。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的に勢いよく噴出し、それでいてポップに仕立て上げる中毒性の高い作品を発表している。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)

本当に悪い芝居vol.2「猿に恋〜進化Ver.〜」

公演時期:2012/1/7〜2012/1/9。会場:下北沢駅前劇場。

悪い芝居vol.12「駄々の塊です」

公演時期:2011/11/2〜2011/11/9(京都)、2011/11/17〜2011/11/21(東京)。会場:ART COMPLEX 1928(京都)、王子小劇場(東京)。

「駄々の塊です」

__ 
「駄々の塊です」お疲れさまでした。面白かったです。浮浪者役でしたね。
植田 
今年作った作品では無口な役が多くて、しかも劇場での公演が少なかったりしたのもあり、久しぶりにセリフがあるかなと思っていたら・・・前半ほとんどセリフが無かったんですよね。
__ 
難しい部分は。
植田 
「猿に恋」で言葉を使わない表現をやったので、それを活かして今回自分がどこまでそうした表現が出来るのかという挑戦でした。
__ 
そういえば、登場からしばらくはオウオウ言ってるだけで、セリフありませんでしたね。
植田 
セットが完全な具象舞台ではないので、棒が何本か立ってるだけの装置を如何に檻に見せるか。言葉に頼らず、身体だけでどれだけ表せるか。やってみたら面白いし、結構手応えはあって、すごく勉強になりました。
__ 
仕草から視覚言語にまで磨けるか、ですよね。私がみた限りでは、植田さんにはヒゲも生えてるし哀れだったので、猿が檻に入れられているように見えていました。
植田 
本当ですか。嬉しいです。
悪い芝居vol.12「駄々の塊です」

公演時期:2011/11/2〜2011/11/9(京都)、2011/11/17〜2011/11/21(東京)。会場:ART COMPLEX 1928(京都)、王子小劇場(東京)。

「キョム!」

__ 
植田さんは浮浪者が大変似合っていますが、ご自身ではそれをどのように思われていますか?
植田 
見た目優先というのがあると思いますが・・・演出は、本気か冗談か分からないんですが「お前みたいなのがいると、それを成立さす芝居しか書けないのが嫌や」って。まあ学園ものの芝居とか出来ないので邪魔だと言われてるんですよね(笑う)。先生出来ないし、やっぱり学校への侵入者になってしまう。
__ 
なるほど。
植田 
気に入ってそういう芝居を書いてて貰えていたら嬉しいですけどね。でも、猿に恋とかは自分にはハマっていると思うので、自分がそれで立っているようだと嬉しいですね。
__ 
そういえば、「キョム!」も完全にホームレスでしたね。
植田 
はい。あとはヨーロッパ企画さんのゲームムービーフェスティバルでも原始人をやりました。キリストもやったし、僕はそろそろ、魔法使い役が来たらいいなと思っています。
__ 
ああ、ホウキに乗る感じの。分かります。
悪い芝居vol.11「キョム!」

公演時期:2010/12/18〜26(大阪)2011/1/14〜16(東京)。会場:精華小劇場(大阪)駅前劇場(東京)。

「何を見たんやろうなあ」

__ 
植田さんは、悪い芝居ではWEB制作とチラシを手がけておられるんですよね。
植田 
はい。技術の部分は全部僕なのですが、実は山崎と相談しながら制作しているので手柄を独り占めしていいのかなって思う時はあります。
__ 
在学中から、そうした技術を?
植田 
大学2回生の時にデザインのコースに入ったんですよ。PCがいるという事で購入して、独学で勉強を始めました。やってみると奥が深くて、これどうなってるんやろうと思いながら独学で。一時期、趣味とはいえWEBデザイナーを志望していました。
__ 
楽しいですからね。
植田 
大学時代にアルバイトで印刷会社に入っていたんです。卒業後そのままそこに入社したんですよ。悪い芝居に入ってからは、宣伝美術方面を担当させてもらっています。
__ 
悪い芝居のビジュアルの打ち出し方は毎回驚かされます。刺激的で。では、悪い芝居の表現活動を通して、世界にどのような影響を与えたいですか?
植田 
全体の方向性を決める山崎の頭の中にそのあたりのイメージがあるのかもしれませんが・・・今は岡田や池川という音楽が作れるメンバーが入って、僕もバンドをやっていたので演奏はそれなりに出来るんですよね。だから音楽を取り入れて活動していくかもしれないし、もしかしたら誰かが小説を書くかもしれないし、映画を作るかもしれません。論文かもしれません。舞台公演でなければ悪い芝居ではない、という事はないと思います。
__ 
なるほど。
植田 
僕らがやりたい表現は、どんな形を取ってもいいと思うんですよ。それが結果として、「悪い芝居」になればなと思っています。
__ 
悪い芝居を体験した人には、どう感じてもらいたいですか? もちろん作品ごとに違うと思いますが。例えば「駄々」では、みんな混乱した感想だったように思うのですが。
植田 
本公演に限って言えば、見終わってショックを受けて、帰りながら「何を見たんやろうなあ」と反芻してもらいたいですね。見た人自身の価値観とすり合わせて、人生に少しでもひっかき傷を残せたらなと。
__ 
ええ。
植田 
・・・ひっかき傷という表現がいいのか分からないんですけど、たまに映画とかでも暗くてやな気分になるような重い作品はありますよね。でも、もう一度見たくなる。お金を払ってこんな気分になるなんておかしい、のに気持ちいい。そういうのが結構、悪い芝居にはあるんじゃないかなと思います。「駄々」のエンディングも、前向きにもネガティブにもとらえられるんです。

質問 奥田 ワレタさんから 植田 順平さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、奥田ワレタさんから質問を頂いてきております。「その内東京来るんすか? いや来てくれたら嬉しいけど、みんな来るのはなんかなあ。いや嬉しいけど」。
植田 
それは・・・どうでしょうね。
__ 
答えづらい質問ですね。奥田さんとしては、みんな来てもしょうがないんじゃないって思っているのだと思います。
植田 
もちろん、東京にも大阪にも京都にそれぞれの小劇場の文化があって、それぞれの特色があるのが大事な事だと思います。次の悪い芝居は東京のみの公演(再演)ですのでどんな反応が返ってくるのかが楽しみです。他にも、山崎は現在は東京で客演、僕は大阪で客演、池川はAI・HALL、西岡は京都、岡田はバンド活動と色々活動の幅が広がってきていますし、外部での活動にも興味はありますね。
__ 
それで答えになっていると思いますよ。
植田 
まあ、奥田さんには、東京に行ったらよろしくお願いしますと。申し上げたいです。

こういうのもあるんや

植田 
悪い芝居以外の小劇場を見たのはクロムモリブデン が最初でした。ああ、こういうのもあるんや! 奥田さんスゴいなって思いました。
__ 
最初に悪い芝居をご覧になったのは。
植田 
勤めていた会社に、当時の悪い芝居のWEB担当の人がいたんですよ。「岩乙女」のチラシを持ってきはって、見に行って。ああ面白いな、こんなのがあったんやと思って会社辞めました。
__ 
あはは。
植田 
見終わった時、感想が言葉にならなかったんですよ。「あー、あー、よかった」って。感動したんですよ。小劇場というものの存在も知らなかったんですが。いま言うと身内自慢になっちゃいますね(笑う)。今は、ただただ感動している場合でもないんで。もっとこうしなさい、みたいな事を言うようにもなりましたね。
__ 
世代的にね。
植田 
ベビーブームベイビー の時は一番下だったんですけど、今は下の世代ばっかりです。だから、下の子達がきちんと色々出来るようにしていきたいですね。なんて、僕もまだまだ叱られるんですけど(笑う)。一緒に頑張りたいと思います。
クロムモリブデン

1989年、大阪芸術大学映像学科を卒業した青木秀樹を中心に、同大学の学生らを主要メンバーに結成。90年代後半〜00年代初期にかけて、「トランス・ナンセンス・バイオレンス」をテーマに、ノイジーな音響・照明、鉄やジャンクを駆使した美術、過激な衣装などを多用し、アート志向の強いパフォーマンス色豊かでパワフルな舞台を繰り広げる。近年は、積み上げてきた独自のスタイルを基盤としながらも、ポップさを前面に押し出したコメディ色の強い作品を制作。確かな毒を胸に秘めつつも、それをさらけ出す事無く、あくまで娯楽作品に仕上げる作風はより洗練の度合いを増している。一貫しているのは、座付き音響家・笠木健司による音響システムに代表される質の高いスタッフワークと、青木秀樹による時代を鋭く切り出すブラックユーモア溢れるテキストである。2006年、本拠地を東京へ移転。THEATER/TOPS、青山円形劇場等での公演を経て、「全員が看板役者」と評される個性溢れる俳優が揃い、最も充実した形で2009年劇団結成20周年を迎える。(公式サイトより)

悪い芝居vol.5「ベビーブームベイビー」

公演時期:2007年8月23〜26日。会場:京都芸術センター。

脇だけど

__ 
今後、植田さんはどんな感じで攻めていかれますか?
植田 
僕は悪い芝居において、主役のポジションをどうしても欲しいという訳ではなくて。見た目的にも気持ち悪いので(笑う)
__ 
いえいえ。
植田 
全体における装飾の部分にいた方が良いよねというのがあります。雰囲気作りかな。
__ 
ああ〜、ヨーロッパ企画 の山脇さんが、メキシコのマリアッチには「何もしないパート」があるとか言ってました。多分、内外の雰囲気を調整する立場なんだろうなと思っているんですが。
植田 
そういう事だと思います。もちろん主役をやれる事があれば嬉しいし、精一杯やると思いますけど、外堀を固めていく事に楽しさを感じるんですよね。「駄々の塊です。」も、脇だけど凄く楽しい役どころでしたし。
ヨーロッパ企画

98年、同志社大学演劇サークル「同志社小劇場」内において上田、諏訪、永野によりユニット結成。00年、独立。「劇団」の枠にとらわれない活動方針で、京都を拠点に全国でフットワーク軽く活動中。(公式サイトより)

ムーミンの乾パンとマツボックリのロウソク、チョコレート5枚

__ 
今日はですね。お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
植田 
あーっ。貰ってばっかりですみません。
__ 
いえいえ。どうぞ。
植田 
(開ける)おお、ムーミンじゃないですか。
__ 
乾パンとロウソクとチョコレートです。凄く寒いところでも何とかクリスマスだけは出来るように。
植田 
ありがとうございます。僕、ムーミン好きなんですよ。食べ終わった後に缶を使います。
(インタビュー終了)